《対談》低迷する日本が活路を見出す自主独立の極東地政学

小坂浩彰(NGOレインボーブリッヂ)× 木村三浩(一水会代表)

まもなく1年を迎える高市政権において、もっとも顕著なのが、対米従属の深化だ。特に外交における「アメリカ・ファースト」が、日本に国益をもたらすとは思えない。それでも、日本に活路が「ある」と言うのは、実業家として外交の現場に携わるNGOレインボーブリッヂ・小坂浩彰氏と、愛国者外交を展開する一水会・木村三浩代表。何ものにもおもねらない極東地政学を2人が語る。(構成・本誌編集部)

◆日本の国力と外交的存在感の低下

小坂 最近、カナダのカーニー首相が演説などで、米国主導の国際秩序の崩壊を指摘すると同時に、大国に対抗できるような「ミドルパワー(中堅国家)」の結束を、たびたび提言している。これは、日本にとっても指針となる考え方であることは間違いない。ただし、それが可能なのか、という疑問がある。米国に骨抜きにされている日本が、主体的にミドルパワーの国々と組むことは、非現実的なのではないか。

木村 大国とは、言うまでもなく米中のこと。その大国に対抗するための結束であるならば、日本が米国から自立した外交を行なっていることが前提となる。しかし、我が国を見渡すと、たとえばウクライナは2022年にいきなりロシアに侵略されたとか、中国が台湾を武力併合しようとしている、といったナラティブに染まっている。そして、日本もロシアや中国、あるいは北朝鮮に、いつ攻撃されるかわからないから、米国に護ってもらうのが唯一の安全保障であり、米国製の武器を買って国防を固めるべきだ、という〝信仰?が蔓延している。

小坂 それに加えて、私が言いたいのは、国力があまりにも落ちたということ。今、日本が外交の主導権を握るのが、非常に難しくなっている。30年前の日本のGDPは、世界の約20%を占めていたが、現在は約4%にすぎない。他国から見て、日本の存在感が大きく低下してしまった。まず、それを心配しなければならない。

隣国の中国やロシアと良好な関係を築くべきであるのは、わかりきった話だ。過去、日本に国力があった時代には、表向きには米国に従いつつも、ロシアと交渉すれば、相手は日本側の姿勢を一定程度、理解してくれた。それが2001年、森喜朗首相とプーチン大統領による「イルクーツク声明」(北方4島の帰属問題の解決を通じて平和条約を締結する認識を両国が確認)であり、1992年にも、コズイレフ外相の「北方領土・2段階返還秘密提案」があった。こういう時がチャンスだった。

木村 確かに、ロシアや中国にとって、米国に追従する日本に、わざわざ譲歩するメリットが薄れてしまっている。

小坂 中・ロが無理なら、東南アジアとの協力を目指すべきかもしれない。また、グローバルサウスは世界の3分の2の人口を占めており、影響力を拡大させている。ただしグローバルサウスは、それぞれ国力も抱える事情も違うため、ひとまとめにはできない。

木村 フィリピンとは現在、対中国で軍事協力が進んでいる。同様にインドネシアやオーストラリアとも関係を強化しているが、それらは米国の影響下での結集にすぎない。大国による覇権主義に対抗するものではない。

小坂 そこで、日本が活路を見出すとすれば、北朝鮮がカギではないかと、最近になって考え始めている。周知のように、北朝鮮はロシア・中国の両国と、うまく関係を築いている。その国と日本が国交正常化することには大きなメリットがあるのではないか。

◆今が絶好のチャンス

木村 非常に興味深いが、その前に、もう少し現状を確認しておきたい。ご指摘のとおり、日本は世界GDPランキングで長く2位を保持したが、2010年に中国に抜かれ、今はドイツ・インドに抜かれて5位。2030年にはイギリスに抜かれると予測されている。

低下の要因を考えると、日本が米国に喰われている状況がある。昨年に80兆円の対米投資を約束させられたように、米国も国力が低下しているのを、日本が補わせられている。それはやはり政治の問題だ。

戦後81年、あと19年で1世紀を迎える中で、日本が主体的な政治をどれだけ行なってきたのかを振り返れば、まず米ソ冷戦下で対共産主義の最前線として、いわば保護されることで存在価値を与えられ、国力を高めてきた。その冷戦が30年前に終了し、国際情勢が変化しているのに、我が国の政治はまだ〝冷戦脳?から抜け出せていない。

その中でも、小坂さんの言う通り、ロシアとの関係を国益に結びつけるチャンスがあった。にもかかわらず、我が国はむしろ対米従属の袋小路に自らはまりこんでいる。世界はすでに多極化していて、時代遅れであるにもかかわらず、だ。

そういう現状にあって、ミドルパワー論を考えた時に、果たして諸外国が、米属国日本を信じてくれるのかということが問題となってくる。日本にも対米従属一辺倒ではなく、自立してものを考える人間もいるということを示すのが日本の国益と考え、我々一水会はロシア・中国・北朝鮮と民間外交を続けているが。

小坂 それを国家として具体的に示す方策こそ、日朝国交正常化ではないかと思う。私が言いたいのは、日本にとって起死回生のチャンスが今、訪れているのではないか、ということだ。

木村 チャンスとは?

小坂 まず、気まぐれなトランプ大統領が、北朝鮮と仲良くしようというメッセージを発している。米韓軍事演習の縮小に繰り返し言及し、「金正恩は57の強力な核兵器を持っている」と核兵器保有国として扱うような発言までしている。

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