孫正義の商いは顧客軽視がヒド過ぎる!──Y!mobile錯誤対応のカオス

携帯電話(PHSを含む)の機種変更や新規契約手続きは年々煩雑さを増している。担当者の業務知識と手際にもよるのだろうけども、下手をすると半日仕事になる。あんなに時間をかけて仕事をしていて作業効率は上がらないし、売り上げにも良い影響はないのではないかと想像していたが、また呆れる事態に直面した。

私はスマートフォンを使っていない。旧来型の電話機能だけを持つ機種を利用している。使用頻度が高いためか、個体差はあるが携帯電話はバッテリーの機能が低下したり、不都合が生じることをこれまで何回か経験してきた。その都度、故障の際には無料で修理が受けられるサービス(月額500円ほど)に加入しているので、余分に修繕費用を支払うことなしに部品交換などの対応を受けてきた。

『孫正義の焦燥』(大西孝弘著:日経BP社2015年6月22日)

◆Y!mobile(旧willcom)顧客対応のカオスにはまって

ところが先日加入しているPHSの請求書に不可思議な点を発見した。私は2年前の5月8日に当時willcom(現在はY!mobile)のPHSを契約した。当時「10分までならば何回どこへ通話しても無料」という料金体系に惹かれたためだ。ところが使用していたPHSは数か月すると充電の際に、手が触れられないほどの熱を持つようになった。明らかな異常だから購入した店舗へ機器を持参し修理の依頼をした。このPHSも通常使用時の故障の際には無料で修理を受けられるサービスに加入していたので、修理の間は代替機をもらい2週間ほどで「修理が出来た」と連絡があったので店舗に赴いた。ちなみにその日は2013年10月21日である。

修理が完了した機器は充電されていなかったので、とり敢えず家に持ち帰り充電を始めた。記憶が定かではないがその最初の充電時か、あるいは次の日の充電時に、またしても最初発生したのと同様機器が触れないほどの高温になる症状が起こった。充電を放置しておけば火災になる懸念もあるほどの熱さだったので、仕方なく再度店舗へ機器を持参し、状態の説明をした。店舗の担当者はそこで充電を試してみたところ、私の申告通りの不具合が発生することを確認し、「この機器では再度お客様にご迷惑をおかけする可能性がありますので、操作性は違いますが違う機種へ無料で変更は如何でしょうか」と提案してきた。

私は暇人だが、willcomの店舗は自宅からかなりの遠距離であり、何度も足を運ぶのは面倒だったので、店舗担当者からの提案を受入れ購入したものとは別の機種へ無料で交換してもらった(はずであった)。これが2013年10月23日だった。

最初の契約時に機器の料金は2年の割賦で契約していた。購入が2013年5月だから今年の5月で支払いは終了するはずだった。ところが6月、7月の請求書にも機器代金の割賦代金が依然記載されている。これはおかしいだろうと思い、購入した販売店へ電話をかけ問い合わせたが「電話でのお問い合わせには『個人情報』の観点から答えられない。直接どこでも良いのでY!mobileの店に行くか、問い合わせ番号で確認してくれ」という答えが返ってきた。

Y!mobileのPHSは使い方によっては非常に安価だが、この会社の接客システムはどう間違えても「まとも」とは言い難い。現在私は月額1500円を払い、国内であればほぼすべての電話番号に時間制限なくかけ放題のプランに加入しているが、指示された「問い合わせ番号」への通話は有料なのだ。機器の操作方法や料金の問い合わせなど携帯電話(PHS)を使っていれば問い合わせる必要が生じるのは当たり前だと思うのだが、店舗に赴かない限り「無料」で一切の問い合わせを行うことが出来ない。こんな不親切な対応があるだろうか。

◆声が枯れるほど徒労が続く契約確認プロセス

しかも、私が機器を購入した店舗の担当者は電話での問い合わせの際に「どこでも良いので」Y!mobileの店へ行けと私に指示したので、最近開店した自宅近くの営業所へ行ったところ「細かい契約の内容は販売した店でないと解らないのでそちらへ行ってください」と店員が言う。おいおい、加入者の情報くらい繋がっている会社のコンピューターで解るんじゃないのか? でなければ、購入店から遠隔地でのトラブルには対応出来ないというのか。私が「会社が一元化して情報を把握していないのか」と聞くと担当者は渋々どこかへ電話をかけだした。

電話をかけた先はY!mobileの情報が集まるセンターだったようで、そこには私の契約日その他の記録が残っていた(当たり前だが)。それによると、私は2013年5月8日に初めての契約を結び、機器は2年の割賦となっていたが、10月21日修理から返還された日に「同型だが新たな」機器をもう1台新規に購入して割賦払いの契約をしたことになっているという。

話がややこしいが、私は動作不良の為に機器を修理に出した。それを受け取りに行った日に「同じ機種をもう1台」新規購入したという記録で、その日から新規の機種分の割賦料金も併せてが引き落とされていたことが判明した。「そんなあほな!」と思わず声を挙げてしまった。1つの電話番号に2台のPHS電話機(しかも同型機)を契約する人間がいるだろうか。利用者にとって何のメリットもないそのような契約を、この「口うるさい」私が受諾するはずがない。旧willcomの事務手続きミスであることは明らかだから、そこで「返金」の手続きをしてくれと要請したが、やはり「契約した店でないと対応が出来ない」と担当者は言う。この会社は同じ社名を名乗っていても同一のサービス を受けられることがない、「類稀(たぐいまれ)」な会社だ。仕方なしに購入した店へ向かった。

その店でまず驚かされたのは「契約書のコピーをお持ちください。弊社は契約書を保管しておりません」と担当者が発言したことだ。「え!なんで契約書を保管しないの?」と聞くと「個人情報保護の観点から」との説明だが、そんなあほな話があるだろうか。契約者には契約書の保管を義務付けるが、Y!mobileは顧客と契約を交わしたらその日のうちに「契約書」をシュレッダーにかけるのだそうだ。なら何のための契約書なのだろう。双方に主張の違いが生じた時に(今回の私のケースもそうだ)会社が契約書を保管していなければ議論にならないじゃないか。そう指摘すると「ではこの壁を契約書ズラーっと並べろと仰るんですか」と突っかかって来る。接客態度も悪ければ、 頭もよろしくない。

私は自宅近くの店舗で受けた説明を再度繰り返し「どう考えてもそちらの入力か処理ミスだから今すぐ返金の手続きを取ってくれ」と再度要請した。ところがまたパソコンに向かってカチャカチャやり始めた兄ちゃんは一向に事情を理解しない。それどころか横の人間が、ろくに調べもしないのに「こういう間違えはありえませんので」と無根拠に断定口調でこちらに非があるような言葉を投げかけてくる。

20分ほど待っただろうか。パソコンを叩いていた人間がようやく事情を理解し始めて「どこかにおかしいところがあるみたいですね」と言い始めた。「どこか」じゃなくて明確に2013年10月21日、修理が終わった機器を引き取りに来た日に「新たな機器を購入している」とする記録がおかしいだろ、と説明し彼らを納得させるのに3時間を要した。

最後に当日店舗にいた人間達では判断を出来ないので、「上司に調べさせ電話で連絡いたします」という言葉を聞く頃には私の声は嗄れていた。

◆顧客無視の「個人情報保護法」曲解も孫流か?

これだけ情報通信技術が行き渡っているのに「個人情報保護法」の誤った理解、いや、この法案自体の誤謬は「契約書」が「個人情報に該当するからその日のうちにシュレッダーにかける」という尋常ならざる業務手順を生んでいる。契約書を残さなくてもコンピューターの中には当然氏名、生年月日、住所などの情報は記録されるだろうから「契約書」をシュレッダーにかける意味は全くない。子供でも分かりそうな簡単な理屈がこの会社(いやこの社会か)では通用しなくなっている。

私は交わしてもいない割賦契約を証明するために「契約書」のコピー(2013年10月21日付)を持ってこいと言われた。ちょっと待ってくれ。交わしていない契約の「契約書」などあるはずがないだろう。無いものを証明することは出来ない。自社のミスを解決するために会社は保管しない「契約書」の保管義務を契約者のみに負われば、私のように「無い契約」の証明など契約者の側からは出来はしない。

携帯電話販売店の求人広告をいたるところで見かける。日々変化するサービス内容や会社の方針に低賃金労働者は苦しめられていることは想像に難くない。しかしだからといって明らかな過払いを2年余り利用者に押し付けておいて、あの対応はないだろう。私的には「もうこれ以上機能の開発や機器の新規発売は要らないから、簡潔、確実な仕事をしてくれ」と孫正義に直訴したくなる。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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「軍事漫談家」井上和彦の下衆い動画が教えてくれた世間「ネトウヨ化」の病巣

テレビ番組、商業新聞からネットの世界まで右派が占領する番組や誌面は腐るほど増殖している。テレビ局勤務の知人は20年来の付き合いだが、数年前から政治や社会の話が通じにくくなっている。いい年をして(年をとったからか)どんどん思考が右傾化しており、最近では世間話をするのも憚られるので、私から彼に連絡を取ることはなくなった。同様の話は身近な人からもしばしば耳にする。「若いころはあんな奴じゃなかったのに。今では田母神俊雄みたいなことをブログに書いている」と評されるテレビ界の人間は少なくないようだ。

大メディアが総右旋回しているのだから、自由闊達(言い換えれば「好き放題」)の言論が飛び交うネットの中では、さらにえげつない情報発信主や番組が乱立している。

◆右派のネット動画をあえて観る「苦行」

人間は仕事上の理由や、自身の知識吸収の必要性を感じなければ、おのれと正反対の意見、いやおのれの主張が嘲笑されたり唾棄される番組を長時間視聴したり読み続けることを選択はしないのではないだろうか。情報収集のため内容をかいつまんでチェックすることぐらいはするけれども、1時間も2時間もダラダラ嘘八百を放言し続ける番組を毎回視聴し続けるのは、精神衛生によろしくない。簡単に言えば「あほらしくて」見ていられない。

私自身もネットで放送されている「右派」の番組を、これまで何度か視聴したことはある。彼らの論点がどこにあるのか。それを知っておかなければ反論ができないだろう、が視聴の理由だった。「チャンネル桜」と名乗る番組を開始から終了まで何度か観たが、視聴の間に溜まるフラストレーションといったら半端ではなかった。ただ収穫はあった。結果的に彼らの主張は番組を何度も観る必要がなかったことが分かったからだ。「論理ではなく感情で、事実はなく希望で彼らの歴史観や世界観は構成されている」ことが理解できた。よって限られた人生の貴重な時間をこれ以上「苦行」のために浪費したくはないし、するつもりもない。

と思っていたが、芸能ニュースに絡めながら「戦争推進法案」を援護したり、反対する市民をボロクソにこき下ろしている「松本佳子のにちよる」というニコニコ動画で配信されている番組の内容があまりにも酷いから一度視聴してみてくれないか、という読者からのリクエストを頂いた。

ニコニコ動画の番組を視聴するためには(番組によるのかもしれないが)、会員登録をしなければいけない。何度か会員登録をしようと試みたのだがうまくいかない。「あなたは『反日』思想の持ち主のため入会できません」のエラーメッセージが返って来る(勿論冗談)。したがって「松本佳子のにちよる」を今のところ視聴できてはいない。直近の番組タイトルは『ショック堀北真希の結婚!!』『軍事漫談家・井上和彦の戦後70年談話』となっている。番組の司会は「チャンネル桜」で何度も顔を見たことがある田母神ガールズの「色希(しき)」だ。

◆「軍事漫談家・井上和彦」はただの「バカ右翼」

雰囲気や評判が怪しいからといって、番組のタイトルだけで内容を決めつけてはいけない。だいたい私は「ショック」であるはずの「堀北真希」という人物さえ知らない人間なのだから。でも「軍事漫談家・井上和彦」の名は過去どこかで目にしたことがある。

井上は今のところWikipediaにとりあげられてはいない。そこまで社会的に影響のある人物とは認知されていないということだろうか。

そこで本人のホームページと幾つかあるYoutubeの映像で井上の主張を聞いてみた。1963年生まれで法政大学社会学部出身の井上は「専門は、軍事・安全保障・外交問題・近現代史。テレビ番組のコメンテーター・キャスターを務めるほか書籍・オピニオン誌の執筆を行う。テレビ番組では歯に衣着せぬ爆裂本音トークで 難解な軍事問題などを分かりやすく解説する。

『たかじんのそこまで言って委員会』(讀賣テレビ)では 「軍事漫談家」の異名を持ち、同番組をはじめとして「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「かんさい情報ネットten!」(讀賣テレビ)など出演番組多数。また「日本文化チャンネル桜」の「防人の道 今日の自衛隊」のキャスターのほか、航空自衛隊幹部学校講師、東北大学大学院非常勤講師、商社シンクタンク部門の主席アナリストも務める。平成25年より「国民の自衛官」(フジサンケイグループ主催、産経新聞社主管、防衛省協力)の選考委員」とホームページ内で自己紹介をしている。

本人は「どうだ!偉いだろう!」と思って記載したのかもしれないが、私に言わせれば被疑者が罪状を自白しているに等しい。とくに関西ファシズムを牽引した「たかじんのそこまで言って委員会」出演を中心としたテレビ、ネット番組の出演歴はその主張を明らかに示している。こやつは単なる「バカ右翼」だ。

◆井上の軍事論が漫談そのものだから「軍事漫談家」ということはよくわかった

貴重な人生の時間を割きたくはないが、1つ位はその証拠を示さねばならないだろう。

これは「チャンネル桜」に出演した際の井上だ。「米中対話」のニュースを取り上げたと思ったら、「中国が納得していない」と勝手な解釈をして「これでいいんです!こういう対話をしてほしい!」と言い放つ。意味わからないなぁ、私には。ああ、そうか。何が何でも「中国」=悪にしないと「軍事漫談家」はつとまらないか。

また、「自衛隊とフィリピン軍の共同訓練」を持ち上げるは「中国が脅威ではないって言うやつが国会にもいるけども頭がおかしいの」だの「馬鹿な奴が原発反対だとか根拠のないこと言ってんの」とのたまう、果ては「沖縄戦追悼式典70周年」を取り上げたニュース紹介の中で翁長雄志知事が安倍政権批判のコメントを読み上げたことに言及し「あなた(翁長知事)が非常に限られた空間の中で作られた、民意と称する『米軍の普天間移設』を論じているけど、日本とアメリカが決めたこと。言ってみれば社長と社長が決めたこと。それを言ってみれば課長クラスの知事が『止めてくれ』って、何言ってるんだて」と言い放つ。真面目に聞いていると、私自身が恥ずかしくなるほどの「沖縄差別」を堂々と展開する。

要するに無茶苦茶なのだ。「中国は脅威」とこの番組で言い放ちながら、別の番組では「中国なんて全然恐くない。武器は全部コピーなんですよ。武器製造の技術が高いのは自動車を作る技術のある国。だから日本の武器は一流です。武器商品市に行くと中国人が写真撮ってるんですよ。中国の武器は全部外側からコピーで作るんです」と仰せになる。

どっちなんだ!と真顔で井上に迫ってはいけない。井上は「軍事漫談家」なのだ。漫談に食って掛かるのは無粋に過ぎる。

芸能ニュースと「右派ネタ」を取り上げる「松本佳子のにちよる」、実は画期的な番組ではないか、と私は内心期待をするようになっている。人畜無害な芸能ニュースと声高に叫ばれる好戦・右派的言動。じつは双方とも「漫談」の域を出ない、ということを井上がその肩書きによって主張し証明してくれているからだ。

問題は「漫談」を真に受けてしまう人々の側だろう。この番組に限らず、大小メディアは「情報商品」として「芸能ニュース」も「戦争」も「原発」も「マイナンバー」も一蓮托生に垂れ流す。あれは「報道」ではなかったのだ。「漫談」と呼ぶのが相応しいということを井上は教えてくれている。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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《ウィークリー理央眼021》戦争法案に反対する若者たち VOL.15 秋田

8月8日(土)、秋田県秋田市で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。
10代~30代の若者で7月に立ち上げた「SPADA(Sprout Peace and Democracy Akita:平和と民主主義を広げる秋田青年の会/スパーダ)」が主催した。若者の呼びかけによるデモは秋田では初めてのことだという。


[動画]青年主催 安保法案反対のデモin秋田 – 2015.8.8 秋田市(3分23秒)

遂に若者デモの波が秋田まで押し寄せ、安保法案に反対するデモが若者によって行なわれることとなった。
過去に3度、秋田市でデモの撮影をしたことがあるが、若者がデモにいるのを見た事はなく、今回の秋田での動きには驚いている。同じ土地に3回行って1人も若い人がいなかったのは秋田ぐらいで、秋田はデモ参加者の年齢が圧倒的に高い土地だ。
失礼を承知で言えば、このデモに参加している若者は多少年齢が高いし人数も少なかった。とはいえ、今までの秋田のデモの光景を考慮すると非常に画期的で、素晴らしい動きだと私は感じている。

これまで「若者デモ」と漠然と言ってきたが、取材を通してその条件を導き出した。以下の3つの条件が満たされていれば「若者デモ」と呼んで差し支えないと私は思っている。
・主催が若者(10代~30代)である
・若者率が参加者の1割以上を占める
・ネットで積極的に告知をしている

これまでのデモの中心的存在である中年が行なうデモとの違いを考えるとこれでいいはずだ。
普段のデモに全く若者がいないような地域でも「若者デモ」と銘打ったデモには少なくとも1割は若者が占めていた。数値的には低いと言わざるを得ないのかもしれないが、この数でも実際の現場としては驚くべき変化があり、もはやビジュアル革命だ。一般的には分かり辛いし、伝わらないかもしれないが、地方のデモでもそれなりの変化が起こっているということだけは覚えておいて欲しい。

シュプレヒコールは秋田のデモとしては珍しいショートコールのみで、しかも楽器が使われていた。その楽器が変わっていて、軽トラの荷台に搭載した和太鼓を叩いてリズムを取っていたのだ。これは、いわばアコースティックサウンドカーだ。車のチョイスも渋いし、なかなか出来ないデモのやり方だと感心した。

今回、デモを撮影していて、赤信号を進もうとしたデモ先頭の横断幕の人に「信号が赤なので止まってくださーい!!」と叫んで私が止めた一幕があった。デモを主催したSPADAは、デモを行なうのが初めてということで色々と不慣れかつスタッフも少なくて、なかなか目が届いていなかったので私が注意した。警備の警察官の指示がない場合、赤信号で止まらなければいけない。
その他、デモ隊がバス停や横断歩道等を塞いでいたりすると市民生活に支障が出たり、デモへの印象が悪くなったりするので、私は撮影中であっても即座にデモ隊を誘導したり注意したりする。良い絵を撮る以上にすべきことがあるという考えだ。「お前は誰だ?」という顔をされるのだが「~だから、~してください」と丁寧に説明しながら誘導をするので、納得して動いてくれる。
本来はデモ参加者の一人一人が注意すべきことなのだが、アピールに夢中だと意識がそちらに行ってしまうのは仕方ないとも言える。

実は、秋田駅前を所管する秋田中央警察署のデモ警備は珍しい方式で、信号無視をしそうになったのはデモ側の問題だけでなく、警察にも問題があると私は思っている。
その警備方法なのだが、デモに直接同行して徒歩で警備・誘導する警察官はおらず、デモ隊の最後尾にパトカー1台だけが付いていく、あとはデモコースの主要な信号機そばに警察官をあらかじめ配置しておき、デモ隊が来たら信号を操作したり、車を誘導したりする、というものだ。デモが通り過ぎた「信号機要員」の警察官は、先回りして次の持ち場に就くか、役目を終え警察署に帰還する。
この方式は、同じ東北地方の山形警察署(※山形県山形市等を所管)でも採用されている。
しかし、秋田市のデモコースは秋田駅東口周辺を円を描くような形で進むので、最初の信号から次の信号までショートカットが可能なのだが、山形市のデモコースは直線なので、次の持ち場へ行く警察官は走ってデモ隊を追い越し次の信号機へ行く必要がある。山形市のデモは制服警察官が全力疾走している姿が見られる珍しいデモだ。
ちなみに、銀座等を所管する警視庁・築地警察署・警備課の「信号機要員」は自転車を使って次の信号機へ移動をしている。自転車移動は比較的ポピュラーなデモ警備の手段である。
山形のお巡りさんにも自転車を使わせてあげて欲しいと彼らの走る姿を見て思う。もしかしたら、冬は雪が積もる地域なので年間を通して使えない自転車は備品として認められないとか、そんなことがあるのかもしれない。
恐らく、警察署には何台かの自転車はあるだろうが、いくら考えても分からないので、次に山形に行ったら事情を聞き、更にはデモ警備での自転車使用を提案してみるつもりだ。

この秋田・山形方式の警備は、警察側からしたら少人数でスムーズにデモを進行させることができるので便利なのだろう。デモ側からしても直接警備する警官がいないのでデモ隊への圧迫感もなく自由に出来て良いはずだ。車道上に警察官がいないので写真も撮りやすい。
しかし、一部の警察官がいない信号では注意しなければならず、中途半端に警察官がいる分、油断してしまい信号無視をしそうになった。
もう自動車免許の講習のようであるが、デモ参加者には「車道を歩いている自覚」を持ってもらうしかないので、場合によってはデモ出発前に車道を歩く事についての注意をしたほうが良いかもしれない。警備スタッフが少ない場合は特に必要な気がする。

「何も言わなければ賛成するのと変わらない」そう叫ぶ、秋田の若者たちは和太鼓と共に立ち上がった。



[2015年8月8日(土)・秋田県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《020》戦争法案に反対する若者たち VOL.14 渋谷
◎《019》戦争法案に反対する若者たち VOL.13 福岡
◎《018》戦争法案に反対する若者たち VOL.12 福島
◎《017》戦争法案に反対する若者たち VOL.11 長崎
◎《016》戦争法案に反対する若者たち VOL.10 津
◎《015》戦争法案に反対する若者たち VOL.9 熊本

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《大学異論42》同志社大学・大麻所持者再逮捕報道の不可解

私は同志社の関係者ではないが、同志社が事件を起こし続けるので取り上げざるを得ない。過日こんなニュースを目にした。

「大学なら警察こないと…」同志社大図書館に大麻持ち込み容疑、卒業生を逮捕 (産経新聞2015年8月31日付)

同志社大学(京都市上京区)今出川キャンパスの図書館で大麻を所持していたとして、京都府警上京署は31日、大麻取締法違反の疑いで、奈良県橿原市内に住む無職の男(25)=窃盗未遂罪で起訴=を再逮捕した。同署によると「吸う目的で持っていた」と容疑を認めているという。
再逮捕容疑は、8月6日午後6時10分ごろ、同キャンパスの図書館で大麻草1袋を所持していたとしている。
同署によると、男が他人のかばんを物色するなど不審な行動をしているのを持ち主の男子学生が見つけ、報告を受けた大学関係者が同署に通報。駆けつけた署員が、男のズボンから大麻を見つけたという。
男は同志社大の卒業生。「大学なら警察官が入ってこないと思った」と供述しているという。

◆「何も盗っていない」被疑者を大学職員はなぜ警察に通報したのか?

この記事は不可思議だ。8月6日に同志社大学図書館で「他人のかばんを物色するなど不審な行動をしている」男を学生が職員に通報し、「何も盗っていないのに」職員が警察に通報をしている。この程度の事で大学職員が警察に通報するものだろうか。この記事通りだとすれば同志社大学職員の感覚はもはや「警察国家」の構成員と言わねばならない。

さらに理解しがたいのは「不審な行動」で通報された男性は「窃盗未遂」で起訴されているが、「8月6日午後6時10分ごろ大麻草1袋」を所持していたことが確認されていることだ。8月6日逮捕時に男性は上京警察で詳細な身体検査を受けて「大麻草1袋所持」が確認されているのであれば、即「大麻取締法」違反でなぜ警察は送検しなかったのか。8月31日になっての再逮捕はいかにも不自然だ。「窃盗未遂」と「大麻取締法違反」では後者の方が明らかに量刑も重いにもかかわらず、逮捕直後には「大麻取締法」違反では起訴されていない。

◆あまりに不可解なので同志社大学広報課に問い合わせてみたら……

不明な点があまりにも多いので、9月4日午前、同志社大学広報課に問い合わせた。

「この事件は産経新聞のみで報じられており(上述の通り)不可思議な点が多いが承知しているか」と聞くと、広報課のハタブ氏は「事件があったことは承知しているが詳細は把握していないので内部で情報を収集する」と約束してくれた。後刻再度問い合わせると広報課の高阪氏が電話に出たので、私は再度「当該被疑者は他人の持ち物を『物色』している(つまり何も取っていない)だけで大学が警察に通報したということか」と質問すると「詳細が分からないので学生支援課に確認します」としばらく電話を保留にされた後、最終的に庶務係長秋田氏に電話が回された。秋田氏によると「自分の鞄から何かを抜き取ろうとした男を発見したので、学生がその男を捕まえて図書館のカウンターに連れてきた」そうだ。「そこで学生と連れてこられた男性に職員が聞き取りを行ったあとに、上京署(110番)へ通報した模様だ」ということだ。

つまり、被疑者はこの時点で「物色する」行為は認定されているものの「何も盗んではいない」のだ。それにもかかわらず図書館の職員は警察に通報をしている。

この取材の中で複数の同志社大学職員に尋ねた。「大学の中では意図的、あるいはそうでなくとも、置き引きや窃盗に該当する事案は多数起こる。図書館から本を無断で持ち帰る人間もいれば、大学の施設・設備に故意で損傷を負わす学生もいる。でも、そのような時に大学が『警察』に解決を求めるだろうか。しかも、今回のケースでは『被疑者』とされる人物は何も盗んでいない。大麻を所持していたのは、たまたま逮捕されたから発覚した付帯的な事実だ。こんな軽いトラブルで『警察』に通報するのは大学として妥当な行為だろうか、『大学の自治』を自ら放棄してはいまいか」

この問に関して名前は挙げないが、ある職員の方は「詳細はわからないが、新聞報道の通りだとすると大学が警察に軽々しく通報するのは『大学の自治』の放棄にあたると言われても仕方ない」と回答された。

◆「大学自治」の大原則が崩壊しつつある

「大学内で起きた問題は大学内で解決する」

これは私の苗字と同じ故人、同志社大学で学友会委員長と京都府学連委員長だった田所伴樹氏が同志社大学学内で、共産党系の学生たちから瀕死のリンチを受け生死の境をさまよった時、入院先の病院で口にした言葉だ。どれほど酷い仕打ちを受けても「大学内の問題は大学内で解決する」この極めて高い哲学を、被害者である田所氏は弱冠22歳にして「学生」として提起した。

かえりみて、今回の同志社大学当局の判断はどうであろうか。複数の職員の方々に取材したが皆さん「現場で何があったか詳細はわかりませんが」と口を濁す。

私は「分からなければ調べて教えて下さい」とお願いするけれども、彼らはその状況を外部に伝えることが禁じられているのか、あるいは調べる熱意がないのか、あいまいで実態が分からない。

◆被疑者以上におかしいのは同志社大学側ではないか?

いいか。こうやって破局への行進は、またしても歩を進めるのだ。誰も悪くない、誰も解らない、誰も責任を取らない。「疑わしい行動をした人間が悪いんじゃないか。それに彼は大麻も持っていたし・・・」との心中の言い訳が聞こえてきそうだ。

違う。断じて違う。学内で暴力事件が起り危機的な状況になっても、学生を守り通すのが大学職員の仕事だ。極端に言えば「学生を支援し守ること」以外に本質的な大学職員の仕事などない。経理も総務も学部事務室も全て学生を支援するために準備された部署だ。

「時代錯誤だ」という批判が既に頭の中で聞こえる。でも私は自分の考え方が間違っているとは全く思わない。

勘違いしているのはこの時代、そして「戦争推進法案」に賛成する学長を引きずりおろす気さえないこの大学のありさまだ。

いささか飛躍が過ぎると思われるかもしれないが、産経新聞の報道が正しければ、被疑者が語った「大学なら警察官が入ってこないと思った」との感覚が被疑者の行為・目的を度外視しても、よほど真っ当な原則に立脚しているように思える。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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《ウィークリー理央眼020》戦争法案に反対する若者たち VOL.14 渋谷

8月2日(日)、東京都渋谷区で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。
主催したのは、SNSやネットを通じて集まった高校生約30名が立ち上げた「T-nsSOWL(ティーンズソウル)」だ。日曜日の渋谷の街を練り歩き、安保法案の反対と選挙権の18歳以上への引き下げの二大テーマについて、同世代への関心を高めるために呼びかけた。
高校生に対しては制服での参加が推奨されたり、スピーチでは「テレビカメラやパソコンの前にいる高校生」に対しての言及もあり、主催者は街を歩く人はもちろんネットでの写真や映像の拡散を明確に意識していた。またSNSでの告知には「#制服デモ」のハッシュダグが用いられ、早い段階から主催と参加者の双方でどのようなデモのビジュアルを作るかが共有されていた。


当日参加した約5,000名の中には大人の姿も多く見られたが、彼らは主催側の意図を理解して多くは後ろの梯団に回って、「先頭を行く子供達、後方を支える大人達」という画作りに積極的に協力した。デモ隊のゴールシーンでは先に到着した高校生たちが大人達を迎えていた。
高校生の呼びかけで生まれた世代間の繋がりを是非とも映像で感じて欲しい。


[動画]戦争法案に反対する渋谷・高校生デモ – 2015.8.2(21分8秒)

このデモを呼びかけた男子高校生は、サウンドカー上からこう言った。

「僕は少し前まで高校生が政治や憲法に興味を持つ事はどこか違和感があると感じていました。
ですが、こうやって活動している中で、僕は思いました。
高校生に政治に関心を持たせないようにしているのは社会の空気だと。
だから今、学校では政治の話はタブーになりつつあります。
早ければ来年の夏、選挙権が18歳に引き下げられます。
今こそ高校生が政治について関心を持たなければならないんじゃないんでしょうか。
このままでは『まあ選挙権を取ったから、とりま選挙に行ってみるけど、
どこに入れていいか分からないし、大きいし自民党でいいや』と、
そういう票を伸ばす結果になってしまい、
そういう人が増えれば増えるほど、権力者が喜ぶのです。
何故かって、それは何も考えずにただ票を入れてくれるんだから知らぬ間に、
暮らしづらい社会になってしまうんじゃないかと、僕は思います。
だから、僕らは今回高校生に興味を持ってもらうため、
高校生が参加しやすいデモを企画し、実行しました。
このデモをきっかけに、今日来てくれている高校生や、
今渋谷の街を歩いている高校生や、今テレビカメラやパソコンの前にいる高校生に、
『僕らが有権者である』っていうことと、
僕らが今後、安倍みたいな独裁者を止め、歯止めする、
そういう人達になるんだという重要さとチャンスを少しでも感じてもらいたいなと思います」

このスピーチを聞けば、彼らがしっかり考えて行動を起こしたことが充分に分かると思う。
しかも、相当に勇気を出して、人前に立つことを決めたはずである。それは「最初の一歩を踏み出す不安」よりも「安倍政権が国民に抱かせる不安」の方が遥かに大きいから、全国各地で若者たちの反対の声が上がっているのだろう。

高校生から老人まで、ありとあらゆる世代がこの法案に反対の声を上げている。それが今の日本だ。政権は反対の声を聞け。


[2015年8月2日(日)・東京都]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《019》戦争法案に反対する若者たち VOL.13 福岡
◎《018》戦争法案に反対する若者たち VOL.12 福島
◎《017》戦争法案に反対する若者たち VOL.11 長崎
◎《016》戦争法案に反対する若者たち VOL.10 津
◎《015》戦争法案に反対する若者たち VOL.9 熊本

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同志社「良心」の凋落──育鵬社採択を「適切」と開き直る同志社香里中学滝教頭

 

転落は減速を知らない。本コラムで既に取り上げてきた育鵬社の教科書を同志社大学の付属校である同志社香里中学が採択することを決めた。以下やや長いが内容が重要であるのでこのニュースを報じた『CHRISTIAN TODAY』(2015年9月3日)の全文を引用する。

同志社香里中学(大阪府寝屋川市)は、2016年度以降に使用する歴史と公民の教科書として、それぞれ育鵬社発行の教科書を採択した。大阪府が8月28日発表した。「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)の元幹部らが執筆に加わっている育鵬社の教科書は、歴史に関する記述について議論もあり、一部の地域では採択やり直しを求める要請なども出ている。育鵬社によると、私立学校の16年度教科書採択状況はまだ全て出そろっていないが、キリスト教系の学校で同社の教科書採択が決まったのは、同志社香里中が初めてだという。

同志社香里中はこれまで、歴史と公民の教科書は帝国書院のものを使用してきた。16年度に、新たに育鵬社の教科書を使用する生徒は240人。滝英次教頭は、「教科書採択の年(である今年)に、教科、また学校として、文科省の検定教科書の中から、いろんな議論を踏まえた上で慎重に選定した」と話している。

育鵬社の教科書『新しい日本の歴史』と『新しいみんなの公民』は、元つくる会
のメンバーらによる日本教育再生機構が組織した「改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会」(教科書改善の会)の関係者らが執筆・監修している。育鵬社は、フジサンケイグループの出版社である扶桑社の教科書出版部門を独立させた出版社で、扶桑社時代を含め、中学校の歴史、公民の教科書が検定に合格し発行されるのは今回で4回目。一方、つくる会は自由社から独自に教科書を出している。

育鵬社の教科書については、日本国憲法が連合軍総司令部(GHQ)に強要されたものだとする、いわゆる「押し付け憲法論」に沿った内容になっていることや、太平洋戦争の沖縄戦における住民の集団自決について、日本軍の強制性についての記述を避けているなど、さまざまな指摘がある。

一方、育鵬社の教科書の編集会議座長である伊藤隆・東京大学名誉教授(歴史)、川上和久・明治学院大学教授(公民)は、広報誌『育鵬社通信 虹』(2015年4月号)での共同メッセージで、「戦後70年の間には、教育の世界にも不毛なイデオロギーが持ち込まれた時期がありました。こうした一面的な物の見方を排し、生徒が真に学ぶ意欲を高め、多面的・多角的思考ができる人材となり、自らの郷土に貢献し、ひいては世界で活躍できるようになることを願い編集しました」などと述べている。『CHRISTIAN TODAY』(2015年9月3日) (※文字強調は引用者)

学校法人同志社には系列の中学校として「同志社中学校」、「同志社女子中学校」、「同志社国際中学校」があるが、その中で今のところ「同志社香里中学」だけが育鵬社の教科書採択を決めたようだ。

◆「教科書が変わったら教育内容が変わると思っていらっしゃるんですか?」と開き直る滝教頭

そこで上記記事に登場する同志社香里中学の滝教頭に電話で実情を聞いてみた。私が育鵬社の教科書には多くの問題や史実の誤りがあり、キリスト教系の学校の教科書と皇国史観は相いれないのではないか」と問うと「教科書選定は学校内で適切に行われた。文科省の検定を通った教科書の内容を精査し決定した」という。

「この教科書採択にあたり校内の社会の先生などから反対はなかったのか」の質問には「それは学校内のことなのでお答えできません」とかなり強気で答える。

「昨年までは帝国出版の教科書を利用されていたが、育鵬社の教科書とは内容に大きな差がある。育鵬社の教科書がキリスト教系、しかも新島襄が開いた学校で採択されることを問題と思わないか」と聞くと、[太字→]「不適当とは思わない。教科書が変わったら教育内容が変わると思っていらっしゃるんですか?」[←太字]と逆に開き直られてしまった。滝教頭にはとりつくしまもない。問い合わせや講義の電話対応に手慣れている。この学校に民主的なプロセスなど無いだろうと想像させるに十分な「失礼」な応対だった。

◆幸福の科学学園と並んだ同志社香里──育鵬社教科書を採択した私立中の顔ぶれ

今年は4年に1度の次年以降使用する教科書を中学校が選定する年にあたる。大阪市をはじめ都立の中高一貫校など公立校でも育鵬社教科書の採択が進行している。じわじわと歴史修正主義の水位は上がってくるばかりだ。

それにしても、「あの」同志社系列中学での採択は驚嘆に値する。ちなみに前回(2011年)の採択時、私立中学で育鵬社の教科書を採択したのは以下の学校である。

《歴史》(12校)
国学院大学栃木、幸福の科学学園、樹徳、麗澤、福井工業大学附属福井、麗澤瑞浪、津田学園、皇學館、浪速、開星、岡山学芸館清秀、岡山理科大附属

《公民》 (11校)
国学院大学栃木、幸福の科学学園、麗澤、福井工業大学附属福井、麗澤瑞浪、津田学園、皇學館、浪速、清風、開星、岡山学芸館清秀

私立学校は各々の建学の精神に基づいて教育方針を決めればよい。だから「幸福の科学学園」が育鵬社の教科書を使うのは別に驚くに値しないし、独自の教育理念を持つ麗澤や、神道を建学の精神にしている皇学館といった学校が採択の中心であったのはむしろ自然である。しかし他の学校は(こういっては失礼だが)清風を除いてそれほど際立った存在の学校ではない。

このラインナップの中には、有名総合大学の付属中学の名前はない。国学院は多くの系列校を持っているが、採択したのは栃木だけだ。その中に今回「同志社香里」の名称が名誉にも加わるのだ。

◆同志社が「リベラリズム」を捨て「翼賛学校法人」へ独走する時代

学長村田晃嗣が衆議院特別委員会公聴会で「戦争推進法案」賛成を表明した大学を中心とするこの学校法人は、先人が築いてきた「リベラリズム」の歴史を完全に捨て去り、大手有名私学の中では「翼賛学校法人」として独走している。

系列中学の「同志社中学校」では村田の国会発言後、いち早く辞任を求める声明を出すなど良心的な教職員の方々が頑張っている。今日の電話取材に応じてくれた同志社中学の先生は「正直びっくりしました。同志社中学ではそのような動きはありませんし、考えられません。全く酷い時代ですね」とため息を漏らしていた。

「同志社香里中学校」の蛮行は、キリスト教系学校として「全国初」の最悪選択を行った恥ずべき学校として歴史に名を残すだろう。教育機関が「確信的」に犯した罪は金輪際消えることがない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎フジサンケイ「育鵬社」公民・歴史教科書の採択拡大で子供の臣民化がはじまる
◎今こそ同志社を<反戦の砦>に! 教職員有志「安保法制を考える緊急集会」開催
◎同志社大学長発言を「個人の意見」と容認した理事会に反省なし!
◎同志社の「良心」は「安保法案」賛成の村田晃嗣学長を許すのか?
◎過去を披歴しない「闘士」矢谷暢一郎──同志社の良心を継ぐ

 

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《韓国特派員・ウナの留学日記》8月15日の思い出は、消火器の白い粉?

8月30日に国会議事堂前でおこなわれた、安全保障法案への大規模な抗議は、韓国でも報道されていました。7月に法案が衆議院で可決されて以降、これまでもニュース専門チャンネルのYTNが「戦争したくなくてふるえる。」デモの様子などを取りあげてきましたが(その時は「日本 軍事大国化 始動」という物騒なテロップが……)、普段あまり政治に対して声をあげない日本人が12万人も集まったこと、他の地域でも同時多発的に抗議がおこなわれたことなどが紹介されていました。ウナの友人も駆けつけたそうで、彼女からの画像を見るとひとめで、「あまりの人の多さにヤバい」ことはよくわかりました。

韓国で最近、多数の人が集まったイベントというと、やはり先月の光復説(解放記念日)につきます。8月15日は景福宮前の世宗大路は完全通行止め、歌あり、パフォーマンスありのイベントステージができていたり、大極旗がそこかしこに飾られ「私達は皆、大韓民国」なんて文字パネルも登場して、大変にぎやかな様子でした。

ケータイ店の前。「光復説特価割引イベント中」と、前回も紹介した「記念日割」があちこちで
大極旗パネルの前で、記念撮影に興じる人たち

そんななか目をひいていたのが、韓国政府の女性家族部が主催した「日本軍“慰安婦”問題に対する、学生・青少年作品 公募展 受賞作」と題した、従軍慰安婦についてのイラスト展でした。多くの家族連れが足をとめ、絵を目にして色々と話しています。世界中の人が集まる場所で慰安婦展をすることには、正直私は違和感を覚えました。しかし韓国の歴史からは、切り離すことのできない問題なのでしょう。根本的な解決がなされないまま時間だけが過ぎていくことが、本当に残念でなりません。

慰安婦展の会場。雨が降ってなかったのが幸いでした

景福宮のすぐ近くにある、日本大使館前にも足を運んでみました。というのもここには、慰安婦にされた少女を模した「平和の少女像」があり、かつ8月12日には自身に火を点けて抗議をした人が現れて、大騒ぎになったからです。

たどり着いてみると、警察のものものしい警備が……。「BOYCOTT JAPANESE GOODS」「日帝侵略戦犯! 安倍晋三総理! 謝罪賠償促求!」などと書き、さらに旭日旗にハーケンクロイツを組み合わせたプラカードを掲げた一団が少女像の横に集まり、「安倍晋三は謝罪しろー!」などと、気を吐いていました。ヒー! 恐い……。最初は遠巻きに見ていましたが、警備がゆるかったので近づいてみることにしました。日本人とわかると糾弾されるのではとビクビクしていましたが、彼らは私のことなど完全に無視。真隣にたっても気にも留めず、目は日本大使館にのみ向いていました。

日本大使館前。安倍晋三糾弾プラカは技巧に凝ってました

程なくして参加者が、安倍晋三に見立てた空気人形に火を点けた瞬間、警察が消火器をブシューっと撒いてあたりは騒然。私も消火器の粉を吸いまくり、むせまくってしまいました。次に彼らは道端に散乱した安倍プラカードにも火を放とうとしましたが、これまた瞬時に消火器で制圧。もうドロロン煙幕状態で、何も見えやしません。少女像も当然、消火器の粉にまみれていました。

「この拭き方はないでしょ!」と、苦言を呈したい

ひととおり抗議を終えたら参加者達は満足したのか、三々五々散っていきました。この消火器の粉、どうすんだよ! 一部の参加者が後片付けをしたり、少女像を布で拭くなどしていましたが、その拭き方は「もっと優しく扱え!」と言いたくなるほどのもので、とてもイライラさせられました。
違和感を覚えたり、イライラしたり。でもこれは日帝時代の植民地政策と戦争が生んだものなのだから、やはり戦争はいけない。過去の戦争の清算も済んでいないのに、新たに戦争ができる国を目指すなんて、愚の骨頂としか思えません。だから安全保障法案なんて、ダメに決まってます。でもそんなモヤっとした気分は、光復説70周年記念の花火大会に行ったら見事にリセットされました。きれいなものや美しいものは、心を穏やかにする力があるのですね!

世宗大路前のイベント会場は、大極旗のオンパレード

▼サ・ウナ
韓国の地方都市にある某大学に留学中の女子大生。世界中から来ている学生たちによる、ミックス言語で繰り広げられている「かわいい~」「○○さんかっこいい~」「○○が××のことを好きだって言ってたよ~」などの会話に、日夜イライラしながら学業に勤しむ25歳。

《韓国特派員・ウナの留学日記》
◎《05》メッコールの里・椒井薬水(チョジョンヤクス)は韓国版玉川温泉?
◎《04》日帝支配からの解放を祝う「独立記念館」へ
◎《03》日帝支配時代について、フツーに教えてます
◎《02》「ゆとり」は世界の共通語!?
◎《01》MERSアタック!? in ソウル

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《韓国特派員・ウナの留学日記》メッコールの里・椒井薬水は韓国版玉川温泉?

先日、韓国に住んでいる友人の家に遊びにいきました。そこで飲んだ炭酸水がとてもおいしかったので、どこで売っているかを彼女に尋ねると、ニヤリとしながら「これ、メッコールの会社が作ってるんだけど、その辺のスーパーでフツーに売ってるよ」と言いました。

メッコール。皆さんも聞き覚えがあるかもしれません。麦味のコーラというか、気の抜けたビールというか、とにかく麦風味の韓国ではメジャーなお飲み物です。そして製造会社の一和(イルファ)は、あの統一教会との関係が深いことで知られています。私が飲んでいる「チョジョン炭酸水」なるお飲み物も、一和が製造しているとのこと。

「椒井薬水ってところから汲みあげてるんだけど、ここ、炭酸温泉があって水も飲み放題なんだって。でも炭酸温泉だから、つかると局部が痛くなるらしいよ」(友人談)

なんですって? 炭酸水飲み放題?

というのも私は極度の炭酸水好きの温泉好き。これは行くしかない。ということで週末を利用して、チョンジュという街の郊外にある「椒井薬水」を目指すことにしました。チョンジュといえばビビンバを想像する方もいらっしゃると思いますが、あれは全州でこっちは清州。音は似てますが全然違う場所で、ガイドブックもロクにありません。しかも某宗教と縁が深い場所に1人でノコノコ行くというのは、かなりの不安がつきまといます。行こうと決意したものの、前の晩、友人に「私が帰ってこなかったら捜索して」と、言い残しておきました……。

ソウルからバスで清州バスターミナルを目指し、そこから市内バスで1時間と少し。たどり着いた先で見たものは、巨大なメッコール工場と「世界三大鉱泉 椒井」と書かれた石碑。椒井薬水はアメリカのシャスタとイギリスのナポリタスとともに、世界三大鉱泉に選ばれたらしいですが、シャスタはともかくナポリタスはどこにあるのか、調べてもよくわかりません。そしてなんでもここには、ハングルを作った朝鮮時代の王様、世宗(セジョン)大王も眼病を癒すために訪れたそうです。彼の銅像もありましたが、残念ながら蜘蛛の巣が張っている有様でした……。

温泉地に建っている一里塚のような石碑
ひときわ目立つ、メッコールの工場
炭酸水を献上される、世宗(セジョン)大王

目指す温泉は、銅像のすぐ後ろにありました。駐車場は満車で、駐車待ちの車列ができていた程。人気スポットに7000ウォン(約800円)払って入ることにしました。裸になったところを羽交い締めされて、宗教施設に連れて行かれたらどうしよう……。一抹の不安を覚えながらも浴場の扉を開けると、そこはまさにマンガ『テルマエ・ロマエ』の世界! かつてはヴィーナスやアフロディーテだったであろうハルモニ(おばあちゃん)達が、肢体をあらわに温泉にサウナに水風呂で水泳にと、思い思いに過ごしていました。海外で盗撮犯にはなりたくないので温泉内の写真はありませんが、レジャーよりも湯治目的っぽい感じで、例えるなら秋田の玉川温泉といったところでしょうか。天井の照明は赤・黄色・青の三色旗状態のステンドグラスで、違う宗教の施設かと思いました。

某宗教の息がかかる「椒井元湯」。カギが閉まっていて中には入れません
老若男女が真っ昼間から集う、大人気の温泉施設「椒井薬手温湯」

ウワサの「局部が痛くなる」源泉は沸かしていない水風呂状態なので、少しずつ慣らしながら浸かりましたが、とくにそのようなことはありませんでした。しかし亀の口からピュピュッっと、なんだかイヤらしく源泉が出てくる蛇口で目を洗ってみると、確かに粘膜がピリピリきました。世宗(セジョン)大王ももしかしたら、このピリピリを求めていたのかもしれません。

どうやらこの地にはメッコールの工場があるというだけで、温泉地一帯を某宗教が仕切っているというわけではなさそう。私も安心して温泉を楽しみ、道端の水汲み場でたっぷりと源泉を頂いて帰りました。

寮に戻って冷やしてから飲んでみると、ちょっと泥臭いながらも友人の家で飲んだ、炭酸水と同じ味がしました。旅行者がわざわざ訪れるほどの場所ではないと思いますが、長期滞在者や私のような炭酸水マニアだったら、一度は行く価値があるかもしれません。

不思議な感じになっている、チョジョン炭酸水の顔はめパネルがありました

▼サ・ウナ
韓国の地方都市にある某大学に留学中の女子大生。世界中から来ている学生たちによる、ミックス言語で繰り広げられている「かわいい~」「○○さんかっこいい~」「○○が××のことを好きだって言ってたよ~」などの会話に、日夜イライラしながら学業に勤しむ25歳。

《韓国特派員・ウナの留学日記》
《04》 日帝支配からの解放を祝う「独立記念館」へ
《03》 日帝支配時代について、フツーに教えてます
《02》 「ゆとり」は世界の共通語!?
《01》 MERSアタック!? in ソウル

『NO NUKES voice』第5号 amazon.co.jpでも発売中!

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有名スポーツ選手たちが乱発する「愛国発言」処世術

こんな言い方をすると、また叱られるのを承知であえて言う。

橋本聖子

「高いレベルで活躍したスポーツ選手は社会的発言を慎重に」と。自転車、スケートで五輪に出まくった橋本聖子は自民党から出て既に当選4回。日本スケート連盟の会長にもなり、もう古参政治家の風格だし、同じスケート出身では堀井学も知らない間にちゃっかり自民党議員に収まっている。元巨人投手の堀内恒夫も現役の自民党国会議員だとご存知の方はどれくらいいるだろうか。「やわらちゃん」こと谷亮子は小沢が天下を取ると見間違えたに違いない。「民主党」から当選したが、こんなことになるのが分かっていれば最初から自民党から出ていただろう。

与党政治家でなくとも、「語り部」となって恥ずかしくも恐ろしい発言を行う元スポーツ選手には毎度がっかりさせられる。スポーツ選手として一流を極めた人には頭脳明晰な人が少なくないことは知っている。だがその知名度や頭脳はほとんど「時の権力」に収斂されて行ってしまい利用される。ご本人たちもそれを問題とは感じない。

◆暗い本性がにじみ出る為末大

為末大

語り部として、最近その暗い本性をあからさまにし出して来た人間に為末大がいる。為末は元400mハードルの選手だった。世界選手権で2大会連続銅メダルを獲得し、日本人としては卓越した競技者だった。現役中から陸上選手としては口数の多い方だったが、最近為末のツイッターには下記のようなやり取りがある。

「左翼思想とは、自己中心的で自己陶酔して優越感に浸る幼稚な人間が陥る病気らしいですからねw「自分は凄くてお前らは駄目なんだ」という他者を蔑む意識があるから、馬鹿にし蔑む他者を「国家」「権力」に転化して反国家、反権力の左翼思想に傾倒するらしい」

これはある人物が為末に向けて投げかけた言葉だ。これに対して為末は以下のように答えている。

「確かにいい年をこいたおっさんが何かに傾倒して自己陶酔するのはみっともないかもしれないですね 」、「なるほど自分は凄くてお前らはダメなんだという他者を蔑む意識があるとだめですよね」とコメントしている。

また、「政治家と話をするとそんな悪代官みたいな人なんてそうそういないと気づくし、中国人と話をするとそんなに日本嫌いの人ばっかりでもないとわかるし、障害者と話をするといいやつもいればやなやつもいるということがわかる。友達の幅を持つことがバランスを保つ上で大事」と大所高所からご説を仰せられるが、個人で会って「悪代官」ズラをして話す政治家などよほどのアホであり、政治家の評価は彼らがどのような政策を実行したか、しようとしているかで判断されるべきだという基本的な評価基準を為末は理解していない。また自民党政治家の連中は次期選挙の比例区候補として為末の名を挙げていることだろう。これらのコメントから分かるのは、為末は多くの与党政治家と接触していることと、「左翼嫌い」であることだ。最近は目出度くも「バンキシャ」を始めとする低俗テレビ番組へ「コメンテーター」としての出演も多いらしい。

為末は正直な告白もしている。

「僕は未だに国と呼ばれるものが一体なんなのかがわからない。人なのか土地なのか組織のことなのか価値観のことなのか」と。これは本音だろう。だが大々的に社会的な発言を行うのならば、「国」の本質について回答が出なくとも、自分の中で考えに考え抜いてから言葉にすべきだ。「国」や「国家」をどう考えるかの参考書はいくらでもあるのだから。

また、「昔からわからないことを素直に聞く度に相手に鬱陶しいと言われて、それが辛くて小学校中学校ぐらいは黙っていたけれど、大人になって試しに言ってみたら今度は逆に褒められてあの時と何が違ったんだろうと考えている」とある。

「大人になって試しに」言ってみた為末は小中学校時代の無名な生徒ではなく、マスメディアにとって「商品価値」がある人間に変わったからだ、と言う簡単な理由もわかっていないようだ。為末ではなく一般の市民が同僚や先輩に同じ問を投げかけても、それは「鬱陶しがられる」ことだと言う洞察力が為末にはない。

◆外国人力士の台頭を「蒙古襲来」と語った舞の海

舞の海

為末ばかりを叩いたが、これは如何なものかと思われる元スポーツ選手の発言は枚挙にいとまがない。

例えば『週刊金曜日』によれば、舞の海が改憲推進団体主催の集会でこんな発言をしたという。
「元相撲取りの舞の海は4月29日の改憲を進める団体が開いた『昭和の日をお祝いする集い』で、『昭和天皇と大相撲』と題し“記念講演”をした舞の海秀平氏が『外国人力士が強くなり過ぎ、相撲を見なくなる人が多くなった。NHK解説では言えないが、蒙古襲来だ。外国人力士を排除したらいいと言う人がいる』と語ると、参加者から拍手が湧いた。“日の丸”旗を手にした男性が『頑張れよ』と叫び、会場は排外主義的空気が顕著になった。さらに舞の海氏が『天覧相撲の再開が必要だ。日本に天皇がいたからこそ、大相撲は生き延びてこられた。天皇という大きな懐の中で生かされていると感じる。皇室の安泰を』と結ぶと、大拍手が起こっていた」。(週刊金曜日記事より)

おいおい舞の海、このセリフ横綱以下モンゴルを始めとする外国人力士の前でも発言できるのか?

スマートなアスリートは発言も慎重だ。為末や舞の海とは逆に。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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《ウィークリー理央眼019》戦争法案に反対する若者たち VOL.13 福岡

7月29日(水)、福岡県福岡市中央区で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。
安倍政権が7月15日に行なった強行採決に危機感を抱き、自ら動かなければと福岡の大学生らが「FUKUOKA YOUTH MOVEMENT」を結成した。デモを主催したことがないのと、大学のテスト期間が重なり準備は大変だったというが、初めてのデモを滞りなく行なっていた。


[動画]安保法案いけんくない!?パレードデモ@福岡 – 2015.7.29 福岡市(8分19秒)

ローカル感あふれる「方言シュプレヒコール」が天神の街に響いた。
今回のデモの為に学生たちが意見を出し合って決めたものだ。デモそのものが怖く、デモで叫ばれる強い言葉が怖かったから、柔らかめの言葉をチョイスしたという。

「安保法案はいけんばい!」
「集団的自衛権はいけん!」
「憲法守らん総理はいらん!」
「うちらで権力しばろうよ!」
「憲法9条がよかろうもん!」
「何よりいのちをまもろうよ!」
「憲法!」「守れ!」
「権力!」「縛ろう!」
「憲法!」「壊すな!」
「いのちを!」「守ろう!」

東京や関西で大学生が立ち上がり、遂に福岡でも大学生によるデモが行われ、他でもない福岡が感じられた。

彼らは言う、若い人達にもっと政治に関心を持って様々なことについて積極的に考えて欲しい、と。
そして、単に、法案に対してNO!と言うだけではなく、自分たちがデモをして人前に立つことによって、今日本で起っていることを、同世代の若い人たちに、ちゃんと自分のこととして考えてもらうきっかけになって欲しいとの願いも込めて、今回のデモを企画し実行したのだ。

デモ出発の前と後に行なわれた参加者スピーチは、事前に原稿が用意されていたものではなく、参加した若者たちの生の声が聞けた。
以下、少し長いがその一部を書き起したので読んでみて欲しい。

女性「安倍さん悪いと思うんですけど、今日本にいるみんなが関心を持っていないっていうのも一つあると思って、だから自由にされちゃうっていうのはあると思うんですよ。それでわたしは今関心のない人達の気持ちをちょっとでもかき立てて、今まで私達の先輩達が作り上げてきた、ずっと守ってきた平和、その平和を守ってきた憲法っていうのを守りたいと思って、その思いを今の世代の若い人達、次の世代を担う若い人達に知って欲しいと思って今活動しています。本来は憲法って言うのは権力者を縛る為のものであるのに、国民がそれによって不利益を被るようなことがあるのは絶対にいけないと思います。その思いを伝えるのはもちろんなんですけれども、やっぱり若い人達がたくさんいる天神で、関心の無い若い人達が自分の意見を持てるように、私は活動していきたいと思っています」

女性「初めてこのようなデモに参加してすごく緊張しました。それに先頭も歩いてしまって、こんな私が歩いていいのかなって思いましたけど、私達若い人が先頭に立って歩いて、声を上げて行かないと、全然安倍さんにも伝わりません。歩きながら何か言われたりもしましたけど、私達は私達の声を上げていきましょう」

女性「生活保護費の総支給額よりずっと高い、この5兆円を使って私たちの頭の上に戦闘機を飛ばし、きれいな海を埋め立て基地を作り、そして隣の国を恐れ、彼らを貶めるような言葉をぶつけ合うような、そんな中で守られる平和を私たちは平和と呼ぶんでしょうか。彼らの言う抑止力なんて、きっと嘘っぱちだと、私はそう思ってここに来ました。もう今日から私たち、若者は立ち上がります。この福岡という街は、アジアのリーダー都市だと、そういうようなスローガン掲げています。それならば、こんな小さな島を出て、私たちは、いろんな場所で、いろんな友達を作ります。いろんな人たちと、いろんな言葉で、互いの文化を交わし合って、歌を歌いながら、いつか軍事の、基地や戦闘機じゃなくて、私たち、ひとりひとりが、そんな戦争の抑止力なんだと、いつか言ってやりたいと思って、ここに集まりました」

女性「今日初めてデモっていうものに参加して、且つ主催者っていう立場で、何もわからなくて参加したんですけど、直前とかもどれだけの人達が来てくれるんだろうって思って、すごいドキドキしながら待ってたんですけど、こんなにたくさんの人が来て一緒に声を上げてくれて、すごく今心強い気持ちです。新聞とかを読んでいて集団的自衛権とかいろいろ出てきて、わかんないから自分なりにすごく勉強して、国会中継とかも見て、政府が出してるQ&Aも読んで、でもどれだけ見てもわからなくて、すごく不安な気持ちとか怖い気持ちになって、その不安な気持ちとか怖い気持ちっていうのを、解消してくれる答えが全然見つけられなくて、きっとそういう人がいっぱいいて、そういう気持ちでみんな集まってくれたのかなと思います」

男性「僕は今大学三年生です。今日初めてこのデモに参加しました。率直な感想としては、こういう風に声を上げるっていうのは、本当に勇気がいるなあっていう風に思いました。最初、ここに来た時、僕は震えていました。今も若干震えています。でも、こうやって声を上げるっていうことは非常に大事な事だと思います」「今この流れが全国各地に広がっています。この運動をこの先もずっと継続的に続けて行けたらと思っています。みなさん様々な考えを持って参加してるとは思うんですけど、今日こういう風にして自らの考えを示す事が出来たっていうのは、大きな一歩だと思っています」

男性「同じ大学生が何か声を上げてるっていう事で、気になって法案を調べてみたら、色々おかしなところがあるみたいで、それで何よりも僕が反対したいのは、自分、友達に自衛隊の子がいるんですけど、その子を戦地に派遣する法案を僕は絶対に通す事は出来ないと思いました。自分の一緒に部活とかをしてきた仲間が、まるでスプラッター映画のように戦地で殺されるような様は絶対に想像したくないし、それに反対するために何かしとかないと絶対に後から後悔すると思ってこの活動に参加させてもらいました。最初怖かったんですけど、本当に参加してよかったと思いました」

女性「今日も高校生も来てくれて、でも制服姿だからそんなに前には出れないけど、でも来てくれて、それって本当に草の根的にというか、本当に名も無い人達が声を上げてきてる、全然政治の話は意識高いやつがやってるとか、そういう問題ではなくて、自分たち一人一人の問題なんだっていうのを、今日デモをしてみて自分でも実感したし、またこれをいろんな人に広げていかないといけないなって思いました」

自らの行動に対し不安や恐怖と同時に希望を感じ、現状を一緒に変えようという気持ちが溢れ出ていた。
勇気を出して表に立った彼らの後ろには、まだ見ぬ多くの若者たちが見えたような気がした。



[2015年7月29日(水)・福岡県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《018》戦争法案に反対する若者たち VOL.12 福島
◎《017》戦争法案に反対する若者たち VOL.11 長崎
◎《016》戦争法案に反対する若者たち VOL.10 津
◎《015》戦争法案に反対する若者たち VOL.9 熊本
◎《014》緊急寄稿・朝日新聞と冨永特別編集委員のおわび

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