《NO NUKES voice》大きな意義を持った東海村・乾康代候補の選挙戦 ── 過酷事故が起きた時、周辺30キロ圏内94万人住民の避難は困難だ! 尾崎美代子

3月18日、水戸地裁(茨城県)は、日本原電・東海第二原発(茨城県東海村)の運転を差し止める判決を言い渡した。過酷事故がおきた場合、周辺30キロ圏内に住む94万人が避難することは困難であるなどとの理由からだ。

その東海村で、8月31日、任期満了に伴う村長選挙が始まり、現職で3期目を目指す山田修氏と、住民団体「いのち輝く東海村の会」が擁立する乾康代氏(元茨城大教授)の一騎打ちで争われた。結果は、11,562票と3,907票で、山田氏の当選となったが、8年ぶりに再稼働を認めないと訴え、乾さんが立候補したことは非常に大きな意義があったのではないか。

選挙事務局前で乾康代候補

◆東海村の「歪められた開発」に警鐘を鳴らした乾さん

乾さんは、「都市計画」「住環境計画」を専門とし、茨城大学教育学部に赴任後の2004年、村の「東海村住まいづくり検討委員会」に加わり、東海村の都市計画問題に取り組んできた。そこで、村内で、原発や関連施設の周辺に緩衝地帯のないまま民家が建てられ、国策である原発推進とともに「歪められた開発」が進められてきたことに関心を深め、研究されてきた。

農業県だった茨城県の東海村に、日本原子力発電(以下、原電)が設置されたのは1957年のことだ。まもなく村の臨海部にある105万坪もの広大な国有、県有防砂林が、原発建設の候補地に選ばれ、原発の設置が決定した。村の人たちは、前年進出してきた日本原子力研究所(以下、原研)が、原子力の研究を始めることには期待していたが、原発まで建設されるとは知らされていなかった。

さらに、その後核燃料加工工場、使用済み核燃料再処理工場などが次々と作られ、現在、村内には12もの原発関連施設がある。こうした施設の建設と同時に、社員、作業員らの住居も建設されたが、当時、周辺地域に開発規制が行なわれなかったために、原発や原発関連施設のすぐ近くに住宅が建設されるという、危険で異常な事態が起こっていた。

海側の広大な臨海部には、原研と東海原発、再処理工場などが建設され、内陸部の国道6号線周辺に核燃料の加工工場などが作られ、間に住宅が立ち並ぶ。国道6号線と交差して、臨海地域にむけ3本の道路が、それぞれが東海第二原発、日本原子力研究開発機構・J-PARCセンター、再処理施設に向け整備され、地元の人たちからは「原電通り」「原研通り」「動燃通り」と呼ばれている。

原発とこんなに近い住宅街。村役場のエレベーターからそんな光景が一望できるという
村内の福祉施設が独自に掲げる反原発の看板。「外して欲しい」と苦情を言う人もいるという

◆30キロ圏内に94万人が住む危険すぎる原発
 
乾さんも、初めて東海村を訪れた時、原発のすぐ近くに民家が迫っている光景を見て非常に驚いたという。

私も実は、作家の大泉実成さんが書かれた記事で、1999年、JCO臨界事故が起きた際、ご両親が経営する作業所が、JCOと非常に近かったため、その後お母さんがPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症したと知り、どれほど近かったのかと気になっていた。あの事故では、3名の作業員のうち2名が死亡し、1名が重症になったほか、周辺住民667名が被ばくした。その中に大泉さんのご両親も含まれるが、先日、東海村を訪れ、阿部功志村議に案内して貰ったところ、JCOの工場からわずか120メートルの場所に、その作業所があった(ご両親は死去し、工場も閉鎖されている)。周辺は普通に民家が立ち並んでいた。

東海第二原発の30キロ圏内には、94万人の住民が住んでいるが、原発事故が起きた場合の避難計画はいまだ策定されていない。そもそも策定自体が不可能ではないか。実際、それを理由に、今年の3月28日、水戸地裁は、東海第二原発の再稼働を認めない判決を下した。世論調査では、6~7割の県民が再稼働に反対しているが、裁判の判決のみでなく、実際再稼働を許さない住民の運動が必要不可欠で、村長選もその1つだった。選挙では負けたとはいえ、双方の再稼働を巡る態度が一層明らかになった。

右側の白い建物が臨界事故を起こしたJCO(核燃料加工施設)。道を挟んだ左側に民家が立ち並ぶ
JCOから道を挟んで120メートルにある大泉さんの作業所

◆「約束を守らない」と批判された現職・山田村長

茨城県では今回、東海村長選挙と同時に県知事選も闘われ、こちらも「東海第二原発再稼働、YESでもありNOでもある」と無責任な態度をとる現職・大井川かずひこ氏と、乾氏と歩調を合わせ、再稼働反対を訴えた田中しげひろ氏の一騎打ちで争われ、大井川氏が当選を決めた。

目の前に迫る再稼働問題に無責任な態度をとる大井川氏であったが、山田村長も同様で、再稼働問題についてはダンマリを決め込み、水戸地裁判決にも「司法の判断」としか言及せず、過去には「原発が不要という人は、自宅から一歩も外にでてはいけない」と驚くような発言をしている。

 
8年前に村長を退任した前村長・村上達也さん。「再稼働を認めない」という約束を守らないと、現職山田村長を批判している

8年前、山田氏を村長に後継指名した前村長の村上達也氏は、その際「東海第二原発再稼働反対!」を約束したが守られていないと怒る。そればかりか、「私がやってきた福祉や教育政策もひっくり返した」と批判し、今選挙では乾氏を応援した。当然だろう。ほかの原発立地の選挙でも、推進側候補は再稼働への是非だけでなく、原発問題をも争点にすることを避けたがる。しかし、今回の東海村村長選では、その是非が明確になった。引き続き、どちらが村民の未来や生活を考えているか考え、村政を変えて行って欲しい。

乾氏の訴えは再稼働反対だけではない。老朽化した東海第二原発の廃炉後の未来を見据えた村づくりと準備していこうと、原発関連企業の労働者の就労確保、そして福祉政策の拡充、そして何より安心して住む続けられる村作りをめざそうと訴えてきた。また現在村内にある幼稚園の再編計画では、あろうことか山田村長は、住民にとの話し合いも行わず、東海第二原発からわずか2キロの村松幼稚園に統合しようとしている。ここでもわかるように、村の行政に女性がほとんど関われないことが問題であると、乾氏は、「村政にジェンダー視点を!」とも訴えていた。

これに対して、東海第二原発差し止め訴訟原告団の共同代表の相沢一正さんは、「決意に感謝します。まず原発廃止です。東海村の未来は、東海第二原発の廃炉が確定したあとに論じられるものと信じています。(乾候補の掲げる)ジェンダー平等の追求も大賛成、時間をかけても実現しましょう」と推薦の言葉を述べていた。

東海第二原発差し止め訴訟原告団共同代表・相沢一正さんの自宅前の看板

原発の高レベル放射性廃棄物の処分場にむけた文献調査をめぐる問題が起きている北海道の寿都町でも、この10月町長選が行われる。文献調査を推進する現職の片岡春雄町長に対抗して、「核のごみのない寿都町を!」を掲げる越前谷由樹村議が出馬を予定している。原発が終焉を迎えようとしている今、反原発を訴える首長を一人でも多く擁立し、全国で原発と核のない自治体作りを広めていかなければならない!

乾さんと東海村の皆さん、支援者の皆さんの闘いは、そうした闘いを後押しする大きな一歩になったと確信する。

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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読売新聞の仕入部数「ロック」の実態、約5年にわたり3132部に固定、ノルマ部数の疑惑、「押し紙」裁判で明るみに 黒薮哲哉

新聞の没落現象を読み解く指標のひとつにABC部数の増減がある。これは日本ABC協会が定期的に発表している新聞の「公称部数」である。多くの新聞研究者は、ABC部数の増減を指標にして、新聞社経営が好転したとか悪化したとかを論じる。

最近、そのABC部数が全く信用するに値しないものであることを示す証拠が明らかになってきた。その引き金となったのが、読売新聞西部本社を被告とするある「押し紙」裁判である。

◆「押し紙」と「積み紙」

「押し紙」裁判とは、「押し紙(販売店に対するノルマ部数)」によって販売店が受けた損害の賠償を求める裁判である。販売店サイドからの新聞の押し売りに対する法的措置である。

とはいえ新聞社も簡単に請求に応じるわけではない。販売店主が「押し紙」だと主張する残紙は、店主が自主的に注文した部数であるから損害賠償の対象にはならないと抗弁する。「押し紙」の存在を絶対に認めず、店舗に余った残紙をあえて「積み紙」と呼んでいる。

つまり「押し紙」裁判では、残紙の性質が「押し紙」なのか、「積み紙」なのかが争点になる。下の写真は、東京都江戸川区にある読売新聞販売店で撮影された残紙である。「押し紙」なのか、「積み紙」なのかは不明だが、膨大な残紙が確認できる。

東京都江戸川区にある読売新聞販売店で撮影された残紙
同上

◆1億2500万円の損害賠償

ABC部数の嘘を暴く糸口になったこの裁判は、佐世保市の元販売店主が約1億2500万円の損害賠償を求めて、今年2月に起こしたものである。裁判の中で、新聞販売店へ搬入される朝刊の部数が長期に渡ってロックされていた事実が判明した。

通常、新聞の購読者数は日々変動する。新聞は、「日替わり商品」であるから、在庫として保存しても意味がない。従って、少なくとも月に1度は新聞の仕入部数を調整するのが常識だ。さもなければ販売店は、配達予定がない新聞を購入することになる。

販売店が希望して配達予定のない新聞を仕入れる例があるとすれば、搬入部数を増やすことで、それに連動した補助金や折込広告収入の増収を企てる場合である。しかし、わたしがこれまで取材した限りでは、そのようなケースはあまりない。発覚した場合、販売店が廃業に追い込まれるからだ。

◆仕入部数を約5年間にわたり「ロック」

現在、福岡地裁で審理されている「押し紙」裁判も、残紙が「押し紙」なのか、「積み紙」なのかが争点になっているが、別の着目点も浮上している。それは、販売店に搬入される仕入れ部数が、「ロック」されていた事実である。「ロック」が、販売店に対するノルマ部数を課す販売政策の現れではないかとの疑惑があるのだ。

以下、ロックの実態を紹介しよう。

・2011年3月~2016年2月(5年):3132部
・2016年3月~2017年3月(1年1カ月):2932部
・2017年4月~2019年1月(1年10カ月):1500部
・2019年2月(1カ月):1482部
・2019年3月~2020年2月(1年):1434部

この間、搬入部数に対して残紙が占める割合は、約10%から30%で推移していた。

◆長崎県の市・郡における「ロック」

この販売店で行われていた「ロック」が他の販売店でも行われているとすれば、区・市・郡のABC部数にも、それが反映されているのではないか?と、いうのもABC部数は、販売店による新聞の仕入れ部数の記録でもあるからだ。

そこでわたしは、この点を調査することにした。調査方法は、年に2回(4月と10月)、区・市・郡の単位で公表されているABC部数を、時系列で並べてみることである。そうすれば区・市・郡ごとのABC部数がどう変化しているかが判明する。

まず、最初の対象地区は、「押し紙」裁判を起こした販売店がある長崎県の市・郡別のABC部数(読売)である。下表のマーカーの部分が「ロック」部数と期間である。かなり頻繁に確認できる。

長崎ABC(読売)

◆香川県の市・郡における「ロック」

他の都府県についても、抜き打ち調査をした。その結果、次々と「ロック」の実態が輪郭を現わしてきた。典型的な例として、香川県のケースを紹介しよう。下表のマーカーの部分が「ロック」部数と期間である。

香川ABC(読売)

若干解説しておこう。高松市の読売新聞の部数は、2016年4月から2019年10月まで、ロック状態になっていた。高松市における読売新聞の購読者数が、3年以上に渡ってまったく変化しなかったとは、およそ考えにくい。まずありえない。

新聞の搬入部数がそのまま日本ABC協会へ報告されるわけだから、ABC部数は実際の読者数を反映していないことになる。信用できないデータということになる。

なお、「ロック」について、読売新聞東京本社の広報部に問い合わせたが回答はなかった。部数の「ロック」は、他の中央紙でも確認できる。詳細については、順を追って報じる予定だ。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

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総理の電撃辞職と総裁選展望 ── 岸田の妙手が菅を追い込んだ 横山茂彦

予告した通りとはいえ、こうもアッサリ辞任(総裁選出馬取り下げ)するとは、やや拍子抜けである。もうすこし未練たらたら、総理の椅子にしがみつきながら、最後は「菅おろし」という不名誉を党史に刻むのではないかと期待したものだ。

かつての「三木おろし」は、清廉の士である三木武夫が闇将軍田中角栄のロッキード疑惑解明に、指揮権発動(関係者の証人喚問)をもって踏み込もうとしたところ、党内反主流派(多数派)の謀略的な政局によって退陣に追い込まれた。いわば名誉ある退陣だった。

だが、菅の場合は「コロナ禍への対応の遅れ」「学術会議への政治介入」「桜を見る会究明からの逃避」「国民への発信力・説明不足」「答弁原稿の棒読み」その結果としての「国政選挙(補選・再選)での連敗」「首長選挙での相次ぐ敗北」そしてその必然的な帰結として「菅が選挙顔では勝てない」という、党内の不満によって総裁再選への道が閉ざされたのである。あまりにも格好が悪いというしかない。
横浜市長選の敗北で、ほぼ99%まで菅の退路はふさがれていた。われわれはこう予言していた。

「菅総理には、9月の早い段階での総理大臣辞職しかない。自民党総裁の座にしがみつくことで『菅おろし』と言われる惨めな末期を遂げ、党史に芳しくない名を残すのか、それとも後継指名をすることで党内に政治的影響力を残すのか。道は二つしかないのだ。」(【速報】横浜市長選挙 野党候補が勝つ! 菅総理の命脈が尽きた日」2021年8月23日)

しかしそれでも、わが菅総理は総裁選と総選挙の勝利に一縷の望みをかけ、続投を表明してきた。その先にある「自民党下野」をも怖れずに? いや、その前に党内から隠然たる「菅おろし」が始まったのである。あまりにも当然の成り行きではないか。

派閥の思わく(猟官運動にほかならない)で菅が再選された場合、自民党の密室政治に国民は「政権交代」という投票行動で応えるであろうと考えられていた。われわれはこう宣告していた。

「もしも岸田が地方票で多数を獲得し、しかし2012年のように決選投票となって派閥力学で菅が再選された場合である。自民党は民意を反映しない、ひとにぎりの幹部たちの思わくで政治を動かす。国民の一部とはいえ、地方党員の意志を踏みにじった結果、総選挙がどのようなものになるか。もはや火を見るよりも明らかであろう。」(「今後の10年を分ける自民党総裁選 ── 菅再選なら、自公の下野も」2021年8月31日)

いずれにしても、われわれの予想どおりの退陣表明だった。

◆詰めの一手は、二階おろしだった

菅を詰ませたのは、岸田の「党役員の任期を3年に」という、二階おろしの提言だった。これはじつに、妙手と言うべきであろう。

発信力が貧弱な岸田が、一皮むけた瞬間である。それに対する菅の反応は、「党役員の人事刷新」すなわち、二階に引導を渡すことだった。

メディアはこの菅の人事発動を「岸田消し」と評したが、そうではない。二階を罷免するまで、菅が追い詰められたのだ。二階が幹事長権力を維持するために、菅の続投を支持しているという、いわば老々介助的な政権維持に耐えられず、二階を更迭することで墓穴を掘る。これは詰将棋のように理詰めだった。この秘策を岸田に授けたのは誰だろう。自分で編み出した技なら、岸田の政治力の成熟を認めないわけにはいかない。

◆ネットで意外な人気投票が

さて、そこで問題なのは菅の不出馬によって、菅に恩顧のあった河野太郎が出馬宣言し、政調会長を辞任してからと菅に指摘されて出馬を思いとどまった下村博文、そして様子見をしていた石破茂が出馬を検討していることだ。

そればかりではない。総裁選への出馬が悲願の野田聖子、さきに出馬宣言していた高市早苗の後ろ盾に、それぞれ二階派、細田派が付きそうな成り行きである。

そして今回はフルセットの総裁選挙であれば、候補者の地方票の獲得が焦点になってくる。そこで、このかんのアンケートのうち、特異なものを紹介しておこう。

以下はヤフーニュースによる、ネット上の投票による結果だ。初顔という清新さ、喋りの明快さが人気を博しているのか、河野太郎が他を圧倒している。これはある意味で、新しいもの好きのネット人気なのかもしれない。

707,979人が投票!実施期間:2020/8/28(金)〜9/1(火)
河野太郎  61.7% 437,039票
石破茂   15.2% 107,590票
菅義偉   11.9%  84,341票
麻生太郎  04.0%  28,214票
岸田文雄  02.5%  17,654票
その他   02.2%  15,872票
野田聖子  01.4%   9,637票
茂木敏充  00.9%  6,373票
下村博文  00.2%  1,259票

ところが、夕刊フジ(zakzak)が行なったアンケートでは、思わぬ結果が出ているのだ。高市早苗が80%という他を圧倒する数字をたたき出したのだ。8月20日時点でのアンケートなので、河野太郎はふくまれていない。

この80%という数字はネット特有のおもしろいノリの結果かもしれないが、高市早苗総理大臣の可能性が現実のものとして浮上してきたのだ。最新の派閥構成をみておこう。

◆自民党の派閥構成の概要。★は総裁選出馬

派閥名       国会議員数     総理・総裁候補
細田派(清話会)  97人       ★下村博文
麻生派(志公会)  54人       河野太郎
竹下派(平成研)  52人       加藤勝信、茂木敏充
岸田派(宏池会)  46人       ★岸田文雄
 谷垣グループ   15人 
二階派(志帥会)  47人       林幹雄、※党外[小池百合子]
菅派(ガネーシャ) 23人       ★菅義偉
石破派(水月会)  16人       石破茂※この時期の総裁選挙に批判的
石原派(未来研)  10人       
無派閥       26人       ★高市早苗(細田派系)、
                   ★野田聖子(二階派系)

このうち、河野太郎は麻生太郎ら派閥幹部から「立候補に賛成ではないが、止めはしないから自分で決めろ」と玉虫色の回答しか得られなかった。麻生の返答には理由がある。河野太郎では派閥がまとまらない、というのだ。

本通信の読者なら周知のとおり、河野太郎は原発反対派であり、党内では「赤い自民党員」と呼ばれている。本気で「河野太郎は共産主義者だ」と思っている自民党員も少なくないのだ。国民的な人気と、自民党員の人気はちがう。

上掲した遊びごころのネット投票はともかく、読売新聞の世論調査では、次の総理は石破茂が19%、河野太郎が18%である。

この通信でも反安倍という立場で擁護してきた石破茂だが、彼の場合も国民的な期待はともかく、党内人気のとくに国会議員レベルでの人気がなさすぎる。いちど党を離れていることも、「同志を裏切った人物」として、派閥の幹部クラスの脳裡には刻印されている。政治は政策でやるものではない。感情と利害で動くものなのだ。
岸田文雄の発信力は、上述した二階おろし(役職3年制の提案)のごとく、見違えるように充実した。派閥均衡の鼎立同盟が成り立たない場合、河野太郎との地方票の獲得数が焦点になるのは言うまでもない。

このように、男性有力候補が票を食い合って、過半数に至らない場合が問題なのだ。決選投票は派閥の論理で縛りがかかるはずだが、今回は自由投票に踏み切る派閥が多い。そこで、女性候補が思わぬ得票で躍り出る可能性があるのだ。

◆高市早苗総理の可能性

小池百合子都知事の国政復帰もうわさされる中、自民党の女性総理総裁について検討しておくべきであろう。

そう、高市早苗元総務相の「総裁選に出馬します!――力強く安定した内閣を作るには、自民党員と国民からの信任が必要だ。私の『日本経済強靭化計画』」(文藝春秋9月号)を念頭においてのことだ。

高市は安倍の側近と称されるほど、極右系の政治信条で党の役職と総務相を務めてきた。今回、細田派(安倍晋三)が立候補推薦人の20人を都合することで、高市は総裁への挑戦権を得るばかりか、決戦投票の成り行き次第では、ガラスの天井を突き破る可能性が出てきた。日本初の女性総理の誕生である。(つづく)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

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政局・皇室報道の空虚を嗤う 田所敏夫

菅が政権を放り投げ、皇室のどなたかが結婚をするという。たぶんテレビは大いに取り上げ、知ったかぶりの出たがりに、いいたい放題いわせているのだろう。自称評論家やタレント、コメンテーターからどうでもいい人までが、なにか一大事でも起きたように大騒ぎしている姿が目に浮かぶ。

◆すべて限りなく希薄で非本質的な言説である

そういう雰囲気に水をかけるようで申し訳ないが、わたしは自民党の総裁が誰であろうがまったく、皆目、関心はない。天皇制に「無条件」で反対するわたしは、皇室内の出来事にも興味はない。結婚でも離婚でも好きになさればよい。好きになさればよいが、何をなさってもわたしは制度としての天皇制には賛成できないので、興味はない。差別に反対する立場から、天皇制は廃止されるべきだと考える。

この二つの出来事において象徴的なように、ほとんどのニュースは非本質的であり、報道することで非報道当事者が属する組織や制度が補完される作用を持つ、これが今日メディアの特性ではないかと思う。

だからわたしは、従前から開催に反対してきた、東京五輪がはじまる前に「東京五輪については一切発信しない」と自分としてはごく自然に判断し、実際東京五輪をまったく目にもしなかった。だから感想もない。あんな馬鹿げたことは、大会期間中にどんなドラマが生まれようが、誰がメダルを取ろうが、やるべきではなかったのだ。それについて、あれこれ枝葉末節な議論があるようだが、それらはすべて限りなく希薄で非本質的な言説である。

◆東京五輪強行開催という罪深い所業

東京だけではなく全国に広まった「自宅療養」と言い換えられた「医療から見捨てられた」ひとびとの惨状はどうだ。この地獄図絵は決して医療関係者の判断ミスや、非協力によって引き起こされた事態ではない。逆だ。政府が片一方では「学校の運動会の自粛」を求めながら、「世界的大運動会を開く」という、大矛盾を演じた結果に他ならない。「県をまたぐ移動の自粛」を求めながら海外から10万ともいわれる数のひとびとがやってきた。

日本初の「ラムダ株」が持ち込まれたのは海外からやってきた五輪関係者によってであったが、それが報道されたのは東京五輪終了後のことだ。実に罪深い所業ではないか。

こういった事態が発生することは、容易に想像ができた。たとえば他府県の警察からの警備要員として東京に派遣された警察官の中では、複数のクラスターが発生した。偶然にもわたしが目にした兵庫県警の機動隊車両に乗車して東京に向かった兵庫県警の警察官の中でもクラスターがあったようだ。

こういう馬鹿なことを強行した責任者である日本政府ならびにその最高権者である首相は、どう考えても、ただ批判の対象であり、それ以上でも以下でもない。

◆災害、貧困、コロナ禍という生活に密着した課題をどうするか

自民党の総裁選の前にはいつだって「派閥がどうの」、「誰々が引っ付いた」、「誰かが切られた」と各メディアは競い合って報じる。でも自民党総裁選挙は、自民党員以外には選挙権がないのだから、ほとんどの国民には関係ない。

あたかも国民に選挙権があるかのごとき、まったく失当な情報流布が昔からなされてきたし、いまも続いているのだろう。国政選挙で政党を選ぶための情報提供であれば、各種の細かな情報にも有権者のために意義はあるのかもしれないが、自民党の代表は、わたしたちが投票で選ぶものではないじゃないか。

そして、こういう物言いをすると「そんなこと言ってると政治が好き勝手するよ」と言われるかもしれないが、自民党総裁など、誰がやっても同じなのだと最近は切に感じる。違いがあるとすれば菅のように裏では相当ひどいことができても、人前では一人前に主語述語がかみ合った演説をすることができるかできないか(演技力)と、自民党内の力学をうまく調整する力があるかないか程度(党内政治力学)の違いだろう。

演技がうまいと国民は騙されやすい。今世紀に入ってからでは、小泉純一郎がその筆頭だろう。党内力学に長けていた官房長官時代の菅は、自民党全国の選挙資金を握り、選挙の際、安倍以上に自民党議員の操作には力を持っていたそうだ。

そんなことわたしたちの生活に関係あるだろうか。毎年襲ってくる水害への備えや、生理用品も買えないほどの貧困問題、そして命にかかわるコロナ対策をはじめとした医療問題こそわたしたちが直面していて、注視すべき生活密着の課題ではないだろうか。いずれも皇室の方々とは無縁なはなしばかりであるが。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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9・9対藤井正美訴訟証人調べ(本人尋問)に注目を! 鹿砦社に入り込み「獅子身中の虫」として蝕んだ“隠れしばき隊”藤井正美と神原元弁護士の蠢動を打ち砕こう! 鹿砦社特別取材班

来る9月9日(木)午後1時30分から大阪地裁第16民事部809号法廷において、鹿砦社が、元社員であり「カウンター/しばき隊」の中心メンバーだった藤井正美を相手取って損害賠償を求めた裁判における証人調べ(本人尋問)が行われる。

この裁判は藤井正美が鹿砦社の社員時代、就業時間中に膨大なツイッター発信を行っていた事実が偶然判明したことに起因する。この時まだ「M君リンチ事件」の情報は鹿砦社にはもたらされてはいなかった。また、「カウンター/しばき隊」の源流「反原連(首都圏反原発連合)」との関係に齟齬が発生しつつあった頃だった(絶縁宣言が出されたのはこの直後)。

偶然発見された藤井のツイッター発信は膨大な量であり、「棺桶に片足突っ込んだ爺さん」をはじめとする松岡への誹謗中傷も少なくなかった。就業時間中の明らかな〈怠業〉(サボリ)に衝撃を受けた松岡は藤井入社以来のツイッター発信の一部(この時点では、あまりに膨大だったので全部は見れなかった)の記録、内容を点検した上で元警察官の飛松五男氏と弁護士立会いのもと藤井と話し合った。

ツイッター書き込みの一部を示し穏やかに話し合った結果、藤井本人が希望した「通常解雇」とした(普通こういうケースでは修羅場になることもあるが、それを抑止するために弁護士と飛松氏に立ち会いいただき終始録音もし、この音声データも保有してある)。

藤井は、何の魂胆があったのか推して知るべしだが、うまく鹿砦社に入り込み、在職期間の3年間、まさに「獅子身中の虫」として蠢動したのである。

「ここまで深入りしていたのか」と松岡に衝撃を与えた画像。先頭に立って街宣活動を行う藤井正美

◆姑息にも証拠隠滅を図った藤井正美

ところが、藤井は会社所有のパソコンで「謝罪文」を書く素振りを見せながら、実はツイッター発信同様に〈怠業〉をしていた私的メールなどの証拠の隠滅を図っていたことが、後日発覚する。この詳細については『カウンターと暴力の病理』のなかで詳細に記述があるので是非ご覧いただきたい。

《自分を取り巻く今の環境は、3・11以降に反原発~反レイシズム~反安倍の流れを当たり前のように進んできた「縦糸」と、音楽やサッカーなどが「横糸」になったゆるやかな繋がりで編まれているんだけど、いずれ誰かが本にでもしてくれるだろう(笑)》

2015年9月5日(土)、18時43分の藤井によるツイッターの書き込みだ。ある意味、本人が「本にでもしてくれるだろう」と“希望”するから、激烈な怠業ぶりと、鹿砦社を騙った企業恫喝などの詳細を「本」の一部に掲載したのだ。しかし、後日詳細に藤井の行動を再確認したところ、就業時間中ほとんど仕事をしていなかった実態が明らかになったため、鹿砦社は代理人を通じて「給与返還」を求める内容証明郵便を藤井に送付した。藤井からは何の返答もなかったので、仕方なく損害賠償請求訴訟を大阪地裁に起こした。これがあらましである。

社員が偶然発見した藤井のツイッターの一部

◆藤井はなぜ神原元弁護士を選任したか──吉と出るか凶と出るか注目を!

藤井は、鹿砦社に対して並々ならぬ敵意を持っている(とわれわれは認識している)神原元弁護士を訴訟代理人に選任した。これまで鹿砦社ならびに特別取材班が取材を試みた人物の少なくとも5人以上(李信恵はむろん香山リカ、秋山理央ら)の代理人に神原弁護士は就任している。その時点、つまり藤井が神原弁護士を代理人に選任した時点で藤井が「反省などまったくしていない」構図が明らかになった。大阪に山ほど弁護士がいるにもかかわらず、わざわざ神奈川の神原弁護士を選任しなくてもよいものを……。当初われわれはため息まじりに苦笑したものだった。

鹿砦社はこの裁判に、元裁判官で在任中から「日本裁判官ネットワーク」で活動し裁判所の内部から司法の変革を訴え続け、今は自由法曹団に所属する森野俊彦弁護士を選任、森野弁護士は先の対李信恵控訴審でも李信恵のリンチ関与と「道義的責任」を判示する判決を引き出した弁護士である。

神原弁護士も自由法曹団に所属し常任幹事を務めていることから、これまでの一連の訴訟とは代理人の立場が異なる展開で裁判が始まった。裁判長は審理の中で「和解」を進める場面もあり、条件次第では鹿砦社も和解に応じる腹づもりはあったが、藤井サイドはこれに応じないどころか、あろうことか「プライバシーの侵害」だと鹿砦社を反訴。あれだけの〈怠業〉の限りを尽くし、自ら《いずれ誰かが本にでもしてくれるだろう(笑)》と“希望”しておきながら、願いが叶うと「プライバシー侵害」だと駄々をこねる姿は滑稽そのものであるが、滑稽な主張が裁判所で堂々と主張されているのだから、笑ってもいられない。

一躍有名になった「声かけリスト」

◆自称「常勝」に曇りが出ている中での、9月9日(木)証人調べ(本人尋問)の意味

そのようなやりとりを経て、非公開の争点整理を重ね、9月9日(木)午後1時30分から証人調べ(本人尋問)が行われるのだ。原告の証人は松岡。被告の証人は藤井である。神原弁護士は審理の過程で、証人に特別取材班キャップの田所敏夫を求める旨の発言を一時していたが、最終局面ではその要請は行わず、逆に鹿砦社側が田所敏夫と鹿砦社社員Fの証人申請を行った。「来るなら来い!」ということである。裁判長は前回期日で「田所、Fの証人については保留」と述べたが9月初旬の現時点で裁判所から連絡はないので、松岡、藤井2名が証人として証言するのは間違いないだろう。

この裁判は直接的には、就業時間中の怠業を理由に元社員に給与の返還を求めるものであるが、前述のように神原弁護士の登場で、異なった意味合いも帯びざるを得なくなった。われわれは決して望まなかったが、鹿砦社vs「しばき隊」の代理戦争ともいえる構図が、藤井の主体的選択により法廷に持ち込まれたのだ。

藤井の怠業の中には、この5年余に渡り鹿砦社が追及してきた「M君リンチ事件」隠蔽に加担するメールも多々残されており(われわれが発掘し一躍有名になった「説明テンプレ」「声かけリスト」なども藤井が発信源である)、藤井自身も「しばき隊」内ではかなりの存在感を示していたようである。だからといって、鹿砦社は無理やり「M君リンチ事件」と藤井の怠業を結び付けるつもりはなかった。にもかかわらず、日本中に4万人以上弁護士登録者がいるといわれている中から、藤井はよりによって、ピンポイントで、おそらく日本の弁護士の中で最も鹿砦社を嫌悪しているであろう神原弁護士を選任したのだ(あーあ、疲れるなぁ)。

もとより、神原弁護士は本人が高言するほど「常勝」ではない。週刊金曜日現社長植村隆氏の裁判でも負けているし対森奈津子訴訟控訴審でも敗訴、さらに鹿砦社の対李信恵訴訟控訴審でも、このかんこの「通信」でも再三報じているように大阪高裁は、M君訴訟でも一貫として免責された李信恵のリンチへの連座と「道義的責任」を判示した(この判決を取材班は実質勝訴と評価し、松岡は減額されたとはいえ賠償金を課されたことで「敗北における勝利」と評価している)。

鹿砦社が求めたのは、さぼっていた元社員に「給料その他を返しなさい」という極めてシンプルな要求だ。ややこしい話ではない。「謝罪文」まで書き退職した藤井が開き直り、鹿砦社本社の間取り図を作為的に偽造し証拠として、ぬけぬけと裁判所に提出するなど、本筋が歪められたのだ(神原弁護士の法廷戦術だったのかもしれない)。

しかし、神原弁護士の態度には最近大きな変化が見られる。M君訴訟では「でっち上げ」として判決文をみずからの事務所のHPにアップしたにもかかわらず、鹿砦社の対李信恵控訴審判決内容には触れることはないし、自信を喪失しお疲れのように感じられる。

同時に感触ではあるが裁判長の姿勢にも提訴当初に比べると、藤井側のトンデモない主張や偽造された事務所の間取り図などで、われわれへの理解が深まっているのではないかと感じられる(裁判〔非公開の争点整理〕に出た社員の感想)。

同じく「説明テンプレ」

◆油断を排し、「鹿砦社憎し」に凝り固まった神原元弁護士らの野望を打ち砕け!

油断は禁物であるし、法廷では何が起こるかわからない。前述したように、つい最近われわれは、対李信恵裁判の高裁判決でそれを経験したばかりだ。

鹿砦社は原告であれ被告であれ、裁判の当事者となることを望まない(が、この四半世紀、鹿砦社の規模で1億円超の訴訟費用を使い、こちらから喧嘩を売ったことはさほどないが売られた喧嘩には真っ向から対決してきた。今後もこのスタンスは変わらない)。言論には言論で対抗するのが、出版を生業とする者の原則であり、われわれは法廷が戦場だとは考えていない。やむにやまれぬ法廷戦ではあったが、主たる戦場は、あくまでも言論戦である。われわれは言論戦からは一歩も退かない。

李信恵にしろ神原弁護士にしろ出版をできる環境にあるにもかかわらず、われわれが取材・調査を重ね6冊もの出版物に編纂して真相究明に当たったにもかかわらず、「デマだ」「クソだ」「でっち上げ」だと鸚鵡返しに繰り返すのみで、彼らは反論本の1冊も出すことはなかった。李信恵・上瀧浩子共著で『黙らない女たち』という本を出したので、興味深く拝見したが、リンチについての言及やわれわれの出版物に対する反論は1行もなかった。

李信恵は、大阪高裁の判決に記されたようにリンチに連座しその「道義的責任」から終生逃れられない。リンチ隠蔽に加担した藤井も同罪である。李信恵らに血の通った人間の心があるのならば、李信恵を背後から支えた「コリアNGOセンター」と共に公的に謝罪すべきだ。人間だれしも間違いを犯すことはある。ここできちんとした対応を取れるかどうかで、その人の人間性が現われ、人の評価も変わろうというものだ。そうでなければ、いつまでも狡(ずる)い人間だと思われ続け、それがたとえ今は小さなものであっても、徐々に拡がっていくであろう。これは藤井にも当てはまる。開き直るのではなく謙虚にみずからの非を認め反省し謝罪するのが先決だ。われわれの言っていることが間違っているのなら指弾していただきたい。

9月9日残暑下、コロナ禍の中ではあるが、圧倒的な注目と、時間の都合がつく皆さんにはぜひ傍聴をお願いしたい。藤井がやらかした悪行を代理人の神原弁護士が「正義」と言うのかどうかわからないが、藤井や代理人・神原弁護士の詭弁や三百代言、蠢動を打ち砕こう!

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

「皇族スキャンダル」から「世紀の大恋愛」に 年内結婚・皇室離脱へ 眞子内親王の決断 横山茂彦

年内に、劇的な「大団円」を迎えることになりそうだ。9月1日の読売新聞のスクープ、眞子内親王が年内結婚へ! である。秋篠宮家と宮内庁のリークであろう。

ついに眞子内親王と小室圭氏が、みずからの意志で結婚へとすすみ、皇室を離脱したうえでアメリカに移住するというのだ。弁護士試験への合格が前提だが、小室圭氏のニューヨークでの法律事務所への就職も決まっているという。メディアのバッシングや国民の猛反対を押し切って、ふたりの愛は「皇族スキャンダル」から「世紀の大恋愛」へと花ひらくことになりそうだ。

報道によれば、眞子内親王は一時金の財源が税金で、小室さんの母親をめぐる「金銭トラブル」への批判もあることから、受け取ることを辞退する考えを持っているという。宮内庁や政府は眞子さまの考えを踏まえ、一時金の額を減らすことや、特例で辞退することができるかどうかなどを検討するという。

※[参照記事]「眞子内親王の結婚の行方 皇室の不協和こそ、天皇制崩壊の序曲」(2021年4月13日)

4月に小室圭氏が文書(借金問題の事実関係)を発表したとき、眞子内親王がその相談に乗っていたことが、4月9日に行われた加地隆治皇嗣職大夫の会見によって明らかにされた。文書の発表が小室氏の独断ではなく、眞子内親王の意向でもあるというものだ。このことについて、苦言を呈するオピニオンは少なくなかった。

「本来ならば天皇家は民間の金銭の争いなどとは最も距離を置かねばならない立場だ。その眞子さまが、小室家と元婚約者男性のトラブルのリングに乱入し、一緒になって70代の元婚約者を追い込んだも同然だ。」(ネット報道)という指摘がなされたものだ。 

皇室制度に詳しい小田部雄次静岡福祉大学名誉教授も、眞子さまへの失望を口にした。

「国民に寄り添い、その幸せを願うはずの皇族である眞子さまが、恋人と一緒になって一般の人を相手に圧力をかけてしまったという事実は重い」

「眞子さまが、自ら望んで伝えたいと願ったとは思いたくない。仮に眞子さまが、恋人の対応は自分が主導したと伝えることで、国民が黙ると考えているのならば、それほどおごった考えは皇族としてあるまじきことです」

眞子内親王は「おごった考え」から、自分たちの危機を突破しようとしたのだろうか。そうではない。借金があるから皇族との結婚は許さないという、小室氏への不当なバッシング(低所得者差別)を回避し、ただひたすら望みを遂げたいという思いであろう。それがゆるされないのが皇族ならば、皇籍を捨ててでも結婚に突き進む。皇族も人間なのである。じつに自然な成りゆきではないか。

自民党の伊吹文明は法律論に踏み込んで、ふたりの結婚そのものに疑義をとなえた。

「国民の要件を定めている法律からすると、皇族方は、人間であられて、そして、大和民族・日本民族の1人であられて、さらに、日本国と日本国民の統合の象徴というお立場であるが、法律的には日本国民ではあられない」

伊吹は「皇族は日本人・人間であるが、国民ではない」と明言するのだ。それでは、皇族が国民ではないことと、国民としての権利がないことは、果たして同じなのだろうか。国民の権利の源泉は、基本的人権である。

つまり人間だから、自由に生きる権利があり、それは職業の選択の自由・婚姻の自由をも包摂する。伊吹は憲法の理解を「基本的人権」ではなく「日本国と日本国民の統合の象徴」に限定してしまっているから、その矛盾を矛盾として突き出せずに、皇族は国民ではないが大和民族・日本民族だと、摩訶不思議なことを言いだすのだ。

◆皇室・皇族という「矛盾」

そしてじつに、この「矛盾」にこそ、天皇制(皇室文化と政治の結合)が崩壊する根拠がある。ふつうの人間に「皇族」という型を押しつける「矛盾」は、あまりにも無理がありすぎる。したがって、小田部雄次の言う「皇族としてあるまじきこと」を、かれら彼女らはしばしばするのだ。

皇籍離脱を口にしたのは、眞子内親王だけではない。

三笠宮寛仁(ともひと)親王は、アルコール依存による酒乱、別居、母娘の疎遠など、いわば一般庶民の家庭にある家族崩壊を国民の前に見せてきた。寛仁親王の「皇籍離脱宣言」は、まさにふつうの家庭と皇族という看板の「矛盾」を露呈させたものなのだ。

ほかにも皇族のなかでは、高円宮承子(たかまどのみやつぐこ)女王という、破天荒で魅力的な存在がある。ヤンキーと評される彼女にとって、皇籍は「矛盾」であろうか。はた目には「矛盾」をも呑み込んで、豪快に生きているように見える。平成上皇の「御言葉」(退位宣言)もまた、天皇制の「矛盾」にほかならない。

胸には蜥蜴のタトゥー、学習院時代から「スケバン」的な風貌が周囲を驚かせ、イギリス留学中は奔放な性生活を暴露された高円宮承子。じつは日本ユニセフ協会の常勤の嘱託職員でもあり、語学に堪能な彼女は皇族外交に欠かせない存在でもあるという。

◆皇室の民主化が天皇制を崩壊にみちびく

2017年の婚約発表、それに対するリアクションとして借金問題が報じられていらい、小室家の借金問題は国民の婚約反対運動にまで発展してきた。

たとえば小室圭は貧乏人のくせに不相応な学歴を形成(国立音大付属からカナディアン・インターナショナル、ICU進学)し、もともと玉の輿をねらっていたのだと。結婚を匂わせて、高齢の元婚約者から400万円をせしめた。あるいは亡父の遺族年金を強奪した、などなど。およそふつうの家庭なら、どこでもありそうな話がメディアの好餌にされてきたのだ。

だがそれも、わが皇室の戦後史をひもとくならば、まさに「ふつうの」バッシングだったことがわかる。正田美智子(上皇后)が明仁皇太子に嫁ぐときも、猛烈な反対運動、旧華族や皇族による反対、宮内庁の侍従や女官たちによる陰湿な美智子イジメがあった。

その意味では、皇族皇室の民主化というファクターが、一歩づつ、そして確実に天皇制を変質せしめ、崩壊へとすすむ序曲でもあるのだ。その第一の扉はひらかれた。快哉。

※[参照記事]「天皇制はどこからやって来たのか〈38〉世紀の華燭の陰で──皇后・旧華族による美智子妃イジメ」(2021年8月27日)
※[参照記事]「天皇制はどこからやって来たのか〈39〉香淳皇后の美智子妃イジメ」(2021年8月29日)


◎[参考動画]眞子さま結婚へ……内定から4年 なぜ今? 秋篠宮さまは(ANN 2021年9月1日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

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なめられているのは広島市民! 根深い「政策不在」の広島政治 「河井夫妻」だけが問題なのか? さとうしゅういち 

河井案里さんが当選(有罪確定で無効)になった参院選広島2019。その後、夫の克行被告と共謀しての前代未聞の買収事件が発覚し、夫妻とも2020年6月18日、東京地検特捜部に逮捕され、案里さんは東京地裁での有罪判決を控訴せず、2月4日、当選無効が確定。克行被告は衆院議員をやめたものの、一審の実刑判決を不服として控訴しています。

両者ともきちんとした説明責任はいまだはたしていません。また、1億5,000万円のお金を案里さん陣営に出した側の当時の自民党総裁の安倍晋三さんもなんら責任をとっていません。4月25日執行の参院選再選挙においては、自民党候補は落選したものの、市議・県議はどこふく風です。とくに案里さんから直接もらった県議4人については、案里さんの有罪が確定した以上は、お辞めになったうえで、検察になにもいわれなくとも自首するのが筋です。しかし、8月28日現在、誰もなんのアクションも起こしていません。広島市内の有権者は、まだ、政治家になめられています。

2019年広島の参議院選挙

◆河井案里さん=政策不在・物量重視の選挙手法に真っ向から挑んで

買収事件をめぐる夫妻の金権政治については、多くのマスコミも切り込んでおり、ここでは多くはふれません。今回は広島の政治における「政策不在」についてお話しします。

まず、河井夫妻、とくに案里さんの政治手法は2003年に県議に初当選された直後は同期の女性議員とともに、県内の女性の声を聞いてあるく真面目な手法をとっておられました。

しかし、2009年に知事選(落選)に立候補したあたりからおかしくなってきました。わたしも、案里さんの街頭演説を2009年知事選、あるいは、2019参院選でも拝聴しました。しかし、「まったく新しい政治を」と叫ぶものの中身がないのです。おなじ自民党推薦の現知事や現市長を批判することで、現知事や市長に不満なひとたちを取り込もうとしている狙いはわかるのですが、肝心の彼女自身の政策が見えないのです。

こうした案里さんの政治姿勢に疑問をもったわたしは、2011年4月の県議選安佐南区選挙区で彼女と対決するために広島県を退職しました。選挙運動中に実感したのは、案里さん陣営のハンパない物量でした。とにかく、街中、案里さんのイメージカラーのピンクの看板やビラが洪水のように溢れているイメージです。

対するわたしは、最低限の費用で挑みました。彼女がわたし(4278票)の約5倍の票を取ってダントツのトップ当選。わたしは供託金は回収できたものの、当選にいたりませんでした。

◆「よくあれだけの票を取ったな」とびっくりされてびっくり

再選挙

選挙後、案里さんの地元のいろいろな方に「よくあれだけの票を取ったな?!」と驚かれました。

いや、わたしからしたら、「まったくといっていいほど政策がない案里さんがあんなに取った」ことが驚きなのですが。その、ギャップにまた二重にびっくりしました。

「広島の選挙や政治において、政策など、まったく関係ない」というのが実態なのです。

◆「地元・広島が一番政策不在」だった

わたしは、実は、「全国フェミニスト議員連盟」という団体に所属しています。仲間の女性議員・候補の応援に国政・地方関係なく、沖縄以外の全国にお邪魔した経験があります。「保守的」といわれる地域もみてきました。しかし、自分自身が立候補してみて、「地元の広島が一番政策不在だった」ということを実感しました。当時としても珍しく広島県議選と市議選には選挙公報がなかったことも影響していることもそれに拍車をかけました(2019県議選からようやく発行される。)。

◆広島の既成与野党へのアンチとして期待された案里さん

そして、さらに、複雑なのはそもそも、案里さん自体が既存の政治家、すなわち、「東大京大卒高級官僚出身のとくに男性国会議員」「世襲の腐りきった地元の政治家」「大手企業正社員・正規公務員中心の労働組合出身の野党議員」へのアンチテーゼとして、一世を風靡していたことです。わたしは、県議選安佐南区選挙区での敗北後も、政治活動を続ける中で以下のよう声をたくさんうかがいました。

「慶応ガールの河井なら東大京大卒男性高級官僚出身にはわからない女性の声も取り上げてくれそう。」

「女性の河井なら、大手企業正社員中心の組合出身の男性よりは、非正規労働者の味方をしてくれそう。」

「市町村合併を強行して地方を疲弊させた前知事にガツンと言った河井なら期待できそう。」

実際に、広島の既存の政治家もぱっとしなかったは事実です。

前知事(故人、1993-2009在任)は市町村合併を全国レベル以上に強行。86ある市町村を23に減らし、公務員も大幅に減らしました。保健所も全国の半減どころか3分の1にしました。大阪府知事ら「維新の会」がやっていることは広島県で前知事がとっくの昔にやっていたのです。

その結果、西日本大水害2018では復旧・復興にも苦労しています。広島県政の主流派もかくのごとくひどいのです。そして、その前知事の巨額買収疑惑をめぐって2006年に「男らしくやめなさい」と追及したのが案里県議でした。広島自民党の主流は新自由主義。野党も野党でとくに原発推進企業労組の影響がつよいなか、歯切れがわるい。そういうなかで、案里さんは頭角を現したのです。お金をばらまいたから当選した、安倍さんや菅さんの後押しがあったから当選した、というのは間違いではないが、一面的な見方です。

案里さんは「維新塾」にも参加されており、(中身がなくても)「ガツン」という物言いでウケをとることに磨きがかかったともいえます。

そもそも、買収であるならば、他の自民党国会議員も、表面上は合法な地方議員の政治資金団体へのカンパとしてやっていることではあるのです。それと引き換えに応援してもらってきたのです。

◆参院広島再選挙で「変わった部分」と「変わらぬ部分」

参院広島再選挙では、自民党もかつてのような地方議員を大々的に動員する、という手法はとれなくなりました。その結果、自民党の票が大幅に減るという形で投票率が下がりました。

一方で、「政策不在」については、与党はもちろん、野党もあまり変わっていないといわざるを得ません。

告示の数日前、地元の市民連合から「なんとか反自民で一本化できないか?」という打診をいただきました。

そこで、わたしは、(当選した)立憲民主党・連合広島など推薦の候補サイドに「伊方原発運転差し止めをふくむ原発ゼロ」を呑むなら「貴陣営への一本化もありうる」という話を持ちかけました。しかし、陣営の幹部の方からは「候補者は具体的な政策がわかる人ではない」という驚くべき回答(?)をいただきました。「これはだめだ。政策論争をきちんとしないと盛り上がらない」と考え、立候補を最終的に決断したものです。

しかし、マスコミも「与党対野党」の構図をおもしろおかしく伝えるだけで、公開討論会など、政策論争を盛り上げる仕掛けはまったくしませんでした。市民団体なども「まず、野党共闘ありき」で政策論争不在の政治を立て直すということには手が回らなかったように見えます。こうしたことから、結局、投票率は33%に留まりました。政策不在という部分は変わっていない広島の政治にうんざりの方が多いのです。

しかし、目前にせまった衆院選は核兵器禁止条約発効後、コロナ後、アメリカのアフガンでの敗北後、西日本大水害2018後、黒い雨裁判住民勝訴確定後、最初の衆院選挙です。大きな曲がり角にある中で、とくに核兵器禁止はもちろん、広い意味での平和でリードすべき広島が政策不在なままではいけん!

現在、さとうしゅういちは定例記者会見という名目でみなさまとかたりあうズームミーティングを毎週金曜日の20時から開催しています。広島・日本・世界をともにかたりあうことが、政策・政治姿勢本位の政治を広島からつくりなおすことではないでしょうか? お待ちしております。

◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/29547261/

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。

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《9月のことば》満月に 君を想う 鹿砦社代表 松岡利康

《9月のことば》満月に 君を想う(鹿砦社カレンダー2021より/龍一郎・揮毫)

9月になりました──。

私事ながら、今月私は70歳になります。すでに黄泉の国に旅立った友人や、若い頃に出会い、今はどうしているか気になる人も少なからずいます。

あいつ、こいつ、あの人、この人……想い出とともに懐かしい顔が過(よ)ぎります。

いろいろな人たちに迷惑をかけて私は生きてきました。これから老い支度に入ります。後先さほど長くはありません。同世代ですでに亡くなった人もいるのに、これまで生き長らえてきたのが不思議です。

コロナ禍で思ったように身動きできず、故郷の友人はじめ会いたい人にも会いに行けず満月に想いをいたすしかありませんが。残りわずかとなったわが人生、これからもダメなことはダメと言い続ける、恥じない生き方をしたいと思っています。(松岡利康)

【管理人よりのお知らせ】
9月よりこの「デジタル鹿砦社通信」も新たな寄稿者を迎え、これまで以上に読み応えのあるものになると思います。新たな寄稿者は、森奈津子、黒薮哲哉、さとうしゅういち各氏です。ご期待ください!

『紙の爆弾』『NO NUKES voice』今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

今後の10年を分ける自民党総裁選 ── 菅再選なら、自公の下野も 横山茂彦

菅辞任か解散強行か、と風評おびただしかった政治日程が決まった。自民党の総裁選挙9月17日告示、29日投開票である。

横浜市長選挙の敗北で死に体と見られていた菅総理が、開き直った再選出馬となった。25日には菅総理が党本部を訪れ、二階幹事長・林幹雄幹事長代理と約30分にわたって面会。公然と密談することで、自分たちが政局を仕切るのを行動でしめしたかたちだ。

◎[参考記事]「五輪強行開催後に始まる「ポスト菅」政局 ── 二階俊博が仕掛ける大連立政権」(2021年7月21日)

◆難航する野党共闘

総裁選挙を前に持ってきたことによって、総選挙(衆院選挙)の日程もかなり長いタームを含むことになる。社民党の関係者と懇談する機会があったので、以下に国会内の見通しをまとめておこう。

総裁選挙後の臨時国会で、首班指名となる。懸案のコロナ対策立法ののちに解散総選挙となり、その日程は最長でギリギリ11月までずれ込むものと考えられる。これは菅の再選、新総裁の場合も考えられる日程であろう。総裁選敗北で政権交代の危機も考えられる自民党にとって、失地回復の時間的猶予を確保したことになる。

もうひとつ、巷では台風の目になるかもしれない「小池新党」だが、国民民主との提携が現実的であるという。もともと、希望の党として一体化していた関係である。その国民民主の存在が、共産党との関係で野党共闘のネックになっている。社民党関係者によると、いまだ60か所以上の小選挙区で候補調整が遅れているというのだ。連合が嫌う原発反対、そして共産党への反発である。これに代わるかたちで、市民連合や文化人を看板にした選挙対策が練られているという。

このかんの選挙でわかるように、圧倒的な多数派である無党派層の選択肢になる野党共闘候補が実現しなければ、国民の20%に満たない自民党支持で一強政治が継続してしまうのだ。

◆あいかわらずの菅答弁

それにしても、わが菅総理のボロボロ、トホホな発言はあいかわらずだ。言い間違いをあげつらいたくはないが、一国の宰相の発言である。記者会見から拾ってみよう。

「タリバンの首都、カブール…」(※正しくは「アフガニスタンの首都」)。

「カニ政権は機能しなくなり……今後の情熱は、依然として不透明であります」
(※正しくは「ガニ―政権」)。

「感染拡大を最優先にしながら…」(※「感染拡大防止を、」のつもりであろう)。

◆総裁選展望

ふたたび自民党の派閥構成の概要である。(★は総裁選出馬)

派閥名       国会議員数    総理・総裁候補者
細田派(清話会)  96人       ★下村博文
麻生派(志公会)  55人       河野太郎
竹下派(平成研)  52人       加藤勝信、茂木敏充
岸田派(宏池会)  47人       ★岸田文雄
 谷垣グループ   23人(重複含む) 
二階派(志帥会)  47人       林幹雄、※党外[小池百合子]
菅派(ガネーシャ) 26人       ★菅義偉
石破派(水月会)  17人       石破茂※この時期の総裁選挙に批判的
石原派(未来研)  10人       石原伸晃※菅続投支持
無派閥       63人       ★高市早苗(細田派系)、野田聖子(二階派系)

現在のところ、★印が総裁選出馬宣言をしている。

このうち、有望株とみられていた河野太郎が出馬するのかどうか。出馬しないのはワクチン相ほかに抜擢してくれた菅への配慮ではないかとされているが、その動静が注目される。

去年から再出馬の岸田文雄は、じつはあとがない。参院から総選挙(山口三区で河村建夫と争う)で衆院に転じる林芳正が、宏池会の後継者となるからだ。今回を逃がせば、岸田が総理大臣になる可能性はなくなる。まさに背水の陣である。

昨年の総裁選で敗れたあとは、何となく一皮むけたような雰囲気もあり、出馬にあたっての政策では、経済再生のための「所得分配」問題にも発言がおよんでいた。よりましな選択としては、岸田の健闘に期待してもいいかもしれない。

そして下村博文の出馬である。よりにもよって、嫌いな人物が総裁選への出馬を宣言した。


◎[参考動画]総裁選に向け動き加速(テレ東BIZ 2021年8月27日)

じつは自民党の政治家だから嫌いだとか、そういうものはわたしの場合は、ないつもりだ。そしてこの通信で、個人的な好き嫌いや個人的な感情を顕わにするのを、なるべく避けてきた。

個人的な感情で論評・報道してしまうと、その批判の公共性が失われるからだ。さまざまな考え方があるし、個人エッセイ的に心情を吐露する人がいても悪くはないと思うが、ウエブマガジンも「社会的公器」である。そこを逸脱して、個人の感情で批評してしまえば、公共のネットを私物化することになる。したがって「わたしは」ではなく「われわれは」という視点を、ある意味では勝手に世論を代表するかたちで押し出すことにもなる。だがそこで、個人的感情を公的な視点によって抑制するのである。

だが、今回は感情的なものを抑えるのはむつかしい。嫌いなのである。下村博文という政治家が(苦笑)。

ほかにも、公明党代表の山口那津男の優等生的な風貌も嫌いだったが、実際には社民党の福島瑞穂なみの平和観の持主で高潔、非常に聡明な人物だと知って、その嫌悪感はなくなった。しかし、下村博文は安倍晋三以上の極右政治家である。この男だけは、総理大臣にしてはならないと思う。

もうひとり、高市早苗が先駆けて出馬宣言している。

「総裁選に出馬します!――力強く安定した内閣を作るには、自民党員と国民からの信任が必要だ。私の『日本経済強靭化計画』」(文藝春秋9月号)。

安倍元総理に再出馬をもとめたところ、拒否されたのでみずから出馬したという。じつは自民党内にも「女性宰相待望論」があり、単なる当て馬・咬ませ犬とするには惜しい。下村博文とちがって政策要領もあるので、彼女については稿をあたらめて批評したい。

◆戦況はどうか?

それでは、総裁選挙の戦況はどうなのだろう。というよりも、菅の再選はあるのか。今回は地方党員の投票が反映される、フルスペックの総裁選挙である。

2012年の総裁選では、石破茂・安倍晋三・石原伸晃・町村信孝・林芳正が出馬し、石破茂が199票で安倍晋三(141票)に差をつけるも、過半数の獲得にはいたらず国会議員による決選投票となった。

ここでは派閥の論理が優先し、安倍が108票、石破89票となり、地方党員の意志が封じられた格好になった。今回、地方の自民党で圧倒的な人気をほこる石破茂は出馬せず、二番手人気の河野太郎も不出馬の可能性が高い。

したがって、菅義偉と岸田文雄の事実上の一騎打ちは、地方票の獲得率によって流れが決まる。

問題なのは、もしも岸田が地方票で多数を獲得し、しかし2012年のように決選投票となって派閥力学で菅が再選された場合である。自民党は民意を反映しない、ひとにぎりの幹部たちの思わくで政治を動かす。国民の一部とはいえ、地方党員の意志を踏みにじった結果、総選挙がどのようなものになるか。もはや火を見るよりも明らかであろう。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

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布川国賠控訴審で完全勝利判決! ―― がんと闘いながら、「冤罪のない社会」を目指す桜井昌司さん 尾崎美代子

8月27日、午前11時半、東京地裁前に「勝訴!」「捜査の違法を認める!」の旗が掲げられ、大きな歓声がわき起こった。この日、東京高裁(村上正敏裁判長は)、1967年、茨城県でおきた強盗殺人事件(布川事件)の冤罪被害者・桜井昌司さんの国賠訴訟控訴審で、一審勝訴判決と同水準の賠償を命じる判決を言い渡した。

この裁判は、布川事件の犯人にされ、無期懲役判決が下され、29年間獄中につながれてきた桜井さんが、2011年再審無罪を勝ちとったのちも、警察、検察に謝罪されず、「犯人視」され続けたため起こした裁判であった。高裁判決は、一審判決をさらに踏み込んで警察、検察の違法性を認定した、完全勝訴判決となった。

布川国賠控訴審で「完全勝訴」! 捜査の違法を認める!
東京高裁前で、判決前にアピールする桜井昌司さん

◆一審判決の意義

この事件では、自白以外に証拠がなかったため、警察、検察もなんとか桜井さんらの自白を取ろうと必死になって、捜査や取り調べで数々の違法行為を行ってきた。2019年5月30日、一審の東京地裁(市原義孝裁判長)は、警察、検察の捜査や取り調べに違法行為があったとして、国と茨城県に計7600万円余りの賠償を命じた。一審判決以上に詳しく、警察、検察の捜査や取り調べの違法性を認定したものだった。

一審判決は、警察が、事件発生時、桜井さんが兄のアパートにいたとのアリバイを述べたのに、「兄が否定している」とか、現場で桜井さんらを見たと供述した人はいないのに、見たと証言する人が存在するなどと嘘をいい、桜井さんを自白に追い込んだことを違法とした。

また検察は、事件当日、被害者宅の周辺で、桜井さんらを目撃したなどと証言した4人の捜査報告書などの開示を拒み、桜井さんの無実を示す証拠を開示しなかったことで、裁判所の誤った有罪判決を導いたとした。特に「公益の代表者」である検察官に対して、事件を解明し、真相を明らかにする職責があり、重要な証拠は有利不利を問わずに、法廷に提出する義務を負うと指摘したこと、特に弁護側から具体的な証拠開示の申し立てがあった場合は、合理的な理由がない限り、応じなければならないと述べたことは、非常に重大な意義をもつものだった。

桜井さん側は、当初、控訴しない予定だったが、検察が判決を不服として控訴したため、認定の一部を不服として付帯控訴し、東京高裁で控訴審が争われていた。

支援者の声援に見送られ入廷する桜井さん
仮釈放後結婚し、桜井さんを支えてきた奥様の恵子さん

◆さらに踏み込んだ高裁判決

午前11時の判決言い渡しに先立って、高裁前で宣伝活動が行われ、桜井さんがアピールを行った。

「日本の社会が酷くて、安倍晋三みたいなのが堂々と政治をやっている。コロナ対策もまともにやれない。やっぱりそれもこれも含めて、日本の司法が歪んでいることが全てだと思っています。警察も検察の方も真面目に仕事しているということを私は確信しているし、疑ったこともありません。でも残念ながら、日本の警察、検察は平然と公然と力におもね、白を黒とする組織です。警察という仕事はいつも人を疑うために、人間として歪んだ人たちの組織だと、私たち冤罪被害者は確信しています。警察官は人を信用しなくなり、正義を行いたいという過剰な思いと共に、無実の人に嘘の自白をさせてしまう。それが多くの冤罪の原因です。(中略)日本の警察というのは、適正に捜査をして、冤罪を作る組織なんです。そろそろ社会の皆さんが、この事実に気付いてほしいと思います。幸い私の事件は再審が勝って、国賠も一審で認められ、今日東京高裁でも認められることを100%確信しています。」
 
裁判の冒頭、村上正敏裁判長は、判決期日が延期になったことを丁寧に詫びられた。そして非常にわかりやすく書かれた判決要旨を読み上げた。「まるで誰かの作文のよう」と考えながら聞いていたが、判決後の報告集会で、弁護団から「桜井さんや私たちがずっと言い続けてきたことだ」と述べられた。そう、桜井さんが何度も獄中ノートに書き連ね、警察、検察に何度も話したアリバイなどの話だ。だからか、判決要旨を聞きながら、何度も「うんうん」とうなづき、ときおり天井を見上げる桜井さんがいた。

判決要旨の一部を紹介する。

「早瀬警察官は10月13日から3日間、被控訴人(桜井さん)に対し、長時間にわたって本件強盗殺人事件に関わる取り調べを行い、厳しく追及した。その間、被控訴人及び杉山を被害者方付近で目撃した者がいるとの虚偽の事実を告げ、また本件犯行があったとされる8月28日には杉山と一緒にいた光明荘(桜井さんのお兄さんのアパート)に宿泊したかもしれないと被控訴人が供述したのに対し、賢司(桜井さんのお兄さん)に確認していないにもかかわらず、賢司がその日は泊まっていないと言っている旨を述べ、同月15日には、やったことは仕方がないから早く素直に話せと母親が言っている旨のねつ造した話をし、同日行われたポリグラフ検査の結果、被控訴人の供述は全て嘘であると判明したとの虚偽の内容を伝え、手だてもないのに被控訴人の意向に従って新聞報道されないようにすると述べるなどした。そして、同日、被控訴人は、ポリグラフ検査後の取り調べ再開からわずか約1時間後、本件犯行を自白した」。(判決要旨より)

早瀬警察官は、このように虚偽の事実を次々と突き付け、桜井さんに心理的動揺を与えた。とくにポリグラフについて、一般的に科学的で検査結果には極めて高度の信頼性があるかのごとき印象を与え、まだ20歳で社会的経験の乏しい桜井さんに、非常に強い心理的動揺を与えたとした。

桜井さんはその後、有元検事にアリバイを主張したが、その後再び早瀬警察官の取り調べを受け再度自白に追い込まれた。そして有元検事と交代した吉田検事が、桜井さんが兄のアパートにいた際、窓から隣の部屋に入り缶詰を盗んだと説明したことに対して、以下のような嘘をつき、桜井さんを更に窮地に追い込んだ。

「自分も東京から通っており、光明荘と向かいのアパートをみてきたが、とても向かいのアパートに渡ることはできないと虚偽の事実を述べ、(実際には渡ることは可能であった)、控訴人のいうことは信じられないと告げ、被控訴人の主張するアリバイを調書に記載することもせず、否認しても裁判官は信じないだろうとも述べた。また、吉田検察官は、杉山に対して、公開の法廷で裁判官及び弁護人等の同席する場所においてさえ、後記のとおり高圧的な態度を示していたこと等に照らすと、被控訴人に対する取り調べについても、相当に高圧的であったものと推認できる」(判決要旨より)。

判決後の報告集会での桜井さん

13時から日比谷図書文化会館地下ホールで「報告集会」が行われ、弁護団お一人お一人の挨拶、続いて布川裁判を支えてきた奥様の恵子さん、「獄友」で国賠を闘う青木恵子さん、西山美香さん、日本国民救援会副会長伊賀カズミさんが挨拶を行った。最後に桜井さんのお話を。

「皆さん本当にありがとうございました。今まで何度も判決を聞いたが、今日の判決ほど、胸がすく判決はありませんでした。私と杉山が、54年前に警察や検察に何度も訴えた事実をそのまますっと認めてもらえた。聞いていて心安らかになった判決でした。途中で何度も涙がでそうになりました。当たり前のことが当たり前に認められるまで、54年かかるという……。何故こんなに嘘が当たり前のように報道されたりする、酷い国家なのか。こんなことがどこから生じるか? やっぱり検察庁のゆがみとしか思えません。平然と過ちを犯しても、謝りがない、54年間、無駄な労力を使う国家とは何か? しかも税金を使う。(裁判で)勝つのは嬉しいが,勝っても検察官の懐が痛むんですか? 何も影響はない。これは何なのか、勝手も怒りがわいてくる。やっぱり私たちは、どこかでこの過ちを正せるような国にしなくてはいけない、生意気ですが改めてそう思いました。ご存知のように私は2年ほど前に癌を発症し、医師からは見放されました。本当は死んでいるはずですが、なぜかどんどん元気になっています(拍手)。冤罪をつくる警察、検察も、どこかおかしいと思っているはずなので、私は生かされる限り、誰もが冤罪をうけないようなシステムを作るために、これからも、皆さんと共に頑張っていきたいと思っています。ありがとうございました」(拍手)。

判決後の報告集会

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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