《ウィークリー理央眼026》戦争法案に反対する若者たち VOL.20 新宿






SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)と安全保障関連法に反対する学者の会が新宿伊勢丹前の歩行者天国で戦争法案(安保関連法案)に反対するアピール街宣を行った。
あいにくの天候であったが、1万2千人が詰めかけ、日曜の目抜き通りに「戦争反対」のコールが響き渡った。
そして、日本共産党の志位和夫委員長、民主党の蓮舫代表代行、社民党の吉田忠智党首、元公明党副委員長の二見伸明氏も登壇し、手を繋いで共闘をアピールした。

安倍政権はここに集まった多くの人々の声を軽視し、外交日程を理由に秋の臨時国会から「逃走」する気らしい。

[2015年9月6日(日)・東京都]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《025》戦争法案に反対する若者たち VOL.19 川越
◎《024》戦争法案に反対する若者たち VOL.18 郡山
◎《023》戦争法案に反対する若者たち VOL.17 弘前
◎《022》戦争法案に反対する若者たち VOL.16 仙台
◎《021》戦争法案に反対する若者たち VOL.15 秋田

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倒すか?倒されるか?日本キックボクシング連盟「大和魂シリーズ」vol.4報告

10月10日、後楽園ホールで開催された「大和魂シリーズ」は、「倒すか倒されるか」がキャッチフレーズの日本キックボクシング連盟興行。NKBライト級タイトルマッチがメインイベントだ。チャンピオンの大和知也(SQUARE-UP)は今回が初の防衛戦。挑戦者はその大和知也が4月に63.0kg契約5回戦で僅差の判定負けを喫した俊輝(八王子FSG)である。

大和知也

◆NKBライト級タイトルマッチ──大和知也 VS 俊輝

今回も俊輝の先制攻撃のジャブ、ローキックの的確差で大和を苦しめた。俊輝のローキックがもっとしつこく蹴っていれば明確な差になっただろうが、それをさせない大和の反撃も地味ながらコツコツとヒットさせる圧力があった。俊輝が前回同様の僅差判定勝利かというムードの中、0-1俊輝優勢の引分け。大和知也はかろうじて初防衛。俊輝は王座奪回成らず。

大和知也が今年のシリーズ名となる主役でありながら、俊輝を倒せなかった今年の反省は残るにせよ、来年は高橋三兄弟が台頭して来る世代交代が迫る年。更なる奮起に期待したい。

 

◆NKBウェルター級王座決定トーナメント準決勝2戦

アンダーカードながらNKBウェルター級王座決定トーナメント準決勝は、2位の安田一平(SQUARE-UP)が4位の稲葉裕哉(大塚)を判定3-0(50-47、50-46、50-47)で勝利し、決勝に進出した。

安田の重いパンチ攻撃がしつこく稲葉を圧倒した。稲葉は1ラウンドから鼻血を出し、顔を腫らしながら倒れず反撃に転じ、蹴りの少ないパンチ主体の展開となり、反撃を受けた安田の顔も腫れが増す。試合が終わればお互いの顔とも無残な表情だった。

安田一平(右) VS 稲葉裕哉
安田一平(右) VS 稲葉裕哉

もう一方の準決勝は3位の塚野真一(拳心館)が検診時での体調不良によるドクターストップで棄権となり、1位の石井修平(ケーアクティブ)の勝者扱い(主催者発表は不戦勝)による決勝進出。

高橋三兄弟の三男・聖人(真門)は判定ながら5戦目(4戦1勝2敗1分)のサイクロン狂介(大塚)に勝利し4月のデビュー戦から2連勝(1KO)。

高橋三兄弟の三男・聖人(右)VSサイクロン狂介

◆次回「大和魂シリーズ vol.5」は12月12日に開催

次回12月12日には石井修平vs安田一平でNKBウェルター級王座決定戦、もうひとつのタイトルマッチがNKBバンタム級王座決定戦、1位の高橋亮(真門)vs 3位の松永亮(拳心館)がある。高橋三兄弟が今この連盟での話題の三兄弟。次男の亮が先に王座に手を掛ける。

長男・一眞は6月に元2階級制覇チャンピオンの夜魔神(SQUARE-UP)の引退試合相手として出場、初回は夜魔神を圧倒しながら経験値豊富な夜魔神に逆転されて判定負け、7戦目で初黒星も未だ王座に近い存在で来年の飛躍が期待される。

更にもうひとつのメインイベントクラスが前NKBウェルター級チャンピオン、キャリア13年で、「遅咲き」の44歳の竹村哲(ケーアクティブ)の引退試合。同級5位.マサ・オオヤ(八王子FSG)を相手にラストファイトの予定。今年4月には元・全日本ライト級チャンピオン.大月晴明と引退カウンドダウンに入った40代対決、1ラウンドで大月の爆腕に倒されたが現役として悔いなく燃え尽きるには最高の相手だった。

◆昭和キックブーム終焉後、1984年に設立された日本キックボクシング連盟の31年

「大和魂シリーズ」主催の日本キックボクシング連盟は、昭和40年代のキックブームの後、テレビが離れて低迷期に入り、行く当てなく彷徨っていた日本キック界に、昭和59年11月、主要団体が一旦統合された団体だった。

あれから31年になる。すぐに分裂と脱退を繰り返し、他団体の豪華な国際戦、ムエタイタイトルマッチを行なうようには敵わない、ひたすら団体内対抗戦の地味な団体ではあったが、昔ながらの「倒すか倒されるか」がキャッチフレーズの息の長い団体となった。2002年に統合ではないが、NJKF、K-U、APKFと共に4団体共通のタイトルNKBを設立、相変わらず離脱はあったが、王座は継続され現在に至っている。

遡れば役員の顔ぶれの流れを見ると、系列的に昭和40年代の旧全日本系色が強い団体である。それも昨年から世代交代の波が押し寄せた。代表理事は渡辺信久氏と変わらないが、興行運営を担う担当が元・日本キック連盟ライト級チャンピオン、小野瀬邦英SQUARE-UPジム会長に代わった。

それまで他団体交流が無く閉鎖的だったが、徐々に交流戦が実現。実力不透明だったNKBが良くも悪くも明確になってきて活性化されてきた。高橋三兄弟のような有望な選手も多いに飛躍できる舞台が揃いつつある日本キックボクシング連盟であり、業界全体も頂点への道のりが明確になってきている今後のキックボクシング系業界でもある。

高橋三兄弟の三男・聖人

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない。」

◎9.27WBCムエタイ戦──強豪たちの本気の対戦がムエタイの権威を高める!

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NJKF-DUEL.3「勝利に飢えた猛獣たちの決闘・第三章」報告

ニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)のDUEL.3(2部)が10月4日(日)、新宿FACEで開催された。以下はその観戦報告。

守屋将VS白井周作
守屋将(NJKFバンタム級5位/新興ムエタイジム)

【NEW JAPAN WARS2 バンタム級】
守屋将NJKFバンタム級5位/新興ムエタイジム)VS 白井周作(NJKFバンタム級1位/Bombo Freely)
わかりにくいが、これはトーナメントの準決勝である。前回の計量オーバーでタイトルを失った白井は、積極的に前に出て行き、このところ連勝続きの守屋に高いキックと右ストレートで初回から打って出る。が、ディフェンスに進化を見せる守屋が寸前でパンチもキックも見切り、首相撲に持ち込み、効果的に蹴りを見舞う。そして白井のスタミナを奪い、終始リードするも判定は29-29、30-29、29-29 でドロー。延長ラウンドで効果的にパンチを当てた守屋が10-9、10-9、10-9で勝利。

【注目マッチ オブ DAY】
NJKF Minerva タイトルマッチ スーパーバンタム級
美優美(白龍ジム)VS 三宅芳美(Take1)
迫力ある女子の実力どうしが激突。王者の三宅は距離を詰められて、ややキックが封じられ、打開しようと裏拳を飛ばすがこれも空を切り、首相撲での攻防と、ローキックを食らい大苦戦。かくして、美優美の効果的な蹴りが何発も2Rに入り、最終的に三宅は力尽きた。判定は29-29、30-29、30-29の判定勝ち。美優美は勝利者インタビューで「判定なのでいまいち納得していません」と強気のコメント。

菜緒

【フォーカスシーン】
10月4日(日曜)に開催されたニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)が主催する、加盟ジムの30代~40代の若手会長により結成された『NJKF若武者会』が主導する『DUEL』シリーズの3回目のイベント。若手キックボクサーがメインの興行、「DUEL.3」(2部)は、男くさい会場に咲いた唯一の花、ラウンドガールの菜緒がかなりのファンを引き連れていた。

菜緒はこの「DUEL」が始まった4月からラウンドガールを務めている。大阪出身でモデル、タレントとして「ロンドンハーツ!」「三村&有吉特番」(テレビ朝日)やTBS恋愛バラエティー『恋んトス』などに出演。スレンダーな肢体とえくぼでファンを拡大。とくに「ホットペッパー・ビューティー」のCMでマツコ・デラックスと共演してからというもの、「あのかわいい子は誰?」と注目されるようになった。

この日、午後4時30分から始まった2部(夜の部)は、女性選手がやんやの声援を浴びて活躍した。くしくも登場した4人はそれぞれ個性的なかわいさがあり、それぞれにファンがついていた。ライトフライ級王者、島津悦子(KICK BOX)があゆみ(新興ムエタイジム)に判定で勝利、スーパーバンタム王者の三宅芳美(Take1)を下した美優美(白龍ジム)は、「写真を撮らせてください」とファンに囲まれていたほど。だが、菜緒がリングにあがり、MCを始めるとこの日、一番の声援が会場を覆い尽くした。

リングアナに「キックボクシングはどうですか」と印象を聞かれると菜緒は「何度か見ているうちに、キックボクシングのファンになりました。負けた選手がつぎの試合で勝つとスカッとします。理想の男性は、引っ張ってくれる力強い人です」とはにかみつつ語ると客席から「オレが引っ張ってやるよ~」と客席から大声でエールが飛んだ。

そしてファイナルの日泰国際戦のスーパーバンタム級の試合「波賀宙也(NJKFスーパーバンタム級王者/立川KBA) VS カメンノーイ・ゲッソンリット(タイ)」に入り、菜緒が2ラウンドのボードをもってリングに上がると「菜緒ちゃんは本日、これで最後のラウンド案内です」とアナウンスされると「ええーっ残念!」と悲鳴が上がったのだ。

「菜緒さんはキックボクシングのファンを大勢、ファンに取り込んだね。メジャーになっていくと思うが、売れっ子になってもキックボクシングのリングに遊びに来てほしいと思います」(格闘技雑誌記者)

格闘技“冬の時代”が続いて久しい。菜緒は、今後、バラエティ番組やドラマの仕事もオファーが来ているという。かくして、格闘技の舞台からスターから出るのは、集客に苦しむ格闘技団体にとって「久々にうれしいニュースである」のはまちがいない。

[文]ハイセーヤスダ
[写真・監修]堀田春樹

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」の管理人。

◎美しきムエタイ女子リカ・トングライセーンのど根性ファイトに大喝采!
◎日本のキックボクシングが情熱と音楽の大国アルゼンチンと繋がった日
◎川崎中1殺害事件の基層──関東連合を彷彿させる首都圏郊外「半グレ」文化

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10月はなぜ未解決の重大事件が多いのか? 刺殺、放火、バラバラ殺人も迷宮入り

社会の耳目を集めた未解決事件については、毎年、事件が発生した日が近づくと、マスコミが捜査の現状や関係者の近況などを報道するのが恒例だ。そんな中、10月は重大な未解決事件がとくに多い月であるように筆者は感じている。

たとえば、警察庁が現在、捜査特別報奨金制度の対象にしている事件だけでも、
(1)2004年10月5日に起きた広島県廿日市市の女子高校生刺殺事件
(2)2009年10月26日に被害者が行方不明になったことに端を発する島根県立女子大生バラバラ死体遺棄事件
(3)2010年10月4日に起きた神戸市北区の男子高校生刺殺事件
と、3件がある。

また、あまり有名な事件ではないが、1999年10月2日に東京都目黒区の目黒不動尊の境内やその周辺で会社経営者の男性のバラバラ死体が見つかった事件や、2000年10月5日に札幌市豊平区でタクシー運転手の男性が刺殺されて現金を奪われた強盗殺人事件なども現在のところ未解決。それぞれ警視庁と北海道警のホームページで情報提供が呼びかけられている。

一方、世間一般には「解決済みの事件」と認識されているが、実際には未解決の事件もいくつかある。警察が犯人ではない人を間違って検挙し、そのまま有罪が確定してしまった冤罪事件がそれである。この「冤罪未解決事件」についても、実は10月に発生した事件は少なくない。

◆「冤罪の疑い」が指摘されている大量放火殺人犯

たとえば有名なのが、先日当欄で「再審取り消し決定のパクリ疑惑」を紹介した大崎事件だ。 1979年10月15日、鹿児島県大崎町で男性の死体が牛小屋で見つかり、原口アヤ子さん(88)ら親族4人が殺人などの容疑で検挙されたこの事件では、懲役10年の判決を受けた原口さんが一貫して無実を訴え、現在は鹿児島地裁に第3次再審請求を行っている。共犯とされる親族3人の信ぴょう性を欠く自白以外には有罪証拠は事実上存在せず、その再審請求活動の現状はマスコミでもしばしば取り上げられている。

16人が亡くなった大阪市浪速区の個室ビデオ放火殺人事件の現場は現在、駐車場に。

一方、世間一般ではあまり知られていないが、密かに冤罪の疑いが指摘されている重大事件もある。2008年10月1日、大阪市の浪速区で起きた個室ビデオ放火殺人事件がそれだ。

店内にいた16人が死亡する惨事となったこの事件では、火災発生時に客として店にいた小川和弘が殺人や現住建造物等放火の容疑で検挙され、裁判では無罪を訴えながら2014年3月に最高裁に上告を棄却され、死刑判決が確定した。確定判決では、小川は自分の現状を惨めに思い、衝動的に自殺を思い立ち、持参していたキャリーバッグに火をつけたとされた。しかし、めぼしい有罪証拠は捜査段階の自白だけ。しかも現場の個室ビデオ店では、火災発生時に小川が滞在した18号室より、その近くにある9号室のほうがよく燃えており、火元は9号室だったのではないかという疑いが指摘されていたのだ。

小川和弘死刑囚が収容されている大阪拘置所

実を言うと筆者は、最高裁の判決が出る半年ほど前、大阪拘置所に収容されていた小川と面会したことがある。マスコミ報道では、顔がやつれて、目がうつろな写真ばかりが紹介されていた小川だが、実際に会ってみると、顔はふっくらし、精悍な顔つきの人物だった。

「はっきり言うて、冤罪ですから。最高裁にも『火元が違う』言うて、(上告審の)弁護士さんが鑑定書出していますからね」

小川は面会室で筆者にそう言い切ったが、何らやましさを感じさせない堂々とした態度に、やはりこの人、冤罪なのではないか……という心証を抱いたものだった。

もうすぐ10月は終わるが、ここで紹介した事件が解決したというニュースは今年も聞かれなかった。容疑者が検挙されていない事件はもちろん、無実の容疑者が捕まっている事件も一日も早く真犯人の検挙に至って欲しいと願うばかりだ。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年、広島市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、フリーのライターに。新旧様々な事件の知られざる事実や冤罪、捜査機関の不正を独自取材で発掘している。広島市在住。

◎再審取り消し決定文書にもパクリ疑惑!──冤罪説が根強い鹿児島「大崎事件」
◎発生から15年、語られてこなかった関東連合「トーヨーボール事件」凄惨な全容
◎3月に引退した和歌山カレー被害者支援の元刑事、「美談」の裏の疑惑

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2020年、亡国の東京五輪──近代五輪は一貫して「政争と利権の祭典」だった

エンブレム盗作問題では、下村前文科大臣だけは首を飛ばされた。代々木の国立競技場は改修すれば使えるという声も多い中、「もう間に合わない」とあっという間に取り壊された。本当に間に合わなかったのであれば、もう2020年東京オリンピックは開催できないのではないか。

「間に合わない」のではなく、「取り壊して建てなおさないと、ゼネコンや我々が潤わない」が連中の本音だったのだ。

端から嘘でたらめの連発と金を積んで、無理矢理誘致したのが2020年東京オリンピックだという事は、この期に及んでもまだエンブレムが仕切り直され、メインスタジアムとされた競技場建設の方向性すら定まらない事実により誰の目にも明らかにされた。自民党の中からでさえ「メインスタジアム建設は不要じゃないか」という声まで出てきた。

なにが「おもてなし」だ。「福島第一原発事故の汚染は完全にブロックされていて、過去も現在も未来も健康被害は一切生じません」と空前の空手形を切った安倍の軽舌にこの島国の住民はもう慣れてしまっているけれども、犯罪的ですらあるこの虚言に疑問を呈さず「2020年東京」に票を投じたIOC理事の連中の頭の中はどうなっているのだろうか。

◆その崇高な理念とは一度も相いれることがなかった「政争・利権の祭典」

などと、泥棒に講釈をたれるような無駄をいくら語りかけても無駄であることは、先刻承知ではある。「オリンピックの精神」という一見崇高に聞こえる理念など、近代オリンピックが復活して以来単なる「戯言」に過ぎなかったし、残念ながら競技者の頂点を目指したいという純粋な思いと一度も相いれることはなかった。

まだ、世界が東西(社会主義陣営、資本主義陣営)に分かれていた時代、1980年に開催されたモスクワオリンピックを、米国カーター政権の呼びかけにより日本、韓国、西ドイツ、パキスタンなどはボイコットした。ソ連のアフガン侵攻がその理由だった。次いで1984年に開催されたロス・アンジェルスオリンピックでは、その趣意返しで東側の国々が参加しなかった。

モスクワオリンピックを日本もボイコットすることが確定しそうな時期に主要選手による政府への「抗議」が行われた。金メダル確実と目された柔道の山下泰裕や、レスリングの高田裕司などが中心となり、「政治とスポーツを分けてくれ。私たちの競技の機会を奪わないでくれ」と競技者たちは訴えた。とくに高田の涙ながらの訴えは多くの反響を呼んだが、某良心的全国紙は朝刊のコラムで「スポーツ選手が涙を見せるな」と的外れも甚だしい、政府の提灯持ち記事を書いた。

このようにオリンピックは競技者にとっては最高峰の舞台であっても、それを利用しようとする連中にとっては全く「神聖」という言葉を使うのもおこがましい「政争及び利権の祭典」である。

誘致合戦にアホほどの金を使い、IOC委員や理事の票を買い集め、大手広告代理店が裏で段取りの全てを仕切る。競技者の熱意と全く相いれない、どす黒いそろばん勘定だけが支配するのがオリンピックだ。2020年東京のドタバタを見るまでもなく、1998年開催の長野オリンピックにおける不正経理問題を見てもそれは明らかだ。当時JOC(日本オリンピック委員会)会長は西武の堤義明だったが、多額の赤字を出した長野オリンピックの経理処理に監査が入ると、何と関係書類が全て焼却もしくは紛失していたという、常識的には考えられない杜撰な事件を起こしている。

堤義明1980年代に「世界一の富豪」と米国雑誌「Forbes」で取り上げられるなど、バブル時代を謳歌したが、その後2005年に証券取引法違反で起訴され有罪が確定している。こんな人物であるのに堤は2013年からJOCの最高顧問に就任している。JOCも真っ黒だという事を如実に示している。西武グループも凋落し、西武グループの中核をなしたスーパーマーケット「西友」も米国「ウォルマート」の傘下に入り、2009年以降は売上高を官報に掲載しないほどの落ち込みぶりだ。

これらの事実が示しているのは、オリンピックに関して広告代理店が打ち上げる、綺麗ごとを並べたキャッチコピーなどは全てが虚構であるということである。金儲けと自己の利益にしか興味のない政治家や財界人が、あれこれ無い知恵を絞り「是が非でも2020年東京で」と悪あがきをしているに過ぎない。

ある若者が言った。「皆さんの中には東京オリンピックを楽しみにしている人がいると思います。でも、悪いけど順番が違う。まずは東北の被災者が全員救済されることの方が先ではないですか」と。

まったくもって同感だ。

最も簡単にして、国民に利益をもたらすのは、今からでも遅くない。「東京オリンピック」などという馬鹿げた巨大公共事業を返上することだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎辺野古「埋め立て許可」を取り消した沖縄の自立意識は「琉球独立」へと向かう
◎安保法採決直後に若者弾圧!ハンスト学生への「不当ガサ入れ」現場報告
◎見せしめ逮捕のハンスト学生勾留理由開示公判──大荒れながらも全員釈放!
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す

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日本より先に「一億総活躍」時代を迎えた中国「中間層」は共産党を信じているか?

スイスの金融グループ「クレディ・スイス」は10月14日、資産額で算定した場合、中国の「中間層」が世界最大の規模に達し、米国を上回る水準で成長しているとの調査結果を発表した。(2015年10月15日付CNN Money)

◆「中間層」だけですでに「一億総活躍」の中国

これによると、資産などが5万ドル(約590万円)から50万ドルにある中国の中間層は約1億900万人。2000年以降を見た場合、米国と比べ2倍の規模で中間層が拡大した。同グループは中間層と資産額を関連させた定義について、失業率などに影響される一時的な変化を避けるため収入額より重視したとしている。

クレディ・スイスによると、中国人の成人の資産額は2000年以降、1人当たり約2万2500ドルと4倍に増加。中国の総人口は現在、世界全体の約5分の1を占め、国際的な資産総額の比率は約10%とされる。また、同国の百万長者の数は2020年までに74%激増し、計230万人に到達するとも予測した。

中国の総人口は13億人余りとされているが、そのうち1億人以上が資産5万~50万ドルの「中間層」を形成している。恐るべき急激な資産の成長というしかない。大雑把に日本の10倍の人口でその1割が「中間層」、しかもそれは中国基準の「中間層」ではなくて、国際基準の「中間層」なのだ。

◆その実態は「中間層」ではなく「猛烈な富裕層」の台頭?

まだ中国国民が人民服を身にまとっていた頃、中国好きな書道の教師は「中国の銀行に100万円持って行けば潰せます」と物価の違いを話してくれた。あれはもう四半世紀以上前の話ではあるけれども、実態的に日本への出稼ぎ目的の中国人留学生に何百人も接した経験からも隔世の感は否めない。

でも、冷静に考えれば日本だって戦後30年、つまり1975年には「1億総中流社会」と呼ばれる高度成長期を迎えていたわけで、1978年に鄧小平が「改革開放路線」を打ち出し、実質的な資本主義化を進めてからの時間を考えれば、中国の経済成長に要した時間は驚嘆には値しないのかもしれない。

しかし、急激な経済成長には人件費が安く、輸出が伸び内需も右肩上がりという基本的条件が必須である。これだけの分厚い「中間層」が誕生したことは、すなはち中国の人件費が過去ほど安くはないことを意味するのであり、実際に「世界の工場」と称された製造業の工場群もマレーシアやベトナム、ビルマなどへの移転が進んでいる。人件費に限れば、製造業にとって中国で生産する「うまみ」は既に過去のものになったといっても言い過ぎではないだろう。

さらに、膨大な「中間層」と表現されるけれども、実態は「猛烈な富裕層」の誕生と考えた方がよいだろう。当然その陰には徹底して搾取の対象となる固定的貧困層の存在があり、そのしわ寄せはおおよそ内陸部や漢人以外の民族への押し付けという形で顕在化を示している。経済成長が民族問題を鎮静化することは出来ない。一部漢人とともに成長の恵沢にあずかっている人もいないわけではないが、特に新疆ウイグルや、チベット自治区での反政府行動は経済成長とともに沈静化する動きを見せるどころか、むしろ激化している。

もとより、実質的には独立を指向するウイグルやチベットでは長い抵抗の歴史があった。中国政府はこのような地区に「改革開放」後、積極的に投資を進め、また漢人の移住も促進し民族問題封じこめを図ってきた。しかし現場では観光業を中心とする一定の経済成長が見られたものの、同時に伝統文化の破壊が進行し、むしろ反政府意識は精鋭化してゆく。

日本では散発的に報道される中国国内の「暴動」、や「反政府行動」は腐敗や汚職に苦言を呈する都市部の市民の抵抗だけではなく、中国が解決することの出来ない「民族問題」を原因とするものが少なくない。そして日本で報道される「民族問題」関連の事件は発生している事件のごく一部である。

情報通信技術の発達により、反政府勢力も様々な情報発信を行うことが出来るようになった。中国国内からは勿論、国外の支援勢力を通じて現場で起こっている事件をネット上で探すことが出来る。

◆姿からでは日本人とまったく区別がつかない中国人観光客の急増

東京、大阪などの大都市や京都などの観光地を歩いていると、昨年から外国人旅行者が増えていることが実感される。それは外見から見取れる外国人旅行者の姿であって、今日中国人旅行者は黙っていれば、姿だけからは日本人と区別がつかない人が相当増えている。

まだ、中国からの海外旅行が団体でしか認められていない頃、中国からの「お客様」はたいそう賑やかだったので、直ぐにその存在に気がついたものだ。また、服装や振る舞いも日本人のそれとはかなり異なっていたからどなたでも中国からの旅行者には簡単に気が付いた。今は違う。旅慣れたためか、あるいは生活習慣にも変化があったのだろうか、往時のように大声で会話する中国人旅行者はほとんど見当たらなくなった。

過日東京に出張した際に、詳しく調べていたのに訪問先への道が分からなくなり、自動販売機で飲料を購入していた男性に道を尋ねようと声をかけたら、中国語が返ってきた。「ごめんなさい」といって退散したが、私の目がボケたのか、彼らの振舞いが変化したのか、こんな失態を演じるとは思いもしなかった。

◆急激な成長は必ず矛盾を包含する

冒頭紹介したCNNが伝える通り「中間層」の規模は米国の2倍規模だそうだ。1億人以上が「中間層」なのだから日本の総人口くらい「中間層」が中国には存在するというわけだ。

ただし、急激な成長は必ず矛盾を包含する。成長が急激であればあるほどその矛盾も大きい。日本の「高度成長」が公害や差別などを顕在化させたように、中国の経済成長も必ず大きな矛盾を近く露呈することになるだろう。明らかな形で現れるのは成長率低下による急激な不況だ。年率8%以上の成長を続けてきた中国経済は明らかな失速局面にあるので2015年度は7%台を維持するのが精一杯だろう(水増し分を除けば実態はさらに低い可能性もある)。

そして、本来社会主義や共産主義の国にあるはずのない株式市場の暴落が止まらない。上海では上場銘柄の半数以上が取引停止に陥っており、取引が続く銘柄も続落に歯止めがかかる気配はない。(私は20年ほど前から中国を社会主義、共産主義の国とは看做していない。名前だけ「共産党」という政党が一党独裁する「帝国主義国」だと考えている)

日本のバブルは「土地本位制」への信仰が崩れ去ったことに端を発したが、中国のバブル崩壊は幻想である中国共産党支配の継続が心理的に崩れ始めた時、決定的となるだろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎辺野古「埋め立て許可」を取り消した沖縄の自立意識は「琉球独立」へと向かう
◎安保法採決直後に若者弾圧!ハンスト学生への「不当ガサ入れ」現場報告
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す

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再審取り消し決定文書にパクリ疑惑!──冤罪説が根強い鹿児島「大崎事件」

ノンフィクション作家の佐野眞一氏に、STAP細胞の小保方晴子氏、そして今年「渦中の人」となった東京五輪エンブレムの佐野研二郎氏など近年、大型のパクリ騒動が相次いでいる。そんな中、ある冤罪説が根強い事件に対する裁判所の決定文にも重大なパクリ疑惑が見つかった。

◆ほぼ丸ごと転用

その事件は、鹿児島県の大崎町で1979年10月、牛小屋で男性の死体が見つかった通称「大崎事件」だ。殺人罪に問われ、懲役10年の判決を受けた親族の原口アヤ子さん(88)は一貫して無実を訴え、現在は3回目の再審請求中。有罪証拠は共犯とされた他の親族3人(全員故人)の信ぴょう性を欠く自白しかなく、2002年に鹿児島地裁が再審開始決定を出したこともある。しかし2004年12月、福岡高裁宮崎支部が再審開始を取り消す決定を出したため、原口さんは88歳の今も雪冤を果たせずにいる。

この福岡高裁宮崎支部の再審取り消し決定は問題が色々指摘されているが、とくに有名なのが以下の一節だ。

<このような判断のあり方は、判決が確定したことにより動かし得ないものとなったはずの事実関係を、事後になって、上記のとおりそれ自体としては証拠価値の乏しい新鑑定や新供述を提出することにより、安易に動揺させることになるのであり、確定判決の安定を損ない、ひいては、三審制を事実上崩すことに連なるものであって、現行刑訴法の再審手続とは相容れないものといわなければならない。>

つまり、この決定を出した裁判官たちは確定判決で認定された事実関係が「動かし得ないもの」と決めつけ、再審制度の存在自体を否定しているわけである。大崎事件を冤罪だと信じる人たちがあちらこちらで批判しているが、それも当然の酷い判断だ。

そして実を言うと、この有名な一節はほぼ丸ごと転用により書かれていたのである。転用元は、東京高裁が2001年10月29日、別の再審請求事件の即時抗告審=事件番号は平成9年(く)第170号=で出した決定文である。その東京高裁の決定文の該当部分を示すと以下の通りだ。

<判決が確定したことにより動かし得ないものとなったはずの事実関係を、事後になって、それ自体としては証拠価値の乏しい新証拠を提出することにより、安易に動揺させることになりかねない。そのような事態は、確定裁判の安定を損ない、延いては、三審制を事実上崩すことに連なるものであって、現行刑訴法の再審手続とは相容れないものといわなければならない。>

2つの決定文のうち、同じ記述の部分を太字にしたが、福岡高裁宮崎支部の再審取り消し決定が東京高裁の決定文を転用しているのは一目瞭然。判決文や決定文には著作権はないが、「パクリ」と言われても福岡高裁宮崎支部の裁判官たちは否定しようがないはずだ。

◆パクリ裁判長はあの有名冤罪にも関与

この問題の決定文を書いた福岡高裁宮崎支部の裁判長は岡村稔氏といい、現在は東京で弁護士をしている人物だ。東京高裁に所属していた頃には、あの有名な冤罪・足利事件の控訴審で右陪席裁判官を務め、高木敏夫裁判長と共に菅家利和さんの控訴を棄却したこともある。そして実を言うと、転用元の東京高裁の決定を書いた裁判長がこの高木裁判長である。

このパクリ行為からは岡村氏がかつて上司だった高木裁判長を大変信頼していたことが窺えるが、いずれにせよ、めったなことでは出ない再審開始決定を取り消すにあたり、こんな手抜きをする感覚は理解しがたい。なお、筆者はこの件について、岡村氏に取材を申し入れたが、事務所の女性職員を通じ、取材を断ってきた。

コピペ決定により、雪冤の希望を一度絶たれた原口さんは、年齢的にも現在の第3次再審請求が雪冤の最後のチャンスになる可能性が高い。今度こそ真っ当な司法判断が下されて欲しいと思う。

岡村氏が現在所属する弁護士事務所の入ったビルは都心の一等地にある

▼片岡健(かたおか けん)
1971年、広島市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、フリーのライターに。新旧様々な事件の知られざる事実や冤罪、捜査機関の不正を独自取材で発掘している。広島市在住。

◎発生から15年、語られてこなかった関東連合「トーヨーボール事件」凄惨な全容
◎3月に引退した和歌山カレー被害者支援の元刑事、「美談」の裏の疑惑
◎《我が暴走07》「プリズンブレイクしたい気分」マツダ工場暴走犯独占手記[後]

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アフガニスタンの「ベトナム化」を決定づけたオバマ米大統領の無法

オバマ米大統領は10月15日、アフガニスタン駐留米軍について、当初の予定を延長して2017年以降も5500人を継続駐留させる方針を発表した。大統領は2017年1月の退任までの完全撤退を目指していたが、断念した。シリアでの過激派組織「イスラム国」(IS)戦略に続く過激派対策の大幅修正で、オバマ政権の対テロ戦略が大きく揺らいでいる。

オバマ氏は「アフガン軍はまだ十分強くない。アフガンをテロリストたちが我々の国を再び攻撃するための安全な隠れ家にするわけにはいかない」と述べ、米軍によるアフガン軍の訓練と対テロ対策の継続を強調した。

米軍は旧支配勢力タリバンと戦うアフガン軍の訓練や作戦指導などの任務で9800人を駐留させている。オバマ政権は駐留規模を漸減させ、2016年末までに米大使館警備要員約1000人を除いて撤退させる方針だった。(2015年10月15日付毎日新聞

◆パキスタンでは米軍が人を殺しても犯罪にならない?

米国にとってアフガニスタンが「第二のベトナム」となることが決定的となった。「テロとの戦い」を掲げて、非道極まる攻撃を仕掛け、無数の市民を虐殺したアフガン攻撃。それに次いで「大量破壊兵器保持疑惑」により、体制を転覆させられたイラク。アフガニスタンは「9・11」の主犯とされるウサマ・ビン・ラディン氏を匿っているという言いがかりで攻撃を受けたのだが、2011年5月ウサマ・ビン・ラディン氏が米軍によって殺害されたとされる場所はパキスタンだった。

パキスタンで米軍が人を殺して犯罪に該当しないのか。3・11後の混乱した時期とはいえ、この単純な疑問が当時どれほどこの島国の中で呈されたことだろう。

報道にある通り、米国はアフガニスタンからは早々に撤退し、イラク再建(という名のイラク石油利権の囲い込み)に専念する予定だった。しかしアフガニスタン国内ではかつて政権を担ったタリバンが復活し、実効支配地域を広めている。アフガニスタンには切り立った山岳部が多く、首都カブールは東京と同じ北緯35度だが標高は1800mを超える。最高峰ノシャック山の標高は7485mにも及ぶ。国土のほとんどは乾燥し、やせた土地で平均年齢は世界で2番目に低い48歳だ。

歴史的に外国からの支配侵略を幾度も受けたこの国は、しかしながら旧ソ連の軍事侵攻を跳ね除けた歴史も持つ。

◆米国はアフガニスタンで追い詰められる

ベトナム戦争当時、世界的に反戦運動が高まったが、まさかあれほど見事に米国が敗走すると予想できた人はどれほどいただろうか。もちろんベトナムの背後には武器の供給源となる中国やソ連があったのだけれども、戦闘員としてベトナム戦争を闘ったのはベトナム人(ベトナムは多民族国家だが主としてキン族)だけだった。

ベトナムと比べてもアフガニスタンの経済・自然状況は著しく厳しい。ジャングルもなければ年間降雨量も極端に少ない(アフガニスタンの年間降雨量は312m、日本の年間降雨量は1718m)。

このように厳しい土地に暮らす人々に散々な爆撃と最新兵器の「試し打ち」を食らわせた挙句、傀儡政権をでっち上げたが、それでも思い通りの支配を米国は打ち立てることが出来ていない。予定通りの撤退を実行すれば、またコントロールの出来ない「反米」政権誕生は自明だから、残留せざるを得ないというのが本音だ。つまり米国は追い詰められているのだ。

しかし、中東ではISという、新たな勢力が暴れまくっている。どの国からも承認される前に「イスラム国」と堂々と国家を名乗る根性は、一筋縄ではいかない背景を彷彿させて余りあるが、ISの拡大とシリア内戦にロシアが爆撃で加勢し、現地では米国とにらみ合いになっているとの情報もある。「自由シリア」勢力はアサドを撃つはずがISとの対戦も余儀なくされ、そこに米露両大国、さらにはイスラエルの思惑が交錯し、事態は混乱の極みだ。

◆米国戦争体制を切れ目なく支援する日本の「米国債」買い支え

もちろんイラク情勢だって落ち着いているはずがない。もとを辿れば米国が散々餌を与えて育てたのがサダムフセインを頂点とするバース党政権だった。イラン革命の後にはホメイニ打倒の為に巨額の資金をイラクに注入し「イラン・イラク戦争」を起こさせ、イランの弱体化を試みた。ウサマ・ビン・ラデイン氏も同様だ。サウジアラビア富豪一族出身の同氏はある時期まではCIAの資金援助を受けていたことが確認されている。

このように米国は世界のあちこちに傀儡の種を撒き、彼らが「反米」に転じるやその鎮圧に必死になっている。それは必然的に軍事費の増大を招き、米国債の増刷を余儀なくさせる結果へと帰結する。増刷された米国債の最大保有国は中国であり、日本は第2位だ。

日本は現在のところ紛争の現場に直接、足を踏み入れてはいない。けれども、既に「米国債」を買い支えることにより、経済的には米国戦争体制を援助している。皮肉なことに「緊張」が伝えられる「米中」関係の当事者、中国も同様の役割を果たしている。だから表面上どのように緊張が演出されようと、米中両国が本格的な衝突を起こす事などない。

どうあがこうと、米国は世界最大の債務国だ。アルゼンチンやインドネシア、韓国のかつての破綻(デフォルトを含む)、近いところではギリシャの経済破綻は、世界経済にとって深刻な問題視をされたけれども、「戦争をしないと自転車操業が止まってしまう」米国というシステムこそ、実は世界にとって最大の災禍であることはもっと強く認識されるべきだろう。

その「戦争自転車操業」国に「集団的自衛権」で追従するおバカさん。それが私たちの暮らすこの悲しき島国なのだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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◎安保法採決直後に若者弾圧!ハンスト学生への「不当ガサ入れ」現場報告

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PRIDEからRIZINへ──2015年の大晦日、8年ぶりに格闘技の陽が昇る!

確かに、PRIDE代表だった榊原信行が大晦日にフジテレビのバックアップを得てさいたまスーパーアリーナで格闘技興行を行うという記者会見はインパクトがあった。かつてPRIDEをUFCに売却した際に「7年間は格闘技の興行ができない」という「縛り」ルールが解けて榊原が仕掛ける興行運営だ。だが、格闘技記者たちの関心を集めたのは、大物、ヒョードルの復活でもなく、サプライズでも対戦カードでもなく榊原が思わせぶりに示唆した「あの形」だった。

「あの夢よもう一度」とばかりに97年から07年にかけて大人気だった総合格闘義「PRIDE」が8年ぶりに大晦日に「RIZIN」と装いを変えて復活する。記者会見場では「PRIDE」時代からの格闘技ファンたちがマスコミを取り囲む。その数は150人ほど。

六本木ミッドタウンの中庭、キャノピースクエアにて午後6時30分から行われた榊原信行(THE RIZIN FIGHTING WORLD GRAND – PRIX 2015実行委員会委員長/株式会社ドリームファクトリーワールドワイド代表)は、マスコミが100人以上集まったフラッシュに目を細めつつ「ようやく8年ぶりに格闘技の世界に帰ってきました」と興奮気味に語り始めた。まさに水を得た魚のごとく、「世界中から優秀な選手を集めて、本格的な格闘技をお見せしたい」とあふれるプロモーター魂を力強く語り、長年の雌伏時代にたくわえた構想を吐露した。

くわえて「12月29日から31日にかけて3日連続で格闘技イベントを行い、8人の選手によるトーナメントをやります。賞金は50万ドルです」とぶちあげると「おおっー」と観衆から歓声が起きた。12月29日と31日はフジテレビが放映を検討しているが、放映時間は未定とアナウンス。

かつて、「PRIDE」を運営していたときの盟友、高田延彦(RIZIN統括本部長)も「これが人生で最後の格闘技の仕事になると思います」と肩に力が入り、「ちょっと堅いので雄叫びをあげていいですか」と断ると踏ん張って拳をつきあげて、頼まれもしないのに中腰で力を貯め「うぉりゃあああ」と雄叫びをあげると「いいぞ、高田!」と割れんばかりの拍手が起きた。

シュートボクシングのアイドル女子選手、RENA

この日は確かに「私みたいな選手がいるのだと世間にわからせたい」と吠えたシュートボクシングのアイドル女子選手、RENAや「PRIDE」を支え続けたエメリヤーエンコ・ヒョードルが復活するという事実や、グレイシー一族に圧倒的な勝率を誇った桜庭和志(フリー)と関節技が得意な「寝業師」の青木真也(パラエストラ東京/Evolve MMA所属)の体重差を無視した対決カードや、あるいは「男が強いとは限らない」と不気味な微笑みをした「世界最強の女柔術家」で丸太のような太腿で練り歩くギャビ・ガルシアなどが目立った。

しかし2時間弱におよぶ長い会見の末、記者たちの話題は結局、榊原が漏らしたひと言に集中した。
「どんなリングで、どんなルールでやりますか。ケージですかマットですか」と記者が聞くと、「ルールは旧PRIDEルール(1R10分・2R5分・3R5分(ラウンド間のインターバルは2分の変則3R制)でやります。ひじは選手どうしの話しあいで有り無しを決めます。リングについては観衆が見やすいようにちょっと変わったものを今、考えておきます。お楽しみください」と榊原が示唆。

記者たちは、これについて「どんなリングなんだ?」「砂をまくのか」「いや、電流を流すのか」などと推測含みでさまざまな予測が立てられた。「まさか透明のロープやマットにして、どの確度からも透明で見やすいようにするのでは」(格闘技雑誌記者)と語ると「シルク・ドゥ・ソレイユか」と若いカメラマンが突っ込んだ。
「まあ、榊原はサプライズが好きだから、空中に浮かぶリングとか、常に回転するリングとかさまざま考えているのではないか」(スポーツ紙記者)
「まさかリングそのものが傾いたりして動くとか」(フリー格闘技記者)
「たけし城じゃあねえよ」などと、終了後の雑談がもっとも盛り上がった。

榊原の囲み取材では「芸能人がリングにあがりますか」とミーハーな質問が出て、「いや、出ません」として「これで質問を終わります」となったが、筆者が「警察のOBと弁護士、つまりコンプライアンス担当で大鶴基成弁護士と元警視庁刑事部理事官の管村明仁氏をスタッフに入れた意味は?」と聞いた時点で榊原が語りかけたが「すみません。時間です」とスタッフが身体を斜めに入れてきて静止した。

「プロモーションの枠を超えて、壮大なスケールでやりたいのはわかるし、世界の名だたる団体を集めたスゴ腕は評価すべきだが、過去にフジテレビが『PRIDE』から撤退した本当の理由はいまだに説明されていない。暴力団の関与が囁かれているが、コンプライアンス担当が弁護士と警察の大物OBという尋常ではない構え方は何を意味するのか。きな臭い」(同)

確かに、見方によっては、司会が小池栄子だったり、今回、招待したBellar MMA(米)代表のスコット・コーカーやBMMA(イギリス)の代表のデイビッド・グリーンやKSW(ポーランド)代表のマーティン・レバンドフスキーなど海外の大物のプロモーターらがズラリと並んでいる姿や、アメリカの大手テレビ局、スパイクTVがついたという舞台装置をつきつけられるとこうした大がかりな仕掛けにめくらましに遭い「PRIDE」が黒い霧に包まれた07年を忘れてしまいそうだ。

「だけど忘れちゃいけないよね。格闘技界は、03年1月9日にPRIDEを運営していたドリームステージエンターテイメント(DSE)代表の森下直人が「自殺」した理由について、まだ総括しきっていない。囁かれているように、暴力団との関係に疲弊して森下が自殺したという見方が強いのだから」(同)

さて、力を入れすぎるというコンプライアンス。その理由を覆い隠す、ど派手は演出の会見。現時点でヒョードルの相手すら見つかっていない現実。そうした『マジック』にごまかされない老練な格闘技記者たちが囁く「謎のリング」の予測が、バブリーでわざとらしい演出よりも一番「おもしろかった」とは。大晦日にはどんなリングが飛び出るか、期待したい。

RIZIN オフィシャルサイト=http://www.rizinff.com/

(鈴木雅久)

◎福山雅治はマスコミを煙にまくのが天才的に上手かった!
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◎「テロの危機」煽れば増える「警備利権」と警察天下り

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《ウィークリー理央眼025》戦争法案に反対する若者たち VOL.19 川越

8月27日(木)、埼玉県川越市で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。
埼玉の学生・高校生の会「VIP(ヴィップ:Voices into the peace.)」が、主催し約100名で川越駅前のクレアモール商店街周辺を行進した。


[動画]戦争法案反対・川越デモ – 2015.8.27 埼玉県川越市(17分11秒)

高校生6名と大学生6名で構成されている「VIP埼玉」のスピーチは、全体的にエモーショナルだった。しかし、スピーチの中に「日本の安全を守るためのものではない」、「平和外交の妨げになる」、「経済的徴兵」など、法案の具体的な問題点の指摘と、それらに関する詳細な説明があり、若い主催者たちの勉強ぶりが垣間見えた。
以下は、デモでのスピーチの書き起こしである。

高校生(男性)
「みなさん、戦争の意味を深く考えてみてはいかがでしょうか。私たちにとって戦争とは、私たちにとっての平和な当たり前が潰される、そんな瞬間であります。そんなことは許しがたい、この当たり前をいつまでも守っていきたい。私はその為に闘います。ですが闘いとは暴力を振るうだけが闘いではありません。この私たちにしかできない、この声を突きつけるということが闘いであり、そして戦争法案を廃案に追い込む唯一の方法ではないでしょうか」

大学生(男性)
「私は日本国憲法の前文にある『全世界の国民が等しく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有する』ということを実現するまで、全力で闘う決意です。武力に頼った平和活動から真の平和は絶対に生まれません。安倍政権は今すぐ戦争法案を廃案にして平和外交を努力してほしいと思います」

二人のスピーチから『WAR AGAINST WAR』という言葉が思い起こされた。前のWARは「闘い」、後ろのWARは「戦争」、日本語にすると「戦争に対する闘い」という意味になる。
この言葉が書かれたプラカードやTシャツを戦争法案反対デモでよく目にするが、今リアリティを感じ切実に戦争に反対している人々にとって象徴的な言葉と言えるだろう。

暴力を振るうだけが闘いではない。単に平和を祈るだけではなく、積極的に平和を求め闘うことが必要とされている。



[2015年8月27日(木)・埼玉県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《024》戦争法案に反対する若者たち VOL.18 郡山
◎《023》戦争法案に反対する若者たち VOL.17 弘前
◎《022》戦争法案に反対する若者たち VOL.16 仙台
◎《021》戦争法案に反対する若者たち VOL.15 秋田
◎《020》戦争法案に反対する若者たち VOL.14 渋谷

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