金曜で潮目は変わる!──「戦争法案」阻止でいま野党がすべきあの手この手

「国会の中で我々は少数だ。皆さんの声が法案成立を阻む力になる」民主党の岡田代表が過日、「戦争推進法案」反対集会で参加者に向かって語りかけた。社交辞令としてはそうだろうけども、腰を据えて「何が何でも」この悪法を阻止する、という当事者としての覚悟がこの言葉の中にはない。

◆「内閣不信任案」だけじゃない──与党の横暴に見合った最大限の抵抗を野党は徹底的に行うべき

中央公聴会、地方公聴会で2日間は時間を使わざるを得ないが、その後与党は、大急ぎで委員会強行採決を図ろうとするだろう。最短で17日といったあたりか。委員会採決に持ち込まれたら、野党議員は衆議院委員会時のような「茶番」は見せてほしくない。少なくとも与党の横暴に見合った、正しい最大限の抵抗(それは採決をさせないか、否決に持ち込む行動を意味する)を行うべきだ。

野党は「内閣不信任案」の提出を視野に入れているという。当たり前だろう。技術的なタイミングもあろうが、当然「内閣不信任」は問われるべきだ。それ以外にも「憲法を現実に合わせる努力をしなければならない」と発言した中谷防衛大臣や、答弁内容を二転三転させた岸田外務大臣の「問責決議」、これまでの政府見解を見事に無視した答弁を続けている横畠裕介内閣法制局長官の罷免要求、などは仮に委員会を法案が通過しても参議院本会議で審議に持ち込むべきだ。

◆採決が19日からの5連休後にずれ込めば、潮目は変わる

参議院本会議での採決を仮に18日中に行うことが出来なければ、情勢の変化が現実味を帯びてくる。5連休中は会社や学校が休みなので、日中も人が集まりやすいだろう。国会周辺は9月14日も5万人近い抗議の人々であふれた、と報道されているが、抗議活動がさらに高まり、霞が関、永田町を人民が占拠する事態になれば、連休明けの採決は容易ではなくなる。

かといって、与党がこの法案成立を諦めるはずはない。自民党議員の中には「せっかく政権を取り戻し、美味しい汁を吸っているのに、どうして次の選挙で確実に不利になることにばかり執心するのか」と内心苦々しく思っている新人議員も多いだろう。その通りだ。

民主党政権の「ドアホ」、とりわけ大飯原発再稼働を行った野田(もうこの名前と存在は忘れられつつある)。勝てる道理のない自爆的解散に打って出たあの男以上の自滅行為に猛進しているのが安倍だ。御用マスコミに支えられ、何があろうと盤石と思っているかもしれないが、それは慢心というものだ。

◆安倍政権の蒙昧は国民の愚かさをはるかに凌駕する!

安倍は今年に入ってからだけでも、実にテレビ地上波に単独で9回も出演している。ネット番組への出演も入れればその数は数えきれない。「公正・中立」を電波法で定められているテレビ局のこの行為はどう見ても偏向・破廉恥としか表現しようがない。ニュース番組などで頼まなくても独占的テレビ出演が確保されているのに、NHKはいうに及ばず、民放テレビ局までが「さあ、さあ安倍総理様、どうぞお気兼ねなく、思う御分自説をお話しください」とばかりに「大ぼら」吹きに公共の電波を提供する。日本テレビ・フジテレビ系列テレビ局の罪は限りなく深い(安倍が出演したのはこの両局系列のみで、TBS、テレビ朝日系列への単独出演は今のところない)。

それでも、破格の「延命治療」を施してもらって株価はどうなった? 年金原資をどんどん放り込んで一時的な上昇を見せたけれども、そんなもの長続きはしない。もう「アベノミクス」という、あの欺瞞語だって聞かれなくなったじゃないか。

この島国の大半の国民は愚かだ。非常に愚かだ。しかし安倍政権の蒙昧は国民の愚かさをはるかに凌駕する。

[図]第23回参議院議員通常選挙の結果(2013年7月21日=Wikipedia)

◆参議院の与野党差が28議席だということ

現時点では参議院通過を「あらゆる手立て」で阻止することが重要だ。それは可能である。その手段を一つだけ示唆しよう。参議院の総議席数は242だ。そのうち自公が135で野党が107だ。野党の中にも自公同様の主張の党も混ざっているので単純な加減ではないけれども、与野党の差は28だ。(第23回参議院議員通常選挙の結果=Wikipedia)

これが逆転すれば当然与党案は否決される。採決の際に与党議員のうち14人が立場を変えれば同数となる。でも、それは今のところ現実的ではない。

例えばだ。自民党の中で急に集団インフルエンザが流行し議員本人が本会議に出席できなければどうなるだろうか。40人がインフルエンザに感染し、起き上がれなければ、採決では「委任」はできないから欠席理由は関係なく否決だ。理由はインフルエンザでも、交通事故でも不良に絡まれて怪我をしても、二日酔いでも、身内の不幸でも、自宅の床上浸水でも、ぎっくり腰でも関係ない。

そんなことは通常起こりそうなことではないけれども、農業用水のような小さな河川が氾濫し、誰も予想しなかった大水害が起きたことをつい先ごろ私たちは経験している。世の中何が起こるかわからない。その気になれば何が起きても不思議ではない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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「戦争法案」断固阻止!──沖縄「祖国復帰斗争碑」に学ぶ「反戦」の哲学

「戦争推進法案」の参議院での審議が正念場をむかえている。与野党の議員数で単純に天秤にかければ、この最悪法案が可決されてしまうことは自明であるけれども、それを傍観しているわけにはいかない。

◆法制化された制約は私たちの生活や行動をいやおうなしに束縛する

私は政治が嫌いだ。でも、政治は私(たち)を常に拘束し、逃してくれることはない。だから、私にとって政治は嫌いな対象であっても無視することができない。私にかかわらないでくれ、政治は政治の好きな人たちで勝手に決めて、戦争も、紛争も決めた連中が、出向いて殺し合いなり、どつきあいなりしてくれ、と念じるけれどもそうはゆかない。振り払おうとしても法制化された制約は私たちの生活や行動を束縛する。

狡猾で無責任な政治家どもは、想像すらできない惨状を人びとにもたらす「戦争」に、この島国を誘引しようと熱をあげる。許せない。絶対に許せない。

憲法論、法律論の初歩すら通じない首相をはじめとする閣僚に、理解や対話による解決を求めるのは全く非現実的である。彼らは明確に私たち(この島国に住む住民だけでなく、戦争を望まない世界の人々に向かって)の敵である。

◆沖縄本島最北端、辺戸岬に立つ「祖国復帰斗争碑」碑文に学べ

あれこれ反撃を試みようと少ない知識での抵抗を試みていたが、私の無知を張り倒し、思いっきり叱られるような骨太の「反戦」哲学を示す記念碑の存在を思い出した。それは沖縄にある「祖国復帰斗争碑」だ。沖縄旅行のガイドブックなどを調べたがこの碑を紹介しているものはあるが、碑文の紹介を私は見つけられていない。文末に碑文の全文を紹介する。

沖縄本島辺戸岬に立つ「祖国復帰斗争碑」

沖縄本島最北端の辺戸(へど)岬に立っているこの碑に刻まれた血のにじむようなことばは、2015年9月、私たちが今、何を考え行動すべきかの示唆を与えてくれる。「NO NUKES voice 第5号」は「福島―沖縄犠牲のシステム」が特集で、表紙には「NO WAR! NO NUKES!」の文字が躍る。反戦・反原発から沖縄差別を徹底的に掘り下げる特集号だ。

鹿砦社は自慢ではないが、権威に媚びを売るような軟派ではない。

「戦争推進法案」審議闘争に「デジタル鹿砦社通信」は全力を傾注し、その斗いに微力ながら加わることを宣言する。沖縄、福島、を忘れずに「戦争推進法案」を断固粉砕する決意を表明する。

全国のそして全世界の友人へ贈る

吹き渡る風の音に耳を傾けよ。権力に抗し復帰をなし遂げた大衆の乾杯の声だ。打ち寄せる波濤の響きを聞け。戦争を拒み平和と人間解放を闘う大衆の雄叫びだ。

“鉄の暴風”やみ平和のおとずれを信じた沖縄県民は、米軍占領に引き続き、一九五二年四月二八日サンフランシスコ「平和」条約第三条により、屈辱的な米国支配の鉄鎖に繋がれた。米国の支配は傲慢で県民の自由と人権を蹂躙した。祖国日本は海の彼方に遠く、沖縄県民の声は空しく消えた。われわれの闘いは蟷螂の斧に擬された。

しかし独立と平和を闘う世界の人々との連帯であることを信じ、全国民に呼びかけ、全世界の人々に訴えた。

見よ、平和にたたずまう宜名真の里から、二七度線を断つ小舟は船出し、舷々相寄り勝利を誓う大海上大会に発展したのだ。今踏まえている土こそ、辺土区民の真心によって成る沖天の大焚火の大地なのだ。一九七二年五月一五日、沖縄の祖国復帰は実現した。しかし県民の平和への願いは叶えられず、日米国家権力の恣意のまま軍事強化に逆用された。

しかるが故にこの碑は、喜びを表明するためにあるのでもなく、ましてや勝利を記念するためにあるのでもない。

闘いをふり返り、大衆が信じ合い、自らの力を確め合い、決意を新たにし合うためにこそあり、人類が永遠に生存し、生きとし生けるものが自然の攝理の下に生きながらえ得るために警鐘を鳴らさんとしてある。(赤字強調引用者)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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江戸川乱歩賞──池井戸潤氏はなぜ呉勝浩氏受賞に異を唱えたのか?

日本推理作家協会は5月18日、第61回「江戸川乱歩賞」の選考結果を発表。受賞作に檎克比朗さんの『道徳の時間』を選出した。選考委員は有栖川有栖さん、池井戸潤さん、石田衣良さん、今野敏さん、辻村深月さんが務めていた。なお、檎克比朗氏は、デビューにあたり作家名を呉勝浩として同作をリリースする。

同賞は1945年、探偵小説を奨励する目的で、江戸川乱歩の探偵作家クラブへの寄付金を基に創設。歴代受賞者に、西村京太郎さん(第11回『天使の傷痕』)、斎藤栄さん(第12回『殺人の棋譜』)、東野圭吾さん(第31回『放課後』)、池井戸潤さん(第44回『果つる底なき』)などが輝いている。
先輩が誘ってくれるので、初めて、この授賞式に参加できる運びとなった。

◆授賞式会場で浮かび上がった人気作家の栄枯盛衰

9月10日、午後6時から帝国ホテルの「富士の間」で行われた「第61回江戸川乱歩賞授賞式」では、人気作家の栄枯盛衰がはっきりと浮かび上がっていた。「道徳の時間」で受賞した呉勝浩氏は「選んでいただいた先生がた、ありがとうございます。もうこれで江戸川乱歩賞を受賞することはないかと思うと、残念です」と殊勝なコメントを残し、選考委員を代表して、登壇し、呉氏を押していた辻村美月氏が「妊娠しています」とコメントすると場内は喝采が起き、ほんわかしたムードが漂った。

「道徳の時間」で江戸川乱歩賞を受賞した呉勝浩氏を囲んで

ひととおり、式典が終わり、檀上に並んでいた選考委員のベテラン作家たちもパーティの輪の中に入っていったが、もはや時代をリードしている感がある池井戸潤氏(選考委員・第44回江戸川乱歩賞を受賞)を、担当編集者や太鼓持ちのような出版コーディネーターらが囲いこみ「まったくほかの人が入ってこれない」スクラムを組む始末。
「あれじゃあ名刺交換すらできないよ。せっかくインタビューを申し込める布石を打とうと思って挨拶しようと思っていたのに」(週刊誌編集者)

それもそのはずで、「半沢直樹」シリーズ以来の池井戸潤作品の映像化対象としての人気は続いている。企業テロを発掘とする金融ミステリー『株価暴落』(文春文庫)がWOWOWで、コミカルな設定で政界を題材にした『民王』(文春文庫)がテレビ朝日系列でドラマ化。さらに日本テレビ系列では、銀行の不祥事追及をエンタテイメントに仕上げて好評だった『花咲舞が黙っていない』の第二シリーズが放映された。テレビ局に企画力がないのか、脚本化の質が落ちたのか、今や池井戸氏抜きでテレビドラマが成り立たないほどなのだ。
「正直、池井戸氏にゴマをすりたいテレビ制作会社のプロデューサーも何人かもぐりこんでいたが、まったく話かける隙間すらなかったようですね」(脚本家)

それにしても同じ選考委員をやった作家でも、石田衣良氏や有栖川有栖氏などの周囲には、なかなか人が寄ってこないのも栄枯盛衰を感じさせた。
「石田さんも有栖川さんもいい作品を出しているが、映像化されないと、作家は、もうどうしようもないでしょう。今はテレビドラマや映画化されてなんぼ、という評価ですから。今野敏氏が日本推理作家協会の会長になったのも、小説が多数、映像化されて人気を博している面は否定できません」(推理作家)

◆「映像にしやすい作品が受ける時代」に迎合する危険を指摘する池井戸潤氏の真意

そしてそのような映像化される作品が受ける時代において、受賞した呉氏の「道徳の時間」は大阪芸術大学の映像学科出身であり、物語は小学校で公開殺人をした事件が冤罪かどうか、ドキュメンタリーを撮るカメラマンの視点で語られる。
「池井戸氏は、呉氏の受賞に反対していたと公言しています。それは『映像にしやすい作品が受ける時代』に迎合すると危険だと主張しているような気がします」(同)

池井戸氏は選評でこう書く。
『他の選考委員からも指摘があったことだが、文章がよくない。大げさな描写は鼻につくし、誰が話しているかわからない会話にも苛々させられる。さらに、最後に語られる動機に至っては、まったくバカバカしい限りで言葉もない。だが選考会でもっとも問題になったのは主要登場人物の背景である。ここでは詳しく書かないが、これは決して看過できない部分であり、さらにこの小説に通底するキモの部分である。』

しかし、パーティに来ていた脚本家は言う。
「とはいっても、映像化しやすい作品を書く作家が登場すると、池井戸先生自身は困るわけで、本能的にライバルをつぶしたかったのかもね」

太鼓持ちのような各出版社の編集者に囲まれていた池井戸氏は、談笑していたが、記者には、心の底からの笑顔に見えなかった。

会場で出版関係者に囲まれぱなっしの池井戸潤氏(右から二人目)

(鈴木雅久)

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混沌に風穴を空ける新日本キックボクシング!──WINNERS 2015 3rd 報告

8月30日、ディファ有明で行われた新日本キックボクシング協会・治政館ジム主催の「WINNERS 2015 3rd」で会場を沸かせたのは日本バンタム級タイトルマッチを賭けた、トリプルメインイベントの2戦目「瀧澤博人(日本バンタム級王者/ビクトリージム)VS 古岡大八(同級1位/藤本ジム)と、トリプルメインイベントのラスト戦「蘇我英樹(WKBA世界スーパーフェザー級王者・市原ジム)VSペッシーニ・ソーシリラック(元ラジャダムナンスタジアム認定スーパーバンタム級王者)」だろう。

◆瀧澤博人 VS 古岡大八──日本バンタム級タイトルマッチ

瀧澤博人は、古岡大八と過去2戦しており、昨年はダウンの応酬戦だけに不用意に打ち合わず、古岡大八が中に入っての粘っこい蹴りやパンチを仕掛けたいという戦略に付き合わず、距離をとり、長い脚を活かしてのキックで終始、試合をリードし、最終的にヒジで古岡選手のこめかみを切り、離れて観ていても傷の深さがわかる流血でテクニカルノックアウト勝ち。

「古岡選手はよく研究してきていました。けれど僕もチャンピオンなので、負けるわけにはいきません。会長との約束どおりKO勝ちしたので、11月のビクトリージム主催興行では、もうひとつ上のステージで戦わせてください。」と強気のマイク・パフォーマンスを展開した。

瀧澤博人(右)VS 古岡大八(左)(撮影=堀田春樹)

◆蘇我英樹 VS ペッシーニ──日タイ対抗戦

蘇我英樹は、相手の元ラジャダムナン王者の方が一枚、テクニックで上。執拗にフックで、もしくは短いレンジのキックで切り開こうとするも、ペッシーニにミドルキックを食らい、もしくは抱きつかれて逃げられるという歯がゆい展開。リング下から見守る市原ジムの小泉猛会長から「中に入れ」と強烈な檄が飛ぶ。

しかし、わずかな差で蘇我選手は判定負け。元ラジャダムナンスタジアム認定スーパーバンタム級王者の貫禄には勝てなかったというわけだ。

蘇我英樹(左)VS ペッシーニ・ソーシリラック(右)(撮影=堀田春樹)

◆竜誠のパンチとキックは重量感たっぷり──櫓木淳平 VS 竜誠

竜誠(撮影=堀田春樹)

第9試合の「櫓木淳平(日本フェザー級6位/ビクトリージム)VS竜誠(INNOVATIONフェザー級2位/ダイケンジム)」でKO勝ち(3R 1分32秒)した竜誠のマイクパフォーマンスも注目の言葉だった。

のっけから「なかなか強い相手と組ませてもらえない」と映画「ロッキー3」のクラバー・ランクのごとく大口を叩きつつ、「キックボクシングのチャンピオンはたくさんいます。ボクシングとはちがって団体がたくさんあるから偽物のチャンピオンも多いと思うんです。僕は本物のチャンピオンを目指します。そんな中で新日本(キック)の選手は本当に強いので勉強になります。今度、日本フェザー級王者の内田雅之選手(藤本ジム)とぜひやらせてください」と懇願した。

確かに、竜誠のパンチとキックは重量感がたっぷりとあり、キックが放たれるたびに、リングの床がきしむほどの迫力だ。とても3回戦で終わる試合ではもったいない。

「ですが、竜誠はINNOVATIONの選手で、今回は新日本キックボクシング協会との団体交流戦だから、マックメイクの妙で強い相手と当たったものの、今後も望む相手とマックメイクがすぐにできるほど簡単な話ではない。興行としては新日本キックボクシング協会代表の意向もあるだろうし、おそらくつぎの興行も治政館ジムが行う可能性が大で、内田選手が所属する藤本ジムとのマッチメイク交渉がうまくいくかどうかは微妙です」(興行関係者)

竜誠(左)VS 櫓木淳平(右)(撮影=堀田春樹)

新日本キック主催のこの日、客の年齢層は高く、おおよそ30歳~60歳ということろ。
「今日は本格的なファンが来ていると思うね。きちんとしていてマナーも悪くないだろう」とキックボクシング歴20年の中年ファン男性。確かにゴミの分別も、売店での列の作り方も、応援の仕方も慣れたものがあり、応援している相手にも拍手を送るなど、紳士的にマナーをきちんと守っている。

確かにキックボクシングの団体は多い。だがこの日、ディファ有明で本格的なキックボクシングを見たのは僥倖だ。 そして、混沌としたキックボクシング業界に風穴を空けるか、風雲児の竜誠の今後と、新日本キックの殿堂王者手前まで成長した瀧澤博人、毎度の強者との激闘でキック界を沸かす蘇我英樹、今日の試合だけでも話題は多いキックボクシング界の未来に注目したい。

○瀧澤博人ブログ http://ameblo.jp/tendless-hirohito/
○古岡大八ブログ http://ameblo.jp/daihachi-kickboxing/
○蘇我英樹ブログ http://ameblo.jp/sativax/

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」の管理人。

◎不良競馬ライター、30年ぶりに大井競馬場で勝負してみた
◎BLADE.2 JC-55kg──優勝候補は16歳の那須川天心!
◎売り子に視界を遮られ、肝心なプレイを見逃す東京ドームのキャバクラ化
◎川崎中1殺害事件の基層──関東連合を彷彿させる首都圏郊外「半グレ」文化

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孫正義の商いは顧客軽視がヒド過ぎる!──Y!mobile錯誤対応のカオス

携帯電話(PHSを含む)の機種変更や新規契約手続きは年々煩雑さを増している。担当者の業務知識と手際にもよるのだろうけども、下手をすると半日仕事になる。あんなに時間をかけて仕事をしていて作業効率は上がらないし、売り上げにも良い影響はないのではないかと想像していたが、また呆れる事態に直面した。

私はスマートフォンを使っていない。旧来型の電話機能だけを持つ機種を利用している。使用頻度が高いためか、個体差はあるが携帯電話はバッテリーの機能が低下したり、不都合が生じることをこれまで何回か経験してきた。その都度、故障の際には無料で修理が受けられるサービス(月額500円ほど)に加入しているので、余分に修繕費用を支払うことなしに部品交換などの対応を受けてきた。

『孫正義の焦燥』(大西孝弘著:日経BP社2015年6月22日)

◆Y!mobile(旧willcom)顧客対応のカオスにはまって

ところが先日加入しているPHSの請求書に不可思議な点を発見した。私は2年前の5月8日に当時willcom(現在はY!mobile)のPHSを契約した。当時「10分までならば何回どこへ通話しても無料」という料金体系に惹かれたためだ。ところが使用していたPHSは数か月すると充電の際に、手が触れられないほどの熱を持つようになった。明らかな異常だから購入した店舗へ機器を持参し修理の依頼をした。このPHSも通常使用時の故障の際には無料で修理を受けられるサービスに加入していたので、修理の間は代替機をもらい2週間ほどで「修理が出来た」と連絡があったので店舗に赴いた。ちなみにその日は2013年10月21日である。

修理が完了した機器は充電されていなかったので、とり敢えず家に持ち帰り充電を始めた。記憶が定かではないがその最初の充電時か、あるいは次の日の充電時に、またしても最初発生したのと同様機器が触れないほどの高温になる症状が起こった。充電を放置しておけば火災になる懸念もあるほどの熱さだったので、仕方なく再度店舗へ機器を持参し、状態の説明をした。店舗の担当者はそこで充電を試してみたところ、私の申告通りの不具合が発生することを確認し、「この機器では再度お客様にご迷惑をおかけする可能性がありますので、操作性は違いますが違う機種へ無料で変更は如何でしょうか」と提案してきた。

私は暇人だが、willcomの店舗は自宅からかなりの遠距離であり、何度も足を運ぶのは面倒だったので、店舗担当者からの提案を受入れ購入したものとは別の機種へ無料で交換してもらった(はずであった)。これが2013年10月23日だった。

最初の契約時に機器の料金は2年の割賦で契約していた。購入が2013年5月だから今年の5月で支払いは終了するはずだった。ところが6月、7月の請求書にも機器代金の割賦代金が依然記載されている。これはおかしいだろうと思い、購入した販売店へ電話をかけ問い合わせたが「電話でのお問い合わせには『個人情報』の観点から答えられない。直接どこでも良いのでY!mobileの店に行くか、問い合わせ番号で確認してくれ」という答えが返ってきた。

Y!mobileのPHSは使い方によっては非常に安価だが、この会社の接客システムはどう間違えても「まとも」とは言い難い。現在私は月額1500円を払い、国内であればほぼすべての電話番号に時間制限なくかけ放題のプランに加入しているが、指示された「問い合わせ番号」への通話は有料なのだ。機器の操作方法や料金の問い合わせなど携帯電話(PHS)を使っていれば問い合わせる必要が生じるのは当たり前だと思うのだが、店舗に赴かない限り「無料」で一切の問い合わせを行うことが出来ない。こんな不親切な対応があるだろうか。

◆声が枯れるほど徒労が続く契約確認プロセス

しかも、私が機器を購入した店舗の担当者は電話での問い合わせの際に「どこでも良いので」Y!mobileの店へ行けと私に指示したので、最近開店した自宅近くの営業所へ行ったところ「細かい契約の内容は販売した店でないと解らないのでそちらへ行ってください」と店員が言う。おいおい、加入者の情報くらい繋がっている会社のコンピューターで解るんじゃないのか? でなければ、購入店から遠隔地でのトラブルには対応出来ないというのか。私が「会社が一元化して情報を把握していないのか」と聞くと担当者は渋々どこかへ電話をかけだした。

電話をかけた先はY!mobileの情報が集まるセンターだったようで、そこには私の契約日その他の記録が残っていた(当たり前だが)。それによると、私は2013年5月8日に初めての契約を結び、機器は2年の割賦となっていたが、10月21日修理から返還された日に「同型だが新たな」機器をもう1台新規に購入して割賦払いの契約をしたことになっているという。

話がややこしいが、私は動作不良の為に機器を修理に出した。それを受け取りに行った日に「同じ機種をもう1台」新規購入したという記録で、その日から新規の機種分の割賦料金も併せてが引き落とされていたことが判明した。「そんなあほな!」と思わず声を挙げてしまった。1つの電話番号に2台のPHS電話機(しかも同型機)を契約する人間がいるだろうか。利用者にとって何のメリットもないそのような契約を、この「口うるさい」私が受諾するはずがない。旧willcomの事務手続きミスであることは明らかだから、そこで「返金」の手続きをしてくれと要請したが、やはり「契約した店でないと対応が出来ない」と担当者は言う。この会社は同じ社名を名乗っていても同一のサービス を受けられることがない、「類稀(たぐいまれ)」な会社だ。仕方なしに購入した店へ向かった。

その店でまず驚かされたのは「契約書のコピーをお持ちください。弊社は契約書を保管しておりません」と担当者が発言したことだ。「え!なんで契約書を保管しないの?」と聞くと「個人情報保護の観点から」との説明だが、そんなあほな話があるだろうか。契約者には契約書の保管を義務付けるが、Y!mobileは顧客と契約を交わしたらその日のうちに「契約書」をシュレッダーにかけるのだそうだ。なら何のための契約書なのだろう。双方に主張の違いが生じた時に(今回の私のケースもそうだ)会社が契約書を保管していなければ議論にならないじゃないか。そう指摘すると「ではこの壁を契約書ズラーっと並べろと仰るんですか」と突っかかって来る。接客態度も悪ければ、 頭もよろしくない。

私は自宅近くの店舗で受けた説明を再度繰り返し「どう考えてもそちらの入力か処理ミスだから今すぐ返金の手続きを取ってくれ」と再度要請した。ところがまたパソコンに向かってカチャカチャやり始めた兄ちゃんは一向に事情を理解しない。それどころか横の人間が、ろくに調べもしないのに「こういう間違えはありえませんので」と無根拠に断定口調でこちらに非があるような言葉を投げかけてくる。

20分ほど待っただろうか。パソコンを叩いていた人間がようやく事情を理解し始めて「どこかにおかしいところがあるみたいですね」と言い始めた。「どこか」じゃなくて明確に2013年10月21日、修理が終わった機器を引き取りに来た日に「新たな機器を購入している」とする記録がおかしいだろ、と説明し彼らを納得させるのに3時間を要した。

最後に当日店舗にいた人間達では判断を出来ないので、「上司に調べさせ電話で連絡いたします」という言葉を聞く頃には私の声は嗄れていた。

◆顧客無視の「個人情報保護法」曲解も孫流か?

これだけ情報通信技術が行き渡っているのに「個人情報保護法」の誤った理解、いや、この法案自体の誤謬は「契約書」が「個人情報に該当するからその日のうちにシュレッダーにかける」という尋常ならざる業務手順を生んでいる。契約書を残さなくてもコンピューターの中には当然氏名、生年月日、住所などの情報は記録されるだろうから「契約書」をシュレッダーにかける意味は全くない。子供でも分かりそうな簡単な理屈がこの会社(いやこの社会か)では通用しなくなっている。

私は交わしてもいない割賦契約を証明するために「契約書」のコピー(2013年10月21日付)を持ってこいと言われた。ちょっと待ってくれ。交わしていない契約の「契約書」などあるはずがないだろう。無いものを証明することは出来ない。自社のミスを解決するために会社は保管しない「契約書」の保管義務を契約者のみに負われば、私のように「無い契約」の証明など契約者の側からは出来はしない。

携帯電話販売店の求人広告をいたるところで見かける。日々変化するサービス内容や会社の方針に低賃金労働者は苦しめられていることは想像に難くない。しかしだからといって明らかな過払いを2年余り利用者に押し付けておいて、あの対応はないだろう。私的には「もうこれ以上機能の開発や機器の新規発売は要らないから、簡潔、確実な仕事をしてくれ」と孫正義に直訴したくなる。

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「軍事漫談家」井上和彦の下衆い動画が教えてくれた世間「ネトウヨ化」の病巣

テレビ番組、商業新聞からネットの世界まで右派が占領する番組や誌面は腐るほど増殖している。テレビ局勤務の知人は20年来の付き合いだが、数年前から政治や社会の話が通じにくくなっている。いい年をして(年をとったからか)どんどん思考が右傾化しており、最近では世間話をするのも憚られるので、私から彼に連絡を取ることはなくなった。同様の話は身近な人からもしばしば耳にする。「若いころはあんな奴じゃなかったのに。今では田母神俊雄みたいなことをブログに書いている」と評されるテレビ界の人間は少なくないようだ。

大メディアが総右旋回しているのだから、自由闊達(言い換えれば「好き放題」)の言論が飛び交うネットの中では、さらにえげつない情報発信主や番組が乱立している。

◆右派のネット動画をあえて観る「苦行」

人間は仕事上の理由や、自身の知識吸収の必要性を感じなければ、おのれと正反対の意見、いやおのれの主張が嘲笑されたり唾棄される番組を長時間視聴したり読み続けることを選択はしないのではないだろうか。情報収集のため内容をかいつまんでチェックすることぐらいはするけれども、1時間も2時間もダラダラ嘘八百を放言し続ける番組を毎回視聴し続けるのは、精神衛生によろしくない。簡単に言えば「あほらしくて」見ていられない。

私自身もネットで放送されている「右派」の番組を、これまで何度か視聴したことはある。彼らの論点がどこにあるのか。それを知っておかなければ反論ができないだろう、が視聴の理由だった。「チャンネル桜」と名乗る番組を開始から終了まで何度か観たが、視聴の間に溜まるフラストレーションといったら半端ではなかった。ただ収穫はあった。結果的に彼らの主張は番組を何度も観る必要がなかったことが分かったからだ。「論理ではなく感情で、事実はなく希望で彼らの歴史観や世界観は構成されている」ことが理解できた。よって限られた人生の貴重な時間をこれ以上「苦行」のために浪費したくはないし、するつもりもない。

と思っていたが、芸能ニュースに絡めながら「戦争推進法案」を援護したり、反対する市民をボロクソにこき下ろしている「松本佳子のにちよる」というニコニコ動画で配信されている番組の内容があまりにも酷いから一度視聴してみてくれないか、という読者からのリクエストを頂いた。

ニコニコ動画の番組を視聴するためには(番組によるのかもしれないが)、会員登録をしなければいけない。何度か会員登録をしようと試みたのだがうまくいかない。「あなたは『反日』思想の持ち主のため入会できません」のエラーメッセージが返って来る(勿論冗談)。したがって「松本佳子のにちよる」を今のところ視聴できてはいない。直近の番組タイトルは『ショック堀北真希の結婚!!』『軍事漫談家・井上和彦の戦後70年談話』となっている。番組の司会は「チャンネル桜」で何度も顔を見たことがある田母神ガールズの「色希(しき)」だ。

◆「軍事漫談家・井上和彦」はただの「バカ右翼」

雰囲気や評判が怪しいからといって、番組のタイトルだけで内容を決めつけてはいけない。だいたい私は「ショック」であるはずの「堀北真希」という人物さえ知らない人間なのだから。でも「軍事漫談家・井上和彦」の名は過去どこかで目にしたことがある。

井上は今のところWikipediaにとりあげられてはいない。そこまで社会的に影響のある人物とは認知されていないということだろうか。

そこで本人のホームページと幾つかあるYoutubeの映像で井上の主張を聞いてみた。1963年生まれで法政大学社会学部出身の井上は「専門は、軍事・安全保障・外交問題・近現代史。テレビ番組のコメンテーター・キャスターを務めるほか書籍・オピニオン誌の執筆を行う。テレビ番組では歯に衣着せぬ爆裂本音トークで 難解な軍事問題などを分かりやすく解説する。

『たかじんのそこまで言って委員会』(讀賣テレビ)では 「軍事漫談家」の異名を持ち、同番組をはじめとして「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「かんさい情報ネットten!」(讀賣テレビ)など出演番組多数。また「日本文化チャンネル桜」の「防人の道 今日の自衛隊」のキャスターのほか、航空自衛隊幹部学校講師、東北大学大学院非常勤講師、商社シンクタンク部門の主席アナリストも務める。平成25年より「国民の自衛官」(フジサンケイグループ主催、産経新聞社主管、防衛省協力)の選考委員」とホームページ内で自己紹介をしている。

本人は「どうだ!偉いだろう!」と思って記載したのかもしれないが、私に言わせれば被疑者が罪状を自白しているに等しい。とくに関西ファシズムを牽引した「たかじんのそこまで言って委員会」出演を中心としたテレビ、ネット番組の出演歴はその主張を明らかに示している。こやつは単なる「バカ右翼」だ。

◆井上の軍事論が漫談そのものだから「軍事漫談家」ということはよくわかった

貴重な人生の時間を割きたくはないが、1つ位はその証拠を示さねばならないだろう。

これは「チャンネル桜」に出演した際の井上だ。「米中対話」のニュースを取り上げたと思ったら、「中国が納得していない」と勝手な解釈をして「これでいいんです!こういう対話をしてほしい!」と言い放つ。意味わからないなぁ、私には。ああ、そうか。何が何でも「中国」=悪にしないと「軍事漫談家」はつとまらないか。

また、「自衛隊とフィリピン軍の共同訓練」を持ち上げるは「中国が脅威ではないって言うやつが国会にもいるけども頭がおかしいの」だの「馬鹿な奴が原発反対だとか根拠のないこと言ってんの」とのたまう、果ては「沖縄戦追悼式典70周年」を取り上げたニュース紹介の中で翁長雄志知事が安倍政権批判のコメントを読み上げたことに言及し「あなた(翁長知事)が非常に限られた空間の中で作られた、民意と称する『米軍の普天間移設』を論じているけど、日本とアメリカが決めたこと。言ってみれば社長と社長が決めたこと。それを言ってみれば課長クラスの知事が『止めてくれ』って、何言ってるんだて」と言い放つ。真面目に聞いていると、私自身が恥ずかしくなるほどの「沖縄差別」を堂々と展開する。

要するに無茶苦茶なのだ。「中国は脅威」とこの番組で言い放ちながら、別の番組では「中国なんて全然恐くない。武器は全部コピーなんですよ。武器製造の技術が高いのは自動車を作る技術のある国。だから日本の武器は一流です。武器商品市に行くと中国人が写真撮ってるんですよ。中国の武器は全部外側からコピーで作るんです」と仰せになる。

どっちなんだ!と真顔で井上に迫ってはいけない。井上は「軍事漫談家」なのだ。漫談に食って掛かるのは無粋に過ぎる。

芸能ニュースと「右派ネタ」を取り上げる「松本佳子のにちよる」、実は画期的な番組ではないか、と私は内心期待をするようになっている。人畜無害な芸能ニュースと声高に叫ばれる好戦・右派的言動。じつは双方とも「漫談」の域を出ない、ということを井上がその肩書きによって主張し証明してくれているからだ。

問題は「漫談」を真に受けてしまう人々の側だろう。この番組に限らず、大小メディアは「情報商品」として「芸能ニュース」も「戦争」も「原発」も「マイナンバー」も一蓮托生に垂れ流す。あれは「報道」ではなかったのだ。「漫談」と呼ぶのが相応しいということを井上は教えてくれている。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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するな戦争!止めろ再稼働!『NO NUKES voice vol.5』創刊1周年記念特別号!

《ウィークリー理央眼021》戦争法案に反対する若者たち VOL.15 秋田

8月8日(土)、秋田県秋田市で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。
10代~30代の若者で7月に立ち上げた「SPADA(Sprout Peace and Democracy Akita:平和と民主主義を広げる秋田青年の会/スパーダ)」が主催した。若者の呼びかけによるデモは秋田では初めてのことだという。


[動画]青年主催 安保法案反対のデモin秋田 – 2015.8.8 秋田市(3分23秒)

遂に若者デモの波が秋田まで押し寄せ、安保法案に反対するデモが若者によって行なわれることとなった。
過去に3度、秋田市でデモの撮影をしたことがあるが、若者がデモにいるのを見た事はなく、今回の秋田での動きには驚いている。同じ土地に3回行って1人も若い人がいなかったのは秋田ぐらいで、秋田はデモ参加者の年齢が圧倒的に高い土地だ。
失礼を承知で言えば、このデモに参加している若者は多少年齢が高いし人数も少なかった。とはいえ、今までの秋田のデモの光景を考慮すると非常に画期的で、素晴らしい動きだと私は感じている。

これまで「若者デモ」と漠然と言ってきたが、取材を通してその条件を導き出した。以下の3つの条件が満たされていれば「若者デモ」と呼んで差し支えないと私は思っている。
・主催が若者(10代~30代)である
・若者率が参加者の1割以上を占める
・ネットで積極的に告知をしている

これまでのデモの中心的存在である中年が行なうデモとの違いを考えるとこれでいいはずだ。
普段のデモに全く若者がいないような地域でも「若者デモ」と銘打ったデモには少なくとも1割は若者が占めていた。数値的には低いと言わざるを得ないのかもしれないが、この数でも実際の現場としては驚くべき変化があり、もはやビジュアル革命だ。一般的には分かり辛いし、伝わらないかもしれないが、地方のデモでもそれなりの変化が起こっているということだけは覚えておいて欲しい。

シュプレヒコールは秋田のデモとしては珍しいショートコールのみで、しかも楽器が使われていた。その楽器が変わっていて、軽トラの荷台に搭載した和太鼓を叩いてリズムを取っていたのだ。これは、いわばアコースティックサウンドカーだ。車のチョイスも渋いし、なかなか出来ないデモのやり方だと感心した。

今回、デモを撮影していて、赤信号を進もうとしたデモ先頭の横断幕の人に「信号が赤なので止まってくださーい!!」と叫んで私が止めた一幕があった。デモを主催したSPADAは、デモを行なうのが初めてということで色々と不慣れかつスタッフも少なくて、なかなか目が届いていなかったので私が注意した。警備の警察官の指示がない場合、赤信号で止まらなければいけない。
その他、デモ隊がバス停や横断歩道等を塞いでいたりすると市民生活に支障が出たり、デモへの印象が悪くなったりするので、私は撮影中であっても即座にデモ隊を誘導したり注意したりする。良い絵を撮る以上にすべきことがあるという考えだ。「お前は誰だ?」という顔をされるのだが「~だから、~してください」と丁寧に説明しながら誘導をするので、納得して動いてくれる。
本来はデモ参加者の一人一人が注意すべきことなのだが、アピールに夢中だと意識がそちらに行ってしまうのは仕方ないとも言える。

実は、秋田駅前を所管する秋田中央警察署のデモ警備は珍しい方式で、信号無視をしそうになったのはデモ側の問題だけでなく、警察にも問題があると私は思っている。
その警備方法なのだが、デモに直接同行して徒歩で警備・誘導する警察官はおらず、デモ隊の最後尾にパトカー1台だけが付いていく、あとはデモコースの主要な信号機そばに警察官をあらかじめ配置しておき、デモ隊が来たら信号を操作したり、車を誘導したりする、というものだ。デモが通り過ぎた「信号機要員」の警察官は、先回りして次の持ち場に就くか、役目を終え警察署に帰還する。
この方式は、同じ東北地方の山形警察署(※山形県山形市等を所管)でも採用されている。
しかし、秋田市のデモコースは秋田駅東口周辺を円を描くような形で進むので、最初の信号から次の信号までショートカットが可能なのだが、山形市のデモコースは直線なので、次の持ち場へ行く警察官は走ってデモ隊を追い越し次の信号機へ行く必要がある。山形市のデモは制服警察官が全力疾走している姿が見られる珍しいデモだ。
ちなみに、銀座等を所管する警視庁・築地警察署・警備課の「信号機要員」は自転車を使って次の信号機へ移動をしている。自転車移動は比較的ポピュラーなデモ警備の手段である。
山形のお巡りさんにも自転車を使わせてあげて欲しいと彼らの走る姿を見て思う。もしかしたら、冬は雪が積もる地域なので年間を通して使えない自転車は備品として認められないとか、そんなことがあるのかもしれない。
恐らく、警察署には何台かの自転車はあるだろうが、いくら考えても分からないので、次に山形に行ったら事情を聞き、更にはデモ警備での自転車使用を提案してみるつもりだ。

この秋田・山形方式の警備は、警察側からしたら少人数でスムーズにデモを進行させることができるので便利なのだろう。デモ側からしても直接警備する警官がいないのでデモ隊への圧迫感もなく自由に出来て良いはずだ。車道上に警察官がいないので写真も撮りやすい。
しかし、一部の警察官がいない信号では注意しなければならず、中途半端に警察官がいる分、油断してしまい信号無視をしそうになった。
もう自動車免許の講習のようであるが、デモ参加者には「車道を歩いている自覚」を持ってもらうしかないので、場合によってはデモ出発前に車道を歩く事についての注意をしたほうが良いかもしれない。警備スタッフが少ない場合は特に必要な気がする。

「何も言わなければ賛成するのと変わらない」そう叫ぶ、秋田の若者たちは和太鼓と共に立ち上がった。



[2015年8月8日(土)・秋田県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《020》戦争法案に反対する若者たち VOL.14 渋谷
◎《019》戦争法案に反対する若者たち VOL.13 福岡
◎《018》戦争法案に反対する若者たち VOL.12 福島
◎《017》戦争法案に反対する若者たち VOL.11 長崎
◎《016》戦争法案に反対する若者たち VOL.10 津
◎《015》戦争法案に反対する若者たち VOL.9 熊本

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《大学異論42》同志社大学・大麻所持者再逮捕報道の不可解

私は同志社の関係者ではないが、同志社が事件を起こし続けるので取り上げざるを得ない。過日こんなニュースを目にした。

「大学なら警察こないと…」同志社大図書館に大麻持ち込み容疑、卒業生を逮捕 (産経新聞2015年8月31日付)

同志社大学(京都市上京区)今出川キャンパスの図書館で大麻を所持していたとして、京都府警上京署は31日、大麻取締法違反の疑いで、奈良県橿原市内に住む無職の男(25)=窃盗未遂罪で起訴=を再逮捕した。同署によると「吸う目的で持っていた」と容疑を認めているという。
再逮捕容疑は、8月6日午後6時10分ごろ、同キャンパスの図書館で大麻草1袋を所持していたとしている。
同署によると、男が他人のかばんを物色するなど不審な行動をしているのを持ち主の男子学生が見つけ、報告を受けた大学関係者が同署に通報。駆けつけた署員が、男のズボンから大麻を見つけたという。
男は同志社大の卒業生。「大学なら警察官が入ってこないと思った」と供述しているという。

◆「何も盗っていない」被疑者を大学職員はなぜ警察に通報したのか?

この記事は不可思議だ。8月6日に同志社大学図書館で「他人のかばんを物色するなど不審な行動をしている」男を学生が職員に通報し、「何も盗っていないのに」職員が警察に通報をしている。この程度の事で大学職員が警察に通報するものだろうか。この記事通りだとすれば同志社大学職員の感覚はもはや「警察国家」の構成員と言わねばならない。

さらに理解しがたいのは「不審な行動」で通報された男性は「窃盗未遂」で起訴されているが、「8月6日午後6時10分ごろ大麻草1袋」を所持していたことが確認されていることだ。8月6日逮捕時に男性は上京警察で詳細な身体検査を受けて「大麻草1袋所持」が確認されているのであれば、即「大麻取締法」違反でなぜ警察は送検しなかったのか。8月31日になっての再逮捕はいかにも不自然だ。「窃盗未遂」と「大麻取締法違反」では後者の方が明らかに量刑も重いにもかかわらず、逮捕直後には「大麻取締法」違反では起訴されていない。

◆あまりに不可解なので同志社大学広報課に問い合わせてみたら……

不明な点があまりにも多いので、9月4日午前、同志社大学広報課に問い合わせた。

「この事件は産経新聞のみで報じられており(上述の通り)不可思議な点が多いが承知しているか」と聞くと、広報課のハタブ氏は「事件があったことは承知しているが詳細は把握していないので内部で情報を収集する」と約束してくれた。後刻再度問い合わせると広報課の高阪氏が電話に出たので、私は再度「当該被疑者は他人の持ち物を『物色』している(つまり何も取っていない)だけで大学が警察に通報したということか」と質問すると「詳細が分からないので学生支援課に確認します」としばらく電話を保留にされた後、最終的に庶務係長秋田氏に電話が回された。秋田氏によると「自分の鞄から何かを抜き取ろうとした男を発見したので、学生がその男を捕まえて図書館のカウンターに連れてきた」そうだ。「そこで学生と連れてこられた男性に職員が聞き取りを行ったあとに、上京署(110番)へ通報した模様だ」ということだ。

つまり、被疑者はこの時点で「物色する」行為は認定されているものの「何も盗んではいない」のだ。それにもかかわらず図書館の職員は警察に通報をしている。

この取材の中で複数の同志社大学職員に尋ねた。「大学の中では意図的、あるいはそうでなくとも、置き引きや窃盗に該当する事案は多数起こる。図書館から本を無断で持ち帰る人間もいれば、大学の施設・設備に故意で損傷を負わす学生もいる。でも、そのような時に大学が『警察』に解決を求めるだろうか。しかも、今回のケースでは『被疑者』とされる人物は何も盗んでいない。大麻を所持していたのは、たまたま逮捕されたから発覚した付帯的な事実だ。こんな軽いトラブルで『警察』に通報するのは大学として妥当な行為だろうか、『大学の自治』を自ら放棄してはいまいか」

この問に関して名前は挙げないが、ある職員の方は「詳細はわからないが、新聞報道の通りだとすると大学が警察に軽々しく通報するのは『大学の自治』の放棄にあたると言われても仕方ない」と回答された。

◆「大学自治」の大原則が崩壊しつつある

「大学内で起きた問題は大学内で解決する」

これは私の苗字と同じ故人、同志社大学で学友会委員長と京都府学連委員長だった田所伴樹氏が同志社大学学内で、共産党系の学生たちから瀕死のリンチを受け生死の境をさまよった時、入院先の病院で口にした言葉だ。どれほど酷い仕打ちを受けても「大学内の問題は大学内で解決する」この極めて高い哲学を、被害者である田所氏は弱冠22歳にして「学生」として提起した。

かえりみて、今回の同志社大学当局の判断はどうであろうか。複数の職員の方々に取材したが皆さん「現場で何があったか詳細はわかりませんが」と口を濁す。

私は「分からなければ調べて教えて下さい」とお願いするけれども、彼らはその状況を外部に伝えることが禁じられているのか、あるいは調べる熱意がないのか、あいまいで実態が分からない。

◆被疑者以上におかしいのは同志社大学側ではないか?

いいか。こうやって破局への行進は、またしても歩を進めるのだ。誰も悪くない、誰も解らない、誰も責任を取らない。「疑わしい行動をした人間が悪いんじゃないか。それに彼は大麻も持っていたし・・・」との心中の言い訳が聞こえてきそうだ。

違う。断じて違う。学内で暴力事件が起り危機的な状況になっても、学生を守り通すのが大学職員の仕事だ。極端に言えば「学生を支援し守ること」以外に本質的な大学職員の仕事などない。経理も総務も学部事務室も全て学生を支援するために準備された部署だ。

「時代錯誤だ」という批判が既に頭の中で聞こえる。でも私は自分の考え方が間違っているとは全く思わない。

勘違いしているのはこの時代、そして「戦争推進法案」に賛成する学長を引きずりおろす気さえないこの大学のありさまだ。

いささか飛躍が過ぎると思われるかもしれないが、産経新聞の報道が正しければ、被疑者が語った「大学なら警察官が入ってこないと思った」との感覚が被疑者の行為・目的を度外視しても、よほど真っ当な原則に立脚しているように思える。

▼田所敏夫(たどころ としお)
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◎今こそ同志社を<反戦の砦>に! 教職員有志「安保法制を考える緊急集会」開催
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◎同志社の「良心」は「安保法案」賛成の村田晃嗣学長を許すのか?

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《ウィークリー理央眼020》戦争法案に反対する若者たち VOL.14 渋谷

8月2日(日)、東京都渋谷区で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。
主催したのは、SNSやネットを通じて集まった高校生約30名が立ち上げた「T-nsSOWL(ティーンズソウル)」だ。日曜日の渋谷の街を練り歩き、安保法案の反対と選挙権の18歳以上への引き下げの二大テーマについて、同世代への関心を高めるために呼びかけた。
高校生に対しては制服での参加が推奨されたり、スピーチでは「テレビカメラやパソコンの前にいる高校生」に対しての言及もあり、主催者は街を歩く人はもちろんネットでの写真や映像の拡散を明確に意識していた。またSNSでの告知には「#制服デモ」のハッシュダグが用いられ、早い段階から主催と参加者の双方でどのようなデモのビジュアルを作るかが共有されていた。


当日参加した約5,000名の中には大人の姿も多く見られたが、彼らは主催側の意図を理解して多くは後ろの梯団に回って、「先頭を行く子供達、後方を支える大人達」という画作りに積極的に協力した。デモ隊のゴールシーンでは先に到着した高校生たちが大人達を迎えていた。
高校生の呼びかけで生まれた世代間の繋がりを是非とも映像で感じて欲しい。


[動画]戦争法案に反対する渋谷・高校生デモ – 2015.8.2(21分8秒)

このデモを呼びかけた男子高校生は、サウンドカー上からこう言った。

「僕は少し前まで高校生が政治や憲法に興味を持つ事はどこか違和感があると感じていました。
ですが、こうやって活動している中で、僕は思いました。
高校生に政治に関心を持たせないようにしているのは社会の空気だと。
だから今、学校では政治の話はタブーになりつつあります。
早ければ来年の夏、選挙権が18歳に引き下げられます。
今こそ高校生が政治について関心を持たなければならないんじゃないんでしょうか。
このままでは『まあ選挙権を取ったから、とりま選挙に行ってみるけど、
どこに入れていいか分からないし、大きいし自民党でいいや』と、
そういう票を伸ばす結果になってしまい、
そういう人が増えれば増えるほど、権力者が喜ぶのです。
何故かって、それは何も考えずにただ票を入れてくれるんだから知らぬ間に、
暮らしづらい社会になってしまうんじゃないかと、僕は思います。
だから、僕らは今回高校生に興味を持ってもらうため、
高校生が参加しやすいデモを企画し、実行しました。
このデモをきっかけに、今日来てくれている高校生や、
今渋谷の街を歩いている高校生や、今テレビカメラやパソコンの前にいる高校生に、
『僕らが有権者である』っていうことと、
僕らが今後、安倍みたいな独裁者を止め、歯止めする、
そういう人達になるんだという重要さとチャンスを少しでも感じてもらいたいなと思います」

このスピーチを聞けば、彼らがしっかり考えて行動を起こしたことが充分に分かると思う。
しかも、相当に勇気を出して、人前に立つことを決めたはずである。それは「最初の一歩を踏み出す不安」よりも「安倍政権が国民に抱かせる不安」の方が遥かに大きいから、全国各地で若者たちの反対の声が上がっているのだろう。

高校生から老人まで、ありとあらゆる世代がこの法案に反対の声を上げている。それが今の日本だ。政権は反対の声を聞け。


[2015年8月2日(日)・東京都]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
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同志社「良心」の凋落──育鵬社採択を「適切」と開き直る同志社香里中学滝教頭

 

転落は減速を知らない。本コラムで既に取り上げてきた育鵬社の教科書を同志社大学の付属校である同志社香里中学が採択することを決めた。以下やや長いが内容が重要であるのでこのニュースを報じた『CHRISTIAN TODAY』(2015年9月3日)の全文を引用する。

同志社香里中学(大阪府寝屋川市)は、2016年度以降に使用する歴史と公民の教科書として、それぞれ育鵬社発行の教科書を採択した。大阪府が8月28日発表した。「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)の元幹部らが執筆に加わっている育鵬社の教科書は、歴史に関する記述について議論もあり、一部の地域では採択やり直しを求める要請なども出ている。育鵬社によると、私立学校の16年度教科書採択状況はまだ全て出そろっていないが、キリスト教系の学校で同社の教科書採択が決まったのは、同志社香里中が初めてだという。

同志社香里中はこれまで、歴史と公民の教科書は帝国書院のものを使用してきた。16年度に、新たに育鵬社の教科書を使用する生徒は240人。滝英次教頭は、「教科書採択の年(である今年)に、教科、また学校として、文科省の検定教科書の中から、いろんな議論を踏まえた上で慎重に選定した」と話している。

育鵬社の教科書『新しい日本の歴史』と『新しいみんなの公民』は、元つくる会
のメンバーらによる日本教育再生機構が組織した「改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会」(教科書改善の会)の関係者らが執筆・監修している。育鵬社は、フジサンケイグループの出版社である扶桑社の教科書出版部門を独立させた出版社で、扶桑社時代を含め、中学校の歴史、公民の教科書が検定に合格し発行されるのは今回で4回目。一方、つくる会は自由社から独自に教科書を出している。

育鵬社の教科書については、日本国憲法が連合軍総司令部(GHQ)に強要されたものだとする、いわゆる「押し付け憲法論」に沿った内容になっていることや、太平洋戦争の沖縄戦における住民の集団自決について、日本軍の強制性についての記述を避けているなど、さまざまな指摘がある。

一方、育鵬社の教科書の編集会議座長である伊藤隆・東京大学名誉教授(歴史)、川上和久・明治学院大学教授(公民)は、広報誌『育鵬社通信 虹』(2015年4月号)での共同メッセージで、「戦後70年の間には、教育の世界にも不毛なイデオロギーが持ち込まれた時期がありました。こうした一面的な物の見方を排し、生徒が真に学ぶ意欲を高め、多面的・多角的思考ができる人材となり、自らの郷土に貢献し、ひいては世界で活躍できるようになることを願い編集しました」などと述べている。『CHRISTIAN TODAY』(2015年9月3日) (※文字強調は引用者)

学校法人同志社には系列の中学校として「同志社中学校」、「同志社女子中学校」、「同志社国際中学校」があるが、その中で今のところ「同志社香里中学」だけが育鵬社の教科書採択を決めたようだ。

◆「教科書が変わったら教育内容が変わると思っていらっしゃるんですか?」と開き直る滝教頭

そこで上記記事に登場する同志社香里中学の滝教頭に電話で実情を聞いてみた。私が育鵬社の教科書には多くの問題や史実の誤りがあり、キリスト教系の学校の教科書と皇国史観は相いれないのではないか」と問うと「教科書選定は学校内で適切に行われた。文科省の検定を通った教科書の内容を精査し決定した」という。

「この教科書採択にあたり校内の社会の先生などから反対はなかったのか」の質問には「それは学校内のことなのでお答えできません」とかなり強気で答える。

「昨年までは帝国出版の教科書を利用されていたが、育鵬社の教科書とは内容に大きな差がある。育鵬社の教科書がキリスト教系、しかも新島襄が開いた学校で採択されることを問題と思わないか」と聞くと、[太字→]「不適当とは思わない。教科書が変わったら教育内容が変わると思っていらっしゃるんですか?」[←太字]と逆に開き直られてしまった。滝教頭にはとりつくしまもない。問い合わせや講義の電話対応に手慣れている。この学校に民主的なプロセスなど無いだろうと想像させるに十分な「失礼」な応対だった。

◆幸福の科学学園と並んだ同志社香里──育鵬社教科書を採択した私立中の顔ぶれ

今年は4年に1度の次年以降使用する教科書を中学校が選定する年にあたる。大阪市をはじめ都立の中高一貫校など公立校でも育鵬社教科書の採択が進行している。じわじわと歴史修正主義の水位は上がってくるばかりだ。

それにしても、「あの」同志社系列中学での採択は驚嘆に値する。ちなみに前回(2011年)の採択時、私立中学で育鵬社の教科書を採択したのは以下の学校である。

《歴史》(12校)
国学院大学栃木、幸福の科学学園、樹徳、麗澤、福井工業大学附属福井、麗澤瑞浪、津田学園、皇學館、浪速、開星、岡山学芸館清秀、岡山理科大附属

《公民》 (11校)
国学院大学栃木、幸福の科学学園、麗澤、福井工業大学附属福井、麗澤瑞浪、津田学園、皇學館、浪速、清風、開星、岡山学芸館清秀

私立学校は各々の建学の精神に基づいて教育方針を決めればよい。だから「幸福の科学学園」が育鵬社の教科書を使うのは別に驚くに値しないし、独自の教育理念を持つ麗澤や、神道を建学の精神にしている皇学館といった学校が採択の中心であったのはむしろ自然である。しかし他の学校は(こういっては失礼だが)清風を除いてそれほど際立った存在の学校ではない。

このラインナップの中には、有名総合大学の付属中学の名前はない。国学院は多くの系列校を持っているが、採択したのは栃木だけだ。その中に今回「同志社香里」の名称が名誉にも加わるのだ。

◆同志社が「リベラリズム」を捨て「翼賛学校法人」へ独走する時代

学長村田晃嗣が衆議院特別委員会公聴会で「戦争推進法案」賛成を表明した大学を中心とするこの学校法人は、先人が築いてきた「リベラリズム」の歴史を完全に捨て去り、大手有名私学の中では「翼賛学校法人」として独走している。

系列中学の「同志社中学校」では村田の国会発言後、いち早く辞任を求める声明を出すなど良心的な教職員の方々が頑張っている。今日の電話取材に応じてくれた同志社中学の先生は「正直びっくりしました。同志社中学ではそのような動きはありませんし、考えられません。全く酷い時代ですね」とため息を漏らしていた。

「同志社香里中学校」の蛮行は、キリスト教系学校として「全国初」の最悪選択を行った恥ずべき学校として歴史に名を残すだろう。教育機関が「確信的」に犯した罪は金輪際消えることがない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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