新型コロナに襲われて、興行が激減したキックボクシングの2020年を回顧する!

◆2月28日、興業の中止・延期が始まった

世界中が凍り付いた新型コロナウィルス蔓延。日本においては2月26日に安倍首相(当時)が、スポーツや文化に関するイベントの中止や延期を要請しました。プロボクシングはJBC(一般財団法人日本ボクシングコミッション)より、翌日には28日からの3月31日までの興行を中止または延期とし、各プロモーターに通達しました。

クラスターが発生したルンピニースタジアム(画像は2015年撮影)

キックボクシングは統一管轄機関がないため、自粛要請を受け入れない事態もあり、当初は各イベントによって対応が分かれました。中止が長引く中、8月半ばから観衆50パーセント以下の制限と会場入口に消毒剤の設置、主催者とマスコミ関係者は会場に入る際もコロナ抗体簡易検査や検温が実施され、リングサイド関係者はマスクとフェイスシールド着用が義務付けられる処置を決行。これらは昨年末には誰もが想像し得なかった初体験。規制がやや緩い団体もありますが、この体制は延々と続いています。

これで何とか興行再開となったものの、興行収益は激減。その後はクラウドファンディングや、有料生配信という体制も増えていきました。

石毛慎也はコロナで防衛戦出来ずに返上か(写真は2019年11月28日の獲得時)

これで国内は何とか興行は続くものの、困ったのが日本人ムエタイ殿堂チャンピオン。タイでは3月6日のルンピニースタジアムで集団感染が発生し、タイ政府は3月10日以降、スタジアムやジムの閉鎖に踏み切りました。

2019年11月28日に、現地で日本人9人目の殿堂王座、ラジャダムナンスタジアム・ミドル級王座獲得となった石毛慎也(ライラプス東京北星)の場合、戴冠後初の試合をノンタイトル戦ながら3月15日、ラジャダムナンスタジアムにて予定されていましたが突如中止。

5月に予定されていた初防衛戦も開催見込みが無くなり、興行権を持つプロモーター(シェフブンタム氏)がラジャダムナンスタジアムを離れた為、石毛慎也はこのまま王座返上となる見込みという。

タイは実質軍事政権と言われ、こういう緊急事態の際には統制が取れて規制厳しく、その効果で感染者激減に伴い、7月4日にはオムノーイスタジアムで無観客興行が始まり、ラジャダムナンスタジアムも続いて15日から無観客興行が暫く続きましたが、ルンピニースタジアムは集団感染発生地でもあり、延々閉鎖が続いています。
その後も感染者小康状態が続き、平常に戻りつつあったタイでしたが、12月に入ると22日までにサムット・サコーン県の海産物市場で再びコロナウィルス集団感染が起こったため、政府は再び厳戒態勢。高リスク地域を封鎖した模様。

ムエタイ興行も23日から再び中止に陥った様子です。3月の時は厳戒態勢で感染者が激減した効果もあるので今後もその効果が期待されます。

本来のラジャダムナンスタジアム。ギャンブラーが居てこそ盛り上がる
藤本会長の勇姿。勝次は伊原信一氏のもとで藤本ジムを引き継いだ(2016年12月11日)

◆5月5日、キックボクシング創生期からの最古参、藤本勲会長永眠

コロナに関係なく、今年の一番印象深いのは、5月5日に78歳で永眠された藤本ジム会長の藤本勲氏。経歴はすでに何度か掲載しているので省きますが、1966年に日本初のキックボクシングジムとしてスタートした目黒ジムは1998年に藤本勲氏がその伝統を受継ぎ、その後も多くのチャンピオンを誕生させてきましたが、数年前から患った多臓器の病が悪化し、前年12月8日には勇退式を行ない、その後もジムには顔を出す程度でしたが、やがて継続困難となり、2020年(令和2年)1月30日をもって閉鎖されていました。

前身の野口ジムからの、下目黒の聖地を閉鎖することには、その後継者がいなかったことはまた別事情があり、所属していたチャンピオンと主なランカーはそれぞれが選ぶジムに移り試合出場を果たしています。創生期を知る藤本氏、「もっと話を聞いておけばよかった」「また食事にお誘いしたかった」等、我々から見ればやり残したこと多く、その存在感は改めて大きかったと失望感が漂いました。

◆キック界は「打倒!那須川天心」を中心に回っている

キックボクシング界の中心人物、那須川天心(2016年12月5日)

プロボクシングでは井上尚弥が中心、キックボクシング系では那須川天心が中心に回ったのは今年だけではなく、ここ数年続いていますが、格闘技界の構造もかなり変わってきたもので、今に始まったことではないものの、K-1、RIZIN、RISE、KNOCK OUT等のビッグマッチを興すイベント興行会社が徐々に増えつつある時代です。

そこで話題の強者が集約されたトーナメント戦で頂点を極めることが定着。その中のひとつに那須川天心に挑戦する為のトーナメントも行われている現状。そういうイベントに呼ばれるが為のアグレッシブな試合と、目立つ発言を起こし話題を集めた選手が出場、注目されるというのが今の時代でしょう。

◆既存の協会、連盟といった団体の存在感

今後、長き歴史を持つ各団体も存続していくことでしょう。しかしここでチャンピオンになってもすぐ返上する選手が多く、 “元チャンピオン”の肩書でも、そこから落ちることなく通用するキックボクシング界。その先に選手が目指すK-1、RIZIN、RISE、KNOCK OUT等があると、既存団体はもうすでに日本タイトルとは言えないローカルタイトルに成り下がっている状況でもあります。

さらには分裂を繰り返し乱立するより、フリーになった方がいいというジムが現れるのもこの時代でしょう。その既存の各団体も、今年はコロナウィルス蔓延による活動が制限された年であり変化は少なかったものの、今後コロナが収束に向かうならば、2021年はまた各団体の在り方に変化が見られるかもしれません。本来あるべき姿が協会や連盟という団体。そこに権威が増すことも各団体が今後、目指さなければならない頂点でしょう。

ビッグイベントは音響、照明、ゲストまで豪華に演出される大舞台

◆11月19日、格闘技振興議員連盟が発足 2021年はどうなるか?

2015年にスポーツ庁が設立し、2020年11月19日には超党派で「格闘技(プロレス・総合格闘技等)振興議員連盟」が発足しました。https://sp.njpw.jp/270525名声有るお方からの理想論としても、「統括するコミッションができたらいい」という発言が出て、それは10年前なら夢物語でも、今後何らかの形で進展するかもしれないのが2021年からの10年間かもしれません。

まずコロナウィルス蔓延が収束に向かわねば興行が儘ならず、ジム運営も規制が掛かれば競技そのものが成り立たなくなるので、2021年はただひたすら以前のような興行が行なえることを目指し、選手が安心して練習と戦いの場が与えられることが先決されるでしょう。

有料生配信、実況・解説は自前の選手とマッチメーカーという新たな挑戦(2020年12月12日)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

安倍晋三を逮捕せよ! 自民のアベ切りの背後に、菅首相の思惑 横山茂彦

◆総理の犯罪 ── 経緯

このかんの経緯を確認しておこう。

一昨日、安倍元総理事務所の政治資金規正法違反について、東京地検特捜部は第一公設秘書配川博之(61)の略式起訴に踏みきった(罰金100万円)。この公設秘書は辞職したという(24日安倍会見)。そして事務所の最高責任者である安倍晋三の起訴は、ついに見送られた。

検察による任意の取り調べに対して「わたしは知らなかった」「秘書がやったことなんです」「秘書が勝手にやっていた」(元総理)という、およそ自己責任のない抗弁が、わが国の政界ではまかりとおるのだ。あれほど何度も(118回)確認を求められたのに、ウソをつきとおした人物を第一秘書を雇っていたこと自体、政権の最高責任者にはあるまじき事態である。

かくして、明らかな公職選挙法違反(寄付=買収行為)であるにもかかわらず、検察の方針は安倍元総理に忖度した格好になったわけだ。一説によると、黒川検事長(当時)の定年延長で、検察人事に介入した安倍への意趣返しと見られることで、地検特捜部には安倍起訴に躊躇があったという。

その黒川元検事長は、賭けマージャンの一件で検察審査会が「起訴相当」との議決となった。起訴猶予処分となっていたが、市民感覚では許すまじということであろう。このさい元検事長には後学のためにも、臭いメシを食べることをお勧めしたい。


◎[参考動画]【ノーカット】安倍前総理 「桜を見る会」で記者会見(テレビ東京 2020年12月24日)

◆参加費補填(選挙民買収)は5600万円か?

いっぽう、補填額にも異論が出ている。5年間にわたり、800万円もの参加費補填とされているが、その額は5600万円にもおよぶとの指摘があるのだ。これは安倍を刑事告発した泉沢章弁護士らによるものだ(12月21日共同通信)。

すなわち、告発状を提出した泉沢章弁護士ら(1000人の弁護士)は、今回は15~19年分を対象とし、「補填は一切ないという安倍氏の国会答弁は虚偽だったことが明確になった。幕引きを許すべきではない」としている。ようするに、幕引き出来ないのだ。

第一秘書を人身御供的に辞職と罰金刑に終わらせても、安倍晋三が刑事訴追される余地を残している(検察審査会)ことにおいて、積年の政権私物化の罪業が追及されなければならない。

世論はもとより、マスコミも安倍訴追には積極的だ。政権寄りと評価されてきた八代英輝(TBSひるおび、元裁判官弁護士)ですら、「無罪相当でも、起訴して疑惑を問うことが必要ですよ」「嫌疑なしではなく嫌疑不十分であれば、立件できる証拠が足りないということ。国民に知らせる意味でも起訴すべきだ」「なぜ秘書にだけしか確認されていないのか。これだけの問題になっていることを、というところも含め、ご自身の口で語っていただきたいと思います」というありさまだ。


◎[参考動画]桜前夜祭で安倍前総理が陳謝“説明”は尽くされた?(ANN 2020年12月24日)

◆総選挙の年に、自民を悩ます安倍訴追

かつて、陸山会事件で政治資金規正法違反の共謀に問われた民主党の小沢一郎幹事長(当時)は2010年2月に不起訴となったが、その後に地獄が待っていた。小沢氏を告発した市民団体がこの審査に不服を訴え、4月には「起訴相当」の議決が出ているのだ。検察の再捜査後、同年5月に再び不起訴となるも、10月には検察審査会が2度目の起訴相当の議決を出し、翌年1月に小沢氏は強制起訴されたのだった。

来年は総選挙の年である。元総理の犯罪をめぐって、何度も検察審査会がひらかれ、そのうち一度や二度は起訴相当の決定がなされるはずだ。悪の所業の報いとはいえ、安倍のみならず自民党にとっても地獄のような年になると予告しておこう。


◎[参考動画]小沢氏無罪判決から一夜 再び党内抗争の兆し(ANN 2010年4月27日)

◆安倍の謝罪と弁明

いっぽう、国会の場で118回にわたり虚偽答弁を重ねてきたことは、刑事処分とは別物である。国会での虚偽答弁は、いわば国民に対してウソをついてきたことにほかならないからだ。

衆議院調査局によれば「安倍事務所の関与はない(参加者が支払った)」が70回、ホテルからの「明細書はない」が20回、そして「補填はしていない」が28回だという。

虚偽答弁問題の拡散に、さすがに自民党も安倍元総理への事情聴取に応じざるを得ない趨勢となり、25日の衆議院議運理事会での弁明(答弁に事実ではないことがあった、との弁明)となったものだ。

安倍の政策には全面的に賛意をしめす橋下徹は、関西テレビの番組で「議員辞職せざるをえない」「国会の場であれほどのウソがまかり通ったのだから、辞職しなければ国会が成立しない」「議員や大臣がウソばかりつくのでは、国権の最高機関が地に堕ちる」「ホテル側に電話一本いれれば、確認できていた話」と口をきわめて、安倍の居直りともいえる態度を批判した。これこそ正論であろう。


◎[参考動画]桜を見る会 安倍氏の国会答弁を振り返る(朝日新聞 2020年12月22日)

◆菅総理も同罪である

この「謝罪」を受けて、国会(予算委員会)の場で答弁をせまられるのは菅現総理である。

過去の国会答弁では、野党の「(菅)官房長官の答弁も虚偽答弁になるんですよ」という追及に、

「ドン!(答弁席のテーブルを叩く)わたしの答弁が、なぜ虚偽答弁なのですか?」と気色ばみ、さらにこう断言したのだ。

「わたしの答弁は総理の答弁で、(安倍)総理の答弁は正しい!」

いや、元総理が認めたとおり、答弁は虚偽だったのだ。相応の責任を取ってもらう以外にない。24日段階では「総理の言ったとおりを答弁した」「国民には申し訳ないが、他の政治家の事務所の話でもあり……」などと、開き直りの「謝罪」が行なわれたのだった。自分がどこで発言をしたのか、このトホホ総理はまるでわかっていないのだ。

そのうえで、桜を見る会の疑惑(総理が犯罪の看板に使われたなど)について、再調査するか、という質問には「国会できちんとした質疑答弁が行なわれた」ことを理由に、拒否したのである。虚偽の答弁がなされたことを、つい今しがた謝罪しておきながら、またも居直るのである。国会答弁ではまたもやトホホな答弁、秘書官メモにたよる光景が予想される。

そしてもうひとつ、今回のことで菅総理が狙っているものを指摘しておきたい。すなわち、Go Toキャンペーン中断で二階派の反発を買い、相対的に孤立化を深めている菅総理にとって、安倍晋三の再登板の画策をここで断っておきたいのだ。

その意味で桜を見る会疑惑は、政権基盤の脆弱な菅総理にとって両刃の刃でもあるのだ。みずからも傷つきながら、安倍再登板の芽をなくす。今回の安倍の弁明よりも、年明け国会(1月18日)での菅総理の安部への責任なすりつけという、醜怪なふるまいこそ見ものだと指摘しておこう。

◎[参考動画]「桜を見る会」で菅総理を追及 衆院予算委(テレビ東京 2020年11月25日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他
渾身の一冊!『一九七〇年 端境期の時代』(紙の爆弾12月号増刊)
『NO NUKES voice』Vol.26 小出裕章さん×樋口英明さん×水戸喜世子さん《特別鼎談》原子力裁判を問う 司法は原発を止められるか

12・18釜ヶ崎住民訴訟報告 南海電鉄の橋脚に「鉄骨」は入っていなかった!

◆鉄骨の入っていない橋脚の存在が明らかに! 南海電鉄は安全なのか?

12月18日、大阪地裁(森鍵一裁判長)で釜ヶ崎の住民訴訟が行われた。この裁判では、あいりん総合センター(以下、センター)に入っていた西成労働福祉センターとあいりん職安の仮庁舎を建てた南海電鉄高架下の安全性や、南海電鉄の傘下である辰村建設と随意契約したことの是非などを争っている。

大勢の労働者が集まり、昼間野宿者が休息する、毎日数十万人が利用する南海電鉄の耐震性は大丈夫なのか?
南海電鉄高架下、仮庁舎エリアの北側部分は、橋脚に鋼板をまく耐震補強工事が実施されている

高速道路の橋脚が倒壊するなど未曽有の被害を出した1995年阪神淡路大震災のあと、近畿運輸局は各鉄道会社に対して、既存のRC(鉄筋コンクリート)柱に緊急耐震補強措置を取るよう求めた。南海電鉄は、難波駅や今宮戎駅周辺で、橋脚に鋼板を巻き付ける耐震補強工事を実施、今年に入り仮庁舎エリアの北側萩ノ茶屋駅周辺や、南側新今宮駅周辺などでも同様の工事を実施してきた。しかし何故か、この工事が仮庁舎エリアでは行われていなかった。これについて南海電鉄は裁判で「このエリアはRC柱ではなく、SRC(鉄筋鉄骨コンクリート)柱であるため、緊急耐震補強の対象外だ」と反論し、橋脚の中央に鉄骨が入るSRC柱のイラストを証拠提出していた。

しかし、10月9日、住民訴訟の原告の仲間が専門業者に依頼し、センター仮庁舎の北側エントランスの橋脚6本の非破壊検査を行ったところ、「鉄骨反応は確認できない」との調査結果が報告された。

センターの解体・建て替えは「耐震性に問題がある」として始まったが、そのため仮移転した南海電鉄高架下の橋脚に、南海電鉄が「入っている」と豪語した鉄骨が入っていないとは?!高架下の仮庁舎には毎日大勢の労働者が出入りし、昼間段ボールを敷き寝ている人もいるし、職員も大勢働いている。その上を走行する南海電鉄には、1日数十万人もの利用者がいる。センターの耐震性が問題なら、仮庁舎が入る南海電鉄の耐震性も問題にすべきではないのか!

前回の裁判で原告は、「鉄骨反応は確認できない」とした非破壊検査の調査報告を裁判所に証拠提出し、裁判長も被告の大阪府に「事実を明らかにせよ」と要求していた。

そうして迎えた18日の裁判で、南海電鉄が提出してきたのが、80数年前の南海電鉄建設時の図面らしきものだった。そこで大阪府と南海電鉄は「鉄骨が入っている」とした従来の主張をくつがえし、一部の橋脚には鉄骨は入っていないこと、しかし「(せんだん破壊先行型ではなく)曲げ破壊先行型である」と主張を変えてきた。

南海電鉄高架下の西成労働福祉センター仮庁舎北側入口の橋脚2本に鉄骨が入ってないことが明らかになった

◆税金を使って無駄な引き延ばしを行った南海電鉄と大阪府

この結論を引き出すまでに、何回裁判を開廷してきたことか? どれだけのお金(税金)を費やしてきたことか?これまで南海電鉄は、コロコロ主張を変え、裁判を長引かせ、大阪府もきちんと調査、指導できないままできた。裁判で、原告弁護団の武村二三夫弁護士は、被告弁護団に「南海の主張がころころかわっているが、きちんと確認していないではないか」と厳しく非難した。森鍵裁判長も「曲げ破壊先行型だから、大丈夫というわけではなく、その根拠を示しなさい」と要求した。

実は、この裁判の数日前、仮庁舎の問題の橋脚の「破壊検査」(橋脚に穴を開けて中を確認する)が行われていた。大阪府が行ったか、南海電鉄が行ったかはわからない。中に鉄骨が入っていたかどうか、南海電鉄が裁判で提出した証拠のように、鉄筋の中心部に鉄骨が入っていたかどうかも含めて調査結果を明らかにすべきである。

破壊検査で穴を開け中を検査した跡が残る、南海電鉄高架下の橋脚
「大阪府敗訴」のビラ

◆地元のひとたちを大切にするまちづくりを!

11月4日、中日本高速道路は耐震補強工事で、鉄筋が8本不足するなどの施工不良が判明したとして、工事のやり直しとともに、工事を発注した大島産業に賠償請求している。本来大阪府も、南海電鉄に賠償請求を求める立場なのに、これまでまともに調査を要求してなかったどころか、センターを解体したいがために、なんとかごまかし仮移転を強行してきた。センターを早急に解体したい大阪府と、大阪府の税金で賄われる仮庁舎建設費用でガッポリ儲けたい南海電鉄の利害が相互に合致したためたろう。それもこれも大阪維新の会が進める「まちづくり」で、新今宮駅前の一等地をきれいで広大な更地を確保するためだ。

識者、専門家、地元のNPO団体、労働組合、市民団体、町内会らが集まる同会議で、この土地をどう使うか検討されている。しかし、もともとこの町に住む日雇い労働者、生活保護、年金などで生活する人たち、野宿者らの生活を最優先に考えられているのだろうか? インバウンド頼みで一時的に賑わい儲けても、新型コロナの感染拡大などの非常事態に一気に衰退してしまうようなまちづくりでは、もともといた労働者らの暮らしは守れない。釜ケ崎の持つ魅力を最大限に引き出すまちづくりこそが、今、問われているのだ。

◆「一等地」の確保を最優先する開発主義

先日、大阪市立の高校21校を大阪府に移管する条例案が府議会で可決した。移管時期は2022年4月で、これにより1500億円の資産価値をもつ大阪市の学校や土地などが大阪府に無償譲渡されることになる。大阪都構想の住民投票に負けた大阪維新は、その後もこうしてあの手この手で大阪市から金をむしりとろうとしている。JR新今宮駅前の広大な「一等地」を奪おうとする大阪維新の「西成特区構想」もその1つだ。下のチラシにあるイラストを見てほしい。凸凹のセンターを「耐震性に問題がある」として解体・建て替えようとしているが、更に使い勝手を良くするため、L字内に建つ第二住宅まで解体してどかそうとしている。そこは耐震性に問題はないのに、しかも税金を使って。
 
◆釜ケ崎を破壊していく大阪維新の「成長を止めるな」

南海電鉄を挟んでセンターの反対側に出来たインバウンド向けのおしゃれなホテルは早々と閉鎖された

先日、神戸大学准教授の原口剛さんを講師に学習会を行った。テーマは「開発主義の暴力を解体するために~反五輪、反万博、反ジェントリフィケーション」。2002年小泉内閣によって制定された「都市再生特別措置法」により全国で都市再生特区がつくられ、開発されていく。

重要なのは五輪、万博などメガイベントのために土地の開発があるのではなく、まずは土地の確保が先行的に行われていることだ。2020東京五輪や2025大阪万博ほか様々なメガイベントは、そうした開発を正当化・加速させるために強行されていく。

大阪維新の会は、新今宮駅前のきれいな台形の「一等地」を何が何でも手にいれたいがために、センター周辺の野宿者を立ち退かせようとした。しかし大阪府が提訴した土地明渡断交仮処分は、12月1日、大阪地裁(内藤裕之裁判長)によって却下され、その後大阪府・吉村知事は期限までに異議申し立て出来ず、決定は確定した(本訴は係争中、次回裁判は、来年2月9日午後14時30分より、大阪地裁202号法廷)。住民訴訟でも、大阪府と南海電鉄は嘘をつきとおすことができない事態に追い込まれている。決して気を抜かず、今後も闘っていこう!大阪維新のなりふり構わぬ、「成長を止めるな」という開発主義を解体するために!

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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コロナを災害指定し、生活者を救え! ── れいわ新選組の経済政策を再考する

◆経済政策優先のリベラル派

巷はGo To トラベル中止をめぐって大騒ぎである。今年冬から春にかけての新型コロナウイルス感染第一波では、政府は緊急事態宣言を出して外出・営業自粛を呼びかけた。

しかし政府は、自粛による損失補償をごく一部に限り、多くの人々が経済破綻した。その失政に対する世の中の“空気”を感じ取ったのか、表向きは「経済のことを考えてます」と示すための策がGo To トラベルだったのかもしれない。

大規模な自然災害が今後何年も続くといえるのだから、ここは大規模な財政出動で生活を補償して乗り切るしかないだろう。

こうした基本の必要性を改めて痛感したのは、アメリカ大統領選挙の動きを見てだった。経済活動の制限をしても感染拡大防止優先を主張する民主党バイデン候補に対し、コロナ対策を軽視し経済優先を明らかにしていたのはトランプ大統領だった。

しかし、この両者の差はコロナ対策に限定されるわけではなく、トランプ氏が当選した前回の大統領選においても明らかだった。

単純化しすぎかもしれないが、経済的苦境にあえぐ労働者階級(特に白人労働者層)に対して、リベラル派は「実利」(仕事とカネと生活)を与えられず、むしろ右派の方が経済活性化により生活保障をわずかながら推進させた。

振り返って日本。リベラル派から左派までを主な支持基盤とする政治勢力で、全面的に経済を出した「れいわ新選組」(以下「新選組」)は、「実利」を主要政策の上位にした点で、それまでのリベラル派新党とは明らかに違う。


◎[参考動画]みんなに毎月10万円を配り続けたら国は破綻するか?(れいわ新選組 2020年5月8日)

昨年(2019年)の旗揚げ3ヶ月後の参院選で緊急八策を全面に掲げて新選組はキャンペーンを重ねた

消費税廃止、最低賃金1500円政府補償、奨学金徳政令などが主柱である。

同党発足時は、山本太郎代表がかねてから強く主張して原発廃止などをスローガンにせず、ほとんど経済だけに特化して世論運動を始めたとき、

「なぜ政党名に元号を使うのか!」
「彼が大切にしてきた原発廃止をまっさきに掲げないのはがっかり」
「憲法問題はどうか……」

とリベラル派の中で批判的に見る人も少なくなかった。


◎[参考動画]東京は手遅れ? (れいわ新選組 2020年5月20日)

◆Go to“トラブル”からGo to 消費税廃止へ
 
そして参院選から2か月余り経ち、消費税が8%から10%へ増税されたことにより、昨年末には、リーマンショックを上回るほどの経済的被害が生じた。

そこにコロナ禍が襲い掛かり、多くの人々の生活が脅かされている。今こそ消費税廃止と財政出動による生活補償が必要だ。

新選組のコロナ緊急政策は、昨年の経済八策をベースに、①消費税廃止、②コロナ収束まで一人当たり毎月10万円給付、③コロナを災害指定にする。などが柱だ。

結党時から最大の政策担っている消費税廃止は、突然物価が10%下がり続けることと同じで、シンプルな即効性がある。この恒常的大幅減税で生き延びる個人や事業主により社会経済の再生がしやすくなる。

一丁目一番地の消費税廃止に加え、同党のコロナ対策の骨子のうち、毎月一人当たり10万円給付と災害指定について、どのような考えに基づいているか見てみよう。

一人当たり10万円の給付をコロナ収束まで続ける政策はどうか。問題は財源だが、政府には通貨発行権があるから事態が収束するまでは金を出せ、というのが新選組の基本的考え方だ。

山本太郎代表は、10万円給付の根拠としてインフレ率2%までの財政出同出動はまったく問題ないとしている。

この2%とは、インフレ率が2%までならば政府の債務が増えても大丈夫なラインといえる。この数字は、平成25年(2013年)1月の政府と日銀とで確認されたもの。

参議院調査情報担当室のシミュレーションによると、一人当たり毎月10万円を1年間給付した場合、人口を1億2000万人で計算すると144兆円の財政出動が必要になり、インフレ率は1.215%。

3年続けると1.809%で4年目は1.751%になり、その後は下がる。

月10万円ならインフレ率2%には達しないというのが、新選組の主張だ。たしかに、消費税が廃止されれば物価が10%も下がり、なおかつ月10万円あれば、コロナで倒産廃業した事業主や職を失った労働者は、生活は苦しくても飢餓状態にはならないだろう。


◎[参考動画]【コロナを災害指定せよ!! 2分Ver..】2020年6月29日 自由が丘街宣ダイジェスト(れいわ新選組 2020年7月3日)

◆コロナを災害指定したら家と生活費が補償される可能性

さらに一歩進めて、コロナを災害指定すると、生活者にどのような恩恵があるのか。

れいわ新選組のホームページによると、次のようなことが考えられる。

第1に、災害対策基本法60条3項により、外出禁止が可能になる。加えて63条1項により、当該地域への立ち入りを禁止できるので、いわゆるロックダウンが事実上可能になる。

第2に、そうなれば生活が破綻するので十分な補償が不可欠だ。そのために災害救助法4条を適用。この条文では、仮設住宅の供与、食料飲料水などの供給、生業に必要な資金等の給与もしくは貸与などが定められている。

このような「コロナ災害指定」の考え方の元には、1995年に起きた阪神淡路大震災の経験がある。災害復興制度の充実に取り組んできた兵庫県の弁護士がSNSに災害指定の意見を投稿したことから反響を呼んだのだ。

災害や復興関連の法制度を適用すれば、コロナで生活基盤を破壊された人々を救うことが可能なのである。しかも、新たな法改正は必要なく既存の法律を適用できる。

消費税廃止や、一人ひとりに月10万円給付やコロナ災害指定のほうが、Go to トラベルならぬ“Go to トラブル”よりは、確実ではないだろうか。


◎[参考動画]【街宣】 豊橋駅東口(木)(れいわ新選組 2020年12月17日)

▼林 克明(はやし・まさあき)
 
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他
『NO NUKES voice』Vol.26 小出裕章さん×樋口英明さん×水戸喜世子さん《特別鼎談》原子力裁判を問う 司法は原発を止められるか

《2020年冤罪問題トップ5》免田栄さん逝去、西山美香さん再審無罪、今市事件冤罪確定、1位は……

筆者はこれまで当欄で、様々な冤罪の話題について書いてきた。2020年を振り返り、個人的な視点から今年の冤罪の重要な話題トップ5を選定した。

まず5位。やはり、これを挙げておかないわけにはいかないだろう。先日報道があったばかりの免田栄さんの逝去である。

死刑囚としては初めて再審で無罪を勝ち取った免田さん。死刑囚が再審無罪になった前例がない状況の中、独房で絶望することなく無実を訴え続け、その訴えを司法に認めさせたのは偉業だと言っていい。筆者は5年ほど前、免田さんに取材を申し込んだことがあるが、免田さんの体調がすぐれず、実現しなかった。それは残念だが、享年95歳だから大往生だろう。

第4位は、米子市のラブホテル支配人殺害事件の第2次裁判員裁判で石田美実さんが無期懲役の判決を受けたことだ。

石田さんは2016年に鳥取地裁の裁判員裁判で懲役18年の判決を受けたのち、翌2017年に広島高裁松江支部の控訴審で逆転無罪を勝ち取った。しかし検察が最高裁に上告したところ、最高裁に無罪判決を破棄され、その後に広島高裁で審理を鳥取地裁に差し戻す判決を受け、またイチから裁判員裁判をやり直す羽目になっていた。

この事件はすでに当欄で何度か紹介しているので、ここでは事件の内容には触れない。しかし、一般市民が一度受けた無罪判決を取り消され、延々と被告人の立場に留め置かれるのは、検察官も上訴ができる日本の裁判制度特有の問題だ。来年1月末に発売される雑誌『冤罪File』2021年冬号で第2次裁判員裁判の詳細を報告しているので、関心のある方は参照して頂きたい。

第3位は、2005年に栃木県旧今市市で小1の女児が殺害された「今市事件」で、勝又拓哉さんの無期懲役判決が確定したことだ。

この事件は冤罪を疑う声が非常に多いが、勝又さんが実際に冤罪であり、無実であることは当欄で繰り返し報告してきた通りだ。

支援者が多数存在し、勝又さんへのサポート体制は万全だが、勝又さんのお母さんは体調が良くないこともあり、少しでも早く勝又さんの濡れ衣が晴れて欲しい。

第2位は、やはり当欄で繰り返し取り上げてきた湖東記念病院事件の再審で、西山美香さんが無罪判決を受けたことだ。

過去記事を検索してみたところ、筆者が当欄で初めて西山さんが冤罪であることを伝えたのは、2012年のことだった。あれからもう8年になるのか……と感慨深いものがある。

もっとも、西山さんの恋心につけ込み、虚偽の自白をさせて冤罪に貶めた滋賀県警の山本誠刑事がその後、県警内で出世しているなど、この事件にはまだ放置できない問題が色々ある。今後も事件に関する動きが何かあれば、当欄で報告したいと思う。

実家でくつろぐ西山さん。今年、ついに再審無罪を勝ち取った


◎[参考動画]“事件性の証拠ない”元看護助手に無罪(テレビ東京 2020年3月31日)

そして最後に第1位は…。

これはもう完全に個人的な思いから、あの有名冤罪事件・布川事件の桜井昌司さんが国と県に約1億9000万円の国家賠償を請求した訴訟の控訴審が12月15日、東京高裁で結審したことにさせて頂いた。

一審判決では国と県が約7600万円の国家賠償を命じられているが、2度目の判決は来年6月25日に出るという。

2014年、広島であった冤罪被害者・守大助さんの支援者集会で話す桜井さん

なぜ、この事件を1位に取り上げたかというと、桜井さんが現在、ガンで闘病中で、余命宣告も受けているからだ。ご本人は回復に向かっていると公言しているが、予断を許さない状況であることは間違いない。桜井さんは自分自身の冤罪を晴らすだけでなく、様々な冤罪被害者に手を差し伸べてきた人で、筆者自身、取材でお世話になったこともある。

来年6月の判決が、長年冤罪闘ってきた「生きたレジェンド」桜井さんの努力に報いるものになって欲しいと願い、この件を第1位とした。


◎[参考動画]『塀の中の白い花~ほんとに何もやってません』(FMたちかわ/84.4MHz)で2020/11/2と11/16の2回に渡って放送した、桜井昌司さんへのインタビュー全編(冤罪犠牲者の会)

◎片岡健が選んだ《2020年冤罪問題トップ5》と関連記事

【1】布川事件と桜井昌司さん
・冤罪のない社会をめざして 布川事件冤罪被害者、桜井昌司さんインタビュー
〈1〉(2019年1月16日尾崎美代子)
〈2〉(2019年1月18日尾崎美代子)
〈3〉(2019年1月22日尾崎美代子)
・布川事件冤罪コンビ「ショージとタカオ」のショージさん、大阪トークライブ──シャバに出てきて23年、「桜井昌司」で本当に良かった!
〈前編〉(2020年4月14日尾崎美代子)
〈後編〉(2020年4月17日尾崎美代子)

【2】湖東記念病院事件と西山美香さん
・刑事への好意につけこまれた女性冤罪被害者が2度目の再審請求(2012年10月8日 片岡健)
・滋賀患者死亡事件 西山美香さんを冤罪に貶めた滋賀県警・山本誠刑事の余罪(2018年2月16日片岡健)
・湖東記念病院事件・再審開始決定を勝ち取った井戸謙一弁護士の思想と行動(2019年3月21日田所敏夫)
・中日新聞が報じた西山美香さんの作文疑惑調書、元凶はやはり山本誠刑事か(2019年6月12日片岡健)
・組織ぐるみで西山美香さんを「殺人犯」に仕立てた滋賀県警は責任をとれ! 湖東記念病院事件の冤罪被害者・西山美香さんに1日も早く無罪判決を!(2019年6月20日尾崎美代子)
・《湖東記念病院事件》冤罪を作った滋賀県警・山本誠刑事 法廷で自白していた不当捜査への「上司と検事」の関与(2020年4月29日片岡健)

【3】今市事件と勝又拓哉さん
・今市女児殺害事件をめぐる冤罪疑惑──見過ごされた自白調書の明白なウソ(2017年4月6日片岡健)
・《殺人現場探訪08》今市女児殺害事件 自白の「嘘」を如実に示すわいせつ現場(2017年7月24日片岡健)
・栃木県警の「今市事件証拠遺棄」を否定した栃木県行政不服審査会の不見識(2018年4月2日片岡健)
・《殺人事件秘話13》今市事件:隠ぺいされた被告人以外の人物の「不審車両」(2019年1月23日片岡健)
・検証・冤罪疑われる今市事件の自白調書
【上】嘘を見抜くポイントは漫画と服装(2019年7月30日片岡健)
【中】自宅と現場を見れば嘘は一目瞭然(2019年8月31日片岡健)
【下】犯行の詳細を語れなかった被告人(2019年9月6日片岡健)
・冤罪説根強い今市事件 上告棄却の勝又拓哉氏が手記に綴った「再審無罪への決意」(2020年3月27日片岡健)

【4】米子市ラブホテル支配人殺害事件と石田美実さん
・無罪判決を受けた被告人が勾留される理不尽 ―― 米子ラブホテル殺害事件(2018年12月27日)

【5】免田事件と免田栄さん

◎[カテゴリー]片岡 健 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=26
◎[カテゴリー]司法と冤罪 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=13

▼片岡健(かたおか けん)
ノンフィクションライター。原作を手がけた『マンガ「獄中面会物語」』(画・塚原洋一、笠倉出版社)がネット書店で配信中。分冊版の最新第14話では、会津美里町夫婦殺人事件の高橋明彦を取り上げている。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

眞子内親王は「国民」ではない! ── 生身の人間を「象徴」にする矛盾こそが、天皇制を崩壊させる 横山茂彦

11月の秋篠宮(皇嗣殿下)が「長女(眞子内親王)の結婚について、それを認めるのは憲法にもあり、親としても認めるべき」という発言によって、眞子内親王と小室圭氏の婚姻は事実上、皇室によって認められた。

と同時に、週刊誌による小室母子バッシングが百家争鳴といったありさまだ。小室家はけしからん、眞子さま(300円カレー、旧型パソコン)にくらべても贅沢(キャビアのパスタ)をしている。ほかにも900万円の借金がある。三菱東京UFJ銀行勤務時代に、書類の紛失を女性行員の責任にした。はては、眞子内親王の「秘密」を知っている(暴露する可能性がある)などと。

ここにこそ、生身の個人を「象徴」にいただく憲法第1条、戦後天皇制の矛盾が露呈し始めたというべきであろう。

かつて、眞子内親王と小室圭氏の婚約話が俎上にのぼったとき、宮内庁は以下の祝辞を、そのホームページに掲載したものだ。

「小室圭氏は、眞子内親王殿下のご結婚の相手にふさわしい誠に立派な方であり、本日お二方のご婚約がご内定になりましたことは、私どもにとりましても喜びに堪えないところでございます。この度のご婚約ご内定に当たり、お二方の末永いお幸せをお祈りいたします」

ところが今、宮内庁は定例記者会見で、小室圭氏に対して異例の「苦言」を呈しているのだ(西村泰彦長官、12月10日)。

「ご結婚に向けて説明をしていくことにより、批判に対して答えていけることになるのではないか」「説明責任を果たすべき方が果たしていくことが極めて重要だ」

この発言自体は、秋篠宮が11月の会見で、「実際に結婚するという段階になったら、もちろん、今までの経緯とかそういうことも含めてきちんと話すということは、私は大事なことだと思っています」と小室氏に説明を求めたことを、補完するものといえよう。

しかし、2017年の婚約内定まで、5年間という長い春をへてきた二人にとって、母親の借金問題(400万円)が、青天の霹靂であったことは自明であろう。本人ではなく母親の過去をほじくり出され、借金を背負った家庭の子は結婚できない、ということにほかならない。

いや、皇族の結婚は「普通の家庭」の問題ではない。と、天皇制を護持する人々は言う。そうであるならば、皇族は国民ではなく、したがって恋愛の自由はないのだと明言すればよいではないか。自民党の天皇制護持派は、実際にそう明言している。


◎[参考動画]宮内庁長官「小室さん側が説明責任果たすべき」(ANN 2020年12月10日)

◆やはり国民ではない皇族

こんどは自民党、伊吹文明元衆議院議長の「苦言」である。

「(秋篠宮の)父親としての娘に対する愛情と、皇嗣という者のお子様である者にかかってくるノブレス・オブリージュ(高貴な者の義務)としての行動と両方の間の、相剋のような、つらい立場に皇嗣殿下(秋篠宮)はあられるんだなと思った」
などと、秋篠宮の「苦渋」をおもんぱかりながら。かえす刀で、小室氏に「苦言」を呈するのだ。

「小室さんは週刊誌にいろいろ書かれる前に、やはり皇嗣殿下がおっしゃってるようなご説明を国民にしっかりとされて、そして国民の祝福の上に、ご結婚にならないといけないんじゃないか」

さらに伊吹文明は、法律論に踏み込んで、二人の結婚そのものに疑義をとなえる。
「国民の要件を定めている法律からすると、皇族方は、人間であられて、そして、大和民族・日本民族の1人であられて、さらに、日本国と日本国民の統合の象徴というお立場であるが、法律的には日本国民ではあられない」

皇族は日本人であるが、国民ではないと明言するのだ。だが、皇族が国民ではないことと、国民としての権利がないことは、果たして同じなのだろうか。

それは投票権や納税の義務などという、付加的な権利義務関係ではない。人間としての生存権にかかる婚姻。すなわち人間の尊厳にかかわることなのである。それをもって、憲法は国民の権利を「基本的人権」として、第一義に謳っているのだ。国民ではない者は、それでは人間ではないのか、と問い返してみることだ。

「眞子さまと小室圭さんの結婚等について、結婚は両性の合意であるとか、幸福の追求は基本的な権利であるとかいうことをマスコミがいろいろ書いているが、法的にはちょっと違う」

よくぞ言った、と評価しておこう。皇族には人間的な尊厳や基本的人権はない、と言っているのにひとしい。伊吹文明において、皇族は人間ではないのだ。


◎[参考動画]伊吹元衆院議長が小室圭さんに異例の苦言(FNN 2020年12月3日)

◆納采の儀と1億4000万円問題

けっきょく、秋篠宮の「婚約と結婚はちがいますから」という暗喩によって、宮内庁および自民党は小室家にたいして、謝金をチャラにしないと1億4000万円の一時金はとんでもない、と世論に訴えているのだ。国民的な合意が得られない、税金を使うのだから。という理屈で、象徴天皇制の矛盾を取り繕う。国民が祝福しない(と思う人によって)、その婚姻は不可能とされる。そんな人道にもとる不合理、人権侵害があるだろうか?

これまでに、皇籍離脱による一時金1億5000万円前後が、支払われなかった前例はない。じつは上記の秋篠宮発言も、単に婚約(納采の儀)と結婚という段階を追ってのものである。そこを見誤ると、とんでもない事態が生起するだろう。

眞子内親王において自主的に皇籍離脱して、恋のためにすべてを捨てる。ふたりが、いわば駆け落ち的な婚姻に至った場合、もはや皇室典範も象徴天皇制もガタガタになってしまう。一時金が宙に浮くはずはないのだから、祝福しない国民は皇室に「No!」を突き付けるのだろうか。今回の婚約問題は、そこまで根底的な内容をはらんでいるのだ。

かつて、大正天皇は女官(実質的な側室)を遠ざけ、昭和天皇は女官制度そのものを廃止した。そして平成天皇は「自由恋愛形式」の婚姻をして、教育も核家族的なもの(宮中にて皇子傅育)を採用した。秋篠宮に至っては、ほぼ出来ちゃった婚で、兄よりも先に結婚という暴挙。令和天皇もまた、自分の意志を貫いてエリート官僚と結婚した。男性皇族においては三笠宮寬仁親王のごとく、皇族としての制約を嫌って皇籍離脱発言した人物もいる。

いまや皇室の民主化・自由化が果てしなく旧来の天皇制を掘り崩し、新たな別物に変貌してゆくことを、国民的な議論をつうじて実現できる可能性が高まってきたと、結論しておこう。


◎[参考動画]「皇女」とは…皇室研究者に聞く(テレビ東京 2020年12月11日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他
渾身の一冊!『一九七〇年 端境期の時代』(紙の爆弾12月号増刊)
鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』

《スクープ》宮内庁職員も困惑する皇室結婚騒動の本音!

皇室の某女性が民間人の男性と結婚したいと、意向を明らかにしている。それに関しては一部報道で皇室から離脱するにあたり「持参金1億5,000万円」との報道もなされている。

そこで、一番身近にいる公務員である宮内庁へその内情を電話で取材した。

◆正直に回答してくれる宮内庁職員

宮内庁 はい、こちら宮内庁でございます。
佐野  恐れ入ります。今、ご結婚を予定されていらっしゃいます何とか様の一時金についてお尋ねをしたいのですが。
宮内庁 ちょっとお待ちくださいませ。
宮内庁 宮内庁でございます。
佐野  宮内庁のどちらの部署の方になりますでしょうか?
宮内庁 宮内庁の秘書課になりますが。
佐野  お名前をお尋ねしてもよろしゅうございますでしょうか。
宮内庁 ○○○○と言います。
佐野  恐れ入ります。教えていただきたいのですが、これは報道で見たのですけれども、今結婚を予定されている……
宮内庁 眞子内親王殿下と小室圭さんですね。
佐野  持参金というか……
宮内庁 皇室を離れるにあたっての一時金でしょうかね。
佐野  はい。それが一億いくら……
宮内庁 これは実際には皇室を離れることが決まった段階で、皇室経済会議というものが開かれましてそれで額も確定されるというような状況です。
佐野  前にですね……
宮内庁 黒田清子様ですね。
佐野  その時はおいくら…
宮内庁 1億5,000万円です。要は、皇族費という定額が3,050万円というものがあって、あとは皇族の身分を離れる方がどういうお立場かによって額が前後する。例えば、内親王なのか簡単に言えば女王なのか、天皇への近さによって違うわけです。
佐野  遠ければ、皇族でももっと額の安い方もいらっしゃる。
宮内庁 一番近い所では高円宮内庁様の三女絢子女王という方が守谷慧という方とご結婚されましたけれど、その方の時にはもっと少ない。あの方は女王というお立場なんですね。内親王ではなくて女王。これは天皇からの近さですね、何親等という、天皇から四親等以下(三親等以下の言い間違い?:取材者)は王、女王とするということがあるものですから。
佐野  それが適応されるのは何親等までなんですか。
宮内庁 皇族はみんな適応されます。そもそも皇族であれば皇族を離れる時には。皇族を離れるというのは基本女性皇族ですよね。


◎[参考動画]眞子さま「結婚」再延期を発表 小室圭さんと意思は変わらず(FNN 2020/11/13)

◆皇室でLGBTが発生したら!? 快活に笑って答えてもらった

佐野  仮に皇族で同性愛の方がいたら、皇族を離れるとなったら今の時代、ややこしね。
宮内庁 ああ、今は想定されてないんで。そういうことが実際にあれば考えなきゃいけないんでしょうけれど。
佐野  皇族で同性愛になったらちょっと困るね、宮内庁さんもね。
宮内庁 ハハハ、宮内庁なのか政府なのか。
佐野  ヨーロッパとかではあるじゃないですか、結構。
宮内庁 そうですね。普通にあるって言ったらおかしいですけれどね。
佐野  普通にあるって言ったらおかしいけれど、ないわけじゃないから。その時になって、この人と結婚認めるか認めないかといったら、またややこしい話になりますね。
宮内庁 そうですね。

◆祝福されない結婚と認識している宮内庁職員

佐野  ごめんなさい。お尋ねしたかったのはですね、額は結婚が決まった後に皇室経済会議で決まる。いずれにしてもそれは歳費から出されるわけですね。
宮内庁 国家予算ですね。
佐野  その国家予算から支出される根拠というのは皇室典範なんですか?
宮内庁 皇室経済法です。皇室経済法があって経済法施行法というのがあります。
佐野  週刊誌程度の知識しかないんですけれど、こういう人にお金を持っていってもいいのかしら。
宮内庁 こういう前例というのも変ですけれど、普通は皆さん祝福されてですね……
佐野  だいたい言っては何ですけれど、家柄もいい方が、宮内庁さんとも齟齬なくですね。
宮内庁 良好な関係とでも言いますかね。
佐野  皆さんが「よかったですね」というようなことが。
宮内庁 はい。
佐野  しかも一時金の中には「品位を保つために」という文言がありますね。
宮内庁 皇族であった者が皇族を離れたあとに品位保持のためにとなっています。
佐野  法律の文言なんですね。これは普通の人間にはちょっと理解しにくい概念ですね。
宮内庁 それはあるかもしれませんね。
佐野  貧乏人でも頑張ってる人もいっぱいいるわけですよね。その人たちに品位があるかないかということはわからないですけれども、品位を付けようと思ったらお金が必要だということが根拠になってお金が出るわけでしょ。ということは、お金がない人間は品位が保てないということの逆説的な意味も包含しますよね。
宮内庁 うーん。
佐野  品位があろうがなかろうが、もう別にいいんじゃないですか?結婚されたあと。
宮内庁 ふふふ、まぁそうですけれど。私がどうのこうのと言うことじゃないですけれど。
佐野  私は一納税者として申し上げているんですけれども、彼ら彼女らの品位のために私の税金が使われるということにはちょっとこれ違和感を感じざるを得ないですよね。
宮内庁 なるほど。はい。


◎[参考動画]秋篠宮さま 眞子さまの結婚「認める」(ANN 2020/11/30)

◆1億5,000万円出費への疑問に、同意する!宮内庁職員

佐野  だって結婚後の品位を保つために税金で保証してもらえる人なんてどこにもいないでしょ、皇族以外は。
宮内庁 そうですね。
佐野  私は品位のない人間だと自分で思ってますから、もうちょっと品位のある人間になりたいなと日々努力しています。こういうケースで、額がどうかはわからないけれど、1億5,000万って庶民にとっては小さな額ではない。今、電話でご担当いただいている方にしたってね。
宮内庁 当然当然そうです、はい。
佐野  で相手はあれでしょ、お母ちゃんが訳わからない、髪の毛を茶色く染めて、金を詐取してるかどうかわからないような、そういう相手の所に税金持ってくかもわからないという話でしょ、簡単に言ったら。
宮内庁 はい。
佐野  これ、宮内庁さんも困ってるんじゃないの?
宮内庁 私なんかはこうやって皆さんからの意見を伺って、上にあげている立場なんですが、実際に今回のことについての宮内庁の公式な見解は何なんですかと言われても、あんまりはっきり出てこないというか、われわれも聞かされていない。
佐野  出せないからでしょう。
宮内庁 まぁそういうことなんでしょうかね。
佐野  そんなに簡単に認められると逆に肩透かしなんですけれど(笑)。

◆「正直言ってうちの役所ってわかりにくいんです」

宮内庁 正直言ってうちの役所ってそういうところがあってなかなかわかりにくいんですね、こういうことが起きても。われわれこうやって電話を受けていますけれども、なかなか質問に答えられる材料がないんですよね、正直に言いましてね。
佐野  ちなみに宮内庁の職員の方というのは、公務員試験を受けて?
宮内庁 はい、公務員試験を受けてです。
佐野  一般の省庁ですと自分が志望したり、省庁の方から引っ張られたりということがあると思うんですけれど。
宮内庁 合格者名簿に名前が載って、自分が志望したり役所から声が掛かったりということです。
佐野  やはり他の省庁と同じなんですね。
宮内庁 私なんかは昔でいう初級試験、今だったら三種ですかね。だいたいうちの役所は変わっているところは、課長とか部長とか上の人たちは各省庁からの出向の方が多くて、プロパーの人は少ないんです。ちょっと特異な所ですよね。天皇陛下とかのお側付きの侍従とかっていうのも各省庁からの出向となっています。
佐野  侍従という方とか宮内庁内にいらっしゃる方は公務員の方もいらっしゃるけど、そうじゃなくてずっと家柄で継いでらっしゃる方もいらっしゃるでしょ。
宮内庁 そういう人は今はもうあまりいないですね。侍従っていうのは特別職で。
佐野  侍従はそうだけれども、侍従ではなくてお側でお世話なさる方、特に女性でお世話なさる方というのは?

◆縁故採用はいまでもある!

宮内庁 例えば侍従に対応する女性の女官というのがおりまして、この辺は縁故採用みたいな、女官は侍従と同じで特別職なんですね。あと、奥の女性職員、こういう職名は今はあまり外に対しては使わないんですが、女嬬とか雑仕とかこういう職員が身の回りのお部屋のお掃除をしたり洗濯をしたりという人はいますね。
佐野  そういう方は一般の試験で入ってくるわけではなく、ずっとお家柄で繋がっていたりとか。
宮内庁 いや、今はそうでもないですよね。あとは宮内庁中三殿という皇室の宮内庁中祭祀を司っている場所があるんです。これは皇室の私的な行為として今はなさっているのですが、そこに勤めている、例えば掌典であるとか女性の内掌典という、こういう人は公務員ではなくて、例えば天皇家のポケットマネーというんでしょうか、内廷費というのが年額で支給されているのですが、そういうところからその人たちの給与は支払われている。
佐野  そうですね。それは言ってみたら、向こう側の世界みたいなところがあるわけですよね。
宮内庁 そうですね。ちょっとわれわれとは全く違う世界です。
佐野  知りえないと言うことはないけれど、ちょっと違うルールで動いているところがあるわけですよね。
宮内庁 はい、そうです。
佐野  ありがとうございます。1億5,000万円というのはまだ決まってはいないけれども……。
宮内庁 これまでの慣例でだいたいこのくらいとか、たしか1億4千万円と書いている紙面もあったと思いますけれども、それは何かというと清子様の1割引きで1億4千万みたいなことを言われている。
佐野  1割引き、魚屋の閉店直前の割引みたいな言い方やね。
宮内庁 へへへへへ、それはですね、清子様は結婚する時に、平成の、ですから今の上皇様のお子様だった。眞子さまは秋篠宮内庁様のお子様であって、今の天皇は伯父様であって、そこらへんの違いで1割引きになるんじゃなかという、そういう判断です。
佐野  私は強い批判をしようと思ってお電話しているわけではなくて、教えていただこうと思ってお電話しているのですが、結構うるさい電話が掛かってくるんじゃないでしょうか。
宮内庁 はい。さっきもお宅様がおっしゃったように、小室さんの側にいろいろクリアにならない部分がありまして、こういう方の所に国民が納得していないのにどうしても結婚したいって言うんだったら「もう一時金は辞退してください」とか、「一切皇室とか関わらないでください」とか、そういう意見多いですよね。
佐野  そちらの方がむしろ多いということですね。
宮内庁 はい。ああいうお宅が皇室と縁続きになるのは許せないです、とか。要するにこれはずうっと親戚関係みたいなものが続くことになるわけですからね。
佐野  皇室を離れても小室さんという方は、言い方が悪いですが、利用できますもんね。
宮内庁 そうなんです、そういうことも言われるんです。眞子さまが何かの広告塔みたいなことにされて利用されて、金儲けの種にされるんじゃないのかとかですね。
佐野  少なくとも血族関係ではそういう関係ができるわけですからね。
宮内庁 これまでいろいろ週刊誌で言われてることを見てるととても許せないという方が多いですね。
佐野  今たくさん広報でお電話とか苦情とかいろいろあると思うんですけれども、受けていらっしゃって、なかなかお尋ねするのは難しいと思いますが、率直なところどうお考えになりますか、この件につきまして。
宮内庁 これはちょっと私の私見を申し上げるのはちょっとなんとも……。
佐野  お話伺っていると、だいぶ「かなわないな」というようなニュアンスが伝わってくるんですけれど。
宮内庁 これは仕事ですから。これも仕方ないとは思いますけれど、電話くださる方の中にも、単純に怒ってこられるというよりは、皇室のことを慮って、例えば眞子さまのことを心配してとか、そういう方もいらっしゃるので、それは真摯にお伺いしなきゃいけないなと思います。そういう感じはします。
佐野  ただその相手の方が週刊誌だけでなくて、実際金銭問題がまだクリアにならないから、それははっきりしてくださいというようなことを誰がおっしゃっていたのかな。
宮内庁 それは宮内庁の長官ですね。
佐野  宮内庁の長官が言うということは、宮内庁も疑念があるということでしょう。ああいうようなことをおっしゃることはないでしょう。
宮内庁 そういうものを少しでもクリアにしなきゃいけなんじゃないかということだったと私は推測するんですが、長官がおっしゃったことなんでね。
佐野  困ってらっしゃるというのは事実でしょう。大昔の明仁さんが美智子さんと結婚した時には、あんまりそういう話はなかったと思うんですね。
宮内庁 「みっちーブーム」とか。
佐野  テレビが売れたり、そういう感覚は今の話にはなさそうな気がするんですけれども。
宮内庁 それはそういう感じではとてもないと思います。われわれは職員で仕事ですから、淡々とご意見はご意見で伺って、というところですね。
佐野  やっぱり否定的な意見を言ってくる人が多いということですね。
宮内庁 はい、その方が多いです。
佐野  ありがとうございます。お忙しい中お邪魔いたしました。失礼いたします。
宮内庁 いえ、失礼いたします。

誠に誠実かつ正直ご回答いただけた、当該職員に頭の下がる思いである。質疑の内容については読者のご判断に委ねたい。


◎[参考動画]眞子さまと小室圭さん お二人のこれまで(ANN 2020/11/30)

▼佐野 宇(さの・さかい) http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=34

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

《書評》『NO NUKES voice』26号 松岡利康他「ふたたび、さらば反原連!」と富岡幸一郎×板坂剛の対談「三島死後五〇年、核と大衆の今」を読む

『紙の爆弾』も『NO NUKES voice』も、ほぼ毎回紹介記事を書かせていただいているが、提灯記事を書いても仕方がないので、すこしばかり批評を。なお、全体のコンテンツなどは、12月11日付の松岡代表の記事でお読みください。

 
『NO NUKES voice』Vol.26 《総力特集》2021年・大震災から10年 今こそ原点に還り〈原発なき社会〉の実現を

今号は、松岡利康&『NO NUKES voice』編集委員会有志の「ふたたび、さらば反原連! 反原連の『活動休止』について」と富岡幸一郎・板坂剛の対談「三島死後五〇年、核と大衆の今」がならび、ややきな臭い誌面になっている。くわえて、わたしの「追悼、中曽根康弘」、三上治の「政局もの」という具合に、反原発運動誌にしては暴露ものっぽい雰囲気だ。

運動誌の制約は、日時や場所が多少ちがっても、記事のテンションや論調がまったく同じになってしまうところにある。いまも出ている新左翼の機関紙を読めば一目瞭然だが、20年前の、いや30年も40年前の紙面とほとんど違いがない、意地のような「一貫性」がそこにある。これが運動誌の宿命であり、持続する運動の強さに担保されたものだ。

そのいっぽうでマンネリ化が避けられず、飽きられやすい誌面ともいえる。その意味では『NO NUKES voice』も、編集委員会の企画にかける苦労はひとしおではないだろう。

◆記事のおもしろさとは?

暴露雑誌も運動誌も、けっきょくはファクト(事実)の新鮮さ。あるいは解説のおもしろさ、言いかえれば文章のおもしろさだ。

たとえば新聞記事は事件の「事実」を挙げて、その「原因」「理由」を解説する。わかりやすさがその身上ということになる。したがって、事実ではない憶測や主張は極力ひかえられ、正確さが問われるのだ。新聞記事は、だから総じて面白くない。日々の情報をもとめる読者に向けて、見出しは公平性、解説はニュートラルなもの、一般的な社会常識に裏付けられたものが必要とされるのだ。

これに対して、週刊誌は見出しで誘う。新聞やネットニュースの速報性には敵わないが、事件を深堀することで読者の興味をあおる。そして文章においても、新聞記事とはぎゃくの方法を採ることになる。事実ではなく、憶測から入るのだ。事実ではなく、疑惑から入るのだ。文章構成をちょうど逆にしてしまえば、新聞記事と雑誌記事は似たようなものになる。

じっさいに、わたしが実話誌時代に先輩から教えられたことを紹介しておこう。ある事実をもとに、それが総理大臣の親しい人物の女性スキャンダルだったら、見出しは「驚愕の事実! 総理官邸で乱交パーティーか?」ということになる。女性スキャンダルにまみれた人物と総理の関係を書きたて、いかに総理の周辺にスキャンダラスな雰囲気があり、あたかも総理官邸でそのスキャンダルが起きたかのごとく、そしてそれが乱交パーティーではないかという噂をあおる。その噂は「情報筋」のものとされ、最後に事実(他誌の先行記事=多くの場合週刊誌)がそれを裏付ける。

わずかな煙で、あたかも大火災が起きたかのように書き立てるのだ。これをやったら新聞記者はクビになるが、実話誌の編集者(実話誌に記者などいません)は、その見出しの卓抜さをほめられる。もちろん嘘を書いているわけではない。

では、運動誌でそんなことをやってもいいのか、ということになる。ダメです。はったりの実話誌風の見出しは立てられませんし、噂だけで記事をつくるのは読者への裏切りになることでしょう。

だからといって、おもしろくないレポートを淡々と書いていれば良い、というわけでもない。とりわけ市民活動家の場合は、書くことに慣れてしまっているから、ぎゃくに文章を工夫しない癖がついている。できれば、わたしの実話誌崩れの悪文や板坂剛の破天荒な文章から、よいところだけ真似てほしいと思うこのごろだ。

それほど難しいことではない。たとえば「ところで」「じつは」「信じられないことだが」「あにはからんや」という反転導入で、読者を思いがけないところに連れてゆく。いつも読んでいる週刊誌のアンカーの手法を真似ればよいのだ。

◆反原連による大衆運動の放棄

記事の批評に入ろう。

松岡利康&『NO NUKES voice』編集委員会有志の反原連への批判、とくにその中途半端な活動停止宣言への批判は、いつもながら凄まじい。ひとつひとつが正論で、たとえばカネがなくなったから活動をやめるという彼らは、福島の人々の被災者をやめられない現実をどう考えるのか。あるいはなおざりな会計報告、警備警察との癒着という、市民運動にはあるまじき実態を、あますところなく暴露する。

これらのことは首都圏の運動世界では公然たる事実になっているが、全国の心ある反原発運動に取り組む人々に発信されるのは、非常にいいことであろう。少なくとも運動への批判、反批判は言論をつうじて行なわれるべきものであって、絶縁や義絶をもって関係を絶つことは、運動(対話)の放棄にほかならない。

松岡利康&『NO NUKES voice』編集委員会有志「ふたたび、さらば反原連! 反原連の『活動休止』について」(『NO NUKES voice』26号)

◆デマやガセこそが、仮説として研究を推進する

富岡浩一郎と板坂剛の対談「三島死後五十年、核と大衆の今」にある、25年ぶりの対談というのは、文中にあるとおり鈴木邦男をまじえたイベントいらいという意味である。

富岡幸一郎×板坂剛《対談》「三島死後五〇年、核と大衆の今」(『NO NUKES voice』26号)
 
三島由紀夫の割腹自殺を報じる1970年11月27日付けの夕刊フジ1面(板坂剛さん所蔵)

じつは当時、夏目書房から板坂剛が「極説・三島由紀夫」「真説・三島由紀夫」を上梓したことで、ロフトプラスワンでのイベントになったのである。板坂が日本刀を持参し、鈴木邦男の咽喉もとに突き付けて身動きさせないという、珍無類の鼎談になったものだ。

板坂は「噂の真相」誌でたびたび、三島由紀夫の記事を書いていたので、おもしろい! こいつはひとつ、本にしてみたら。というわけで、夏目社長とわたしが岡留安則さん(故人)に連絡先を訊き出し、初台にあったアルテフラメンコの事務所に板坂さん(このあたりは敬称で)を訪ねたのを憶えている。富岡さんはすでに関東学院大学の教授で、イベントそれ自体を引き締める役割だった。

今回の記事は、いまや鎌倉文学館の館長という栄えある役職にある富岡幸一郎が、三島研究においては独自の視角から、いわば暴露主義的な業績を積んできた板坂の投げかける警句に、やむをえず応じながらそれを諫めるという、妙味のあるものとなった。

たとえば、ノーベル賞作家川端康成の晩年には、いくつかの代筆説がある。在野の三島研究者・安藤武が唱えたものだが、「山の音」「古都」「千羽鶴」「眠れる美女」を代筆したのが、北条誠、澤野久雄、三島由紀夫だというのだ。当時、川端康成は睡眠薬中毒で、執筆どころではなかったと言われている。真相はどうなのだろうか?

注目すべきことに、いまや三島研究の権威ともいうべき富岡も「『古都』の最後はそうかもしれない」と、認めているのだ。ガセであれデマであれ、それが活字化されることで、本筋の研究者たちも目を皿にして「分析」したのであろう。それは真っ当な研究態度であり、作品研究とはそこまで踏み込むべきものである。あっぱれ!

わたしの「中曽根康弘・日本原子力政策の父の功罪」は、知識のある方ならご存じのことばかりだが、史料的に中曽根海軍主計少佐の従軍慰安所づくりは、ネトウヨの従軍慰安婦なかった論に対抗するネタとしてほしい。中曽根が原発計画を悔恨していたのも事実である。もって瞑目すべし。

富岡幸一郎さん(右)と板坂剛さん(左)(鎌倉文学館にて/撮影=大宮浩平)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

『NO NUKES voice』Vol.26 小出裕章さん×樋口英明さん×水戸喜世子さん《特別鼎談》原子力裁判を問う 司法は原発を止められるか
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日本のヘビー級の戦い! 交戦シリーズファイナル!

田村聖は今年2月のPRIMA GOLD杯ミドル級トーナメント決勝を制すも9月13日のREBELS興行で日菜太(クロスポイント吉祥寺)に1ラウンドKO負け。大畠正士は11月22日、茨城県でのDEAD HEAT興行でチャン(MONSTAR)に判定負けし、結果を残せていない者同士の対戦という、宣伝アピールにはならないメインイベントとなった。

ロープにつめたところでヒザ蹴りを見舞った田村聖

田村聖は2013年10月にNKBミドル級王座決定戦で村井崇裕(京都野口)に敗れたが、2017年2月には西村清吾(TEAM KOK)との王座決定戦を判定2-0で王座獲得も、初防衛戦での西村との再戦で判定2-0で陥落し、この日再びタイトルマッチに意欲を見せた。

選手層の薄い重量級において、狙うにはミドル級しかないが、ヘビー級で試し運転したこの日の影響によっては新たな展開があるかもしれない。

◎交戦シリーズvol.6 / 12月12日(土)後楽園ホール18:00~20:48
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第10試合 ヘビー級 5回戦

NKBミドル級1位.田村聖(拳心館 / 82.5kg)vs 大畠正士(G-KICK RISING / 98.0kg)
勝者:田村聖 / 判定3-0 / 主審:前田仁
副審:川上50-47. 仲50-45. 鈴木50-46

田村聖は大畠正士の重量感を様子見した後、距離を縮めてローキック。大畠は重いパンチで返すが、田村を下がらせるには至らない。田村はローキックとボディーブロー中心に攻め、次第にノックアウトに結び付けるかと見えたが、大畠は耐え切った。

チョップパンチを浴びせる大畠正士

第2ラウンドには田村のヒジ打ちで大畠の眉間が切れるが傷は浅い。大畠は手刀斬るようなチョップパンチで場内を沸かせたがこの効果は薄い。最終ラウンド終盤の田村のラッシュの中、再びヒジ打ちで大畠の額が切れ、流血となったがすぐ試合終了のゴングが鳴った。

「倒れるかなと思うほど蹴って大畠は効いてた感じあったが、自分の脚の方が根負けした感じ。ボディーも効いてるかなと思ったけど倒れなかった。」と言う田村聖。

「田村のローキックは効いたし、今迄でいちばんボディーも効いたかもしれない。」と言う大畠正士。体重差は15.5kgあったが、耐え忍ぶには効果的でもスピーディーに攻め寄るには重い鎧だった。

ボディーブローも何度もヒットさせるが大畠は耐えた
蹴る側の田村の脚もダメージがあったローキック

◆第9試合 バンタム級3回戦

NKBバンタム級5位.則武知宏(テツ / 53.5kg)vs 古瀬翔(ケーアクティブ/ 53.52kg)
勝者:則武知宏 / 判定2-0 / 主審:佐藤友章
副審:川上30-28. 鈴木30-29. 前田30-30

小気味いい打ち合いが続いた試合。積極性はやや古瀬が優るも、的確さと落ち着いた捌きは則武のやや上回る経験値が優った。

セミファイナルを務めた則武と古瀬の攻防、存在感を示した

◆第8試合 55.5kg契約3回戦

NKBバンタム級4位.海老原竜二(神武館 / 55.0kg)
    vs
NJKFバンタム級5位.鰤鰤左衛門(CORE / 55.3kg)
勝者:海老原竜二 / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:佐藤30-28. 前田30-28. 川上30-28

変則スタイルの鰤鰤左衛門に海老原は自分のリズムを崩さず距離を掴み、パンチと蹴りを的確に打ち込む。圧倒するには至らないが、鰤鰤の戦略を殺してしまう海老原の上手さが勝利を掴む。

海老原竜二が鰤鰤に攻め勝つ

◆第7試合 フェザー級3回戦

NKBフェザー級5位.鎌田政興(ケーアクティブ/ 57.0kg)vs 勇志(真門 / 56.9kg)
勝者:勇志 / 判定0-3 / 主審:鈴木義和
副審:佐藤27-29. 前田27-30. 仲27-30

期待される若手の勇志の小気味いい攻め。第1ラウンドに右ストレートでノックダウンを奪い勢い付くが、最終ラウンドには攻めのキレが無くなり失速も、6連勝無敗となった勇志。

勇志の多彩な攻めが優った

◆第6試合 63.0kg契約3回戦

NJKFライト級4位.吉田凜汰朗(VERTEX / 62.8kg)vs 洋介(渡邉 / 62.7kg)
勝者:吉田凜汰朗 / 判定3-0 / 主審:川上伸
副審:佐藤30-25. 前田30-25. 鈴木30-25

若い吉田凜汰朗のスピードが徐々に優っていく展開。第1ラウンド終盤に吉田は右ストレートでノックダウンを奪い、最終ラウンドには右ストレートをボディーにヒットさせノックダウンを奪った吉田。

ノックアウトは時間の問題かと思われる中、耐え切った洋介。終盤にはベテラン洋介のサウスポーからの左ストレートヒットが場内を沸かせるが逆転には至る強さは無く、吉田凛太朗の圧勝で終わる。

若さとスピードで攻勢を保った吉田凛汰朗と耐え忍んだ洋介

◆第5試合 フェザー級3回戦

獠太郎(DTS / 57.0kg)vs 矢吹翔太(team pain wind / 56.9kg)
引分け 1-0 / 主審:仲俊光
副審:鈴木30-29. 川上30-30. 前田30-30

◆第4試合 フェザー級3回戦

ベンツ飯田(TEAM Aimhigh / 56.75kg)vs 渉生(アント / 57.1kg)
勝者:渉生 / 判定0-3 / 主審:佐藤友章
副審:仲27-30. 川上28-29. 前田27-30

◆第3試合 ウェルター級3回戦 中止(公式発表は龍之介の不戦勝)

龍之介(TOKYO KICK WORKS / 66.4kg)vs ディスター・トシキ(KickBox / 体調不良で欠場)

龍之介はNKBウェルター級3位の笹谷淳とエキシビジョンマッチ2回戦(2分制)を行なう。

◆第2試合 53.0kg契約3回戦

ナカムランチャイ・ケンタ(team AKATSUKI / 53.0kg)vs 杉山空(HEAT / 50.5kg)
勝者:杉山空 / 判定0-3 (28-30. 28-30. 29-30)

◆第1試合 バンタム級3回戦

會町Tetsu(テツ / 53.2kg)vs 幸太(八王子FSG / 53.4kg)
勝者:會町 / 判定2-0 (29-28. 29-28. 29-29)

《取材戦記》

この日もツイキャス(twitcasting)による有料配信が行われました。運営スタッフで務める苦労もある中、実況と解説には北川“ハチマキ”和裕氏と笹谷淳氏が務めた模様。

メインイベントはヘビー級の戦い。決して名のある外国人選手ではないが、昭和のチャンピオン、斎藤天心や池野興信を思い出すような日本のヘビー級の試合だった。
現在のプロボクシングに当てはめれば田村聖はクルーザー級(-90.72kg)、大畠正士はヘビー級ながら、WBCでいえば新設されたブリッジャー級(-101.6kg)に当たります。

体格があまり大きくないアジア圏に於いてはミドル級超えの階級は設定されないことが多く、今後、選手層増加が見込まれなければ新たな階級新設は難しいでしょう。

この日の一番低年齢選手は15歳の杉山空(来月16歳)。一番歳の差対決は吉田凜汰朗(20歳)vs 洋介(40歳)。最年長は大畠正士が47歳。幅広い年齢層になったのものだが、昭和の時代は親子ほど年齢差ある対戦なんて考えられなかったものです。それだけ身体のメンテナンスが向上したことや3回戦制が定着したことも影響があるでしょう。

大畠正士選手は現在G-KICK RISINGジム代表であり、元々は19歳の時、平戸ジムからデビューし、この日は21戦目ながら、この業界でのキャリアは結構古い選手でした。

この日使われたグローブは第5試合までDONKAIDEE(マーシャルワールド社)製が使われました。日本キックボクシング連盟では通常、日本のウィニング社製が使われています。プロボクシングが軽量級でも8オンスである為、現在はウィニング社製に6オンスが無いことから他社製に切り替えるしかなかったようです。

日本キックボクシング連盟2021年最初の興行は2月20日(土)後楽園ホールに於いて「必勝シリーズvol.1」として開催予定です。

大差判定勝利の田村聖、タイトルマッチへ意欲を見せた

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他

“Go To 停止”発表直後に国民の血税で豪遊する菅義偉ポンコツ総理のトホホ晩餐会 ── 言行不一致の末、感染防止「勝負の3週間」の敗北が確定 横山茂彦

トホホである。国民には5人以上の会食を禁じていながら、みずからは連日5人以上で豪華な会食をくり返しているのだ。過去の話ではない、今日も明日も、このポンコツ総理は国民の血税で豪遊するつもりなのだ。

これで政権が宣言していた「勝負の3週間」は敗北した。ほかならぬ政権の責任者が国民に命じた禁止事項を犯すことで、感染者は最大値を記録し、敗北が明確になったのだ。


◎[参考動画]“GoTo停止”発表直後に・・・総理ら8人でステーキ会食(ANN 2020年12月16日)

とりあえず、12月14日夜のことを再確認しておこう。その愚行の、直接の原因も明確なのである。

Go Toトラベルの一時中止を宣言したあと、菅総理は二階派の幹部らの猛反発をうけたという。

「Go Toトラベルがどれだけ旅行業界に寄与していたのが、菅首相はわかっているのか。救われた旅行業界、ホテル、お土産店、交通関連の会社などがどれだけあるのか知っているのか。それも一番の稼ぎ時、年末年始には全国で停止。どれだけ多くの人が頭を抱えているのかわかっているのか。中止なら、業界への金銭的支援策とセットでやるべきだ。なんのバックアップも発表せずに、中止だなんて、二階幹事長の顔に泥を塗るようなものだ。『誰のおかげで総理になれたんだ』『もう次はないぞ』と派閥から強硬意見も飛び出した」(二階派幹部の言葉、週刊朝日取材班)。

これはもう、猛反発といえるだろう。

したがって、二階俊博がセッティングしたステーキパーティー(政権幹部のほか、杉良太郎、王貞治、みのもんたらが参加)に、参加しない選択肢はなかったのである。

この夜、ホテルニューオータニで財界人(青木拡憲AOKIホールディングス会長ら15人)との会合のあと、報道陣を従えながら銀座のステーキ店に向かったのだった。そこで40分、ステーキコースを堪能したらしい。一人あたり7万円といわれる会食をすることで、国民への訴えをみずから反故にしたのである。

「5人以上はダメ」と国民に訴えていた西村コロナ対策大臣は、国会で「一律に5人以上はダメということではない」などと、苦しい答弁を余儀なくされた。

いや、そもそも菅総理の密会合は、毎朝の番記者たちとの朝食に始まり、夜は深夜にもおよぶ5人以上の会食で埋め尽くされているという。コロナ感染者数が最高に達し、重症率・死亡率が高水準に達している認識が、この男にはつゆほどもないのだ。


◎[参考動画]“勝負の3週間経過”“ステーキ会食”受け菅総理(ANN 2020年12月16日)

◆Go To中止を躊躇した理由

Go To トラベルについての、分科会での専門家提言と菅総理の認識は真逆である。「移動することで感染が拡大するエビデンスはない」というのは、いうまでもなく「感染しない」というエビデンスも存在しない。すなわち、感染経路の不明が過半数をこえる実態を踏まえたものではない。

そもそもGo To事業の公募期間は、5月25日から6月8日までのわずか2週間弱しかなかった。このことは、全国を対象とする大規模な事業であるため、事前に周到な準備がなされていたはずである。そしてこの事業を引き受けたのは、持続化給付金事業にも関わっている大手広告代理店などが出資する会社だったのだ。その意味では、Go Toは観光業界、飲食業界への経済刺激である以前に、政財界を巻き込んだ利権構造だったのだ。なぜGo Toを止めないのか、国民が抱いていた疑問の先には、利権政治があったのだ。


◎[参考動画]菅総理 ネット番組の発言から一転“GoTo”見直しへ(ANN 2020年12月14日)

◆ジリ貧の支持率とポンコツ答弁

12日には毎日新聞と社会調査研究センターが、全国世論調査を実施している。菅内閣の支持率は40%で、11月7日に行った前回調査の57%から17ポイント下落したという。不支持率は49%(前回36%)で、菅内閣発足後、不支持率が支持率を上回ったのは初めてだ。

政党支持率は、自民党が33%で前回の37%より低下した。
立憲民主党12%(前回11%)
日本維新の会8%(同6%)
共産党6%(同5%)
公明党3%(同4%)
れいわ新選組2%(同3%)
国民民主党1%(同1%)
社民党1%(同0%)
NHKから国民を守る党1%(同1%)
「支持政党はない」と答えた無党派層は31%(同31%)だった。

就任当初からの学術会議への政治介入、国会では秘書官のメモ抜きには答弁できないポンコツさ、そしてGo To継続による感染率の増大。いや、無策というべきであろう。とりわけ、ほとんど自分だけでは記者会見できない、政治家としても無理なのではないかと思われるポンコツぶりは、ひろく国民も知るようになってしまった。

たとえば12月4日に、総理就任後2カ月半ぶりの記者会見を行なった。2カ月半も、国会答弁は別として国民から逃げ回っていた人物に、総理という資格があるものだろうか。

そしてその会見は、当日の朝9時半に各報道機関への告知と受付がはじまり、締め切りが2時間後の11時半。つまり、官邸記者クラブいがいは事前に準備していなければ参加できない、ほぼ身内の会見だったのだ。総理がパンケーキで手なづけている記者クラブ以外、フリーの記者は抽選による参加である。

しかもその会見の態様が、記者クラブのよる出来レースだったのだ。事前に官邸広報から「訊きたいことはありますか。ご興味があるテーマは?」などと各社に打診があり、それに応じた社から質問が許されるという、およそ官製会見ともいうべきもので、菅総理はひたすら事前に用意したメモを朗読するのだ。これほど答弁応力がないのは、鈴木善幸総理(寝業師で、表に出る人物ではなかったと評されている)以来ではないか。

じっさいに、フリーの立場で質問ができたのは安積明子だけだった。その安積なる人物は『野党共闘(泣)。―学習しない民進党に待ち受ける真っ暗な未来―』『“小池”にはまって、さあ大変! ―「希望の党」の凋落と突然の代表辞任―』などの著書で、ほぼ一貫して野党叩きの立場で自民党を応援している「政治ジャーナリスト」なのである。

いま、医療関係者は春以来の激務に疲れ、医療施設そのものがコロナ患者の受け入れによって経営的にも疲弊している。医師、看護師は家族以外との接触を禁じられ、複数人での会食などもってのほかとされている。その精神的、肉体的な疲労困憊は想像以上のものがあるだろう。そんな国家国民が危急存亡のときに、みずから国民に禁じた5人以上の会食を、夜な夜な行なっている政権責任者に、その資格があるのだろうか。


◎[参考動画]菅首相×有働「8人で会食」ナゼ? “新型コロナ”全部聞く(日テレNEWS 2020年12月16日放送「news zero」より)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2021年1月号 菅首相を動かす「影の総理大臣」他