「強きを助け、弱きを挫く」で一貫する曽野綾子と産経新聞の差別エネルギー

産経新聞と曽野綾子といえば「差別主義者」の代表格だが、その両者が結び付くと差別エネルギーが二乗になり事件が起きる。産経は経営状態が悪いから積極的にYahoo!やネットに記事提供を行っているのであたかも世間で相応の認知がなされた新聞のように誤解されやすいけれども、あんなものは一部偏執狂が意地で出し続けている同人誌のようなものだ。

◆産経新聞は「近視眼、気味悪い、気が小さい」=「3K」新聞

産経新聞は自民党応援団であり、昨今の「嫌韓」を牽引してきた犯人でもある。産経を正しく標記すれば「3K」で「近視眼、気味悪い、気が小さい」の頭文字に由来する。「近視眼」は韓国に対する態度で窺い知れる。今でこそ「韓国叩き」の先頭を走る「3K」だが、ノテウ(慮泰愚)大統領時代までは日本の新聞の中で最も「親韓」を露わにしていたのが「3K」だ。

軍人出身で民主主義を掲げてはいるが軍国主義の血を引く共産主義に対峙する人物だったからだろうか。世論や他の新聞が韓国政権に一定の批判を保持していたのとは対照的にもろてをあげて「ノテウ万歳」だった。

その「3K」系列のフジテレビはつい数年前まで午後ほとんどの時間に韓国ドラマを流しっぱなしだったくせに、潮目が変わると見るや転身の早いこと。これを「近視眼」と言わずに何と表現できよう。「気味悪い」は今回のように国際的にも批判を浴びることが必至な記事を平気で載せてしまう「ネトウヨ」並みの神経だ。

さらに、あまりの偏見に読者が離れてしまい夕刊を発行することすら出来なくなった青色吐息なのに、まだ「これでもか、これでもか」と差別を売り物にしようとする執着心である。「気が小さい」は弱いものや直接批判を浴びない勢力には罵倒を浴びせる癖に、真っ当な批判を正面からされると逃げるか、嘘をついて責任回避をしようとしかしない態度だ。「強きを助け、弱きを挫く」のが「3K」だ。

◆「アパルトヘイトは素晴らしかった」と言っているに等しい曽野綾子

一方、曽野綾子はこれまた堂々たる差別者にして、政府の手先で裏社会の仕事も引き受ける輩だ。愛情だの、母性だの聞こえは優しい言葉を多用しながらも結論は「女は女らしくいなさい!子供を産んだら会社を辞めなさい!」平然と発言したのは数年前だったが、今回の本音に対する批判は国内だけに収まらないだろう。

「3K」は2月11日付朝刊に曽野綾子の「労働力不足と移民」と題したコラムを掲載した。曽野は労働力不足を緩和するための移民の受け入れに言及し、「20~30年も前に南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった」などと書いている。

こういうことをあたかも独自の視点のように書き、公表をはばからないのが曽野綾子という人間の本性だ。これは「アパルトヘイトは素晴らしかった」と言っているに等しい。この老婆は原則的な差別主義者のくせに驚くべき二重基準を平然と実行する不思議な人物でもある。日本財団(旧日本船舶振興会)代表の椅子に長く座っていた事実がそれを物語る。

と言っても、若い世代にはピンとこないだろう。この団体はモーターボートレースを牛耳っていた笹川良一が設立した団体で、古くから陰に陽に自民党政権を資金的に支えてきた。笹川について書き出すと本が1冊出来てしまうが、40代以上の方々は高見山と一緒に拍子木を打ち鳴らしながら「戸締り用心火の用心、一日一善!」とテレビCMに出ていた老人と言えばご記憶の方も多かろう(笹川は「ファシスト」を自認していたから存命ならこの時代、さぞ生き生きしていただろう)。曽野は笹川の遺産である「日本財団」(この名前も一民間団体にしては随分とずうずうしい)の会長時代に言い逃れのできない犯罪をおかしている。もっともも共犯が日本政府だから検挙されることはなかったが。

2000年アルベルトフジモリが現職のペルー大統領のまま日本に事実上の亡命をしてきた。ペルー検察は後に「殺人罪」容疑者としてフジモリを追及することになるが、2000年フジモリが日本へ逃げてきた際に保持していたパスポートはペルー国籍のはずだ。というのはフジモリの両親が日本国籍であるので、出生届を日本の役所に出してれば「二重国籍だった」可能性は排除できないからだ。仮に「二重国籍」であればフジモリはペルーで大統領になることはなかった。ペルーでは「二重国籍」者が大統領になることを法律で禁じている。

ところがあろうことかフジモリは2007年に日本新党から参議院選挙の比例代表候補として出馬する。何たることかと呆れた記憶がある。日本政府は「二重国籍」を認めていない。この国は国籍に関してはとりわけ神経質であり、他国で大統領をまで上り詰めた人間に日本国籍を「進呈」するなどその他の差別的行政態度からは考えられないことだ。

おそらく、曽野らは日本財団による過去の「貸し」や、裏社会の装置を使って政府を裏から動かしたのだろう。フジモリは実際に当選するあてもない選挙に出馬したのだから。

◆曽野綾子×3K新聞の「誤った言説」に対して日本の中で徹底批判が必要だ

そんな「3K」と曽野の合作に国内からは大小批判が上がっていたが、当の南アフリカ政府からも強烈なパンチが飛んできた。モハウ・ペコ駐日南アフリカ大使が「『アパルトヘイトを許容し、美化した。行き過ぎた、恥ずべき提案』と指摘。アパルトヘイトの歴史をひもとき、『政策は人道に対する犯罪。21世紀において正当化されるべきではなく、世界中のどの国でも、肌の色やほかの分類基準によって他者を差別してはならない』」とする批判文を「3K」に送っていたことが明らかになった。さあどうする、「3K」よ。

アパルトヘイト(Apartheid)は1994年に撤廃されるまで、南ア以外の白人国家でも大変な非難の的になっていた。実際の人種差別が世界中にあっても法律による差別は訳が違う。だから非難されていたのだ。欧州諸国をはじめ米国までが経済制裁を行っていた。日本も名ばかり制裁に参加はしていたけれども、多数の商社や宝石関連企業が取引を続けていたので国際社会で非難を浴びていた。だいたいApartheidを「アパルトヘイト」と日本では発音・表記するが「アパタイト」と発音しないとよその国では通じない。

「3K」の小林毅・執行役員東京編集局長は「当該記事は曽野綾子氏の常設コラムで、曽野氏ご本人の意見として掲載しました。コラムについてさまざまなご意見があるのは当然のことと考えております。産経新聞は、一貫してアパルトヘイトはもとより、人種差別などあらゆる差別は許されるものではないとの考えです」と「気が小さい」を地で行くコメントを出している。嘘つけ!お前たちは連日「人種差別」を煽る記事を掲載しそれを売りにしているじゃないか!今回は相手が韓国ではない。国際社会で非難されていた「アパタイト」擁護は小さな問題で収まりはしまいだろう。

拙稿「多様性に不寛容な日本が『外国人』を無原則に受け入れるとどうなるか?」(2015年2月4日付)で指摘したのは正に曽野のような考え方の人間が闊歩している現状を憂いたためだ。国際的に明らかな差別として指弾された「アパタイト」にすらいまだに賛意を示す時代錯誤は外的圧力によってしか是正出来ないのだろうか。情けない国だと思われないために「誤った言説」には日本の中で徹底した批判が加えられなければならない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎多様性に不寛容な日本が「外国人」を無原則に受け入れるとどうなるか?
◎イスラム国人質「国策」疑惑──湯川さんは政府の「捨て石」だったのか?
◎人質事件で露呈した安倍首相の人並み外れた「問題発生能力」こそが大問題
◎2015年日本の現実──日本に戦争がやってくる

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労働者にメリット・ゼロの「残業代ゼロ」法案を強行する「悪の枢軸」企業群

厚生労働省の労働政策審議会は2月13日、長時間働いても残業代などが払われない新しい働き方を創設する報告書をまとめた。安倍は12日の施政方針演説で「労働時間に画一的な枠をはめる労働制度、社会の発想を、大きく改めていかなければならない」と語り、「残業代ゼロ」となる働き方をつくるのは、その岩盤規制に風穴を開ける「改革」という位置づけ、更に「時間ではなく、成果で評価する新たな労働制度を選べるようにする」として、政権の成長戦略にこの制度の創設を盛り込んだそうだ。

ここまでは、どの新聞でも読める。

◆真っ当な労組が存在していればゼネストをを打つ事態

この「残業代抹殺法」制定への動きを報道している方々は単純な疑問に気が付かないだろうか。

「フレックス制」はどこへ行ったのか?
消えてはいない。多くの企業で出勤時間の自己申告による調整は行われている。新聞社にも夜勤はあるだろう。自己申告により自分の生活と仕事の調整をはかる「フレックス制」には企業、労働者双方にメリットがある。それで「労働時間の画一的な枠」は解決済みじゃないか?

でも安倍の本音は「労働時間」うんぬんではなく「残業代」という概念を消し去ってしまいたいのだ。これを明言するから恐れ入る。安倍の暴走に私の語彙がついてゆけない。

「残業代抹殺法」による労働者のメリットは皆無である。この「蟹工船政策」とでも呼んでやりたい安倍の本心は何も隠すことなく吐露されているから、これ以上の説明は不要なのかもしれないけれども、あまりにもえげつなさすぎる。「連合」などといった腐れ組合ではなく、本当の労組が生きていればゼネストを打つだろう。

◆労働者の基本的権利を「審議会」の密議で奪う日本

安倍が「改めていかなくてはならない」としている「労働時間に画一的な枠をはめる労働制度」とは世界の資本主義発展の中で膨大に生まれた労働者階級の労働条件を如何に「人間的なもの」とするかの闘争の末に勝ち取られた基本権ではなかったのか。国により労働時間の長短はあるが、当初は1日10時間労働、そして1日8時間勤務実質7時間労働(週40時間労働)という基本合意が日本では成立した。その合意を超える労働はいわば「約束違反」だから本俸よりも高い割合で「残業代」が支払われる。これ、常識じゃなかったのか?

何故その基本的権利を「労働政策審議会」などと言う一部の人間の密議で奪われなければならないのか(議事録が公開されていたって内容がインチキだからあんなものは「密議」もしくは「謀議」と呼ぶ)。安倍があたかも旧弊のように言う「労働時間に画一的な枠をはめる労働制度」とは「資本により過剰な労働時間を労働者が押し付けられないように防御する権利」であり労働者と使用者間で最低限の約束ではなかったのか。

対象は年収1075万円以上(平均年収額の3倍以上)、個人と会社の合意が前提、研究開発や金融ディーラーなど専門職に限る、とあたかも一部の労働者のみを対象にしているとの印象造りに余念がない。読者の皆さんはこの約束は守られるとお考えになるだろうか。

◆PKO法と同様に「残業代抹殺法」も必ず変容する

例が違うがPKOは当初「紛争地帯」へは絶対に行かないはずだった。政府は「武器も小火器しか持たせません。日本には平和憲法があるから、あくまでも非軍事部門での国際貢献です。決して戦闘地域へ行くようなことはありません」と嘯いていたではないか。だがカンボジアを皮切りに気が付けばアフリカにまで派兵する実績を作った後に安倍が言い出したのが「解釈改憲」と「積極的平和主義」=「軍事国家化宣言」だ。さっそくその反作用として「イスラム国」から「テロ支援国家」指定をされたではないか。

「残業代抹殺法」も必ず変容する。対象者の年収が700万円に下がりやがて500万円、300万円を経て最後には「全労働者」に広げたいというのが本音だ。「個人と会社の合意」など最初から守られることはないだろう。中規模以上の企業へお勤めの方であればお分かりだろう。職場にそんな「個人の自由」など端からありはしないことを。労組だってあてにならない中で、勇気をもって「拒否」の姿勢を明らかにすることは「兵役拒否」宣言をするに等しい。出来るわけがない。

専門職とされている対象だって、舌の根も乾かぬ内に無原則に広げられるだろう。詭弁使いにかけてこの国の政治家・官僚は世界でもトップクラスだ。「朝令暮改」、「羊頭狗肉」は一切気にならない。無神経と開き直りが成功する政治家の必須条件なのだ。

◆NTT、ベネッセ、イオン、日本郵船などが名を連ねる審議会

「労働者奴隷化計画」は着々と進行する。「労働政策審議会」の中には労働側代表として10名の大規模組合関係者が入っていた。使用者側はNTT、ベネッセ、イオン、日本郵船、経団連など同様に10人だ。これに「公益代表委員」が10名、主として大学教員で構成されている。

この手の「審議会」や「諮問委員会」は最初から結論ありきで、その結論に賛成するであろう者を7割ほど、反対するだろう者を3割ほど入れて、一応「審議」をした形跡だけは残しておく。が、反対意見が多数を占めて政府の思惑通りに進まないことは絶対と言ってよいほどない。

金の亡者「経団連」、「イオン」、「ベネッセ」(社長兼会長は元日本マクドナルド社長の原田泳幸)らと安倍が織りなす「悪の枢軸」の暴走を止めなければならない。ただでさえ非正規労働者はまともな生活をおくることすらままならないのに、「残業代抹殺法」が成立すれば「働いても食えない」社会が益々進行するのは明らかだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎イオン蔓延で「資本の寡占」──それで暮らしは豊かで便利になったのか?
◎粗悪な食文化の伝道企業=マクドナルドの衰退は「自然の理」
◎リクルートの「就活」支配──なぜ国は勧告指導しないのか?
◎日本の「新幹線」輸出で最初から破綻が運命づけられていた台湾高速鉄道
◎渡辺昇一の「朝日憎し」提訴原告数が「在特会」構成員数とほぼ一致

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円安からデフォルト──税金引上げ、年金引下げ、社保切り捨ての後の総崩れ

110円台あたりにほぼ落ち着いた感のある円安。これまでの政府や経団連の説明によれば、輸出が促進され輸出企業を中心に収益が好転し経済活動が活発になるはずだった。確かに一部の輸出企業は収益を伸ばしている。でもそれは1ドルあたりの円の価値が下がった為にその差額が転がり込んできているだけの事であり、実際の商品売上数が伸びているわけではない。米国の自動車販売実績を見ても円安にもかかわらず米国勢が販売実績を伸ばしている。

◆日本も米国もすでに「破産」している国

原材料を輸入して製品化し、輸出で利益を得る「加工貿易」とも呼ばれる大枠日本の経済構造にとって「円安」は必ずしも喜ばしいことではない。日本企業や政府の原材料調達はごくまれな例を除いて未だに「ドル建て」である。過去あまたの世界的不況やドルの乱高下を経験しているのだから「円建て」決済に何故踏み切らないのか、そうすれば為替の相場の影響をこれほど受けずに済むのではないかと思うのだが、専門家に言わせると「気が小さいから」日本の企業は「円建て決済」が出来ないらしい。

だから円安は原材料調達の高騰に直結する。原油、各種金属材料、小麦、大豆など。米を除けば日常多量消費する物資を輸入に頼っているこの国を円安は痛撃し、物価がじりじりと上がってゆく。「インフレ目標」など定めなくても消費税のボッタくり的上乗せと円安誘導に引き起こされた物価上昇は生活感覚からすると2%(政府インフレ目標)どころではない。貧乏人はいつもレジで清算の時に1円玉を財布から取り出さなければならず、1円玉は薄くてつかみにくいものだからつい、落としてしまい「また!」と舌打ちさせられるはめになる。

但し円安は自国通貨の価値を下げるから、これからじりじりと投機的外資を呼び込む効果は出てくるのかもしれない。外資ファンドが郵貯や優良株乗っ取りを狙って侵入してくるだろう。他方、常に日本より金利の高かった米国が実質「ゼロ金利」に突入し、それでも尚国債の発行は止まらない。円の価値は対米ドルでは下がっているが、米ドルも対ユーロやポンドで自国通貨安を引き起こそうと必死になっている。

何故かと言えば日本も米国も実は既に「破産」している国だからだ。

◆日米「多重債務国」同盟

米国は世界最大の債務国だ。借金世界一ということだ。IMFによると米国の総国債発行残高は2014年に18.395兆ドル(1ドル=110円で計算すると約2000兆円)。2004年の8.039兆ドルからこの10年で倍以上に膨張している。米国債を最もたくさん保有しているのは中国で、日本が二番目だ。この2国が裏で交渉して一気に米国債を売りに出したら(そんなことは出来ないだろうが)、その瞬間に米ドルは暴落し、米国はデフォルトを起こす。「世界一の大国」はその気になればいつでも転がすことが出来る。

でも、それが出来ない理由の一つは、日本も同様に言わば「多重債務者」状態だからだ。国債、地方債の発行残高は1000兆円を超えている。赤ちゃんから老人まで一人当たり1000万円以上の借金を背負わされているわけだ。勤労者人口のみに限定すれば一人当たり3000~4000万円に上る「国の借金」の「連帯保証人」を知らないうちに引き受けさせられている。

来年度の政府予算は補正を含めれば100兆円を超えるだろうが、税収は40兆円前後だ。月収40万円の家庭が毎月100万円の出費をしているわけだ。こんな状態がいつまでも続くだろうか。

◆「ちゃぶ台返し」が必ずやってくる

いったい誰が返済の責任を負ってくれるのかといえば、それは政府ではない。もちろん財務省を始めとする行政機関でもない。いわんや政治家個人など知らん顔を決め込む。負債を返済させられる「連帯保証人」はあなただ。国が借金をする時にあなたに相談があっただろうか? 連帯保証人になってくれと頼まれ、あなたは借用書に印鑑をついただろうか。記憶はないはずだ。そんな方法でこの巧妙な借金は展開されてはいない。あなたに解りにくい「お伺い」があったのは敢えて言うなら「選挙」の時だ。

「皆様のお力でどうぞ国会に送ってください」と連呼するあのやかましい声のなかに本音は隠されていたのだ。「当選すれば私は歳費を年間約2300万円、その他政務調査費や諸々の利権が手に入りますんや。皆さんには『税金引き上げ』と『年金の引き下げ』その他『社会保障の切り捨て』で国の借金負担してもらいますねんけど、ここでは言えまへんわな」との本音が聞こえていたのは有権者100人に1人くらいだろうか。

何の根拠もなく世界の力関係はいつだって同じように見えるかもしれないけれども、一つ刺激があれば総崩れがいつ起きても不思議ではない。いや遅かれ早かれ常識のように見える世界秩序を根底からひっくり返す「ちゃぶ台返し」が必ずやってくる。多重債務者であるこの国の言うことを諾々と聞いていると下劣な表現だが、

「ケツの毛までむしられるで」

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎安倍「国富喪失」解散──アベノミクス失策の責任を問う選挙へ
◎2015年日本の現実──日本に戦争がやってくる
◎イオン蔓延で「資本の寡占」──それで暮らしは豊かで便利になったのか?
◎粗悪な食文化の伝道企業=マクドナルドの衰退は「自然の理」

あらゆる事件は同時多発!──『紙の爆弾』3月号発売中!

第1回前田日明ゼミ開催!──新右翼鈴木邦男さんと「真の愛国者」を問う!

2月8日鹿砦社主催の「前田日明ゼミin西宮」の第1回がお馴染みの鈴木邦男さんをゲストに迎え60余名の聴衆が集散し、これまで同様cafeインティラミで開催された。「前田日明ゼミ」への関心の高さは『紙の爆弾』誌上で発表後時間をおかずに定員に達したことからも伺われたが、この日も会場へ直接申し込みなく訪れた方々が10名を超えた。

会場スペースと消防法の規定もあり、当日会場に来られた方々は入場することが出来ずにお帰り頂いたそうだが、鹿砦社の担当者の方からは「大変申し訳ないが事情を理解していただき、次回以降申し込みをして頂き是非ご参加を」とのコメントがあった。

会場には鹿砦社のロゴやカレンダーなどを手掛ける「龍一郎」さん(前田さんの大ファンだそうだ)も駆けつけ、対談開始前に会場で書を実践披露していただいた。書かれたのは「誠」。清々しいサプライズを受けて対談が始まった。

この日のテーマは「真の愛国者とは~現代日本は社会を読み解く~」であった。新右翼でありながら今や「境界なき思想家」である鈴木さんと韓国籍から日本国籍へ帰化された前田さんの間でどんな激論が交わされるのか。「愛国」を語らせたら、これ以上ないスリリングな組み合わせに会場は静かながら緊張感に包まれた。

鈴木さんは吉田松陰や幕末に活躍した人間が専ら中国の古典から教養の基礎を学んでいたことを紹介し、日本で昨今見られる排外主義に疑問を呈すると、前田さんはすかさずそれに呼応する。いわく武士の教本は「四書五経」にあったと。

◆サンフランシスコ講和条約──問題はそこから始まってる

前田さんが恐るべき読書家で、それには鈴木さんすら一目置くほどだという事実は知る人ぞ知るところだが、その後も歴史的にあまり知られていない重要な事実を前田さんはどんどん明かしてゆく。

「吉田茂と白洲次郎は売国奴ですよ」

「サンフランシスコ講和条約は何語で書かれているか皆さんご存知ですか?英語、フランス語、スペイン語、付け足しで日本語と書かれてるけど、政府答弁ではサンフランシスコ講和条約の日本語版は存在しない!」

「サンフランシスコ講和条約の中で、日本に主権を返すという記述はある。でもそれは日本国にじゃなくて”Japanese People”と書かれてる。これ日本人でしょ。日本国じゃないですよ。でも政府は日本国と偽訳で国民を誤魔化してるんです。」

「敗戦に伴う賠償請求はしないことになったると言われてるけど嘘ですよ。よく読んだら戦費以外は『いつでも、私企業にも賠償させることが出来る』て書いてある。だから日本は国連やIMFへの出資が多い。ODAもそうですよ。日米安保以前にサンフランシスコ講和条約の問題を誰も言わないでしょ。問題はそこから始まってるんですよ」

「今まで何百人という政治家に会ってきましたけど、この人は本物だなと思える人は2、3人ですね。あとは皆だめですね。私の質問にも答えられない」

◆彼ら(在特会)のやってること自体が『在日』そのもの

そして、いよいよ「愛国者」に関係の深い昨今の差別問題へと鈴木さんが話題を向ける。前田さんは実際に「在特会」のデモやヘイトスピーチを目にしたことはないというが、

「彼らのやってること自体が『在日』そのものなんですよ。『在日』にもいろんな人間いるから変な奴もいる。正に『在日』の悪い部分そのものですね」

と在特会こそ『在日』の闇の部分だと指摘する。だが、

「もし目の前であんな事言われたら、日本刀でぶった切るかもね(笑)」

とやはり前田さんにも許し難い行為のようだ。更に新井将敬(元韓国籍から日本国籍に帰化、自民党から国会議員に当選するも自殺)、中川一郎、果ては橋本龍太郎の死に対して疑いの目が向けられる。

「謀略って日本人はあまり信用しないけどあるんですよ」

前田日明ゼミ第一回は早速ダッシュで始まった印象だ。本当はゲストである鈴木さんの「聞き出し方の旨さ」も際立っていた。鈴木さんに取調官をやらせたらきっと優秀だろう。

ゼミ終了後、同じ場所で懇親会が開催された。前田日明ファンが写真を撮ったり、握手を求めたり列をなした。中には時価1千万円の価値があるという「テレホンカード」の数々を持参して前田さんにサインをもらっている方もいた。極め付けは「技をかけて!」と願い出る女性へのコブラツイスト!

次回以降も何が起こるかわからない。期待を寄せる刺激に満ちた初回スペシャルだった。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎渡辺昇一の「朝日憎し」提訴原告数が「在特会」構成員数とほぼ一致
◎粗悪な食文化の伝道企業=マクドナルドの衰退は「自然の理」
◎人質事件で露呈した安倍首相の人並み外れた「問題発生能力」こそが大問題

あらゆる事件は同時多発で連関する──『紙の爆弾』3月号発売中!

 

制度は作るが責任は取らない厚労省「健康な食事を普及するマーク」の怪

厚生労働省が昨年10月16日、「健康な食事」に関する珍妙な報告書を発表している。

報告書の主旨はこんな感じだ。
「この度、『日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会』(座長:中村丁次神奈川県立保健福祉大学学長)の報告書を取りまとめましたので、公表します。 本検討会は、日本人の長寿を支える「健康な食事」とは何かを明らかにし、その目安を提示し、普及することで、国民や社会の「健康な食事」についての理解を深め、「健康な食事」に取り組みやすい環境の整備が図られるよう、平成25年6月より検討を行ってきました。 」とのことだが、この報告書、記述のあちこちに怪しい箇所が満載されている。

◆まったく整理されていないのに無理やり「整理」の非現実

その内容は、
【主なポイント】
1)日本人の長寿を支える「健康な食事」のとらえ方を整理
「健康な食事」とは何かについて、健康、栄養、食品、加工・調理、食文化、生産・流通、経済など多様な側面から、構成する要因を踏まえ、整理。

2)生活習慣病の予防に資する「健康な食事」を事業者が提供するための基準を策定
食事摂取基準(2015年版)における主要な栄養素の摂取基準値を満たし、かつ、現在の日本人の食習慣を踏まえた食品の量と組合せを求め、1食当たりの料理を組み合せることで「健康な食事」の食事パターンを実現するための基準を策定した。この基準は、食事を提供する事業者が使用するものである。事業者は、この基準を満たした料理を市販する場合にマークを表示することができる。

3)「健康な食事」を普及するためのマークを決定
市販された料理(調理済みの食品)の中で、消費者が「健康な食事」の基準に合致していることを一目で分かり、手軽に入手し、適切に料理を組み合わせて食べることができるよう、公募によりマークを決定。

とされている。医療・健康に関する厚生労働省の施策に長年疑念を感じているひねくれ者の私は、ご指導を頂いたからといって「はい そうですか」と有難く盲従する気はさらさらない。

でも、国が定めればその指針を信用・信頼して食生活を考えたり、何を食材として購買するかの参考とされる方も少なくないであろう。

【主なポイント】にはその記述からして、怪しい箇所がいくつか見受けられる。

1)は「健康な食事」とらえ方を整理とある。つまり「健康な食事」を定義しているのだが、その中に「健康、栄養、食品、加工・調理、食文化」とあるのは肯けるが、「生産・流通、経済など」と「経済」が入っている。ここでいう「経済」は生活者の「経済状況」ではなく、国や地域の「経済」を指すことは報告書の全文を読めばわかる。健康食と「経済」の結びつきに「経済が第一」を叫ぶ安倍政権下でなされた「報告書」の暗部を感じる。厚生労働省が示している「日本人の長寿を支える『健康な食事』を構成している要因例」では「健康な食事」を示しているはずなのに、それを構成する要素をまとめる項目は3つで、「自然」「社会・経済」「文化」とされていて、中でも中心に「社会・経済」が描かれている。表題、あるいは図表全体が示す内容と「社会・経済」には相当な乖離がある。

◆乱暴であいまいな「健康食」指定がなされる危険性

また、2)から導かれる、3)の「健康な食事」を普及するためのマークを決定 に至ってはかなり乱暴な「健康食」指定がなされることを示しており、警戒が必要だ。

「健康な食事」の普及のためのマーク(厚生労働省)

ここに示したような「健康な食事を普及するマーク」が4月から店頭に登場することになる。ところが、このマーク使用にあたっての厚生労働省の基準は以下の通りだ。

(1)マークの対象とする料理
対象とする料理は、市販される1食当たりの料理(調理済みの食品)であり、外食や給食など提供される場所、パック詰めやパウチ詰めなど提供される形態を特定するものではない。仮に基準を満たしても、1食分となってないものは対象とはならない。また、特定の保健の用途に資することを目的とした食品や素材は使用しないこととする。

(2)マークの表示に当たっての留意事項
事業者は、マークの適切な普及のために、主食、主菜、副菜を組み合わせて食べることなど、マークの意味することについて、消費者に適切に情報提供できる体制を確保すること。
○ 事業者は、マークとともに、おいしさや楽しみを付与するために工夫している旬の食材や地域産物の利用などの情報について積極的に提供すること。
○ 事業者は、マークの表示に際して、おいしさや楽しみのために工夫した食材の特徴があれば、あわせて、分かりやすく表示すること。
事業者は、基準に合致したレシピの作成など、「健康な食事」に関する企画や運用に当たって、管理栄養士などの関与により、適切に実施できる体制を確保すること。
国は、マークの普及状況をモニタリングする観点から、事業者のマークの使用状況について、国に報告する仕組みを構築すること。この他、基準を満たすためのそれぞれの食品の重量は、生の重量を基本とし(ただし主食においては、調理後重量を基本)、栄養素の量は、成分分析値でも食品標準成分表からの計算値でも構わないこととするなど、基準の運用に必要な事項の詳細は、今後、別途作成するガイドラインに示すこととする。

赤や青文字部分が多くて恐縮だが、要するに「売る人間の判断で、国や公的機関の検査もなく勝手に」利用できるのが「健康な食事を普及するマーク」であるということだ。「何の検査も審査もなく誰でも勝手にお使いください。国は制度は作りますが責任は取りません」という恐るべき制度である。

仮に私が弁当屋を開業して、自家商品を売る際に「勝手」に張り付けたり、印刷しても構わない、それが「健康な食事を普及するマーク」である。マクドナルドだって利用するかもしれない。

◆「国民の生命・健康」という最低限の責任すら取らない官民ビジネス

よくまあこんな無責任をお役所が許すものだと呆れるばかりだ。「国は、マークの普及状況をモニタリングする観点から、事業者のマークの使用状況について、国に報告する仕組みを構築すること」などと呑気に言い訳のように付け足しているけれども、この「健康な食事を普及するマーク」は使用開始前から「何の保証も安全も担保されない、無責任な制度」であることを認識しておく必要がある。

コンビニエンスストアやスパーマーケットの店頭にはやがてこのマークが並ぶことだろう。本当に食材の内容や新鮮さ栄養バランスに自信のある生産者は、こんないい加減な制度は、むしろ無視するのではないだろうか。私が自信を持った商品の提供者ならこんないい加減なマークを付けるのは「恥」だから絶対に利用しない。いい加減な商品としっかり作った商品を混同されてはかなわない。

「官から民へ」の実態をここで垣間見ることが出来る。行政は「国民の生命・健康」という最低限の責任すら取ろうとしなくなっている。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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日本の「新幹線」輸出で最初から破綻が運命づけられていた台湾高速鉄道

台湾の高速鉄道(新幹線)が財政破綻必至だという。(『フォーカス台湾』2014年12月29日付

台北と高雄間345キロを結ぶ高速鉄道は日本の新幹線技術をそのまま採用し2007年に開業した。車両は日本で見る「新幹線」そのもので、正式名称は「台灣高速鐵路」だが台湾現地でも「新幹線」と呼ぶ人がいるほどだ。切符の自動販売機が台湾独自の機械だったが、台湾語(中国語)を読めない人間にも購入が可能なように工夫が凝らされている。

高速鉄道が走るまで、台北と高雄の移動は飛行機がメインだった。列車では最速でも4時間半かかったからだ。松山飛行場は台北市内にあり、中心部からも至近なこともあり、かつては国際空港だったが今では国内線中心の空港になり、国内移動の手段として飛行機は日本より気軽に利用されている。特に台北ー高雄間は便数も多いから忙しい時には切符なしで空港に駆けつけ離陸20分前に切符を買って搭乗する、1本乗り遅れれば次の便は数十分待てば乗ることができるという感覚だ。だがここ数年は幸い起きていないものの、台北ー高雄間航空路線では、定期的と言ってもいいほど墜落事故が起きていた。何度もこの路線には搭乗したが確かに気流のためか、航空機の機体の具合かわからないけども激しい揺れが必ずやってくる。

そんな事情もあってか、高速鉄道は「安全性」や運賃が安価なこともあり、利用者数は毎年順調に増えていた。それでも財政的に破綻が避けられそうにないという。いったいどういう背景があるのだろうか。

◆李登輝の威光で日本の「新幹線」採用が決まるまでの紆余曲折

台湾高速鉄道の導入にあたっては紆余曲折があった。そもそも台湾は自国の技術だけで高速鉄道走らせることができなかったので、運用実績のあるフランス・ドイツ勢と日本を競合させ一時はフランス・ドイツ連合がが落札しかけていたのだけども、台湾総統も務めた親日派の実力者李登輝の威光で日本の「新幹線」採用が決まったと言われている。

国土交通省やJRは大喜びだった。が、実際に工事に入ると思わぬ困難が待ち受けていた。鉄道の線路を敷設するためには線路や枕木の他に多量の銅線を使う。工事を行って次の日現場に行くと銅線が見事に盗まれているという事件が連続して発生した。銅は転売の価値があるので盗人が後を絶たなかったのだ。その陰で当初の工期が大幅に伸び費用もかさんでしまった。総工費は日本円にして2兆近くになったが、高速鉄道はなんとか運行開始にたどり着いた。

乗客者数は毎年増加しているのに破綻の危機に直面している背景には、負債の返済期限問題がありそうだ。前述の通り2兆円の工費とその他の技術料などを含め高速鉄道を運営する「台湾高鉄」は470億台湾元の負債がある。そしてその償還期限は当初より35年とされていた。利用者が支払う運賃と負債をはかりにかけると、1日に30万人が利用しないと計算が成り立たない。これはどだい無理な計算である。1億2千万の人口を抱える日本でも東京ー大阪間の新幹線利用者は、1日に約40万人だ。総人口2300万人の台湾で1日に30万人の利用者を想定するのは、最初から破綻を織り込んでいたのでは、と疑われても仕方がないどんぶり勘定だ。

同様の無茶な試算による実質的破綻は我々の近くでも起きている。関西空港だ。関西空港は官民共同出資による「関西国際空港株式会社」により、設立運営されたが、高すぎる着陸料ややはり高額すぎる空港ビルのテナント料などが災いし乗り入れ航空会社が伸びず赤字が続いた。5万円で売り出した株価は1円になり、実質的に破綻して、伊丹、神戸両空港と合わせて「新関西国際空港会社」として近く売却が予定されている(詳細は『紙の爆弾』2月号の本山美彦京大名誉教授「アベノミクスと株式民主主義の欺瞞」をご参照頂きたい)。

◆関空、神戸空港と同じく最初から破綻が運命づけられていた

安価に建設できる「浮島工法」があったのにそれを採用せず、わざわざ費用の高い「埋め立て工法」を採用した関西空港は今でも毎日数センチずつ地盤沈下している。大阪中心部から不便な和歌山近くの海の上に土を盛り上げ散々環境破壊をして「日本初の24時間空港」、「アジアのハブ空港」と実現する道理のない絵空事を並べた関西空港だったが、肝心の空港へのアクセス=鉄道は最初から24時間運行する気などさらさらなく、「ハブ空港」として機能するためには施設面でも航空会社にとっての利便性からも全く話にならない代物で、案の定後発の韓国「仁川空港」にその役は持っていかれた。

また、神戸空港はこともあろうに「阪神大震災」後、ろくろく復興も進んでいないのに「市営空港」としてこれまた、神戸の海の上に建設された「元より破綻が運命づけられていた」空港だ。

関西空港当初の建設費用は1.8兆円だったというが、それが正しい数字である確証はない。また神戸空港がどうして震災復興を後回しにして関西空港から見えるような至近距離に造られたのか、そして伊丹空港を含めた3空港を運営する「新関西国際空港会社」が売りに出され、おそらくは外国資本が運営権を入手するであろうことは、単なる1企業の運営権にとどまらない。国内外の航空行政を政府がコントロールできなくなり、企業の意向が優先することを意味する。

台湾の高速鉄道が破綻しても、日本に住む私たちが即困ることはないけれども、身近で同様の「破綻」が起きていることは知っておくべきだろう。そしてその破綻の原因には「無策」もあろうが「政治的思惑」がはっきり見て取れることも認識しておくべきだ。たとえば台湾高速鉄道の運営権に中国資本が参入したらどうなるかを想像してみれば様々な想像が湧くだろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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「イスラム国」人質事件で暗躍──胡散臭い仲介人やブローカーたちの罪と罰

政府は穏やかな発言をしている一方、イスラム過激派「イスラム国」に人質2名を殺害されたことで警視庁にはっぱをかけ、千葉県警に合同捜査本部を立ち上げ、海外の情報機関と連携したテロ対策に乗り出している。

◆警視庁が追う「仲介人のニセガイド」

「殺された後藤健二さんは仲介人のニセガイドによってイスラム国に売り渡されたと見られます。それでまずはこの人物の行方を追う作業が始まっています」と警視庁を取材した大手新聞記者。

後藤氏は去年10月25日に「イスラム国」の支配地域にシリア人のガイドと2人で現れたことが確認されている。検問所で一度は制止されたが後藤氏はバスに乗り1人で「イスラム国」の中枢に入った。しかし、これがニセガイドだったとみられる。

「仲介人は自分たちに敵対する国の人間を渡せば、ひとりあたり50万円ほどの金になるといわれてます。ただ、ライバル業者が多いことから一度、仲介すればその名前が知れ渡ることも多く、その情報をまた売り渡す人間もいます。今回の仲介人は一説にはアメリカやイギリスにすでに目をつけられていた人物ともいわれ、エジプトに逃亡したという話も聞かれます」(同記者)

本来、後藤さんが手配したかった現地ガイドは「コーディネーター」とも呼ばれ、運転や通訳、宿泊などの手配を時間計算のギャラで請け負うものだが、トラブルになったときに活躍するのは現地事情に詳しい地元有力者。テロ組織とも交渉できる立場にあるため、こちらは「ネゴシエイター」(交渉人)と呼ばれることもある。今回はこうしたコーディネーターやネゴシエイターらに人脈があるとして、複数の自称記者らが政府に交渉の窓口にと名乗りを上げていた。

◆人質奪還交渉をした事実だけを作りたがる政府の弱みに付け込む

元海外駐在員のジャーナリスト、藤堂香貴氏によると「中東で人質事件があると、政府が奪還交渉した事実だけは作りたがる。それで政府から莫大な手数料を狙った中東ブローカー(交渉人)が出没する」という。

「現地では事件に乗じて金儲けしようと口利きを申し出る者がいるので、ブローカーはその仲介役として暗躍。手付金として数千万円を支払う交渉をして、政府が支払うことになれば、その2~3割をブローカーが手にする仕組み。シリア人のガイドは周囲に“ビジネスになると思って検問所まで同行したが違った”というようなことを話していたという話も囁かれていて、もしかするとガイドは後藤さんをブローカーだと思って接触したところ、ただのジャーナリストだと知って人質に売ることにしたのかもしれません」と藤堂氏。

実際、後藤氏は消息を絶つ直前、知人に「ガイドに裏切られた」と電話をしている。いずれにせよ危険地域では金目当ての自称ガイドが横行しており、これに騙されるジャーナリストが続出している。

さらに危ないのは仲介人とネゴシエイターがグルになっている場合だ。

「人質を取る側と交渉を請け負う側が出来レースをしていると、人質が返ってくる見込みがないのに手付金をもっていく」(藤堂氏)

ほかにもトラブルを装ってガイドの身元バレを防ぐ巧妙なケースもある。ガイドが運転中にわざと事故を起こして、通りがかったテロリストが助けるふりをして人質をさらっていくものだ。この場合、人質は生きて戻れてもガイドの裏切りに気付かないままだというから恐ろしい。

◆外務省に群がる報酬目当てのブローカーたち

テロリストが問題なのは当然ながら、国の混乱に乗じて儲ける連中が後を絶たないことも事態を悪化させている。最新の情報によると日本政府は今回、アドバイザーとして「中東在住の元FBI有力者」を臨時で頼ったという話もあるが、こういう人物もここぞとばかりに報酬目当てで群がってくるともっぱら。藤堂氏によると「実際に役立つのは10人に1人もいないと外務省の人間が漏らしていた」という。

「本来はブローカーに頼らず日本人の工作員がいるといいんです。こういう事態に備えて世界各国に動ける人間を置いておけば、いざという時に頼りになるし、そうしている国は後進国でさえたくさんあるんです。ただ、島国の日本はスパイなど潜入活動に遅れをとっていて、人材育成の段階にすらない」(藤堂氏)

◆世界中に露呈された「海外の危機に弱い日本政府」

結局、動いたのは国内の防犯組織である警視庁。今回はかなりの予算と人員を割いて大がかりなテロ対策に動くようだが、海外事情に精通したスペシャリストは不足していると聞く。

アメリカ政府からは今回、極秘裏に「ヨルダン政府に頼りすぎるな」というアドバイスが日本政府にあったというが、そもそも海外での犯罪捜査に弱い日本は打つ手が限られていた。

かくして、「民間」の自称交渉人が入り込む隙間があったわけだが、まったく役にたたなかったのはごらんの通り。日本政府が海外での危機に弱いことが世界中に露呈したことは、それこそ今後のテロ被害につながりそうだ。北朝鮮の拉致問題が呑気に長い歳月を費やしてしまっているのも頷ける。[ハイセーヤスダ]

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多様性に不寛容な日本が「外国人」を無原則に受け入れるとどうなるか?

私たちが海外に出かける時は、空港や港の出国窓口で入管職員からパスポートに「出国印」を押してもらう。特別永住者や在日外国人の方であれば「再入国手続き」承認の確認が行われる。そして目的地の国に着くと入国窓口でやはりパスポートに何やらスタンプが押される。これは入国時即発行のビザが発行されたことを意味し、そのスタンプに明記されている期間合法的に当該国に滞在することが許される。

このように渡航前に取り立てて手続きをしなくとも空港や港でビザを発行してもらえる国は手間も時間もかからずに便利なのだが、事前に在日本大使館や領事館にビザの申請を行っておかなければ入国が認められない国もある。これは外国から日本に来られる方も同様で、両国で了解が成立していて空港や港でビザ(Visa on Arrival)が発給される約束を結んでいる国同士は大雑把に言って関係が良好だと言える。

だが、ビザは必ずしも双方向に平等ではない。日本国籍の人が中国や韓国をはじめとするアジア諸国に出かける際はほとんど事前のビザ申請は不要だがつい数年前まで中国からの来日は基本中国当局が許した団体旅行だけであったし、韓国からでさえ日本に来るのには毎度毎度大使館や領事館で事前にビザ申請の必要があった。

また日本人でも短期の滞在ではなく現地での長期滞在や留学などで渡航する時はその国の定めによる査証を申請しておく必要がある。

と、ここまでは海外旅行の経験がおありの方であればご存知の事であろう。

◆激しく簡素化された留学ビザ

外国籍の方が日本にやってくる場合、日本は23種類のビザのいずれかを取得できていないと入国を認めない。23種類の中には「短期滞在」があり、これが「観光ビザ」と呼ばれることの多い最も取得が容易なビザである。事前に日本大使館や領事館でビザの申請の必要がない国からやって来られる方が空港や港の入国審査で押されるスタンプは「短期滞在」ビザである。

一方、ビザの種類によっては取得にかなり手間がかかるものもある。「興行」ビザは主として芸能関係の仕事で来日する人が取得するビザだが、かつては外国人女性を売り物にする飲み屋などがこのビザを利用してアジアから多くの女性を招き入れていた。とは言え飲み屋で「興行」ビザを取得するためには、ショースペース(「興行」で来るのだから何らかの芸を披露できる人であることが前提)の面積や店内の照明の明るさなどを子細に説明する書類の提出が要求された。

今ではそんな煩わしいビザを取得せず、来日している女性が多いと聞く。

私が大学に勤務し始めた当初、海外からの留学生が日本の大学で学ぶために必要な「留学」ビザは、現実的には書類を揃えるのが不可能なほど審査が厳しく、提出を求められる書類の数も呆れるほど多かった。日本で万が一生活費を払えなくなったり問題が起きた際に責任を取る「身元保証人」を立てることが留学生には求められていた。しかしこの「身元保証人」制度は全く現実味を欠き、更に悪徳業者を蔓延らせる原因となったため、現在では廃止されている。

知り合いもいない国に勉強をしに行くのに、「万が一の際は生活費やその他一切を私が保証します」などと名乗り出てくれる人は余程の篤志家か、さもなければ下心のある人間だ。実際当時大学に入学してきた留学生に保証人との関係を聞いてみると、どうも腑に落ちない話が多いので、一度何人かの「身元保証人」の方にお会いしたことがある。全員があっせん会社により紹介を受けた「赤の他人」だった。

「留学」ビザについては、その後入国管理局が大幅な方針転換を行い、大学などの「合格通知」(入学許可書)と顔写真だけあればビザが取れるようになった。激しすぎる簡素化に「こんなに乱発して大丈夫なのか」とかえって心配になった記憶がある。

◆「外国人積極的受入れ」という大転換

さて、ここからは近未来の話だ。日本の人口が急激に減少していることは読者の皆さんも耳にされていることだろう。そこで政府は人口減少を穴埋めする手段として「外国人の積極的受入れ」をどうやら内定したようだ。これは個人だけでなく社会全体、また来日する外国人の方に多大なな影響を及ぼす政策の大転換なので、本当はもっとマスコミが取り上げてもよさそうなテーマであるのに、あまり話題になっていない。

政府の表面上の理屈はこうだ。

「近い将来日本では介護職、看護職をはじめとして、労働人口の不足が確実であるので、社会保障制度維持のためにも海外から労働力を受け入れやすくする方向で検討する。また、高度な技術や能力を保持する外交人については国益の観点から在留期間の延長を可能と出来るよう検討する」(情報筋)

とうものらしい。つまり単純労働や知的労働にかかわらず、労働人口が減るので「使える外国人はいらっしゃーい」ということだ。

日本の入国管理制度の問題についてはその差別性について古くから批判があった。その観点から言えば門戸が広がることは一見望ましいことのようにも受け取られかねない。しかし政府の本音はそんなヒューマニスティックなものではない。

現在給与所得者の40%近くを非正規労働者が占めている。企業や行政は人件費を「コスト」と平然と語る時代になり、更なる「コスト削減」=「人権費削減策」はないものかと思案した時に目を付けたのが「外国人労働者」だ。

既に「研修」と言うビザで多くの実質的「外国人労働者」が日本で働ているが、彼らは名目が「研修」なので給与など待遇面について日本人の労働者と同等の権利が認められていない。いわば「潜りの出稼ぎ労働者」だ。

それでは限界があるので、ほぼすべて「オープンにしましょう」と言うわけである。

◆外国人労働者から「国民健康保険」「年金」を徴収する日本国

多様な人種が生活する社会はお互いが平等な条件で生活でき、かつ相互理解が成立すれば「成熟した社会」となるが、現在の日本に果たしてその資格があるだろうか。政府や企業経営者の腹の内は単純に「安くて使いやすい労働力の海外からの供給」だ。日本人の間で所得格差が広がり、将来の雇用が全く不安定な中に、外国人労働者がやってくればどうなるだろうか。

残念ながら、待遇の悪い境遇で働かざるを得ない日本人が外国人労働者を温かく迎えるとか考えにくい。いや、非正規の日本人労働者より更に安価で雇用できる外国人労働者が採用されると、日本人労働者の解雇が増えるだろう。そうなれば個人に責任はないのに不要な「外国人差別」が助長されるだろう。

欧州ではすでに経験済みの事だ。安価な外国人労働者に職場を奪われた人々が極右団体に集結し外国人排斥を叫ぶ。

日本ではそんな事態はまだ起きていないのに、これでもか、これでもかと「外国人排斥」が叫ばれているではないか。こんな状態で外国人労働者を迎え入れて、穏便に事が運ぶはずがないではない。更に来日した外国人労働者を待ち受けているのは差別的な社会保障制度だろう。現在でも日本に半年を超える滞在をする外国人には「国民健康保険」への加入が義務付けられている。怪我や病気で医者にかかった時「自費での治療」は高額すぎるので、このように健康保険への加入が義務づけられているのだ。この判断は合理的である。だが将来の外国人労働者が急増した時にも、この制度は維持されるだろうか。

それにもまして、数年あるいは10年を超える期間、日本に滞在し労働する外国人労働者の「年金」はどうなるのだろうか。現在国民年金の受給資格は25年以上国に年金を納めている人に限られる。25年ではあまりにも長いので短縮すべしとの議論があるものの結論は見ていない。だが私から見れば納付期間の長短に関わらず、既に年金原資は枯渇している。10年後65歳で国民年金を受け取れる人は皆無だと思う。

そこへ外国人労働者を持って来て、政府はおそらく「将来の支払い」と言う空手形と引き換えに外国人労働者からも「国民年金」を徴収するだろう。義務と言われれば支払いは拒否できないし、給与からの天引きであれば事情が呑み込めない外国人労働者は「ボッたくられる」だけのことだ。

目先の「人件費」=「コスト」削減しか頭にない、政府や経営者団体が社会全体に起こる変化に細かく対応する覚悟があるとは到底考えられない。

1月26日から始まった通常国会でも、この問題は議論の端々に語られることだろう。注目していきたい。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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テロリズムを遠ざける最良の手段は「強者」の側に身を置かないこと

イスラム国の人質になっていた後藤健二さんが殺害されたようだ。まずご遺族、関係の方々にお悔やみを申し上げたい。

結局日本政府は湯川さん、後藤さんの解放に関して「全く無力」だった。同時にマスメディアも問題の本質を突く報道は少なく、連日政府の無策振りを「膠着状態か」と報じるばかりで、独自の視点や取材からの報告は目につかなかった。

後藤さん殺害の情報に接して、安倍は目に涙を浮かべて「テロリストたちを決して許さない。罪を償わせるために国際社会と連携する。日本がテロに屈することは決してない」と述べている。

誤解を恐れずに言おう。

湯川さん、後藤さんの殺害を安倍は内心ほくそえんでいるに違いない。

◆「テロ」との戦いに「勝利」は絶対にない

時あたかも「有事法制整備国会」開催中である。お二人の犠牲は最大限安倍に利用されるだろう。そしてそれを報道が後押しするだろう。野党も全くあてにはならない。共産党が「集団的自衛権」に沈黙する(容認する)可能性だってあろう。

だから非力なこのコラムでは精々挙国「反テロ」ファシズムに異を唱える。

「テロ」との戦いに勝利は絶対にない。

「テロ」の根源は何か?

「テロリズム」の本質とは何か?

「戦争」と「テロ」はどのように違うのか?

「戦争」は許されるけども「テロ」は絶対悪なのか?

これらの問いに1つの誤りもなく、正確な回答を出せないようでは「テロリズム」を語る資格はない。

◆テロリズムに栄養を与える要素が世界中には溢れている

爆弾を爆発させてビルを壊したり、拳銃を乱射して多数の死者を出しても、その行為自体が目的であれば「テロリズム」とは呼ばない。単なる「爆弾犯」や「乱射犯」だ。

「テロリスト」とは何らかの目的を持ち、それを獲得するために行われる、破壊活動・実力行使活動を意味する。「白色テロル」や「赤色テロル」といった言葉が使われたのは正に実力行使に、それぞれの立場からの政治的目標があったからに他ならない。

とすれば、「テロリズム」を根絶するためには、暴力や武力を用いても「獲得したい」政治的目標を消滅させる他に手段はない。

そのようなことは不可能だ。世界はそれほど単純ではなく寛容でもない。歴史を背景とした長年の抑圧や資本による蹂躙など「テロリズム」に栄養を与える要素は世界中にあふれている。民族、宗教、資本のせめぎあい等は時に交渉を拒絶する。

「テロリズム」からなるべく離れた場所にいたいならば、最低限今日的世界における「強者(抑圧者)」の側に一方的に身を置かないことだ。他に手はない。

最悪の選択は構造的に勝利がありえない「テロ」と戦うなどと宣言することだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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渡辺昇一の「朝日憎し」提訴原告数が「在特会」構成員数とほぼ一致

まだ生きていたのか! 1月27日の新聞報道を見て声に出してしまった。本当は奴が生きていることは書店で質の悪い月刊誌の表紙などで名前を目にするから知ってはいたのだけども、懲りもせずにまたぞろいじましい老醜をさらしているので、徹底的に叩かせていただく。

歴史改竄主義確信犯で、差別者、日本財団(元日本船舶振興会)の理事を務めたこともある渡辺昇一だ。渡辺は『知的生活の方法』で名前が売れた後に、これでもか、これでもかと歴史改竄運動の先陣を走り続けてきた人物だ。80年代には「またあのアホが」程度にしか相手にされなかったけれども、世情の変遷と共に不幸なことにこのような「法螺吹き」が堂々と闊歩する時代になってしまった。渡辺は「南京大虐殺の被害者は40人から50人」、「沖縄戦での集団自決は左翼に先導された人が騒げば金が出ると堕落した結果」、「ヒットラー、ムッソリーニは共産主義者」、「適度の放射能とは、実際にどのくらいか。著者はおそらく毎時20ミリシーベルトと毎時50ミリシーベルトの間にあるのではないかと推定している」(ちなみに毎時20ミリシーベルト被爆すると全員が死亡する、民間人の法定上限は「年間1ミリシーベルト」だ)などの真顔で述べる人間だ。

◆相も変わらずの「何が何でも朝日新聞憎し」

奴を団長に8700人余名が笑わせてくれる提訴を1月26日、東京地裁に行った。新聞の見出しではこうだ。

「朝日慰安婦報道で国民名誉傷つけた」

ほー、どんな訴えなのだろう記事によると、

「朝日新聞従軍慰安婦報道について、8700人余りの市民が『誤った事実を国際社会に広め、日本国民の人格権や名誉を傷つけた』として、同社に一人1万円の慰謝料と謝罪広告の掲載を求める訴えを起こした。原告には研究者やジャーナリスト、国会議員らも含まれている。追加訴訟で原告数は最大で1万3千人程度になる見込みだという」そうだ。

さらに「訴状では『日本の官憲が慰安婦を強制連行した証拠はない』と主張。朝日新聞が1980~90年代に報じた故・吉田清治氏の証言に基づく記事などを挙げ≪日本軍に組織的に強制連行された慰安婦≫というねじ曲げられた歴史を国際社会に広めた原因になった』と指摘した」としている。

そして原告団長の渡辺昇一は、「朝日新聞が国民に恥ずかしい思いをさせていることに心から怒りを感じている」と述べている。相変わらず渡辺の「何が何でも朝日新聞憎し」の姿勢は変わらないようだ。

私は渡辺昇一の30年来の言論活動に「心から怒りを感じている」。正直早く帰天なさればと思う。

誣告罪(虚偽親告罪)は刑法にしか適用されないから、この提訴は原告敗訴で終わるだけだろうが、にしても税金を使ってまったく意味のない裁判が行われることに「怒りを感じる」。

◆政府と「歴史改竄主義者」の妄動こそが国際社会では恥

「スラップ(SLAP)訴訟」という概念がある。大企業や政府などの力の強い、また経済的に圧倒的な強者が弱者や権力のない個人に対して恫喝や発言の封じ込めを目的に提訴する裁判を意味する。読売新聞が頻繁に利用する手法だ。渡辺らの行動は権力者のそれではないものの、奴らは明確に「表現圧殺・歴史改竄=歴史殺し」を目的としている。原告数を組織動員し学者や国会議員なども加えてることを勘案すれば、この訴訟は分かりやすい「権力者」や「強者」のそれではないけれども、目的と性質は限りなく「スラップ訴訟」に近い。悪質極まりない。

本コラム「『朝日新聞叩き』で進行する『原発事故の本質』隠し」 の中でも触れたが、朝日新聞の「慰安婦報道問題」は全く枝葉末節の事実誤認であり、朝日新聞は謝罪する必要すらない。何故ならば「慰安婦問題」については報道機関ではなく日本政府や日本軍による証拠書類が多数残されており、吉田清治氏の証言は一民間人の発言に過ぎないからだ。

日本国内だけでなく、国連も「慰安婦」についての調査結果を1996年に報告書として発表しており、その際に吉田発言は全く引用されていない。実は昨年10月、外務省の高官が国連に派遣され1996年の国連調査を「訂正してくれないか」と願い出たが、「バカなことを言うな」と国連に一蹴されている。この件は日本国内ではほとんど報道されていないけれども、菅官房長官の意向で「報告書訂正願い」が行われたのだ。ニューヨークタイムスでは「国粋主義者安倍の意向を受けた」や「歴史改竄主義者」と散々な書かれ方をしている。

国際社会で恥をかかされているのは朝日新聞報道ではなく、政府を含めた「歴史改竄主義者」の妄動であることが明確にわかる。

笑わせてくれるのは、「国際社会で恥をかかされたから一人1万円慰謝料を払え」というユスリ同様の要求だ。今8700余名が原告に名を連ねていると言うが、その人々全員の氏名をどこかのサイトで公表してもらえないものだろうか。また、最終的に追加訴訟で原告数が1万3千人程度になる見込みらしいが、その数が不思議なことに「在特会」の推定構成員数と一致しているのはどういう偶然だろうか。

国際社会で恥をかかされて慰謝料が請求できるという論理に則れば、政府の不祥事は全て請求対象になるではないか。殊に東京オリンピックで招致スピーチで完全な嘘を発言した安倍には1億2千万人全員が慰謝料請求を行わなければならない。

歳を取ってボケが進行しているのだろうが、馬鹿もたいがいにしろ!渡辺!

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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◎人質事件で露呈した安倍首相の人並み外れた「問題発生能力」こそが大問題
◎安倍内閣は「人質の身代わり」に大臣を派遣すべし!
◎「イスラム国」人質事件で見えてきた「人命軽視」の安倍外交
◎「シャルリー・エブド」と「反テロ」デモは真の弱者か?