堀田春樹
剱田昌弘のラストファイトは力出し切る全5ラウンドを戦い、僅差ながら判定勝利で有終の美を飾った。
ジャパンキック協会から参加の樹(治政館)は昨年からのフェザー級に転級後のパワーも備わり、ムエタイブルファイターに僅差ながら判定勝利。
カズ・ジャンジラへの王座挑戦権を懸けたトーナメントはどん冷え貴哉と健吾が挑戦者決定戦へ駒を進めた。
◎爆発シリーズvol.3 / 6月21日(土)後楽園ホール17:15~21:25
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会
長くなりますが、アマチュア結果も掲載致します。
戦績はいつもどおり、連盟データを基にこの日の結果を加えています。
◆第13試合 73.5kg契約 5回戦
NKBミドル級チャンピオン.釼田昌弘(テツ/1989.10.31鹿児島県出身/ 73.4kg)
22戦7勝(1KO)11敗4分
VS
TOMO・JANJIRA(JANJIRA/1992.1.12京都府出身/ 73.35kg)10戦4勝(3KO)5敗1分
勝者:釼田昌弘 / 判定2-0
主審:前田仁
副審:高谷50-46. 鈴木48-48. 笹谷49-48
両者、パンチと蹴りの攻防から剱田昌弘は得意の組み付いて行く手段も使いたいが、徐々にヒザ蹴りから崩して転ばせる勢い増して来た。TOMOは剱田昌弘の多彩な戦法にリズムを掴めない。

第4ラウンドに入っても手数減らない両者の攻防は次第に疲れが見え始めたが、パンチと蹴りの攻防からTOMOのヒジ打ち、剱田昌弘の飛びヒザ蹴りも見せ、主導権を奪って終わりたい一進一退の我慢の展開は5ラウンドを戦い終えて、剱田昌弘の判定勝利。予定どおりその場で剱田昌弘の引退セレモニーが行われ、テンカウントゴングに送られた。

剱田昌弘は試合後、「全て出し切りました!」と完全燃焼した表情。「TOMOがフックパンチでガンガン来るイメージあったので、そこを潜っていく作戦も、それが無さそうだったんで、他の技で何でも出して行こうと思いました!」とラストファイトの作戦も語っていました。
TOMOは「もうちょっとパンチや蹴りとか貰わずに戦えるかなと正直思ったんですけど、目茶目茶貰って、5ラウンドなので、剱田さんもうちょっとスローペースで来ると思ったんですけど、それが想像以上に体力削られてしまいました!」と語った。

◆第12試合 58.0kg契約3回戦
ローッボット・スターライトジム(元・タイ国イサーン地区フェザー級Champ/2006.2.19ナコンパノム出身/ 57.2kg)198戦141勝55敗2分(参考)
VS
ジャパンキック協会フェザー級2位.樹(治政館/2004.10.12埼玉県出身/ 57.8kg)
16戦8勝(3KO)7敗1分
勝者:樹 / 判定1-2
主審:笹谷淳
副審:高谷30-28. 鈴木29-30. 前田29-30
開始早々は両者、ローキック中心に様子見。更にパンチや多彩な蹴りで倒しに掛かるアグレッシブな攻防。樹はローッボットのムエタイ技を凌ぐ蹴り返しで対抗。互角に進んだ攻防はスプリットとなる見極め難さだったが、樹がローッボットの勢いを凌いで判定勝利した。

◆第11試合 NKBウェルター級挑戦者決定(4名参加)トーナメント準決勝3回戦
NKBウェルター級5位.Hiromi(=田村大海/拳心館/1995.11.20新潟県出身/ 66.5kg)
12戦5勝(5KO)7敗
VS
どん冷え貴哉(TOKYO KICK WORKS/1988.10.15滋賀県出身/ 66.35kg)
49戦26勝(6KO)21敗2分
勝者:どん冷え貴哉 / 判定0-3
主審:高谷秀幸
副審:鈴木28-30. 前田28-30. 笹谷28-30
パンチのHiromiに対し、どん冷え貴哉は首相撲からヒザ蹴りに持ち込みHiromiの持ち味潰し、貴哉は首相撲だけでなくパンチと蹴りの多彩に攻め優った流れで判定勝利。

◆第10試合 NKBウェルター級挑戦者決定(4名参加)トーナメント準決勝3回戦
大月慎也(Team arco iris/1986.6.19埼玉県出身/ 66.6kg)26戦11勝(5KO)11敗4分
VS
健吾(BIG MOOSE/1993.10.10千葉県出身/ 65.85kg)7戦5勝(1KO)1敗1分
勝者:健吾 / 判定0-3
主審:鈴木義和
副審:笹谷28-29. 前田27-30. 高谷28-30
パンチと蹴りの様子見から健吾がサウスポーからの左ストレートで主導権を掴んで行った。健吾がボディーブローを打つと、二度目のボディーブローを大月慎也は前蹴りで突き放す上手さを見せたり、終盤はローキックで健吾の勢いを削りに掛かったが、健吾も左ストレートでなどパンチのリズムで対抗し前半の攻勢を維持して判定勝利。

◆第9試合 バンタム級3回戦
NKBバンタム級2位.雄希(テツ/2002.9.3大阪府出身/ 53.25kg)8戦6勝(3KO)
VS
NKBバンタム級5位.香村一吹(渡邉/2007.2.22東京都出身/ 54.7→54.65kg/+1.13kg/計量失格減点3)5戦4勝(1KO)1敗
勝者:雄希 / 判定3-0
主審:笹谷淳
副審:高谷30-30(27). 前田30-29(26). 鈴木30-29(26)
初回早々からアグレッシブにローキック中心に蹴りパンチの攻防。雄希の首相撲からヒザ蹴りがやや攻勢も、香村一吹も蹴りからパンチ打ち込む積極性あり。ラストラウンド終了まで下がらない展開を見せた。
計量失格した香村はウェイト的には有利でも減点が大きく響いた。勝ちは拾えなくても倒しに行く意欲満々の香村に雄希も応戦。ともに好ファイトに繋げた。

◆第8試合 フェザー級3回戦
NKBフェザー級5位.半澤信也(Team arco iris/1981.4.28長野県出身/ 57.15kg)
34戦11勝(4KO)18敗5分
VS
次難亮(TOKYO KICK WORKS/2002.6.23/千葉県出身/ 56.95kg)5戦4勝(1KO)1敗
勝者:次難亮 / TKO 2ラウンド 1分34秒
主審:高谷秀幸
次難亮の上下の蹴りがスピーディーに半澤信也を上回るが、半澤信也もパンチで互角に持ち込む。半澤信也が毎度の飛びヒザ蹴りも見せた。第2ラウンドにはガードの低い半澤信也に次難亮が右ハイキックでノックダウンを奪い、更に蹴りの圧力からパンチでノックダウンを奪うとレフェリーはほぼノーカウントでストップした。

◆第7試合 52.0kg契約3回戦
NJKFフライ級4位.悠(=吉仲悠/VALLELY/2003.10.25北海道出身/ 51.8kg)
13戦6勝(3KO)5敗2分
VS
緒方愁次(ケーアクティブ/2004.1.6東京都出身/ 51.7kg)4戦3勝1敗
勝者:悠 / TKO 2ラウンド 1分7秒
主審:前田仁
スピーディーな蹴りパンチで優る悠。首相撲で緒方愁次も反撃に転じたが、悠も体勢入れ替えパンチを打ち込む。第2ラウンドもアグレッシブに、パンチとローキックの交錯の後、悠の右ローキックで緒方がスリップダウンも、これはすでに狙っていた悠が突破口を開いて更にローキックでノックダウンを奪った。緒方は立ち上がったところでパンチの交錯から悠が再びローキックで倒すとノーカウントのレフェリーストップとなった。

◆第6試合 65.0kg契約3回戦
小磯哲史(元・J-NETWORKライト級Champ/テッサイ/1973.8.8神奈川県出身/64.65kg)
54戦19勝(6KO)30敗5分
VS
TAIRA(TOKYO KICK WORKS/1989.1.21静岡県出身/ 64.85kg)12戦4勝7敗1分
勝者:小磯哲史 / 判定3-0
主審:鈴木義和
副審:笹谷30-29. 前田30-28. 高谷29-28
初回開始、首相撲からヒザ蹴り中心に動き出す両者。第2ラウンドには小礒が蹴りからパンチで適材適所上手く突いて攻勢を維持。TAIRAは失速の中、小礒は最後には飛びヒザ蹴りも見せたが圧倒には至らず僅差ながら判定勝利となった。

◆第5試合 ウェルター級3回戦
ちさとkiss Me!!(安曇野キックの会/1983.1.8長野県出身/ 66.55kg)
43戦7勝(3KO)32敗4分
VS
安田学登(クボ/1995.9.14群馬県出身/ 66.65kg)11戦3勝7敗1分
勝者:安田学登 / 判定1-2
主審:高谷秀幸
副審:前田30-29. 笹谷28-30. 鈴木29-30
初回は接近戦の攻防も主導権支配には至らない両者のパンチと蹴り。決定打は無いが、ちさとのヒジ打ちか、安田学登の右瞼辺りを切ったが傷は浅い。徐々に安田の圧す力がやや優ったが、ほぼ互角の展開。ちさとも打ち返したが判定も分かれるも安田学登が僅差勝利を掴んだ。
◆第4試合 60.0kg契約3回戦
鈴木ゲン(拳心館/1973.6.5新潟県出身/ 59.45kg)13戦6勝(4KO)6敗1分
VS
辻健太郎(TOKYO KICK WORKS/1984.3.13東京都出身/ 60.2→60.0kg)
7戦3勝(1KO)1敗3分
勝者:辻健太郎 / 判定0-2
主審:鈴木義和
副審:前田28-29. 笹谷28-30. 高谷29-29
今日がラストファイトと言われた辻健太郎。鈴木ゲンは蹴りとパンチで前進するが、辻健太郎は距離とってローキックとパンチで鈴木より手数多く優った。終盤残り時間少ないところで鈴木ゲンが攻勢に出たが時間切れ。両者の手数ある攻防は鈴木への評価もある中、僅差だったが攻勢保った辻健太郎が力出し切る判定勝利となった。
◆第3試合 女子53.0kg契約3回戦(2分制)
MEGU(KICK SPARK/1979.12.4大阪府出身/ 52.85kg)10戦2勝8敗
VS
RUI・JANJIRA(JANJIRA/2000.11.5東京都出身/ 52.75kg)11戦4勝6敗1分
勝者:RUI・JANJIRA / 判定0-3 (28-30. 28-30. 29-30)
長身を利したMEGU。ミドルキックと前蹴りは効果的ながら、その距離を潰し接近戦で距離感を活かしたRUIのパンチや組み合ってのヒザ蹴りの細かい攻めが攻勢を維持し判定勝利。
◆第2試合 62.0kg契約3回戦
猪ノ川海(大塚道場/2005.9.30茨城県出身/ 61.9kg)5戦2勝(2KO)2敗1分
VS
小林簾(アルン/2007.7.27新潟県出身/ 61.6kg)2戦1勝(1KO)1分
引分け 0-1 (29-29. 29-30. 29-29)
◆プロ第1試合 54.0kg契約3回戦
風間祐哉(WSR三ノ輪/1997.7.17石川県出身/ 54.0kg)6戦1勝3敗2分
VS
早川曜平(ケーアクティブ/1994.1.13千葉県出身/ 53.25kg)3戦1勝1敗1分
引分け 三者三様 (28-30. 29-29. 29-28)
◆アマチュア第3試合
第2代オヤジキック関東スーパーフェザー級王座決定戦2回戦(90秒制/延長1分)
酒井“キッチンドリンカー”裕輝(EX M-FACTORY/ 60.9kg)
VS
TAKENAKA(トイカツ道場/西日暮里ストライキング/ 60.85kg)
勝者:TAKENAKA / 延長判定1-2 (19-20. 10-9/20-20.9-10/20-20.9-10)
◆アマチュア第2試合
68.0kg契約2回戦(90秒制/延長1分)
ヒデジン(新興ムエタイ/ 67.95kg)vs河野友信(A-sk丈夫/ 67.05kg)
勝者:ヒデジン / 判定2-1 (20-19. 20-18. 19-20)
破れたが、河野友信は飛鳥信也さんの後輩です。A-skはアスカを意味するのだろう。
◆アマチュア第1試合
51.0kg契約2回戦(90秒制/延長1分)
奏太(スターライト/ 50.8kg)vs輝流(BIG MOOSE/ 50.95kg)
勝者:輝流 / 判定0-3 (19-20. 18-20. 19-20)
《取材戦記》
釼田昌弘は2022年6月18日に田村聖(拳心館)との王座決定戦で、2-1判定勝利で王座獲得したが、同年10月29日には田村聖引退試合(ノンタイトル)で再戦し判定負け。2023年4月15日には土屋忍(kunisnipe旭)と引分け。後に首の怪我で手術をして2年のブランクを作ったが、今回、自身の引退試合となった。
試合直後の引退セレモニーは寂しいものだった。勝者コールを受けたところから勝利者賞トロフィーと対戦者、TOMOからの花束を受け取っただけで剱田昌弘の御挨拶とテンカウントゴング。ここまでで10分足らず。まだ総合格闘技への今後に関わる諸々事情もあったかもしれないが、もう少し華やかに送ってやりたい引退セレモニーだった。
ジャパンキックボクシング協会から参加した樹は試合後、「自分でも負けたと思いました!」と言うも、昨年フェザー級に上げ、当時のチャンピオン皆川裕哉(KICKBOX)、挑戦者決定戦では勇成(Formed)に判定で敗れたが、石川智崇(KICKBOX)にTKO勝利と調子を上げて来ている中で、倒しに来るローッボットに互角に渡り合った展開には皆川裕哉と勇成へのリベンジへの展望も見える様子だった。
比較的、いつも最後まで会場に残っている、ちさとkiss Me!!は、「戦っている中では、イケるかなと思いましたけど、ちょっと当たると調子に乗り過ぎました。シーソーゲームになってしまったのが敗因かなと。出ちゃった結果はしょうがないです。けど安田学登選手の方がダメージあったと思います!」と展開には、もう一歩前進足りなかった反省もあるが、結構よく喋ってくれる明るいキャラクターだった。この後、長野への帰路に就いたようである。ダメージ無いからと酒でも飲みながら帰っただろうか。
メインイベンターが想定し難い日本キックボクシング連盟「爆発シリーズ」は8月3日(日)に大阪176BOXに於いてNKジム、テツジム二部興行。本興行は10月18日(土)に後楽園ホールに於いて、NKBウェルター級挑戦者決定戦、どん冷え貴哉vs健吾が、おそらくメインイベントで開催されます。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」
