南北首脳会談と存在感ゼロの安倍外交 アメリカにお願いするだけなのか?

 
2018年4月16日付聯合ニュースより

明日27日に南北首脳会談が行なわれ、史上初の米朝首脳会談も日程にのぼる。首相案件のモリカケ疑惑、財務省次官のセクハラとその居直り辞任、そして防衛省の日報隠ぺい事件と、満身創痍のなか渡米して、トランプ大統領との親密さをアピールした安倍総理だが、かえって国際政治での存在感のなさを露呈してしまった感がある。北朝鮮拉致問題を米朝首脳会談で議題にしてほしいという以外に、何らの成果もみられないからである。日米間で懸案となっているのは、辺野古新基地建設問題とそれに付随するヘリコプターの相次ぐ墜落事故、あるいは日米地位協定の改善のはずだが、議論すらできなかったのである。

アメリカ大統領と仲が良い、いっしょにゴルフをする、別荘で夫婦ともども会食をした。したがって日米同盟は緊密なものとなった、米朝会談にさいしてのお願いもした。これがすべてであって、逆に日米間貿易では二か国協定を強いられる始末なのだ。これで国益を主張した成果と言えるのだろうか。さらにいえば、このかんの北朝鮮の対話路線による東アジアの外交環境の変化に、わが国は何ら積極的な提案ができないばかりか、まったくのアメリカ頼みなのである。そもそもわが国に、国際社会に対応する政権と呼べるものがあるのか、疑わしくなってくるというものだ。

それにしても、恐るべきは北朝鮮・金正恩委員長の外交攻勢である。この6年間の核開発・ミサイル実験のすべてが、雪崩を打つような対話路線・外交攻勢のためにあったのだとしたら、底知れない周到さを感じさせる。思いつきだとしたら、天才的な政治センスである。米中超大国を動かし、世界を驚嘆させているのだから――。

中央委員会総会の発言では、朝鮮戦争の終結・平和条約の締結まで視野に入れているのだ。たしかに過去の北朝鮮の瀬戸際外交をみれば、今回も偽装された対話路線なのかもしれないと、われわれに思わせる。にもかかわらず、韓国の文政権はもろ手を挙げ首脳会談を歓迎し、トランプ大統領も中間選挙を見すえた点数稼ぎの面があるにせよ、これまた大歓迎を表明している。

とりわけ、北朝鮮の核実験場の閉鎖およびミサイル実験の停止を、韓国とアメリカは大歓迎している。しかるに、わが安倍総理はといえば、トランプのツイッターの「大歓迎」「大きな前進だ」を受けて「北の方針を評価する」と、これまた追随としか思えない反応で受け容れたのである。それ以外は「制裁の継続」という、何もしない方針なのである。何か揺さぶりをかけるとか、対話を申し入れるとか、もっと策があってもよいはずではないか。

22日の拉致被害者家族会が都内でひらいた国民大集会に出席して「南北、そして米朝首脳会談の際に、拉致問題が前進するよう私が司令塔となって全力で取り組んでいく」と決意を述べたが、その内実がトランプへのお願いに過ぎなかったことも、安倍においては恥じるところがない。

安倍は「この問題を解決するために、ぜひとも協力をしてもらいたい。いかにご家族が苦しい思いをしているかということを申し上げました。トランプ大統領も身を乗り出して、私の目を見ながら真剣に聞いてくれました。そして、米朝首脳会談で、拉致問題を提起する。ベストを尽くすと力強く約束をしてくれました」と明言したが、結果が得られなかったときは、トランプに責任を問うのであろうか。

さらに「今後一層、日米で緊密に連携しながら、すべての拉致被害者の即時帰国に向け、北朝鮮への働きかけを一層強化していく考えであります。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領とも先月16日に電話会談を行い、拉致問題の解決に向けて協力していくことで一致しております。また先般来日をした(中国の)王毅国務委員に対し、私自ら中朝間でのやり取りにおいて、拉致問題を取り上げるように働きかけを行ったところであります」とは言うものの、北朝鮮との対話をする気はないのである。安倍は以下のように言う。

「北朝鮮とは対話のための対話では意味がありません。拉致被害者の方々の帰国につながらなければなりません。そうした観点から、引き続き北朝鮮に対し、そして中国やロシアに対しても拉致問題の早期解決に向けて協力を要請し、すべての拉致被害者の一日も早い帰国の実現に向け、あらゆる施策を講じてまいります」と、要するに「あらゆる施策」のうちに、北との直接対話は含まれてないのだ。まことに不思議というほかはない。

極めつけはこうだ。「この日米首脳会談の共同記者会見においては、米国でもCNN等で全国にライブで放映されるわけであります。そしてそれは北朝鮮の人々も見ている。まさに世界に向かって米国の大統領がこの問題を解決をする、被害者を家族のもとに返すということを約束をしてくれたと思います」すべてはトランプ頼みなのだ。そして「CNNを北朝鮮の人々が見ている」などと、妄想まで飛び出す始末だ。政治は結果である。ここで結果を出せなかった場合、安倍はもはや後継にバトンを渡すべきであろう。

横山茂彦(よこやましげひこ)著述業・雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社ライブラリー/5月11日発売)。

『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する

《検証報告》冤罪疑義残る和歌山カレー事件とフジテレビの虚偽報道〈後編〉

昨年12月27日にフジテレビが放送した『報道スクープSP 激!世紀の大事件V』という番組では、和歌山カレー事件で死刑判決を受けた林眞須美死刑囚の長男に取材したうえで「林眞須美の長男が真相告白」と銘打った放送がなされた。

しかし、その放送内容は事実関係に間違いが多いばかりか、虚偽の事実を担造したとみなすほかない場面や、事実を歪める編集がなされたとみなすほかない場面も散見された。

前編では、この番組の和歌山カレー事件に関する放送の6つの問題場面のうち、4つについて検証結果を報告した。後編では、残り2つの問題場面とフジテレビ側の主張について報告する。

◆問題場面5 長男が林死刑囚を犯人視し、動機を知りたがっていると思わせる編集

5つ目の問題場面は、番組の放送が始まって38分を過ぎたあたりで現れる。それは次のような場面だ。

夜の公園でインタビューを受けている長男。「それにしても長男はなぜ私たちの取材を受けてくれたのか」というナレーションに続き、次のような長男の発言が流される。

「ま、裁判の経過を見た時、動機だったり、あのお、そういう部分がちょっとこお、ちゃんと解明されてなくて、真実として、真相っていうんですか、それが一番知りたいです」

そして次に、林死刑囚の裁判の一審の判決文が画面に映し出され、こんなナレーションが流される。

「死刑判決は林眞須美がカレーにヒ素を入れたその動機について、未解明としています。長男はどうしても動機を知りたいのです。なぜなら、あの日の母はいつもと少しも変わらなかったから」

このナレーションの途中から林死刑囚の若い頃の写真が画面に映し出され、「なぜ母はカレーに毒を?」という大きなテロップが画面に映し出される――。

【問題場面5】長男が林死刑囚を犯人視し、動機を知りたがっていると思わせる編集

私はこの場面を観た時も驚きを禁じ得なかった。これでは、あたかも長男が林死刑囚のことを和歌山カレー事件の犯人だと認識したうえで、林死刑囚がカレーにヒ素を入れた動機をどうしても知りたいと思っているかのようだからだ。実際には、前編で述べたように長男は林死刑囚を無実だと信じ、その雪冤のために活動し続けている。なぜ、こんな放送になったのか。

私は放送後、長男に事実関係を確認したが、この番組の取材を受ける中で「動機」云々の話をしたのは、「母がカレーにヒ素を入れた動機を知りたい」という趣旨からではなく、「母が和歌山カレー事件の犯人だという判決を出すならば、裁判所には動機をしっかり説明してほしい」という趣旨からだとのことだった。つまり、裁判で「動機が未解明」とされていることは、林死刑囚が犯人だと認定されていることにも疑いを抱かせる事実ではないかと長男は考えているわけだ。

この場面も事実を歪める編集が施されたものだとみなすほかない。

◆問題場面6 公開済み捜査資料を「未公開」と偽り、新事実がわかったかのような虚偽

問題場面6は、番組の放送が始まって41分30秒あたりで現れる。

ホースで水をまいている林死刑囚の映像。そこで「林眞須美はなぜ、カレー鍋にヒ素を入れたのか」というナレーションが流される。そして次に、『和歌山市園部におけるカレー毒物混入事件捜査概要』というタイトルの捜査資料が「未公開」という大きなテロップと共に画面に映し出され、今度はこんなナレーションが流されるのだ。

「今回入手した、警察の未公開捜査資料には、犯行に至る経緯が記されています。未解明とされた動機に結びつく、警察がそう判断した出来事です」

その後、夏祭り会場の隣にある民家のガレージにおいて、女性たちが夏祭りで提供されたカレーを調理するなどしながら、その場にいない林死刑囚の陰口を言ったり、その場に現れた林死刑囚を阻害したりする再現ドラマが流される。

そして最後は、「こうした対応に疎外感を募らせた眞須美は激高し、犯行に及んだ。それが警察の見立ての1つです。その後、1人で見張り番に立った眞須美は、致死量の1000倍を超える、100グラム以上のヒ素を鍋に入れた」というナレーションが流され、林死刑囚役の女優がガレージに置かれたカレーの鍋の中にヒ素を入れて再現ドラマは終わっている――。

【問題場面6】公開済み捜査資料を「未公開」と偽り、新事実がわかったかのような虚偽

この場面には主に3つの虚偽があった。

第一に、『和歌山市園部におけるカレー毒物混入事件捜査概要』という捜査資料が「未公開」のものだというのが虚偽だ。この捜査資料は2002年の時点で複数の週刊誌の誌上で公開されており、それ以後もコピーを入手した林死刑囚の弁護団によって市民集会で公開されるなどしており、まったく未公開のものではないからだ。

第二に、「林眞須美はカレーの調理をした女性たちの対応に疎外感を募らせて激高し、犯行に及んだ」という“警察の見立ての1つ”の紹介の仕方が問題だ。

実際には、この警察の見立ては林死刑囚の裁判で審理の俎上に載せられながら事実と認められておらず、それもあって裁判では、林死刑囚がカレーにヒ素を入れた動機は未解明とされている。しかし、この問題場面6では、そのことに一切言及せず、実際にはすでに公開されている捜査資料が未公開のものだという虚偽の事実を示したうえ、この捜査資料によりこの“警察の見立ての1つ”が今回初めてわかったかのように紹介している。

虚偽に虚偽を重ねた悪質な放送だとみなすほかない。

第三に、問題場面6の再現ドラマについて、『和歌山市園部におけるカレー毒物混入事件捜査概要』に記された情報のみをもとに制作したかのように紹介しているのも虚偽だ。この再現ドラマで女優たちが述べているセリフには、判例雑誌や判例データベースに収録された林死刑囚の裁判の確定判決(=一審判決)をもとに制作されたことが明白なものが複数あるからだ。

それは、以下のように並べて比べてみれば、一目瞭然だろう。

(1)再現ドラマで「群馬さん」という仮名の女性が述べたセリフ
「朝の調理にこうへんかったし、来るかどうか分からへんわ」

〈1〉『判例タイムズ』第1122号に掲載された林死刑囚の確定判決で、「群馬」という仮名の人物が述べたとされている発言
「朝調理に来なかったから、来るかどうか分からへんわ。」

(2)再現ドラマで林死刑囚が「群馬さん」という仮名の女性に対し、述べたセリフ
「群馬さん、氷、どうなってんやろ」

〈2〉『判例タイムズ』第1122号に掲載された林死刑囚の確定判決で、林死刑囚が「群馬」という仮名の人物に対し、述べたとされている発言
「群馬さん、氷どおなってんのかな。」

(1)と〈1〉、(2)と〈2〉はいずれもセリフが酷似しているのみならず、実在する女性につけられた「群馬」という仮名まで一致している。こんな偶然はありえない。

つまり、林死刑囚の確定判決で事実と認められなかった“警察の見立ての1つ”について、この番組の制作スタッフは林死刑囚の確定判決も参考に再現ドラマ化しておきながら、「すでに公開されているのに、未公開のものだという虚偽の説明をした捜査資料」により初めてわかった事実であるかのように紹介しているわけである。

これは極めて悪質な虚偽だというほかない。

◆「公正な報道」と主張する「株式会社フジテレビジョン報道部」

さて、前後編の2回に渡り紹介したような様々な問題があったこの番組の放送内容について、フジテレビの制作スタッフたちはどのように考えているのだろうか。

私はまず、この番組の和歌山カレー事件の放送部分を担当したディレクター尾崎浩一氏に電話で取材を申し入れた。

しかし、尾崎氏は電話口で責任を免れようとする態度に終始し、結局、「番組の担当者から取材にはこたえないように言われた」とのことで取材に応じなかった。その「番組の担当者」とは誰のことかと尋ねても、尾崎氏はそれすらも答えようとしなかった。

このような尾崎氏とのやりとりのあと、私はどのように取材を進めるべきかを考えた末、フジテレビの代表取締役社長である宮内正喜氏に対し、手紙で取材を申し入れた。手紙では、前後編で報告した6つの問題場面の問題点を書面にまとめて指摘したうえ、これらの放送内容の問題について、どのように受け止め、今後、どのような対処をするつもりかを回答するように宮内氏に依頼した。

結果、配達証明郵便により「株式会社フジテレビジョン報道局」名義で回答があったが、その内容は以下の通り。

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ご回答

貴殿から当社宮内正喜宛の平成30年2月19日付文書(「貴殿文書」)に対し,以下の通りご回答致します。

当社が昨年12月27日に放送した番組「報道スクープSP 激動!世紀の大事件V」のうち和歌山カレー事件に関する部分(「本件放送」)は,関係者に対するインタビューを含む適切かつ十分な取材に基づいた,公正な報道であり,貴殿文書に「問題場面」として記載された各ご指摘はいずれも本件放送に該当しないものと考えます。

上記の通りですので,当社側は,貴殿による取材には応じかねます。

以上

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つまり、「株式会社フジテレビジョン報道局」は、前後編で紹介したような様々な問題があるこの番組の放送内容を「公正な報道」だと主張するわけだ。これでは、この番組に限らず、フジテレビの報道全般の公正さを疑われても仕方がない。

なお、この番組では、チーフプロデューサーを石田英史氏、総合演出を加藤健太郎氏がそれぞれ務めている。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する/編集長・中川が一から聞く日本社会の転換点/日本会議系団体理事が支持「道徳」を〝数値評価〟していた文科省研究開発学校 他
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

鹿砦社社長・松岡利康が週刊現代グラビアに登場

週刊現代5月5日・12日合併号(4月23日発売)のモノクログラビア特集〈「芸能人本」の世界〉に、鹿砦社社長・松岡利康が登場している。週刊現代に掲載予定がある、と聞いていたので、さっそく朝、近所のコンビで手にしてみると、巻頭カラーグラビアは「研究者としての天皇家」。天皇ヨイショの訳の分からない企画。続いて「目が喜ぶ『日本の美食』」。合併号用に編集部があらかじめ用意していた、時事性はない企画が並ぶ。ついで、「これが日本の『10年後』」と、良くも悪くも週刊現代らしい特集に続き、生誕100年「田中角栄の『予言』」と、松岡登場の前に「天皇」、「田中角栄」という「大物」が露払いをつとめる形になっている。

週刊現代5月5日・12日合併号(4月23日発売)より

〈暴露本出版社 鹿砦社社長が振り返る「戦いの歴史」〉には、ご覧の通り松岡のインタビューと写真が数点掲載されている。笑ってしまうのは〈暴露本の真実か、真実の暴露本か〉との大見出しを中央に掲げる、「95年、毎日新聞に出稿するための作成した全面広告。「品位がない」との理由でボツにされた」広告がここで日の目を見ていることだ。

「地震がなんだ、サリンがどうした!?」のコピーは「品位がない」と言われても仕方のない側面はあるだろう(笑)。そうだ、90年代の半ばから後半にかけて、私自身が「鹿砦社って何ものなんだろう。松岡利康ってどんな人物なのか」と斜めから見ていたことは事実であるし、あちこちの月刊誌や広告で目にする出版物の大方は、「ちょっとこれどうかな……」と近づきがたい感触を持っていた。

鹿砦社の「暴露本」路線が絶頂期を迎えるのも90年代中盤から後半だが、その後2005年には名誉毀損に名を借りた「言論弾圧」で松岡が神戸地検に逮捕され、会社存続の危機に直面させられる。それまで周りにいた人間が、次々去っていく中、入社後1年で松岡の不在中の切り盛りを任された、中川志大(現在『紙の爆弾』編集長)は「みんな、いなくなちゃうから、なんとなくこのままいた方がいいかなと思ったら、結構大変なことになりました」と飄々と当時を振り返るが、駆け出しでいきなり大きな危機を経験した中川はいまや業界で、押しも押されぬ、若手敏腕編集長として名前が知られている。

同インタビューの最後で、松岡は「ネタさえあれば、まだいくらでも暴露本を出しますよ」と意気軒高なコメントで結んでいる。が、「まだ」どころではない。現在進行形でまたしても「爆弾本」(暴露本)の編集に明け暮れているのが、松岡の姿である。今年も松岡にゴールデンウィークはないであろう。

それにしても縁は奇なものである。当時は面識もなく、「ちょっとどうかな……」と思っていた「鹿砦社」のコラムに、自分が寄稿することになろうとは20数年前には、想像もしなかった。また「鹿砦社」の硬派でありながらアナーキーな魅力が脈々と継続していることも知りはしなかった。

あるとき松岡に「どうして芸能暴露本をはじめたのですか」と聞いたことがある。「たまたまやってみたら、面白くなってやめられなくなったんですよ」と本当に楽しそうに笑いながら答えてくれた。正直なところ松岡は経営戦略的に「芸能暴露本」をはじめたのではなく、私への回答どおり「たまたま」はじめたのだろうと思う。彼が会社に勤務していた頃から発刊をはじめた季刊誌『季節』を目にすれば、出版界に足を踏み入れた動機がどのあたりにあるかは、容易に想像がつくし、それは「暴露本」路線とは、かなり距離のあるものだったように感じられる。

ともあれ、現在も芸能人写真集では不動の地位に君臨する「鹿砦社」。みずから「書かせて」もらっていながら不遜ではあるが「なんとも不思議な出版社」であることに間違いはあるまい。それゆえ今後試練があろうとも「鹿砦社の進撃」は、止まることなく続くであろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する
〈3・11〉から7年 私たちはどう生きるか 『NO NUKES voice』15号

朝鮮核放棄宣言 散々嘘をついてきた独裁者は、金正恩か? 安倍晋三なのか?

〈北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会が4月20日、開かれ、21日から核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射を中止し、北部の核実験場を廃棄することを決定した。
 また、朝鮮半島の平和と安定に向け、周辺国や国際社会と緊密に連携、対話していく方針を打ち出した。朝鮮中央通信が21日、伝えた。金正恩党委員長は、核開発と経済建設を同時に進める「並進」路線について、「国家核戦力の建設が完璧に達成され、貫徹された」と宣言。「今や、いかなる核実験も中・長距離、大陸間弾道ミサイルの試射も必要なくなり、核実験場もその使命を終えた」と強調し、社会主義経済建設に総力を集中する新たな戦略路線を表明した。
 これを受け、トランプ米大統領はツイッターで「大きな前進だ。(米朝)首脳会談が楽しみだ」と評価。安倍晋三首相は記者団に「前向きな動きと歓迎したい。核・ミサイル開発の完全、検証可能、不可逆的な廃棄につながるかどうか、しっかり注視したい」と語った。〉(時事通信2018年4月21日付)

「いままで散々嘘をついてきたから信用できない」
「ポーズですよ。ポーズ」
「はたして真意はどこにあるのんでしょうか?」

大マスコミから、市民まで朝鮮の「核」に関する態度の急変に驚きや、不信感を抱いておられる方は少なくないだろう。しかし、私はこのような選択肢もありうるであろうことを従前から予想していた。

その理由はこの島国での、報道だけ見れば朝鮮は、あいも変わらず話の通じない「無法な国」のような印象を受けるけれども、朝鮮国内には欧州から相当の投資がすでに行われており、中国やベトナムがたどってきた「解放・改革路線」と同様な変化が見て取れたこと(朝鮮国内でいちばん流通している外貨は「ユーロ」だ)。

そもそも「核兵器」を作ると豪語したところで、朝鮮が保有している(または作り出すことのできる)プルトニウムの量は、日本に比べてもごくわずかであり、核弾頭計算で数発分にしかならないこと。さらには、朴槿恵退陣直前に外交委員会を再開し、本格的な外交の準備を整えつつあったこと。そしてなにより、正確な金額は明確にされていないけれども、朝鮮の国家予算は「島根県」程度であるとの複数筋からの情報に基づけば、朝鮮が自滅覚悟の戦争を選択しない限り、外交に打って出るのは自明ですらあったからだ。

お仲間の去就が激しホワイトハウスに比べれば、独裁国家朝鮮の政治基盤は揺るぎない。外交委員会と金正恩が「路線転換」を宣言すれば、たちまち態度をかえるのは簡単なことだ。

なにより歓迎したいのは、実際は大した問題ではなかった「核・ミサイル」の放棄よりも、朝鮮が「平和」を明言し外交を展開しだしたことだ。古い話は忘れたい読者もおられようが、そもそも朝鮮半島が南北に分断された責任は日本にある。大韓民国には「不平等条約」ながらわずかな戦後賠償をしたけれども、日本は朝鮮に対して侵略・占領の賠償を1円も行っていない。

◆2002年小泉―金正日会談で交わされた「日朝共同宣言」

外交は「善意」で成立するものではないことを承知のうえで、私は日本から朝鮮に正式な国交樹立と賠償の支払いを提案すべきだと考える(昨今の論調にあっては「何を北朝鮮の肩を持って!」との批判が聞こえそうだが、2002年小泉―金正日会談で交わされた「日朝共同宣言」には明確にその方向が示されている)。ご存じない方が多いだろうからその全文をこの際、紹介しておこう。

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《日朝平壌宣言》

小泉純一郎日本国総理大臣と金正日朝鮮民主主義人民共和国国防委員長は、2002年9月17日、平壌で出会い会談を行った。

両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した。

1.双方は、この宣言に示された精神及び基本原則に従い、国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注することとし、そのために2002年10月中に日朝国交正常化交渉を再開することとした。
 双方は、相互の信頼関係に基づき、国交正常化の実現に至る過程においても、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明した。

2.日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。
 双方は、日本側が朝鮮民主主義人民共和国側に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施し、また、民間経済活動を支援する見地から国際協力銀行等による融資、信用供与等が実施されることが、この宣言の精神に合致するとの基本認識の下、国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした。
 双方は、国交正常化を実現するにあたっては、1945年8月15日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議することとした。
 双方は、在日朝鮮人の地位に関する問題及び文化財の問題については、国交正常化交渉において誠実に協議することとした。

3.双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。また、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。

4.双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した。
 双方は、この地域の関係各国の間に、相互の信頼に基づく協力関係が構築されることの重要性を確認するとともに、この地域の関係国間の関係が正常化されるにつれ、地域の信頼醸成を図るための枠組みを整備していくことが重要であるとの認識を一にした。
 双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。
 朝鮮民主主義人民共和国側は、この宣言の精神に従い、ミサイル発射のモラトリアムを2003年以降も更に延長していく意向を表明した。

 双方は、安全保障にかかわる問題について協議を行っていくこととした。

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この文章には小泉純一郎と金正日が署名している。歴史経緯を考えれば至極当たり前、基礎的な合意に過ぎない。それが吹っ飛んで「制裁!制裁!」と朝鮮を極悪国のように意識づけたこの間の国際世論、とりわけ日本政府・マスコミは真摯に反省し、「平和」と南北統一に向けて少しは働いたらどうだろうか。朝鮮問題に限らず、常に米国追従の外交姿勢の破綻は、今回の「日本はずし」でだれもが認識しただろう。自らの意思を持てないもの(個人・国家)は、まともに他者から相手にはされない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する
〈3・11〉から7年 私たちはどう生きるか 『NO NUKES voice』15号

私の内なるタイとムエタイ〈27〉タイで三日坊主 Part.19 バンコクは楽しい!

藤川さんとは比丘になって初のツーショット

◆外泊先の朝

バンコクでの用は簡単に済んだのに藤川さんのついでの用が多いこと。

初外泊先のワット・タートゥトーンで目覚めると、いつもの習慣のせいか、まだ5時ぐらい。その後あまり眠れない。

起きてから藤川さんに言われたのは、
「お前、鼾(いびき)凄いな、寝て5分程で鼾搔いてたぞ、お陰で眠れんかった!」と言われ、初めて鼾を指摘された、高校1年の入学早々の研修先での同級生の同じ苦情を思い出しました。親父も鼾が凄かったので、私も同じなのだろうと思い、他所の家には極力泊まらないようにしていたのです。

底が開くようになっている頭陀袋とバーツ(鉢)

「托鉢は行かなくていいよ」と昨日このクティに泊めてくれた偉いお坊さんに言われていたので、ゆっくり過ごし、藤川さんと部屋の掃除だけ二人でやりました。

その托鉢に行っていないので、朝食は呼ばれない覚悟もしたところ、8時頃、この寺の比丘数名から「オーイ、こっち来て!」と声が掛かりました。ここの寺の比丘はウチの寺の倍ぐらい多いが、食事は同じような雰囲気で、食材も多く「遠慮は要らないよ」と他所から来た者を差別することもなく、グループが幾つかに分かれ皆で輪を囲む食事でした。

食事後は出発準備して、このクティのデックワットに鍵を返して寺を出ました。昨日の偉いお坊さんには会うことなく、そこは藤川さんが「分かっとるから気にせんでいい」と言うまで。さすがにいつものお泊りパターンの様子。滞在時間は短かい中、新鮮な味わいがあった寺でした。

◆またも寄り道──ソー・ソー・トー(泰日経済技術振興協会)を訪ねる

バーツに頭陀袋を被せるとこんなショルダーバッグ風になります

また市内バスに乗るも、そのまま帰る訳でなく、藤川さんが目指すスクンビット通りソイ29で降り、ソー・ソー・トー(泰日経済技術振興協会)に寄り道しました。
「カンチャナ先生に会いに行くんや!」とは聞いていましたが、日本人会の主婦らしい女性が7名ほどに迎え入れてくれました。

話し合いは、日本人会として、タイに住む日本人各々が抱える社会問題を語り合うパーティーに、藤川さんの人生経験値と比丘としての意見を語って頂きたいというもので、「今後、度々あるパーティーに藤川さんを招く場合の配慮」について話していましたが、私は関係ないので、ただ側で聞いているだけ。

ニーモン(他所へ招いての寄進・喜捨)として招かれるなど、如何なる場合も戒律は守るのは当たり前で、午後は食事は摂れません。

「どう言うたらいいやろなあ!」と頭搔きながら悩む藤川さん。藤川さんは内心行きたがる。女性たちは“比丘を誘い難い”が藤川さんには来て欲しい。しかし食事を伴うので朝しか招待できない。でもパーティーは午後でなければ皆さんの都合が悪い。

「食事などの接待はしなくていいから」と言っても誘う方は気を使うものでしょう。

藤川さんの説法が、日本人会の皆さんの救いになるならば、比丘としての役目は果たします。しかし、こんなところがウチの寺の和尚さんからみれば、“遊びに行っている”と映るのかもしれません。

1時間程の結論出ない会話の後、皆さんそれぞれの主婦業等がある為、我々も御挨拶して此処を出ました。

◆またもタカリ!

時間はお昼前11時頃、外に出て「さて昼飯どうしようか、食わんとこうか、面倒臭いし!」と言う藤川さん。

私もガツガツ食い意地張りたくないので「そうしましょうかあ」と力無く言うと、それを読んだか、「そや、町田さんに飯食わせて貰おう!」と言ってソイ27の昨日の町田さんのところへ向かうことに。

ロビーの女性に町田さんを呼んで貰うと、町田さんは仕事があるので、昨日一緒に居た小林さんが連れて行ってくれることになりました。

私は「また迷惑かけるなあ」と思いつつも、温厚な小林さんは嫌な顔することなく、逆に喜んでホイホイと近くのレストランへ誘ってくれました。11時20分頃、カオパット(炒飯)、トムヤムスープ、カイチアオ(卵焼き)を注文され、12時回る前にアイスクリームまで出される豪華さ。腹減った時に“食う物無い”とか、“食ってはいけない”というのは本当に苦しいもので、この日は我々から「飯食わしてくれへんか?」と実質の“タカリ”に行っているようなもので、私としては申し訳ない気持ちは大きいところでした。

メガネのフレームがガタつくのでネジ修理を頼んだ藤川さんは、こんな感じ(イメージ画像、3月に撮った時計の修理です)

タンブンしてくれた小林さんはタイ生活が長く、「ワシは3日に1回ぐらい正露丸飲んでるよ!タイで日々屋台で飯食ってたら何食わされているか分からんからな、寄生虫発生の恐れもあるから飲んでおいた方がいいよ!」という、私も過去、長くタイに居ながらはあまり深く考えなかった有難い忠告。

食事後は藤川さんのガタつくメガネのフレーム修理をメガネ屋へ寄って頼むと、此処もお店側のタンブンで無料。何から何までタンブン尽くし。この後、小林さんにバス停まで見送られて、また市内バスでサイタイマイバスターミナルへ向かい、寺入りした日と同じ、ペッブリー行き高速バスで寺へ帰りました。

◆バンコクは楽しかった!

バンコクに居た間に藤川さんに言われた、ウチの寺の若い比丘の程度低い連中のこと思うと、こんな馬鹿どもと付き合うのが馬鹿馬鹿しくなる自分も馬鹿な私。門まで辿り着くと何となく虚しい気持ち。

そんな仲間の一人メーオくんがクティの入口に居て、ニッコリ話しかけて来ました。「どこ行って来たの?」とは聞かれるも、「クルンテープ(バンコク)だよ、以前遊んだことあるパッポンの前も通ったよ」と言ってやるも、こいつ行ったこと無いのか、あまりウケはしなかった。

振り返ればバンコクではいろいろな人と出会って楽しかった。市内バスに乗ってすぐさま席を譲られること3回。やっぱり比丘は一般人より位が高いことを実感し、そこに胡坐(あぐら)を搔いていてはいけないことも肝に銘じ、より修行しなければいけない立場であることも実感しました。なのに新米比丘の私が、やがて還俗していくことを考えると、やっぱり罪なことしているように思うのでした。

思えば友達多いことは大事なこと。カモにされるとムカつきますが、藤川さんが行った先で飯を食わせてくれる友達がいるのも実際には私も助かった話でした。

厳密に言えば比丘は、お金で対価を払う行為はやってはいけないので物を買って食べることは出来ません。そういう場合にデックワットにお金を渡して連れて歩き、必要とするものはデックワットが買って手渡しされたものを戴くことになりますが、そこまで徹底するのは現在の文明社会では無理なので、やるのは厳格な修行寺だけになります。そういう金銭に触れる事態を極力回避する為にも藤川さんは「飯食わせてくれ!」といった、知人をカモにする場合も多いのでしょう。特に日本へ帰国の際は、頼れる人が多いと助かるのも確かでしょう。

でも私としては、昨日の佐藤夫人と今日の小林さんには、還俗したら御礼に伺おうと思うほど。その行為は俗人に戻っても、テラワーダ(南方上座)仏教として間違っているかもしれませんが、日本人として恩返ししなくてはと思うところでした。

さて、翌日の満月の日を迎えると2回目の剃髪があり、そんな寺にも慣れた頃、ラオス行きも視野に入れ、また違った日々の風景が見えて来ます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する/編集長・中川が一から聞く日本社会の転換点/日本会議系団体理事が支持「道徳」を〝数値評価〟していた文科省研究開発学校 他
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

江幡塁が華麗に舞う TITANS NEOS.23!

先月のMAGNUM.46に於いては14試合中7試合が引分けだった興行に対し、今回は公式戦11試合とエキシビジョンマッチ1試合は全39ラウンド。1ラウンド決着が7試合。消化したラウンドは全22ラウンド。今までに無いかもしれない早いペースで進行した興行で、観衆としては心地良い豪快KOが観れ、疲れない長さで堪能した様子。

江幡塁も被弾しながら強烈な右ストレートを打ち込む
ユン・ドクジェの蹴りのパワーと連打で、江幡塁の左脇が赤く腫れる

◎TITANS NEOS.23
4月15日(日)後楽園ホール17:00~19:48
主催:TITANS事務局 / 認定:新日本キックボクシング協会

◆56.0kg契約 5回戦

WKBA世界スーパーバンタム級チャンピオン.江幡塁(伊原/56.0kg)
   VS
ユン・ドクジェ(MAX FC 57kg級C/韓国/55.4kg)
勝者:江幡塁 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:宮沢49-48. 仲49-48. 少白竜49-48

終盤の江幡塁が優っていった左ミドルキック

江幡塁のローキックに右ストレートを合わせて来るユン・ドクジェ。組み合ってもすかさずヒザ蹴りを返し、たじろがないユン。蹴りも強く江幡塁の左脇腹が赤く染まり、被弾した顔面もやや赤みが増す。なぜかリズムに乗れない江幡塁だったが、第5ラウンド終盤には怒涛のパンチラッシュでユンを追い詰めるが的確さに欠け、ノックアウトに至らず終了。

苦戦の原因を尋ねるとセミファイナルまでの試合進行が早く、ウォーミングアップが足りなかったことを述べ、3ラウンド辺りから身体が解れ、ペースアップに動いたが、ユンを調子付かせてしまった反省点を述べていました。

江幡塁が6月8日に2度目の「KNOCK OUT」出場で、国内幾つかのタイトルを獲得している小笠原瑛作(クロスポイント吉祥寺)と対戦します。兄の睦は、5月31日にタイ国ラジャダムナンスタジアム出場が予定されており、ランキング入りを懸けた戦いとなるか、ツインズの次なるステップへ、終わりなき挑戦が続きます。

江幡塁もペースを上げ、本来の鋭い攻めを見せた左ハイキック
緑川創のボディブローから上下打ち分けヒジに繋いでいく

 

◆70.0kg契約 5回戦

緑川創(藤本/70.0kg)vsアニーバル・シアンシアルーソ(アルゼンチン/69.2kg)
勝者:緑川創 / TKO 1R 2:45 / ヒジによる顔面カットでドクター勧告を受入れレフェリーストップ
主審:宮沢誠

アニーバルの蹴りにパワーは有るものの、繋ぎ技は少ない。緑川はボディーブローから上下打ち分け、パンチ連打にヒジ打ちを加え、アニーバルは右側頭部をカット、流血に見舞われ、レフェリーストップ、緑川創がTKOで圧勝。

緑川創が教授のようにキックボクシングの技を叩き込む
重森陽太のハイキックの方が鋭く重くウ・スンボムを襲う

 

◆ライト級 5回戦

重森陽太(伊原稲城/61.1kg)vsウ・スンボム(KMMAF韓国60kg級C/韓国/60.9kg)
勝者:重森陽太 / TKO 1R 2:35 / カウント中のレフェリーストップ
主審:少白竜

ウ・スンボムの勢いあるハイキックを冷静に対応。重森もハイキックを軽く返していくと、これでノックアウト出来そうな雰囲気が漂う中、その強いハイキックから連打、最後は右ストレートで倒して圧勝。

重森陽太の右ハイキックから右ストレートへ繋いで倒す
エキシビジョンマッチで軽やかな動きを見せる勝次
先輩相手に遠慮無い変則ファイトのHIROYUKI

◆エキシビションマッチ

日本ライト級チャンピオン.勝次(藤本)EX日本バンタム級チャンピオン.HIROYUKI(藤本)&日本フェザー級4位.皆川裕也(藤本)

再起に動き出した勝次(=高橋勝次)が後輩2名とエキシビジョンマッチで登場。昨年出場した「KNOCK OUT」での全トーナメント戦に於いて通算何度ダウンしたことか。そのダメージを抜いて、7月興行に於いて、ランカークラスのムエタイボクサーと再起戦が予定されています。

皆川は正攻法の攻めで終わるも、HIROYUKIは開始早々から飛び蹴り、また変則的な攻勢を見せ、三者三様の鋭い動きでそれぞれが好調ぶりを発揮されていました。

◆73.5kg契約3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/73.5kg)
   VS
任朝恵(ワイルドシーサー沖縄/73.1kg)
勝者:斗吾 / KO 1R 2:16 / 3ノックダウン
主審:少白竜

実力差が現れたパンチの交錯。斗吾が圧力掛けて出て、やや空振りもあるが3度のダウンに結び付けて圧勝。

強いパンチで追い詰める斗吾

◆59.0kg契約3回戦

JKIスーパーフェザー級チャンピオン.葵拳士郎(マイウェイ/58.6kg)
   VS
日本フェザー級1位.髙橋亨汰(伊原/59.0kg)
勝者:髙橋亨汰 / TKO 1R 2:45 / 左ハイキック一発、ノーカウントのレフェリーストップ 
主審:仲俊光

静かな序盤を様子見で終わるかと見えた初回の終盤、ガードの空いた葵拳士郎の右顔面に髙橋亨汰の左ハイキックがヒット、あっけなく豪快に勝った髙橋亨汰は雄叫びと号泣で喜びを表す。

左ハイキック一発でノックアウト直後の高橋亨汰

◆ミドル級3回戦

TENKAICHIミドル級チャンピオン.Tomo(天下一・沖縄/72.3kg)
   VS
日本ミドル級2位.本田聖典(伊原新潟/72.4kg)
引分け 1-0 / 主審:宮沢誠 / 椎名29-29. 仲29-29. 少白竜29-28

◆ライト級3回戦

日本ライト級5位.ジョニー・オリベイラ(トーエル/61.1kg)vs千久(伊原/61.15kg)
勝者:ジョニー・オリベイラ / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:椎名29-28. 仲29-28. 宮沢30-28

◆61.5kg契約3回戦

日本ライト級6位.渡邉涼介(伊原新潟/61.5kg)vs同級7位.大月慎也(治政館/61.3kg)
勝者:大月慎也 / TKO 2R 3:12 / カウント中のレフェリーストップ
主審:椎名利一

◆ウェルター級3回戦

J-NETWORKウェルター級10位.涼介(不死鳥/66.45kg)
   VS
ワンパンマン浦野(名護ムエタイS/66.3kg)
勝者:涼介 / KO 1R 2:37 / 3ノックダウン
主審:宮沢誠

◆ライト級2回戦

林瑞紀(治政館/61.0kg)vs松崎祐樹(トーエル/60.8kg)
勝者:林瑞紀 / TKO 1R 0:40 / カウント中のレフェリーストップ

◆58.5kg契約2回戦

瀬川琉(伊原稲城/58.3kg)vs小田切健吾(マイウェイ/58.0kg)
勝者:瀬川琉 / TKO 1R終了 / 顔面負傷による棄権

《取材戦記》

若いと言われた江幡ツインズも今年27歳。デビューから10年経ち、今や円熟期。昨年12月から“江幡祭り”と新たなキャッチフレーズが付き、今年に懸ける変化が見られてきました。宮元啓介(橋本)戦に続く日本人対決を迎える江幡塁と、2年ぶりのラジャダムナンスタジアム出場の江幡睦の勝負とその先が注目の、夏に向けたこの季節となります。

苦戦し反省はあるが表情は明るく勝者コールを受ける江幡塁、右は伊原信一協会代表、レフェリーは椎名利一氏

次回興行は5月13日(日)に後楽園ホールに於いて、治政館ジム主催興行「WINNERS 2018.2 nd」が開催。日本フェザー級チャンピオン.石原將伍(ビクトリー)がメインイベントの他、日本ウェルター級王座決定戦で、1位.政斗(治政館)vs3位.リカルド・ブラボ(アルゼンチン/伊原)戦が行われます。

リカルド・ブラボが勝てば、新日本キックボクシング協会に於いては、朴龍(韓国/市原)以来の外国人チャンピオン誕生となる、伊原ジムが期待を掛ける若い外国人選手。治政館が期待を掛ける政人は王座へ2年ぶり2度目の挑戦となります。

藤本ジムの三羽烏、左からHIROYUKI、主役の勝次、皆川裕也

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する

財務省・福田淳一事務次官と新潟県・米山隆一知事に見る男のケジメのつけかた

◆財務省・福田淳一事務次官の居直り「辞任」劇

女性ならずとも、誰もが事態の推移に憤慨し、はらわたが煮えくり返るのを感じているのではないだろうか。財務省・福田淳一事務次官の居直り「辞任」劇である。週刊誌にみっともないセクハラ会話「何カップなの? 胸に触っていい?」「やめてください」「好きになったので、抱きしめていい?」「手を縛っていい?」「いやです」「キスしていい?」「ダメ」などをすっぱ抜かれ、いさぎよく認めるどころか「自分の声かどうか、録音なのでわからない」「あんなひどい会話をした記憶はない」などと言い逃れる。そのいっぽうでは「全体をみてくれ、あれはセクハラではない」と、なかば女性記者との会話をみとめているのだ。ここはもう、錯乱しているとしか言いようがない。

◎[参考動画]“胸触っていい?”「財務省トップ」のセクハラ音声(デイリー新潮 2018/04/12公開)

そして挙句の果てに「マスコミ取材がこういう状態なので、業務を遂行できない(お前らのせいで仕事にならん!)」と、職を投げ出したのである。みずからのセクハラ疑惑で報道騒動を起こしておきながら「お前らのせいで仕事ができない」のである。辞任は懲戒ではなく普通退職なので、多額の退職金が支払われる。そして「引き続き裁判で訴えるつもりだ」などと、訴訟を匂わせながらの会見も、おそらく民事裁判には踏み切れないだろう。ようするに、取材から逃げて事件を曖昧化することで、みずからの世間知らずな「プライド」を守りきったのだ。一般人になったからといって、セクハラの事実が消えるわけではないのを、思い知るべきであろう。

◎[参考動画]女性記者へのセクハラ疑惑の福田次官辞任会見(東京新聞2018/04/18公開)

◆世界に恥をさらした財務省

それにしても問題なのは、財務省の世間の常識と感覚からおよそかけ離れた人権意識である。誰の耳にも明らかな「事実認識」のために、セクハラ被害者に名乗り出るようもとめ、しかもその相談先が財務省の顧問弁護士事務所なのである。顧問弁護士が雇い主である財務省に忠実であろうとすれば、被害者を誤動するか、もみ消す方向に導くにちがいない。いや、そもそもセクハラの恥辱と恐怖で傷ついている被害者に「名乗り出るのがそれほど苦痛なことか?」(矢野康治官房長の国会答弁)、「相手のある話でしょ。むこうが出てこないと、福田にも人権はある」(麻生財務大臣)などと言い放つありさまだ。省庁の中の省庁、財務省が世界に日本の恥をさらしていることに、まだ気づいている様子はない。「何が何だかわからない」「異常な事態だ」(放送局の取材に答えた財務省幹部)というのだから――。野田聖子総務大臣(女性活躍担当大臣・男女共同参画特命担当)の「財務省は国際的な人権感覚をわかっていない」という批判に耳を傾けるべきであろう。

◆米山隆一新潟県知事は辞める必要はあったのか?

いっぽう、米山隆一新潟県知事は女性との交際が問題だと週刊誌に書かれ、金銭のやり取りがあったと辞任した。この辞任劇については、ちょっと不思議な気がする。米山知事は独身なのである。女性との付き合いは、いわば婚活ではないだろうか。

東大医学部で医師免許を取得するいっぽうで、司法試験にも合格する秀才であって、モテないのも不思議なことだが、ネットで知り合った女性と会っていたという。その場で「わたしを好きになってくれ」と気持ちをこめて金銭を渡したことから、売買春の疑義が飛び出したというわけだ。おカネを出すからホテルに行こうと呼びかけたわけではない。いったい何が問題だったのだろうか。そもそも婚姻制度とは性生活の安定であり、経済システムとしては買売春と変わるところがない。セックスと経済的な結びつきでによって、夫婦は成立しているのだから。

◎[参考動画]「歓心を買うため」“買春”報道で米山知事が辞職願(ANNnewsCH 2018/04/18公開)

たしかに政治家は清廉潔白を求められるかもしれないが、米山氏は女性にカネを渡して「おれの女になれ」と言ったわけではない様子だ。くり返すが、彼は独身である。不倫でもないのだ。問題があるとしたら、相手の女性に男がいて、強請りのようなシチュエーションになったのは想像に難くない。それならば被害者的な側面すらあるではないか。

おなじく女性問題でミソをつけたエリートで、いっぽうは自分の罪を押し隠し「一般人」になることでマスコミと世間の追及から逃れようとする財務省のトップ。かたや選挙に4度も落ちた苦労人で、原発再稼働に待ったをかけた政治家の下半身問題でのあまりにも不思議な潔さ。デジ鹿の読者のみなさんは、これらの事態に何を感じただろうか。

◎[参考動画]新潟県 米山知事が辞職 会見の中身は(PRIDE OF NIIGATA 2018/04/18公開)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
著述業、雑誌編集者

『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する
『NO NUKES voice』15号 米山隆一新潟県知事講演録=原子力政策と地域の未来を問う

開港阻止闘争から40年目の成田(三里塚)空港〈6〉休戦協定

◆国民の4分の1が開港に反対だった

管制塔占拠――開港阻止は、あまねく国民に三里塚空港の問題点を伝えた。議会は実力による開港阻止を批判し、ほぼ全会一致で暴力的反対運動を退けるために成田治安立法を決議した(青島幸男議員が反対)が、マスコミによると国民の4分の1が農地を空港にすることに反対だった。問答無用の土地収用、地域社会・共同体の破壊につながる空港が本当に必要なのか、国民的な議論が沸き起こった。空港問題を国民に知らしめただけで、3.26闘争の意義は大きかったといえよう。

戦前・戦後をつうじて、反政府の大衆運動がまがりなりにも警察権力に勝った、初めての闘争でもあった。岸内閣を倒した名高い60年安保闘争も、警備当局を驚嘆させた10.8羽田闘争(佐藤ベトナム訪問阻止)、東大闘争をはじめとする諸大学の全共闘運動も、「具体的な勝利」の地平を切りひらいたものではない。60年代後期の大学闘争では佐藤政府の介入で反故にされたものの、9.30断交で理事会を辞任させ、諸要求を勝ち取った日大闘争が唯一のものであろう。その意味では、60年代・70年代闘争のうっ憤を晴らす快挙だった。


◎[参考動画]1978.3.26 三里塚 成田闘争 管制塔占領事件(rosamour909 2010年5月13日公開)

◆財界による和解調停 ── 桜田武の手紙

いっぽうで、政治的な駆け引きもはじまった。地域的とはいえ、改造トラックやダンプカーが機動隊を蹂躙し、鉄筋コンクリートの要塞からは鉄筋弾が飛びかう。そして管制塔が占拠されたことで、和解への道がさぐられた。それは政府においても、空港反対派においても同様だった。闘争には妥結という果実が必要であり、相互絶滅にいたる闘争の展望を語る者は、おそらく共産主義革命という究極目標を措定したのにほかならない。いや、共産主義革命を標榜する者たちにおいてすら、革命のための陣地を確保すること。すなわち勝ち取った地平を、交渉において確約させることが必要だった。それは具体的には、三里塚空港二期工事の凍結という確約にほかならない。

最初にうごいたのは政府ではなく、財界と労働界だった。

総評の富塚三夫事務局長と福永健司運輸大臣が会い、話し合いの糸口を探ろうとした。それはしかし、とりあえず反対同盟内の社会党員と話をつなごうとする、形ばかりのものにしかならなかった。

 
桜田武=元日経連名誉会長、元日清紡績社長(1904年3月17日生~1985年4月29日没)

本気で和解――休戦協定への糸口をさぐっていたのは、財界人と影響力のある組合活動家である。財界からの接触をうけた長崎造船労組の西村卓司は、反対同盟の幹部に接触し、戸村一作委員長との面談を希望した。そのさい、西村は反対同盟の強硬派(絶対反対派)の幹部と会って、戸村との会見を取りようとしたのだ。西村は総評労働運動の最左派に位置する老練な活動家で、役回りとしてはこの人しかなかった。財界側は日経連専務理事(当時)の桜田武だった。

桜田武の手紙はこんな書き出しで始まる。

「西村卓司様                 桜田武

先般は御面識の儀を得て小生としても心おきなく意見を申し上げ、又戸村さんはじめ皆様のご意見を承はる事が出来大変に有難く且うれしく存じ候。其後福永健司大臣と一夕懇談仕りご要望の点等傳えて進言仕り候も思ふに任せず残念に存じ候。要するに政府12年に亘るやり方の不誠意にある事は明らかと存じ……」

この手紙を受けた西村は、開港阻止闘争の主力党派だった第四インターの政治局員・今野求に電話を入れた。会合したのは成田現地だった。そこで話されたのは、桜田武と土光経団連会長ほか、財界のトップが交渉に出席するので、戸村一作委員長の出席をお願いしたいと。戸村委員長の説得には時間がかかった。戸村委員長は清廉の士であり、裏交渉などという「政治」が嫌いな人である。

 
戸村一作=三里塚芝山連合空港反対同盟委員長(1909年5月29日生~1979年11月2日没)

最後は「戸村さん、2月の要塞戦を含め3.26闘争で若者たちが何百人も逮捕され、大怪我した者、死にそうな者もいる。管制塔は破壊されて、3月30日の開港は粉砕された。この後、敵の大将と掛け合って5月20日開港を止めるのは戸村さんあなたがやって下さい!」という言葉が決定的だったという(「3.26直後の財界の休戦申し入れ顛末」柘植洋三)。

財界側は桜田武(日本経済団体連合会専務理事)・土光敏夫(日本経済団体連合会頭)・中山素平(興業銀行頭取)・今里廣記(日経連広報委員長)・秦野章(参議院議員)・五島昇(日本商工会議所会頭)。このうち二人は海外だったが、国際電話で直結されていた。当時の財界のフルスタッフがそろっていたわけである。

桜田武が発言した。

「そもそも、成田問題がこのようにこじれているのは、政府の12年にわたる不誠実に問題がある。成田はこのまま開港しても、天皇陛下が外国に行幸される際に使えるものではない。三池問題など戦後の大問題は、最後はわれわれ財界が始末を付けてきた。暗礁に乗り上げている成田問題も我々が、打開策を政府に提案したい」これに対して戸村委員長は、席上の相手を見据えて「話し合いなど必要ない、実力闘争あるのみ」と、政府の理不尽を糾弾した。

 
戸村一作『わが十字架・三里塚―自己変革論』(1974年教文館)

会談は二回行われ、以下のことが合意された。

・政府は予定している5月20日開港を一年間延期する。
・一年間の休戦をする。その間、双方は共に実力行動を留保する。
・その間に双方の合意がなければ、一年後には戦闘再開。
・財界はこの条件を福田内閣に受け入れさせるために、運輸大臣に会見する。

財界としては、反対派との交渉のイニシアチブを握ることで福田総理の退陣をもとめ、空港問題の暫定的な解決をはかろうとする意図があった。それは膠着した空港問題の解決をはかるとともに、財界の存在感を世間にしめそうとするものでもあった。

いっぽう三里塚現地では、30をこえる支援党派・団体が共同声明を発表し、5月20日の出直し開港が強行されれば、3.26を上まわる闘いで粉砕すると警告した。5月10日のことである。そして同じ時刻に、戸村委員長が福永運輸大臣と会っているとの情報が入った。戸村・福永会談をセットしたのは、千葉日報の社長と自民党の成田空港建設促進委員長だった。(つづく)


◎[参考動画]三里塚空港・開港阻止決戦 1978.3.26 包囲・突入・占拠(anzen bund 2014年2月16日公開)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
著述業、雑誌編集者。3月横堀要塞戦元被告。

『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する
〈3・11〉から7年 私たちはどう生きるか 『NO NUKES voice』15号

《検証報告》冤罪疑義残る和歌山カレー事件とフジテレビの虚偽報道〈前編〉

67人がヒ素中毒に陥り、うち4人が死亡した和歌山カレー事件は今年7月で発生から20年(1998年発生)を迎える。この事件では、メディア総出の犯人視報道にさらされた林眞須美死刑囚が2009年に死刑が確定したが、林死刑囚は一貫して無実を訴えており、近年は冤罪を疑う声も増えてきた。

かくいう私もこの事件に関しては、10年以上前から林死刑囚が冤罪である可能性を疑って取材を重ね、現在は林死刑囚の無実を確信するに至っている。その過程では、事件発生当時の報道も徹底的に検証したが、林死刑囚を犯人と決めつけていた報道の多くは裏づけ不十分の虚報だったこともわかっている。

そのような事情から、私は今もこの事件に関する報道は常に注視しているのだが、最近は一定のレベル以上の報道が増えたような印象を受けていた。しかし、残念ながら例外もあった。昨年12月27日にフジテレビが放送した『報道スクープSP 激動! 世紀の大事件V』という番組だ。

この番組では、林死刑囚の長男らに取材したうえ、「林眞須美の長男が真相告白」と銘打った放送がなされていた。しかし、その放送内容は事実関係に間違いが多いばかりか、虚偽の事実を捏造したとみなすほかない場面や、事実を歪める編集がなされたとみなすほかない場面も散見された。

この事件を長く取材してきた者として、私はこの番組の放送内容に怒りを禁じ得なかった。また、公共性、公益性の観点からもこのような放送は放置しておけないと思った。

そこで、この番組の和歌山カレー事件に関する放送の6つの問題場面について、ここで前後編の2回に分けて検証結果を報告する。なお、問題場面の映像をここで紹介するに際し、再現ドラマに出演している俳優の顔には、私がモザイクを施した。

◆問題場面1 林死刑囚を犯人視した長男のコメントを捏造した再現ドラマ

この番組はまず、小学5年生だった事件当時の長男が自転車をこいだり、母である林死刑囚と一緒にソーメンを食べたりする再現ドラマから始まる。この再現ドラマで流されたナレーションがいきなり酷かった。それは次のようなものだ。

「19年前、小学5年の夏でした。母が一度に4人もの命を奪い、殺人者となったのは」
「母の名は眞須美といいます」

私はこの場面を観た時、のぞけるほど驚いた。なぜなら、長男は林死刑囚の無実を信じ、その雪冤のために活動し続けており、このナレーションのような林死刑囚を和歌山カレー事件の犯人だと断定したことを言うわけがないからだ。

放送後、私は長男に事実関係を確認したが、案の定、この番組のスタッフから取材を受ける中、林死刑囚のことを犯人と断定するようなことなど「言っていない」とのことだった。この番組の制作スタッフが長男のコメントを捏造したのだ。

【問題場面1】林死刑囚を犯人視した長男のコメントを捏造した再現ドラマ

◆問題場面2 長男が林死刑囚を犯人視し、批判したように事実を歪める編集

【問題場面2】長男が林死刑囚を犯人視し、批判したように事実を歪める編集

2つ目の問題場面は、番組の放送が始まって4分30秒が過ぎたあたりで現れる。それは次のような場面だ。

パソコンの画面で、林死刑囚が逮捕前にインタビューを受けている映像を観ている長男。その映像では、林死刑囚は泣きながら、「なぜこんなにね、私たちだけをね、報道陣がそのように書いてね、なんでこんなひどいことを…」と語っているのだが、長男はこれを観ながら次のように言う。

「涙を流してるからと言って、あのお、なんていうか、これを擁護する気は子供としては無いかな、と。泣いて済む問題じゃないんじゃないかな、と」

この場面にも私は驚いた。文脈からして長男が林死刑囚のことを和歌山カレー事件の犯人だと認識したうえで、「泣いて済む問題じゃない」と批判しているような印象を与える編集が施されていたからだ。

先述したように長男は林死刑囚の無実を信じ、その雪冤のために活動し続けている。林死刑囚のことを和歌山カレー事件の犯人扱いし、批判するようなことを言うわけがない。

実際、私が長男に確認したところ、この発言は和歌山カレー事件に関して述べたものではなく、林死刑囚が事件前に行っていた「保険金詐欺」について述べたものだったという。それを和歌山カレー事件に関して述べた発言であるかのように事実を歪める編集が施されたのだ。

◆問題場面3 長男が両親らの保険金詐欺の犯行を目撃したような虚偽の再現ドラマ

【問題場面3】長男が両親らの保険金詐欺の犯行を目撃したような虚偽の再現ドラマ

3つ目の問題場面は、番組の放送が始まって13分10秒が過ぎたあたりで現れる。

それは、林死刑囚が健治氏と共謀し、保険金詐欺を行うところを再現したドラマだ。そのドラマは、健治氏が自分の足を知人の泉克典氏に金属バットで殴らせて骨折し、交通事故に遭ったように偽る手口で保険金詐欺を行った経緯がドラマ化されたものだ。

この再現ドラマには主に2点の虚偽があった。

1点目は、林死刑囚や健治氏らが保険金詐欺を企て、健治氏が自分の足を泉氏に金属バットで殴らせて骨折するまでの一連の経緯について、長男が常にかたわらで目撃したような内容になっていたことだ。

私はこのドラマを観た時、これも虚偽だとすぐにわかった。というのも、私は健治氏からこの保険金詐欺を行った時のことについては何度も話を聞いているのだが、長男が常にかたわらで健治氏らの犯行を目撃したという話は一度も聞いたことがなかったからだ。

私は念のため、放送後に健治氏と長男に事実関係を確認したが、2人はいずれもこの再現ドラマのように健治氏らの保険金詐欺の犯行を長男が常にかたわらで目撃していた事実など「なかった」と答えた。

2点目の虚偽は、健治氏らが犯行に及んだきっかけだ。

この再現ドラマは、健治氏が階段から落ちて右ひざを負傷した際、林死刑囚から「この程度のケガじゃあ、おりんなあ。事故にでもおうて、骨折れるくらいせんと保険はおりんよ」と言われ、泉氏に金属バットで足を殴らせ、骨折することを思いついたかのような筋書きになっている。

しかし実際には、健治氏はこの犯行に及んだ経緯について、泉氏から「それじゃ、とてもじゃないけど入院できない」「打撲程度じゃ、外来通院になる」と言われたからだと主張している。それは、林死刑囚の裁判の控訴審判決などで確認すれば容易にわかることだ。

私は放送後、改めて健治氏にも事実関係を確認したが、健治氏はこの裁判における主張を今も維持しており、林死刑囚の言葉をきっかけに犯行に及んだかのような再現ドラマの筋書きを否定した。

◆問題場面4 夫らへのヒ素使用を長男が本当だと思っているように思わせる編集

4つ目の問題場面は、番組の放送が始まって15分40秒あたりで現れる。それは、林死刑囚が健治氏や泉氏にヒ素を飲ませ、多額の保険金を手にしていたとされる疑惑について、再現ドラマやナレーション、長男がインタビューを受けている映像などにより紹介した場面だ。

【問題場面4】夫らへのヒ素使用を長男が本当だと思っているように思わせる編集

林死刑囚は裁判で保険金詐欺をしていたことは認めつつ、保険金詐欺のために健治氏や泉氏にヒ素を飲ませていた疑惑は否定しているのだが、結果的にこの疑惑も有罪とされている。この場面はその裁判の認定通り、林死刑囚が健治氏や泉氏にヒ素を飲ませていたとする内容となっている。

ここで問題は、この場面の最初から最後まで画面の右上に「1998和歌山毒物カレー事件」「林眞須美の長男が真相告白」というテロップが表示されていたことだ。なぜなら、長男は林死刑囚が和歌山カレー事件の犯人ではないと信じているのみならず、健治氏や泉氏にヒ素を飲ませていたとされることに関しても林死刑囚は無実だと信じているからだ。

それにも関わらず、上記のテロップを表示させたまま、林死刑囚が健治氏や泉氏にヒ素を飲ませていたとする内容の放送をすれば、あたかも長男は林死刑囚について、健治氏や泉氏にヒ素を飲ませていたのは本当のことだと認識しているかのようだ。

これも事実を歪める編集だとみなすほかない。

以上が前編だ。後編では、残り2つの問題場面とフジテレビ側の主張について報告する。

▼片岡健(かたおかけん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

最新『紙の爆弾』5月号 安倍晋三はこうして退陣する/編集長・中川が一から聞く日本社会の転換点/日本会議系団体理事が支持「道徳」を〝数値評価〟していた文科省研究開発学校 他
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

「護憲」とも「9条を守る」とも紹介文に書かない「マガジン9」の欺瞞

 
サイト「マガジン9」

〈憲法と社会問題のことをやってます。「マガジン9」の“9”が示す通り、ずばり憲法9条のことから始まりました。日本国憲法と私たちの生活のつながりについて考えたり、憲法に関わるさまざまな出来事や議論について、広く伝えるためのウェブサイトです。発足以来、多彩な企画や執筆者のコラムによる独自コンテンツをお届けしています。〉(「マガジン9」とは?

長年勘違いしていた。上記は「マガジン9」のサイト内紹介文だ。しっかり読んでいなかったのでてっきり「9条を守る」趣旨で始まったと長年思い違いを続けていたけど、〈憲法と社会問題のことをやってます。「マガジン9」の“9”が示す通り、ずばり憲法9条のことから始まりました。〉とあるように、どこにも「護憲」や「9条を守る」とは書かれていない。

石坂啓(漫画家)、上原公子(前国立市市長)、小山内美江子(脚本家)、香山リカ(精神科医)、姜尚中(東京大学教授)、きむらゆういち(絵本作家)、小林カツ代(料理研究家)、小室等(ミュージシャン)、斎藤駿(カタログハウス相談役)、佐高信(評論家)椎名誠(作家)、ピーコ(服飾評論家)、毛利子来(小児科医)、森永卓郎(経済アナリスト)、吉岡忍(ノンフィクション作家)、渡辺一枝(作家)、渡辺えり(劇作家/演出家/女優)

2006年の発足当時の発起人には上記の人たちが名を連ねている。12年でだいぶ豹変なさった方も含まれるが、当時のこの顔ぶれは少なくとも「改憲を目指す」集団には見えないし、見えなかった。

◆伊勢崎賢治の主張は正気の沙汰とは思えない

しかしその後の登場人物は、どんどん怪しくなる。先日あまりの無知ぶりを本コラム(「確信犯か?バカなのか?東京外大・伊勢崎賢治〈リベラル改憲〉論の支離滅裂」)で批判したら伊勢崎賢治が、

伊勢崎賢治=東京外大教授のツイッター

と反応してきた。伊勢崎のツイッターを初めて見たが、正気の沙汰とは思えない主張が延々続く。ちょっとまて。理解できないわたしの頭が悪いのだろうか?

伊勢崎賢治=東京外大教授のツイッター
伊勢崎賢治=東京外大教授のツイッター
伊勢崎賢治=東京外大教授のツイッター

時間にゆとりのある、好戦的な年金生活者や、青年期に小林よしのりに影響を受けて育ってしまった、不幸にも無知な若者が書き込んでいるのではない(もっとも小林よしのりは、「再転向」して最近は反自民になっているようだが)。伊勢崎は東京外大の教授だ。

繰り返すが、いったい何を主張したいのか? わたしにはさっぱり理解できない。どなたかわかりやすい解説をしていただける方がいらしたらわたし宛にメールを頂きたい(メールアドレスは本文の下に明記している)。

◆「マガジン9」は「護憲」なのか?「改憲容認」なのか?

原発賛成で本性が明らかになった森永卓郎。思想・立場を変幻自在に変え、一見物分かりがよさそうに見えて、確信的な右翼にして「しばき隊」の擁護者、鈴木邦男。保守を自認・明言する中島岳志。仲間内ではなんとなく「護憲」のように振る舞っているけれども、2014年5月15日に関西発極右娯楽番組「たかじんのそこまで言って委員会」に出演した際、決して頭脳明晰とは思われない、軍事漫談家の井上和彦に「右翼でもいいから、何でもいいから、9条好きなんでしょ?」と聞かれ、「好きっていうよりは、具体的なツールとして根拠として使えるんじゃないかと思ってますね。」としか言えなかった雨宮処凛。ひたすら「国民投票」を行いたくて、福島第一原発事故後にも「原発の是非を問う国民投票を!」と、突拍子もない我田引水をあちこちで言い回り、周囲から呆れ果てられた今井一。

「マガジン9」には、「護憲」を明言する者はほとんど見当たらない。こういった「何かを主張しているようで、その実曖昧模糊として、改憲派のアマルガム(合成物)たる」役割を担っているのが「マガジン9」の実態ではないのか。正面突破を目指す「改憲勢力」は「マガジン9」のように「リベラル」の衣を纏った「間諜」によって援護射撃を受ける。

「マガジン9」に質問する。あなたたちは「護憲」なのか?「改憲容認」なのか? 旗幟を鮮明にせよ。過去「マガジン9」が主催するイベントに参加したこともあり、その際には強い違和感を覚えなかったが、伊勢崎を筆頭に明確な改憲派や憲法についての知識のない者が、ここまで多数登場すると問い質さざるをえない。

わたしは日本国憲法至上主義者ではない。現憲法が最高の完成形だとは考えない。前文には同意し好感するが、その直後1条から8条で国民ではなく天皇が規定されている点などに違和感を持つ。しかし、それらを甘受しながら、現在かわされている改憲をめぐる議論を目の当たりにすると、わたしは「護憲」ファンダメンタリストでしかありえない。

「9条加憲」などと中途半端な責任逃れの議論は、唾棄の対象でしかない。残念ながらこの島国の民族は、

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

と、ここまで明確に軍隊の不保持と交戦権の放棄を憲法に明文化しても、御託を並べて、自衛隊を作り、海外に派兵する国なのだ。この文言が少しでも緩まれば、為政者がさらなる軍備増強と戦争を企図することは、現状を見れば明らかじゃないか。悲しきかな最高法規を守ることのできる知的水準と、遵法精神がこの国にはないのだ。だから現状がどうであれ、改憲には絶対に反対する。PKOを肯定する論などには一切賛同できないし、集団的自衛権など論外だ。

読者諸氏にも自己点検をお勧めする。もとより改憲派のかたはともかく、自分の考えがどうなのか、定まっているかどうか不明瞭な方に。リトマス紙として「マガジン9」を一読されると良いかもしれない。こと「改憲」問題において中間的態度などは存在しない。「戦争」を引き起こすのが「普通の国」とする考えに賛成するのか、反対か。鹿砦社社長松岡もわたしも「改憲」に関しては絶対反対の原理主義者だ。

騙されてはいけない。街頭でラップ調の「安倍政権反対」を口にする連中の中にも、改憲派は潜り込んでいる(もちろんそうではない護憲派が多数だが)。9条2項削除を明言した、軽率学生集団SEALDsやそれを擁護した知識人ども。連中は全員改憲派と見做していい。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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