他の俳優とは一味も二味も違った、蟹江敬三の思い出

名俳優・蟹江敬三が逝去した。享年69歳。蟹江氏とは、テレビ局のAD時代に仕事をした経験がある。まだ駆け出しのADだった僕に対して、さまざま教えてくださり、蟹江氏は優しかった。蟹江氏の役は代議士だったが、ディレクターに「髪の毛を短く切り、こざっぱりしてください」と言われて、衣装合わせのあとに、すぐに床屋に駆け込んでいた。とにかくマジメで、努力する姿を人に見せない。

テレビ局のADの仕事はとにかく煩雑で、弁当の手配から、役者をロケ地へ誘導する、台本に誤字がないかチェックする、持ち道具、小道具がちゃんとあるかどうか確かめるなどなど、とにかく忙しい。その中の仕事のひとつに「呼び込み」がある。照明やカメラなどがスタンバイしている状態で、「あと数分でスタンバイが終わる」という絶妙なタイミングで楽屋、もしくはロケバスで出番を待つ俳優をスタジオ、ロケ地なら撮影現場に連れてくるという仕事だ。

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『美味しんぼ』への環境省の見解は、ウソをついている

小学館「ビッグコミックスピリッツ」に連載中の『美味しんぼ』(作・雁屋哲、画・花咲アキラ)の「福島の真実編」の内容に、環境省、福島県、双葉町、大阪府、大阪市が声明を出し、閣僚たちが批判している。
福島第一原発の事故を、あたかもなかったのごとく封じ込めようとしてきたことに、マンガが亀裂を走らせた。これには快哉を叫びたい。

東京電力福島第一原発の事故以降、周辺の地域で、それまであまり鼻血を出したことがない者も含めて、鼻血を頻繁に出すようになった者が多いことは、野党時代の自民党が国会に参考人を招致して述べているくらいだから、否定しようがない。

問題は、鼻血と放射線被曝との関係だが、声明や批判の中で、「因果関係がない」といっているものと、「因果関係は科学的に立証されていない」といっているものとがある。この両者は、似ているようでいて、まるで違う。
科学的に立証されていないというのは、その通りだ。だがそれは因果関係があるかないか、まだ分からないということであって、因果関係はあるかもしれない。
だから、「因果関係がない」というのは、ウソをついていることになる。

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顔が見える見えないが、問題ではない

近年、ネットの普及から「顔の見えない相手とのやり取り」に不安を覚える人が多い。特に子供がネット上で素性の知らない人と交流を持つことに危険視する意見が目立つ。ネットで遊ぶ程度ならともかく、実際に会うという話になれば危険性は急激に増すことになるだろう。女子であれば性的被害を警戒して当然だ。

しかし顔の見えない相手との交流というものは、何も今に始まったことではない。メディアというものが一般に普及して以来、常にあった問題だ。私が子供の頃は、自分のテレビというものは無かったので、メディアと言えば専らラジオだった。当時山のようにラジオ番組を視聴していたが、ラジオのDJやパーソナリティの殆どは、ずっと後になって顔を知ったとか、あるいは今でも顔を知らない人ばかりだ。当時聴いていたラジオ番組で、よく交流会と称して視聴者やハガキ投稿者の顔合わせ企画があった。結局一度も参加したことはないが、顔の見えない相手との交流をメディアが斡旋していたと言える。合コンなども同じようなものだ。合コンやラジオ番組の主催であれば、第三者として紹介する知人や番組スタッフが介するから安全と言うことか。全く誰ともわからないネットで知り合った相手よりは、良いかもしれないが。

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ホオジロザメは守らなくていいのか

日本の捕鯨に対して、中止を求め続けてきた国や団体は多い。とりわけ南極海のお膝元のオーストラリア政府や、過激な妨害行動をとるシー・シェパードの反対行動は印象が強い。

しかしこれがサメとなると、途端に話が変わってくる。オーストラリア政府は、ザメの駆除作戦に乗り出し、ここ3カ月間実行に移していた。オーストラリア近海では、凶暴なサメとして名高いホオジロザメの被害が多く、襲われての死亡事故もある。

しかし、ホオジロザメは絶滅危惧種だ。オーストラリア政府の対応は、クジラを守るという大義名分を掲げる一方、サメに対しては駆除作戦を行う。オーストラリア政府には決して動物愛護的な精神はない。捕鯨に強く反対しているのは、ホエール・ウォッチングやホエール・スイムといったクジラビジネスが主要産業になっているからだ。そのためクジラに対する愛護的政策をとってきた結果、オーストラリア国民にとってクジラは愛すべき存在になった。

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放射能への恐れを利用する、ネットワークビジネス主催の映画会

原発に関する映画を数多く撮っている、鎌仲ひとみ監督の『内部被ばくを生き抜く』を見に行った。大田区産業プラザ内の会議室が、上映会場だった。
パソコンで再生したDVDをスクリーンに映す、という上映で、画面の端にマウスポインターがずっとかぶったままだったのが気になったが、内容的には、きわめて貴重なものだった。

広島の被爆者を診察し続けてきた肥田舜太郎さん、チェルノブイリやイラクで医療支援を続ける鎌田實さん(諏訪中央病院名誉院長)、福島で除染に取り組む児玉龍彦さん(東京大アイソトープ総合センター長)、チェルノブイリの小児科医師スモルニコワ・バレンチナさんのインタビューを中心に映画は作られているが、その内容は傾聴に値するもので、参加者が10名程度だったのは、残念だった。

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残業代が出る出ないが、問題なのではない

「残業代ゼロ法案」について、以前に日本総ブラック企業化という記事を書いた。その後もニュースやコラムを見る限り、この法案には反対意見が多い。誰だって当然同じ懸念を持つだろう。

この「残業代ゼロ」法案に賛成する記事やブログも結構多い。内容によっては政府の息がかかっているのだろうかとか、世間の流れに逆らう自分をかっこいいと思う人なのかとか考えてしまうこともあるが、逆に政府の方針に何でも反対するのは、やはり社民党や共産党の回し者かとか、どこか市民団体の関係者かと思うことがあるので、同じようなものか。どんな意見にも賛成反対の声が出るのは民主主義社会として正しい姿だ。確かに「残業代ゼロ」という呼び方も、作為的と思う。

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訴訟をいくつも抱えた、「てにをは」もなっていない自称ジャーナリスト

以前、『紙の爆弾』に掲載された記事の名義に、「自称ジャーナリスト」という肩書きをつけた人がいたが、これは皮肉であった。記事を読むと、追及を受けた者が記者に対して嫌味でそう言ったからだ。

これは主に、組織に所属しないフリーランスのルポライターなどが、後ろ盾が無いことから見下されて言われることだ。そして、記者クラブ制度の弊害を語るさいにも話題になる。記者を自称して変な奴が紛れ込んでも困るが、しかし大手に所属する者だけを特別待遇して報道を手玉に取る政治や行政の手口により、自由な報道が出来ないからだ。

また、外国では、主な収入源が報道に関係していることをジャーナリストの条件としている所があり、これだとフリーも認められるのだが、しかし日本の場合は、フリーだといわゆるワーキングプアが多く、副業の収入の方が多いという人が少なくない。

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友人がいてよかった、コンビニ強盗志願の男

先日、コンビニ強盗をしようとレジの店員にナイフを突きつけたところ、たまたま店内にいた友人に声をかけられ、強盗を断念したというニュースがあった。強盗未遂の男は駆け付けた警察官によって逮捕された。

この男、48歳にもなって「パチンコに負けて金が無くなった」という動機は情けないばかりだが、身近に一人友人がいた、というだけで店だけでなくこの男も救われた。もしたまたまこの友人が店にいなければ、刃傷沙汰になっていたかもしれない。警察が乗り込むのが早ければ、逆上して店員を刺殺していたかもしれない。人間、追い詰められると何をしてしまうかわからない。そうなれば無傷だった店員も、刑が重くなっていただろうこの男も一人の友人のために救われたといえる。

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警察官でさえ自殺、パワハラしなけりゃ部下は鍛えられないのか?

警視庁蒲田署の警察官が、上司のパワハラが原因で拳銃自殺した。部下たちはこの上司に「お前らはダメだ。身の振り方を家族に相談しろ」だの「降格を申し出ろ」だの日々怒鳴られ、中には紙パックを投げつけられて「お前は警察官に向いていない」などと言われた人もいるという。

パワハラというものは捉え方で個人差がある。日頃からこれでは現場の人は厳しい限りだが、警察というところは職業柄、並の企業よりはずっと厳しいとはよく聞く。

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高校の勉強のやり直し、微分積分は必要か

知り合いの30代の女性が、通信制の高校に入った。30代にして、女子高生になったわけだ。
高校を中退しているので、勉強し直して卒業資格を取ろう、という感心な心がけ。もちろん、セーラー服などは着用しない。
筆者なども、高校で勉強したことなど忘れている、というか、そもそも勉強せずにごまかして卒業している項目が多い。

彼女の話を聞いていて、やはり高校の勉強は大変だな、と思う。
そもそも、自分で働いて生活している30代が、いまさら微分積分など勉強する必要があるのだろうか。
高校生は、自分の進むべき道を見つけるために、ありとあらゆる可能性を試してみる必要があるかもしれないが……。

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