髙橋亨汰は対戦相手のピューポン・ゲッソンリットが欠場によりメインイベントが消えた。
トリを務めた木下竜輔は流血の激戦の末、沖縄の下地奏人に判定負け。

◎TITANS NEOS.32 / 4月23日(日)後楽園ホール17:30~20:00
主催:TITANS事務局 / 認定:新日本キックボクシング協会

※試合レポートは岩上哲明記者(一部編集)

63.0kg契約3回戦 ピューポンの怪我により中止
髙橋亨汰(WKBA62kg級Champ/伊原)vsピューポン・ゲッソンリット(タイ)

◆第8試合 フェザー級3回戦

木下竜輔(伊原/26歳/ 56.95kg)9戦4勝(2KO)5敗
      VS
下地奏人(RIOT/18歳/ 57.2→57.15kg)7戦7勝(1KO)
勝者:下地奏人 / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:勝本26-30. 桜井26-30. 仲26-30

陽気さと余裕感が出ている下地奏人に対し、右肩にテーピング、左太腿にサポーター、両足首にテーピングをしている悲愴感を漂わせる木下竜輔。

開始早々から打ち合いになったが、下地はミドルキックをキャッチされても構わず木下にパンチを打つテクニックを披露。そして、木下に左フックをヒットさせノックダウンを奪う。

木下竜輔の強打、右ストレートはヒットせず

第2ラウンド、下地の攻勢は続き、右の縦ヒジ打ちで木下の眉間がカットされ、追撃の左縦ヒジ打ちで傷口が広がり、ドクターチェックが入るも続行。その後も下地のヒジやパンチがヒットするが、木下の大振りのパンチがヒットすると会場は盛り上がった。

第3ラウンド、木下は下地のパンチ連打でコーナーに追い込まれ、カウンターで右フックをクリーンヒットさせるが劣勢を覆すには至らず。下地は最後まで手数を減らすことなく攻勢を維持し判定勝利。

試合後、下地奏人はKO勝ちが出来なかったことをセコンド陣と一緒に反省していたが、「次回、呼ばれたらしっかりKO勝ちをします。」とこの日の試合を今後に活かしたい決意が現れていた。

多彩に柔軟に攻めた下地奏人の前蹴りが木下竜輔のアゴにヒット

沖縄から乗り込んだ下地奏人が判定勝利を飾った

◆第7試合 スーパーフェザー級3回戦

小林勇人(伊原/26歳/ 58.85kg)2戦2勝(1KO)
      VS
渋谷昴治(東京町田金子/ 57.9kg)9戦5勝(2KO)3敗1分
勝者:小林勇人 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:椎名30-29. 勝本30-28. 仲30-29

2月19日の仁琉丸との試合で、右ストレート一発で豪快なTKO勝利をした小林勇人は「今回もKO勝ちします。」という意気込みで試合に臨んだ。

第1ラウンド、渋谷昴治は微妙に距離を作り、小林勇人のパンチを軽減しながら、隙を見てパンチのコンビネーションを仕掛けていく。小林の重いパンチがヒットするも渋谷も対抗していく。

第2ラウンド、渋谷は自ら攻めに入り、ローキックがキレイに決まる。小林はパンチで出るが、渋谷のタフさと決定的なダメージを貰わない距離感でクリーンヒット出来ず。

第3ラウンド、両者の打ち合いで会場は盛り上がる中、渋谷は隙を突いてパンチの連打を決めていくが、小林も蹴りを混ぜながら連打で返す。勝負は微妙な流れだったが、小林が判定勝利となった。

小林勇人が右ストレートで渋谷昂治にヒット、僅差ながら攻勢に転じる

◆第6試合 57.0kg契約2回戦

中村哲生(伊原/57歳/ 56.85kg)5戦5敗
      VS
長友亮二(キング/ 56.4kg)1戦1勝(1KO)
勝者:長友亮二 / TKO 1R 0:53 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:桜井一秀

長友亮二はアマチュアキック版オヤジファイト、「ナイスミドル」で活躍し、今回がプロデビュー戦。「自分なりのケジメをつける戦いになると思います。」と決意を語っていた。

開始早々、長友亮二は右ストレートを決め、中村哲生は出鼻を挫かれ反撃をさせて貰えず、ローキックの連打で動きを止められ、ガードが下がったところに長友の右ストレートが顔面に炸裂。そのままレフェリーストップされ、長友亮二のTKO勝利。

短い時間の中、パンチと蹴りで上回った長友亮二が圧倒してTKO勝利

◆第5試合 76.0kg契約3回戦

マルコ(伊原/34歳/ 75.15kg)5戦3勝(1KO)2敗
      VS
鈴木健太郎(E.S.G/32歳/ 75.85kg)5戦4勝1敗
勝者:マルコ / TKO 1R 3:00(アナウンス発表) 、 1R 3:06辺り(レフェリーストップされたおおよそのタイム、カメラデータによる)
主審:勝本剛司

前日計量でマルコは「少し落とし過ぎたかな。1ラウンド、いや1分でKOします。」とコメント。表情はリラックスしていた。

開始後、両者は探り合いのような形で始まるが、鈴木健太郎のローキックに対し、マルコもローキックで返していき、パンチで攻勢に出ると会場から声が挙がる。ラウンド終了近くにマルコはローキックで動きを止め、右フックでノックダウンを奪う。鈴木は立ち上がろうとするが効いて足が縺れてレフェリーストップ。マルコのTKO勝利。

試合後 控室に戻っていたマルコ選手は「1分ではKOできなかったけど、1ラウンドKOが出来たのは嬉しい。」と英語で陽気にコメントしていた。

マルコが右ストレートで攻勢に転じ、宣言どおりのノックアウト(TKO)に繋ぐ

◆第4試合 女子アマチュア35.0kg契約2回戦(2分制)

西田永愛(伊原/11歳/34.7kg)vs岩本心(FACT MMA/ 33.8kg)
勝者:西田永愛 / 判定3-0 (20-18. 20-18. 20-19)
主審:椎名利一
副審:桜井20-18. 仲20-28. 勝本20-19

まだ小学生と見られる両者は共に家族と一緒に会場入り。

西田永愛はバックスピンキックで会場を盛り上げ、岩田心も負けじとパンチを中心に反撃をする。西田の蹴りを中心にし、技を正確に魅せるように決めていく攻撃に、怯むことなく攻めていく岩本だったが、西田が判定勝利となった。

アマチュア試合。11歳にして柔軟な技を魅せた西田永愛

◆第3試合 女子50.5kg契約3回戦(2分制)

オンドラム(伊原/ 50.45kg)7戦2勝5敗
      VS
高橋友菜(Team lmmortaL/ 48.05kg)1戦1敗
勝者:オンドラム / 判定3-0
主審:少白竜
副審:椎名30-29. 桜井30-28. 仲30-29

計量規定内とはいえ、2.4kg差は大きかったかもしれない。しかし、デビュー戦らしく、オンドラムとの体格差をカバーするように前へ前へとパンチを連打しながら攻めていく高橋友菜。オンドラムは慌てず冷静に打ち合いに応じながらも体格差を活かし、高橋の連打を最小限に抑える。第2ラウンドに入ると、高橋のスタミナが少しずつ切れてきた。オンドラムは自分のペースに持ち込み、第3ラウンドは打ち合いになるも優勢のまま判定勝利を得る。

オンドラムが体格差を活かして攻勢を維持して判定勝利を導く

◆第2試合 58.0kg契約2回戦

吴嘉浩(中国留学生24歳/伊原/ 57.6kg)2戦1勝1敗
      VS
聖那(ANCHORAGE/21歳/ 58.6→58.1kg)2戦1勝1敗
勝者:聖那 / 判定0-3
主審:勝本剛司
副審:少白竜18-20. 桜井18-19. 仲18-20

初回、?嘉浩はパンチ中心に手数多く時折ワンツーを決めていく。聖那は劣勢かと見えたが、パンチに合わせたローキックで返し、ラウンド後半になると確実に?嘉浩にダメージを与えていった。

第2ラウンド開始早々の打ち合いから聖那の右ストレートが決まったのを切っ掛けに、?嘉浩は劣勢になり始める。聖那はハイキック、アッパーからボディへのパンチ、右ミドルキックで?嘉浩はスタンディングダウンを喫し、聖那が判定勝利。

◆第1試合 女子フライ級3回戦(2分制/ミネルヴァ推薦試合)

青木繭(SHINE沖縄/32歳/ 50.4kg)4戦3勝(1KO)1敗
      VS
片岡真秀(チーム・タイガーホーク/17歳/ 50.35kg)5戦4勝(1KO)1分
勝者:片岡真秀 / 判定0-2
主審:椎名利一
副審:少白竜28-30. 勝本29-29. 仲29-30

2月19日興行でオン・ドラムに判定勝利した青木繭。「前回KO勝ちが出来なかったので今度こそはKO勝ちします。」と語り、ゆくゆくはミネルヴァのタイトルも狙っていくと力強いコメント。一方の片岡真秀は冷静に「心を折られず、心を折りにいく」とコメント。

青木繭は体格差を気にせず攻めていくが、片岡真秀のハイキック、ミドルキックが的確に決まる。青木はもろに何発も受けるがタフネスぶりを発揮し、パンチを打ち返す展開。青木のタフネスぶりは発揮されたが、片岡が技の的確さで判定勝利。

《岩上哲明取材観戦記》

今回の興行はメインイベントが無くなったことで盛り上がりに欠けると懸念していましたが、それをチャンスと捉えた下地選手とセコンド陣、そして、前回のKO負けを反省し、意地を貫いた木下選手の攻防が見事にスイングしてトリを締め、コンパクト感は感じたものの良い興行になりました。

興行は初め、中間、最後の3場面で盛り上がるかどうかのポイントになると思いますが、この3場面を選手達は盛り上げてくれました。また、今回の興行でデビュー戦を飾った二人の選手は対照的なものでしたが、次回への期待を沸かせるような試合ぶりでした。

興行を理解して試合出場している選手達が、多くの機会に恵まれるように団体運営陣、マスコミは応援しなくてはならないでしょう。

《堀田春樹取材戦記》

“メインイベントが消えた”意味は二つあり、この日の高橋亨汰の対戦相手のピューポンが欠場と、いつものメインイベンター重森陽太、勝次ら不在の現象がありました。勝次は近々、他興行出場予定があり、重森陽太はは2月の試合での脛の怪我の影響や、所属ジムの方針があったかと思いますが、かつての隆盛が感じられないメインイベンター不在でもありました。高橋亨汰はヤル気満々だった様子で、次なるメインイベンターとして、しっかり役割を果たすことでしょう。

今回の興行ではセミファイナルの木下竜輔vs下地奏人戦が最終試合となりましたが、昨年5月15日に木下竜輔が、KO負けの少ないジョニー・オリベイラを右ストレート一発で失神TKO勝利して強烈な存在感を示し、順調だったデビュー後も、今や負け越してしまう苦しい立場だが、髙橋亨汰に続くエース格に期待が掛かっているので踏ん張って欲しいところです。

第1試合で片岡真秀のセコンドに着いた船木鷹虎さん。仙台青葉ジムから独立し、2002年に鷹虎ジムを開設。現在はプロ部門をチーム・タイガーホークとして活動中である。そんな鷹虎さんの現役時代を片岡真秀はどれ程知っているだろうか。試合中、そんな想いが過りましたが、ミドルやハイキックは直伝の当て勘と上手さを感じました。

先週のNJKF興行で 、東京町田金子ジム閉鎖の発表がありましたが、この日、小林勇人(伊原)と対戦した渋谷昴治の敗れた試合が、東京町田金子ジム最後の試合だったかもしれません。所属選手はフリーとなって、今後の活動は移籍など自由となるようです。

次回の新日本キックボクシング協会興行は7月9日(日)に後楽園ホールに於いて「MAGNUM.58」が開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」