釜ヶ崎 ── 野宿者排除をどうして笑って見れていたのか?

尾崎美代子

2019年3月31日、釜ヶ崎のあいりん総合センターが(以下「センター」、労働者の就労場所、野宿者、生活困窮者らが昼間安心して寝たり、シャワー使ったり、洗濯したりできた場所) 2019年3月31日シャッターを閉め閉鎖されそうになった。シャッターを閉めるため、昼間センター内で横になって休んだり、シャワー浴びたり、洗濯していた野宿者らが強制的に排除されそうになった。労働者や支援者が多数集まり、「シャッター閉めるな」と声をあげ、当日の閉鎖は叶わなかった(その後自主管理を続けたが、4月24日強制排除され、現在は解体工事が進む)。

その際、センター敷地内の外側には多くの「見物人」がいた。もちろん「おっちゃんら、どうなるんやろ」と心配した人もいただろう。その中に明らかにニヤニヤ笑っている人たちがいた。一般の人ではない。普段、釜ヶ崎労働者の生活や権利を守ろうと主張する人たちだ。

この間、釜ヶ崎で起きたある問題をきっかけに、あのとき彼らが笑っていたのか、笑ってなかったのかが問題になったそうだ。その話し合いに私は出席していないため詳細はわからない。ただ、話し合いに参加した一人が私の店にきて「尾崎さんはあの時どう思った?」と聞いてきた。「どう思うも何も、だから私は怒ってちゃんと彼らの顔を撮影してもらったわよ」という。「ええ?」と驚く彼女。そして「どうゆうこと?」

中で「シャッター閉めるな」と声を上げる労働者、野宿者、そして私たち支援者を、センターの外から笑ってみている人たちがいた。怒った私は、16ミリ映画「月夜釜合戦」を撮った佐藤零郎監督の傍に行って、「レオ君、彼ら酷いやろう?撮影してくれない?」と頼んだ。レオ監督も「ひでえな」と言って「はなまま、カメラは彼が回している」とある男性を指さした。その男性が、レオ監督の「月夜釜合戦」で撮影を担当した板倉善之さんだった。私は板倉さんの傍に行って、「あそこでニヤニヤ笑っている人たちを撮影してて」と頼んだ。その後、私は板倉さんがとった映像を確認することはなかった。見るのも嫌だったし、それを何かに使うとか、当時は関係なかったから。

その様子が、今、問題になっているという。あの日ニヤニヤ笑っていた人たちが、「笑ってない」と否定したそうだ。だったら……と私は板倉さんに連絡した。「板倉さん、あの日の映像をチェックしてみて。でも相当長いからゆっくりでいいよ。今使うとかいう話ではないから」と伝えた。「了解しました」と板倉さん、それから数時間後、その箇所を切り取った映像が送られてきた。

ばっちり笑ってますやん。

まあ、それ自体がどうのこうのではない。その他多数の人も映っているため、ネットで公開するとかではない。ただ、何かの時には証拠で出せるのではないか。

彼らが、「よそもの」と呼び続ける私たち支援者を「ばかなことやっている」と笑うのは勝手だ(ちなみに30年近く釜ヶ崎で店をやってる私も「よそもの」認定。長くいるか、来たばっかりかが活動の正当性を決める訳ではないが)。いくらでも笑ってくれ。しかし、そこには野宿者も労働者もいるのだ。何故あんな風に笑えたのか。野宿者や生活困窮者が生活の場を失うことがそれほど面白おかしいことなのか? 彼らも闘いの場では、「労働者が安心してくらせる釜ヶ崎を作ろう!」などのスローガンを掲げていたではないか! しかし、そこに彼らと意見が違って、大阪維新の会が進める西成特区構想に反対しようと訴える私たちがいると邪魔だというのか? 大笑いして闘いを否定しろとでもいいたいのか!それこそ、絵にかいたようなダブルスタンダードではないのか!

まあ、笑っていたとはいえ、竹中直人の芸(竹中直人の代表的な持ちネタ「笑いながら怒る人」は、顔は満面の笑顔でありながら、声や言葉づかいは「バカヤロー!」「ふざけるな!」と激しく怒るという、表情と感情のギャップが強烈なインパクトを与える伝説の芸)と同じで「笑いながら怒ってるんですわ」と言われたらそれまでだが……。

尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58

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