京アニ事件「犯人が精神鑑定で無罪かも・・・」は、無用な心配と言える理由

殺人事件としては戦後最大の死者を出した京都アニメーション(京アニ)の放火事件では、青葉真司容疑者(41)自身も重篤な火傷を負って治療中のため、取り調べすらできない状況が続いている。そんな中、「青葉が精神鑑定で無罪になる可能性もあるのでは?」と心配する声がネット上で散見される。

しかし、私は、その心配は無用だと考える。過去、犯人の責任能力の有無や程度が争点にあった重大事件を色々取材してきた経験上、青葉容疑者に刑法39条が適用される可能性は極めて低いと思うからだ。

「青葉容疑者は精神鑑定で無罪?」と問いかけるまとめサイト

◆妄想性障害の殺人犯も犯行を「元来の性格」のせいにされて死刑

刑法39条では、責任能力(物事の善悪を判断し、それに従って行動する力)がない「心神喪失者」の行為は処罰せず(第1項)、責任能力が著しく減退した「心神耗弱者」の行為は刑を減軽することが定められている(第2項)。だが実際には、日本の刑事裁判で重大事件の犯人が刑法39条により無罪になったり、刑を軽くされたりするハードルは非常に高い印象だ。

たとえば、2013年に山口県周南市の山間部で起きた5人殺害事件。犯人の保見光成は近隣住民5人を木の棒で撲殺し、うち2家族の家に火を放つなどしたとして殺人や放火の罪に問われた。しかし裁判では、無実を訴え、それと共に被害者たちから「嫌がらせ」を受けていたと主張した。

ただ、保見が主張した「嫌がらせ」の被害は、「寝たきりの母のいる部屋に、隣のYさんが勝手に入ってきて、『うんこくさい』と言われました」などという現実味のないものばかり。私は一、二審の審理を傍聴したが、保見は「被害妄想」にとらわれているとしか思えなかった。

事実、精神鑑定を行った医師2人のうち1人は、保見が「妄想性障害」だと結論。もう1人の医師も、保見は思い込みやすい性格を持つ「被害念慮」だと判定していた。これらの鑑定結果を額面通りに受け止めれば、保見は少なくとも「心神耗弱」と認定されてもおかしくないはずだが・・・結果、保見は一審・山口地裁で死刑を宣告され、控訴、上告も棄却され、死刑が確定した。

山口地裁の大寄淳裁判長が保見の完全責任能力を認めたロジックは次のようなものだった。

「被告人の妄想は、犯行動機を形成する過程に影響したとは言えるが、報復をするか、報復をするとしてどのような方法でするかは、被告人が“元来の性格”に基づいて選択したことだ」(一審判決より)

妄想から犯行に及んだとしても、それは被告人の「元来の性格」に基づく選択だというこのロジックを使えば、犯人がどんなに重篤な精神障害者でも完全責任能力を認めることができそうだ。

◆責任能力を判断するのは精神科医ではなく、裁判官や裁判員

私はこの保見以外でも、加古川7人殺害事件(2004年)の藤城康孝、大阪此花区パチンコ店放火殺人事件(2009年)の高見素直、淡路島5人殺害事件(2015年)の平野達彦など、責任能力の有無や程度が争点になった死刑求刑事件の犯人と面会したり、その裁判を傍聴したりしてきた。私には、この誰もが責任能力など到底認められない重篤な精神障害者に思えたし、実際、精神鑑定でもそのような結果が出ていた。しかし結局、誰もが裁判では、保見と同じようなロジックで完全責任能力を認められ、死刑とされたのだ。

では、精神鑑定で責任能力を否定しているように受け取れる結果が出ているのに、なぜ、完全責任能力が認められるのか。それは、精神鑑定を行うのは精神科医だが、裁判で責任能力の有無や程度を判断するのは裁判官と裁判員であるためだ。裁判官や裁判員が「この被告人に相応しい刑罰は死刑しかありえない」と思えば、強引なロジックで責任能力を認めることができるわけである。

◆統計的にも「殺人犯が心神喪失で無罪」は極めてマレ

実際、法務省の犯罪白書を見ても、直近5年に裁判の一審で心神喪失による無罪判決を受けた被告人は、2013年が3人、2014年が6人、2015年が5人、2016年が4人、2017年が6人と毎年ひと桁にとどまっている。新聞報道などで調べたところ、この中に殺人犯は3人いたようだが、うち2人は刑罰が軽くなる傾向がある「家族間殺人」のケースだった。

つまり、家族以外の者を殺害し、心神喪失による無罪判決を受けた殺人犯は直近5年に1人しかいないのだ(ただし、現時点で犯罪白書に掲載されていない事件まで含めると、今年4月、殺人罪に問われた被告人が東京高裁で心神喪失を認められ、無罪判決を受けている)。

報道によると、青葉容疑者は犯行直後、警察官に「小説をパクられた」と語っていたそうで、京アニが自分の小説をパクって作品を制作したという「被害妄想」を抱いている可能性もあるようだ。だが、その程度のことで無罪判決が出るほど、日本の刑事裁判は被告人に甘くない。他方、検察が殺人犯を心神喪失と判断し、不起訴にするケースは少なくないが、検察という組織の性質からして、京アニ事件のような特大級の重大事件でそのような選択をするとは考え難い。

青葉容疑者は火傷が重篤なようだが、無事回復すれば、検察と裁判所、裁判員が死刑にする公算が大きい。

青葉容疑者は、「京都アニメーション大賞」という京アニの小説公募に作品を寄せていたという情報もある

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。「平成監獄面会記」が漫画化された『マンガ「獄中面会物語」』(著・塚原洋一/笠倉出版社)が8月8日発売。

7日発売 月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

8月6日広島平和記念式典に想う「原子力緊急事態宣言」下のこの国の記憶

たとえば動画サイトで政治色の薄い、ジブリの作品のサウンドトラックの感想に「〇〇初めての夏」、「××はあっという間に終わって」など元号が何の躊躇なく書き込まれている。わたしは元号は言うに及ばず天皇制を絶対に容認できないし、嫌悪するから上記○○、××に該当する元号を書くことを遠慮する(この思いは山本太郎氏が新しい政党を作り上げ、そこに現在の元号名を取り入れて以来さらに増している)。

きょうがどんな日かは、あらためてわたしが述べるまでもない。人類史上初めて、米国により非戦闘地域に大量殺戮を企図し原子爆弾が投下された日だ。

その日、夏休みとはいえ、高校生は軍需工場で働かされていた。だからわたしの母親や祖母は広島中心部から幾分離れた場所に疎開をしていたけれども、母の兄、すなわちわたしの伯父たちは広島市内に残っていた。ある伯父は原爆投下時に爆心地から数キロの下宿におり、焼かれても不思議ではなかったが、下宿が崩壊し下敷きになり死ぬことはなかった。

伯父は級友全員が死亡し、彼だけが生き残ったことを数日後に知る。

後に上場企業の副社長の地位にまで昇進しても、伯父は気取ったり威張ったりすることはなかった。元はアルコールに強い体質ではなかったが、商社に勤務し仕事上の付き合いなど、仕方なく我慢したのだろう。

叔父は酔うと無茶苦茶に陽気になる性格に変わっていた。でもそんな伯父が酒の入らないときに「敏夫ちゃん。テンコロ(天皇を揶揄する彼独自の表現)なんかに騙されたら、あかんよ。」

「伯父さんたちは勉強もできずに工場で働かされて、その挙句に原爆落とされて、同じクラスの友達全員死んじゃった。なのにテンコロはクソ偉そうに、いまでも崇め奉られている。国民は馬鹿かと思うね。象徴天皇制なんて、天皇のおかげで殺されかけた、おじさんには到底受け入れられませんよ。あたりまえだろ?」

「この間も丸の内のあたりに警察官がたくさんいて、交差点が渡れない。『どうしたの』って警察に聞いたら『天皇陛下のお出ましです』っていうから、伯父さん、警察無視して、堂々と交差点渡ってやったわ。なにが『天皇陛下』だ! どの面下げて未だに生きてるんだ! あいつは!」

繰り返すが、伯父は政治的には決していわゆる「革新」志向の人間ではなかった。全く左翼でもなかった。「労組が無茶な要求を出すから腹立つんよ!」と愚痴を聞いた記憶もある。

でも「なにが『天皇陛下』だ! どの面下げて未だに生きてるんだ! あいつは!」を昭和天皇が死ぬ前に何回聞かされただろう。商社マンとして、武器輸出三原則に違反して台湾や韓国に武器部品の一部を売ったことがある、とこっそり教えてくれた叔父。

「それ日本の国策違反じゃないですか?」と若かったわたしが真顔で抗議すると「敏夫ちゃん。世の中には『表と裏』があるんだよ。武器部品は儲かるの!」とニッタり笑いながら小さい声で、わかったような、わからないような理屈を並べてもくれた。

「伯父さんは原爆にあって、天皇許せないけど、戦争は平気なの?」と聞くと「戦争は絶対反対だよ。でも戦争をしないための武器(たぶん冷戦時代だったのでそのことを意味していたのだろう)もあるからね。テンコロは許さないよ! 絶対!」

その伯父が逝って何年になるだろう。このようにわたしの個人的な体験や、見聞きしたことを綴ったところで「原爆」の恐ろしさと、犯罪性の伝承にはほとんど力などないだろうと本心では感じている。

毎回安倍の出席により汚される「広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」(広島平和記念式典)。選別され「危なくない」発言をする人だけが許される、遺族のスピーチ。そして70何回を超えて、はっきり言えば「恒例行事化」してしまっている締まりのない8月6日。福島第一原発では相変わらず「原子力緊急事態宣言」が出されている中、あなたはきょうなにを考え、なにをなさるのだろう。

※注釈:本文中の「テンコロ」との表記につき、読者の方から「差別的表現ではないか」とのご指摘を頂きました。本文中でも述べておりますが、「テンコロ」が差別に当たるかどうかはよくわかりません。少なくともわたしの伯父は、韓国、台湾での駐在も長く(中国語、韓国語が流暢でした)、アジアに対する差別感覚はまったく持ち合わせていませんでした。機械専門商社の副社長に就任し、次期社長が確実視されていた中、50過ぎで膵臓癌を発症し2か月で亡くなってしまいました。
 戦中・戦後中国の方を見下す「チャンコロ」との侮蔑表現がありました。「チャンコロ」の語感が伯父の頭の中にあったのか、なかったのかはわかりませんが、伯父の性格からすれば、おそらく「チャンコロ」とは無関係に自分で「テンコロ」と命名したのではないかと思います(とはいえそのような事情であっても差別表現は批判の対象になることは承知しております)。
 以上ご指摘を頂きましたのでわたしの見解を付言させていただきます。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

7日発売 月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)
創刊5周年〈原発なき社会〉を目指して 『NO NUKES voice』20号【総力特集】福島原発訴訟 新たな闘いへ

政権を倒すのが目的なら、このまま泥沼化するぞ 出口なき経済戦争がもたらす、日韓両国民の疲弊

ついに安倍政権が、韓国に経済戦争を宣言した。韓国の「ホワイト国待遇」が解除され、輸出規制(手続きの厳格化)が本格化したのだ。

文在寅(ムンジェイン)大統領は2日午後、臨時の閣僚会議を開き、安倍政権の措置にたいして「とても無謀な決定であり、深い遺憾を表明する」「今後起こる事態の責任は全面的に日本政府にあることをはっきり警告する」と語った。今後の対応についても言及し「相応する措置を断固としてとる。日本は経済強国だが、対抗できる手段は持っている」と訴えた。

また「加害者である日本が、盗っ人たけだけしく、むしろ大きな声で騒ぐ状況は絶対に座視しない」と強い言葉で非難したという(朝日新聞社)。WTOへの新たな提訴も表明し、日韓の軍事情報を凍結するとの報道もある。韓国からの軍事情報がなくなれば、北朝鮮のミサイル情報も入らなくなる。国民は無防備のまま、北のミサイルの脅威に晒されることになる。安倍総理はそこまで覚悟しているのだろうか?


◎[参考動画]韓国「経済戦争への宣戦布告だ」ホワイト国除外に(ANNnewsCH 2019/8/2公開)

◆見え見えの報復措置

日本政府は相変わらず「韓国の貿易手続きに問題があるのであって、徴用工問題への報復ではない」(菅官房長官)としているが、そうであるならば徴用工問題に関する韓国司法の決定を「尊重する」との表明がなければおかしい。事実はそうではなく、河野外相が「(徴用工問題に対する)韓国の対応がすべてだ」(2日ASEAN外相会議後の談話)と語っているのだ。

街頭でも反日の抗議運動が大きくなっている。ソウルの日本大使館前では2日、除外決定に抗議するデモが行われ、参加者からは「経済的侵略だ」と日本を非難する声が上がった。非政府組織(NGO)「韓国進歩連帯(KAPM)」のパク・ソクウン会長はホワイト国除外への抗議について、日本に対する「韓国の第二次独立運動」へと発展していると述べた。日本製品の不買運動、日系店舗のボイコットは言うまでもない。抗議運動が単なる「反日」ではなく、反安倍運動になっているところに、このかんの特徴がある。

この第二次独立運動が韓国経済の強化につながり、日本経済も新たな省力化や製品の向上につながればよいが、かならずしもそうではない。民間交流と観光産業に軋みが生じている。


◎[参考動画]【報ステ】“ホワイト国”除外 韓国が対抗措置明言(ANNnewsCH 2019/8/3公開)

◆観光業への打撃

日本国内では、すでに航空便の無期限運航中止が相次ぎ、中高生などの民間外交も道をふさがれてしまっているのだ。学校・教育現場では「大人の政治の都合で、韓国の人々との交流が中止になるのは残念だ」という声がひろがっているという。対馬での祭りに毎年参加していた朝鮮通信使の船は、今回の経済摩擦のあおりをうけて渡航中止となった。人口3万人の島に、数十万人の韓国人観光客が訪れていたものが、今年は数千人レベルしか見込めないという。よってもって、対馬の宿泊施設や土産物屋は、数百億円の損害が見込まれているというのだ。

政治家の好戦的な「経済戦争」の結果、泣きをみるのは庶民である。政治家(安倍晋三)のいら立ちが経済戦争を勃発させ、日本国民の経済生活に打撃をあたえている格好だ。そもそも安倍政権の経済再生策は、年間3千万人来日観光客という観光立国がその柱ではなかったのか?

◆戦争をやりたいのか? 政権を倒すのが目的なのか?

そして問題なのは、外交交渉の見通しのなさである。今回の輸出手続きの厳格化(経済制裁)は、安全保障上の安全の確保を口実にしているので、外交交渉の余地や落としどころがない。行くところまで行く、つまり韓国文政権が音を上げるまで「粛々とすすめ」られて、終わらないのだ。

「文政権が音を上げる」とは、文政権が倒れるという意味である。なぜならば、韓国の大統領制度は「内乱・外患」によらないかぎり、逮捕されることも訴追されることもない、絶対的な大統領特権を持っているからだ。そして任期3年を残している文政権が倒れるということは、何らかの要因で「内乱・外患」が生じることになる。すなわちクーデターか革命、外国の侵略が起きるということにほかならない。いまの安倍政権に、そんな準備があるのだろうか?

父親が日本の陸士卒で満州国陸軍将校(朴正煕)だった、親日派の朴槿恵政権が相手ですら、安倍総理は満足に外交関係を築けなかったのである(首脳会談は開かれず)。いまのところ、日本政府が韓国に友好的な政治勢力を持っているとは思えない。戦争をする度胸(やったら大変なことだが)があるとも思えない。

臨時国会も開幕したことである。安倍政権は戦争(文政権打倒)をしたいのか、それとも何の目論見もなく無謀な経済戦争に踏み切ったのか、いまこそ国民の前に明らかにすべきである。


◎[参考動画]韓国の「ホワイト国」除外 麻生大臣の反応(ノーカット)(テレ東NEWS 2019/8/2公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

安倍晋三までの62人を全網羅!! 総理大臣を知れば日本がわかる!!『歴代内閣総理大臣のお仕事 政権掌握と失墜の97代150年のダイナミズム』
創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』8月号

飯村誓に続く試練! NJKF若武者会主催DUEL.19

新人の域を越え、日本ランカーを倒すまでの出世は早くても、ムエタイの壁には撥ね返される選手は多い。今年、飯村誓はタイ選手に2連敗して更に今回、タイでの戦歴が多い儀部快斗と対戦。

◎DUEL.19 7月21日(日)大森ゴールドジム17:15~19:35
主催:NJKF若武者会 / 認定:NJKF

◆第9試合 メインイベント スーパーフライ級3回戦

誓の前蹴りをキャッチする儀部快斗

NJKFフライ級2位.誓(=飯村誓/ZERO/51.8kg)
   VS
儀部快斗(エクシンディコンJapan/51.75kg)
勝者:儀部快斗 / 判定0-3 / 主審:竹村光一
副審:少白竜28-30. 宮本28-30. 君塚29-30

初回のパンチとローキックの様子見から、誓の打つタイミングを見計らって儀部快斗が蹴るタイミングなどリズムを作っていく。

第2ラウンドには儀部快斗がヒジ打ちで誓の右目尻を小さくカットさせ、誓にやや心理的に影響あるかに見えたが、誓はアグレッシブに攻めるも、儀部快斗が主導権を握った展開は変わらず、的確さで優った判定勝利。

儀部快斗の右ハイキックと誓のローキックが交錯
しぶとさではマリモーが上、パントリーが攻め倦む

◆第8試合 セミファイナル スーパーライト級3回戦

NJKFスーパーライト級5位.マリモー(キング/63.4kg)
   VS
NKBライト級5位.パントリー杉並(杉並/62.75kg) 
勝者:パントリー杉並 / 判定0-3 / 主審:中山宏美
副審:少白竜28-29. 宮本29-30. 竹村29-30

パンチとローキックのアグレッシブなパントリー杉並の攻勢も、しぶといマリモーの打たれ強さと返し技のローキックがしつこい。

第2ラウンドにはマリモーがヒジ打ちをヒットさせ、パントリー杉並の右目尻を小さくカットしたが、影響はほぼ無さそうで攻防は激しくなり、パントリー杉並の連打で出る勢いは衰えず、僅差ながら判定勝利。

パントリー杉並の連打でマリモーを圧倒
パントリー杉並がアウェイで勝利

◆第7試合 68.0kg契約3回戦

NJKFウェルター級3位.JUN DA雷音(E.S.G/67.35kg)vs渡邊知久(Bombo freely/67.6kg)
勝者:JUN DA雷音 / 判定3-0 / 主審:君塚明
副審:少白竜30-29. 中山30-29. 竹村30-29

◆第6試合 フェザー級3回戦

NJKFフェザー級7位.小田武司(拳之会/56.75kg)vs?太朗(DTS/57.1kg)
勝者:小田武司 / 判定3-0 / 主審:宮本和俊
副審:君塚30-29. 中山30-28. 竹村29-28

◆第5試合 フライ級3回戦(2分制)

EIJI(E.S.G/50.8kg)vsRISING力(己道会/50.6kg)
勝者:RISING力 / 判定0-3 / 主審:少白竜
副審:君塚28-30. 中山29-30. 宮本28-30

◆第4試合 58.5kg契約3回戦(2分制)

上田祐也(E.S.G/58.45kg)vs田中崚(VALLELY/58.05kg)
勝者:上田祐也 / TKO 3R 0:45 / 主審:竹村光一

互いの左ストレートの相打ち気味に、上田がクリーンヒットさせ、田中を一発で沈めレフェリーがストップした。田中崚は暫く立ち上がれないダメージで、一瞬で終わる怖さの試合だった。

上田祐也と田中崚のパンチが交錯した瞬間
倒された田中崚は暫く動けなかった

◆第3試合 女子キック(ミネルヴァ)スーパーバンタム級3回戦(2分制)

菅原麻子(トイカツ/55.1kg)vsKAEDE(LEGEND/55.05kg)
勝者:KAEDE / 判定0-3 / 主審:中山宏美
副審:竹村28-30. 少白竜27-30. 宮本27-30

◆第2試合 女子キック(ミネルヴァ)45.0kg契約3回戦(2分制) 

ピーポー梨乃(STRIFE/44.1kg)vs七瀬千鶴(138KICKBOXING/44.95kg)
勝者:七瀬千鶴 / TKO 1R 0:28 / 主審:君塚明

七瀬の左ミドルキックで苦痛の表情を浮かべた梨乃はしゃがみ込むとそのままレフェリーストップされた。

七瀬千鶴の左ミドルキックがピーポー梨乃のボディーにヒット

◆第1試合 女子キック(ミネルヴァ)アトム級3回戦(2分制)

亜美(OGUNI/46.0kg)vs愛裟(PON/45.5kg)
勝者:亜美 / 判定3-0 / 主審:宮本和俊
副審:竹村30-28. 君塚30-28. 中山30-27

儀部快斗もアウェイで判定勝利

《取材戦記》

この日、都内でビッグイベント興行が重なる中、単にいちばんお付き合いの縁が深いだけのNJKF若武者会主催のDUELプロ興行に訪れました。

しかし、16時30分開始予定のプロ興行が45分遅れの17時15分開始。アマチュア試合が朝10時開始で108試合あったようで、タイムスケジュールの組み方に最初から無理があるように感じられました。

先月の松谷桐vs仲山大雅戦同様に、年齢的に高校生vs大学生の構図となる誓vs儀部快斗戦。歳の差は3歳差でも18歳と21歳では大きな人生経験の差があるように感じられました。

その儀部快斗は、5月12日の石川直樹にヒザ蹴りの猛攻で敗れた試合から復活。飯村誓にとってはすぐ先の目標となるNJKF王座は、今年18歳となる者同士の松谷桐がNJKFフライ級チャンピオンである以上、挑戦する日までこれ以上の連敗は避けたいところ。“誓”が正式リングネームですが、文中、意味を間違いやすいので本名で載せています。

パントリー杉並は、ホームリングとなる日本キック連盟興行でもパンチ主体のアグレッシブな試合で、徐々にランクを上げていた。マリモーは華やかさは無いがシブとく打たれ強い。こんなタイプは昔にも居たなあと思う二人の戦いだった。

リングネームの由来をいつか聞こうと思っていたが、この日の試合を前にNJKFの公開インタビューで、「“パントリー”はお笑いの養成所に通っていた頃のコンビ名」と発表されていた。昨年はKOによる連敗があり、トップクラスに躍り出ることはなかなか難しいが、打たれないこと重視して今後の上位挑戦に期待したい。

マリモーのリングネームは“何となく”付けたそうだが、これはキングジムの向山鉄也会長の仕業っぽい気がする。変なリングネームいっぱい付けてきた人だから。今度改めて聞いておきましょう。

NJKF次回興行は9月23日(月・祝)に後楽園ホールで「NJKF 2019.3rd」が開催されます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』8月号
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

悪名は無名に勝る、立花孝志N国代表の政治戦略 シングルイッシューに絞った選挙必勝の手法

NHKから国民を守る党HP

立花孝志(NHKから国民を守る党)は、具体的なことを言う。たとえば消費税廃止を訴えても、できる可能性が低いならスローガンには掲げない。そこで、NHKの受信料徴収に反発する層に、まず具体的に訴える。

地方選挙で「NHKから国民を守る党」のチラシを見た方はわかると思うが、NHK撃退シールやNHK受信料徴収員の撃退法、NHKからの被害相談に乗るという、具体的なものなのだ。ここに参院選挙で議席を得た選挙手法がある。誰がやっても変わらない政治のなかで、変えてくれる可能性がある。

NHK受信料を強制されたくない、NHKの放送内容に不満がある。これを具体的にやってくれるのがN国党であり、立花孝志代表というわけだ。26人の地方議員(2019年統一地方選挙)を擁し、いままた立花代表が参議院議員となり、得票率2%をこえる政党となった。

◆数は力である

ところで、そのNHKをぶっ壊せというシングルイッシューを掲げたN国党が、北方諸島視察時の問題発言で国会の球団決議を受けたで丸山穂高議員を入党させ、さらには渡辺喜美議員と会派(みんなの党)を結成した。これで政党交付金および会派の議員にたいする手当の合計3000万円(年)が手に入ることになったのだ。同時に会派としての発言権を確保したのである。


◎[参考動画]【報ステ】N国党・立花代表『みんなの党』結成へ(ANNnewsCH 2019/07/30公開)

なんという鮮やかな政治手法であろうか。政治的な見解を異にする政治家との会派結成、国会から「もう二度と来るな」と糾弾決議された議員の勧誘(入党)と、世間から批判を浴びるのは承知の上で、見事な手腕で公党としての地歩を確保したのだ。

丸山議員と渡辺議員だけではない。秘書への暴言・暴行(数百発殴打?)と外国人女性に買春もちかけた石崎徹衆院議員(新潟県連が除名・離党勧告など、きびしい処分を自民党本部に申し入れている)にも入党を呼びかけているのだ。石崎議員の反応が注目されるところだが、消息筋ではN国党に入党する可能性が高いという。そのほかにも、10人前後の無所属議員、自民党議員が入党勧誘の対象だという。たとえば、民主党系から飛び出して希望の党に合流しようとして党の立ち上げに失敗し、自民党二階派に所属する細野豪志議員なども、対象にふくまれているという。

一見して、処分されたり行き場がなかったり、あるいはみずから立ち上げた党が崩壊して、尾っぽ打ち枯らした感のある政治家ばかりだ。そして会派の代表となる渡辺氏が「NHK改革は考えていない」(会派結成の記者会見での発言)とか、丸山議員が「NHK受信料未払は法律違反」(過去のSNS発信)と、N国党のいわば立党の精神に反する立場にもかかわらず、政党会派が結成されるという本末転倒の内容なのである。

ふつうなら「何じゃ、この会派は?」である。数は力、数合わせのためなら、政治理念や内容は問わないとする、有権者(N国党への投票者)置き去りの暴走なのである。しかし、である。このとんでもない会派づくりは、おそらく立花代表の計算通りなのであろう。


◎[参考動画]「N国」なぜ“ワケあり”議員を? 政治部記者が解説(ANNnewsCH 2019/7/29公開)

◆計算済みのメディア露出

このなりふり構わない多数派形成に、驚嘆してみせるメディアの取り上げ方。政治理念と有権者置き去りの批判もまた、織り込み済みであるかのように立花代表はテレビ画面に、笑み満面でその巨体を登場させ、あるいはYoutubeでアピールする。選挙中のYoutube閲覧回数は、自民党の広告閲覧回数を大きく上まわったという。

ようするに、目立つことを目的にしてきたやり方を、いままさに本格化しているのだ。もはや、観ているほうがあきれ果てて「喝采」を送るしかない。何よりも、傍若無人な人が多い政治家のなかで、立花氏は人当たりが良いという(元NHKアナで、TBS系キャスターの堀尾正明氏による評価)。たしかに、その言動や立ち居振る舞いは、観ていて好印象すら感じてしまう。とんでもないこと、つまり政治理念なき議会党(会派)づくりにもかかわらず、なんとなく興味をもってしまうのだ。


◎[参考動画]N国・立花代表ノリノリ「契約するけど払わない!」(ANNnewsCH 2019/7/31公開)

◆その戦略と理念

大都市圏のベッドタウンを中心に地方議員を立候補させた戦略は、奇しくも過去の「みんなの党」の戦略をなぞったものだと、立花代表みずから認めている。大都市圏の浮動票層、すなわち近所づきあいの少ないマンションや大規模団地の住民である。

たとえば自民党の基礎組織は、町会や自治会に地元議員が参加することで成立している。町会とかさなる神輿会、盆踊り、子供会、神社の崇敬会などである。民主党系が労働組合や市民運動、あるいは生協に依拠しているのに対して、過去のみんなの党や現在の維新の会などは、これら自民党や民主党系の組織に属さない、大都市の無党派層をつかむことで伸長してきた。この大都市型の選挙構造を、立花代表は過去の選挙事例から学んでいたことになる。都市個人主義者をつかんだ、といえるのかもしれない。

そのいっぽうで、N国党は今年の4月から5月にかけて、まさに統一地方選挙のさなかに5人の議員を除名処分にしている。参院選挙の運動資金として課せられた130万円を払わなかったのも理由だが、除名した議員たちが「NHKは朝鮮人や帰化人に支配されているので、偏向報道がなされている」などと主張していたからだという。

これをみるかぎり、ネトウヨ系議員の排除という、有権者の動向を考慮した党運営であることがわかる。じつはN国党からの出馬者には、あきらかに左派・リベラル派と思われる人たちもふくまれていた。寄せ集めとはいえ、数は力という政治の論理を知っている立花孝志代表のN国党から目が離せない。


◎[参考動画]正しいNHK受信料の不払い方法を国会議員が解説します。(立花孝志2019/7/30公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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報道によって別人のように変わる相模原殺傷事件・植松聖被告

19人の入所者が殺害された相模原市の知的障害者施設殺傷事件が先月26日、発生から3年を迎え、報道各社が横浜拘置支所に勾留中の犯人・植松聖被告(29)に面会したことを相次いで報じた。各社の記事を読み比べると、大変興味深いことがあった。

◆大学教授が面会した植松被告は、筆者が知る植松被告とは別人

私は2017年から2018年にかけて、植松聖被告と面会や手紙のやりとりを重ね、今年初めに上梓した「平成監獄面会記」(笠倉出版社)という本でも、実際に会ったからわかった植松被告の実像を紹介している。そんな私にとって、とくに興味深かったのは、弁護士ドットコムニュースの以下の記事だ。

「植松君には人間の心が数パーセントある」相模原殺傷から3年、佐々木教授が面会を振り返る(弁護士ドットコムニュース)

犯行後、ツイッターに投稿していた植松被告

この記事に登場する静岡県立大学短期大学部の佐々木隆志教授(社会福祉学)は、自分自身が障害者の父親だそうだが、植松被告とは5回面会しているという。佐々木教授によると、面会した際、植松被告は19人を殺害した理由について、「とにかく目立ちたかったんですよ、先生」と答えたという。また、「もし、糞尿を散らすお父さんがいて、徘徊するお母さんがいたとしたら、植松くんはデリートするのか」と聞くと、植松被告からの答えはなかったそうだ。

この記事が興味深かったのは、佐々木教授が語る植松被告の人物像は、私が知る植松被告とはまったく別人のようであることだ。私が面会した際、植松被告は自分の犯行を正義だと信じて疑わず、「心失者(植松被告は、意思の疎通がとれない重篤な障害者のことをこう呼ぶ)は安楽死させるべきです」と自信満々に言っていたからだ。

また、私が手紙で、「両親や親戚、恋人、友人などが心失者になった場合も安楽死を望むのか」と質問した際も、植松被告から届いた返事の手紙には、きっぱりこう綴られていた。

〈両親、恋人、友人が「心失者」になれば、もちろん悲しいですが、仕方がないこと、受け入れなくてはならない現実と考えます〉

おそらく植松被告は、障害者の息子がいる佐々木教授に対しては、私と面会した時ほどには「心失者は安楽死させるべき」という意見を強く言えなかったのだろう。

◆死刑判決に対し、弱気な一面をのぞかせたそうだが・・・

一方、死刑に関する植松被告の発言として、興味深い情報を伝えていたのが時事通信の以下の記事だ。

自分は責任能力ある=「死刑」直視できず-植松被告・障害者施設襲撃3年(時事ドットコムニュース)

この記事によると、植松被告は死刑判決を言い渡される可能性については「それは仕方がない」とうなずいたという。ただ、記者が「事件前に考えが及んだのか」とただすと、「後回しにしてしまった。今も後回しにしている」と弱気な一面をのぞかせたそうだ。

この記事が興味深く思えた理由も、記事に出てくる植松被告が、私が知る植松被告とまったく別人のようであることだ。私が面会した際には、植松被告は自分の犯行について、「自分の生命を犠牲にしてでも、やらないといけないことだと思ったんです」と力強く言っており、死刑は犯行前から覚悟していたとしか思えなかった。植松被告は時事通信の記者と面会した際、そのように強く言い切れない何らかの事情があったのだろう。

◆筆者のイメージそのままの植松被告が出てきた記事も

私が面会した時とまったく同じイメージの植松被告が登場する記事もあった。神奈川新聞の以下の記事だ。

揺らがぬ独善今なお 植松被告「責任能力ある」(カナロコ)

この記事では、植松被告は事件からの3年間を振り返り、「あっという間。非常に有意義だった」と説明。「意思疎通がとれない“心失者”は安楽死するべきという考えや知識を深められた」と満足げにうなずいたという。また、死刑判決が出たらどうするかとの問いには「受け入れるしかない。死にたくないが、僕が死ななければ社会が丸く収まらないのでは」と自嘲気味に語ったそうだ。

この記事での植松被告は、自分の犯行を正義と信じて疑っておらず、死刑についてもあらかじめ覚悟のうえで犯行に及んだように語っている。私が知る植松被告そのままなので、私はこの記事を読みながら、植松被告の口調や目つきなどもリアルにイメージできた。

こうしてみると、同じ1人の殺人犯と面会しても、その殺人犯から聞ける話や受ける印象は取材者によって様々だ。これが、事実を見極める難しさであり、面白さなのだろう。

植松が収容されている横浜拘置支所

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。「平成監獄面会記」が漫画化された『マンガ「獄中面会物語」』(著・塚原洋一/笠倉出版社)が8月8日発売。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

自民党・魔の三回生ふたたび 政治家の劣化を生んだものとポピュリズムの到来

◆秘書暴行と外国人女性に買春もちかけた石崎徹衆院議員の除名・離党勧告

自民党新潟県連が石崎徹衆院議員の除名・離党勧告など、きびしい処分を自民党本部に申し入れた(7月25日)。参院選挙の直前に、元秘書にたいする「バカ」「死ね」などの暴言が明らかにされ、さらには英語のレッスンで知り合った東欧出身の女性に買春を持ちかけたことが暴露されたからだ。

その結果、新潟選挙区では塚田一郎議員が落選する結果となっている。塚田一郎といえば、下関と九州をむすぶ海洋道路建設での「忖度」で自分の首を絞めた格好だが、秘書暴行事件と外国人女性への買春持ちかけ疑惑は衝撃的で、県連の行動にもうなずけるものがある。この石崎議員、魔の三回生である。


◎[参考動画]自民“魔の3回生”にまた・・・石崎議員にパワハラ疑惑(ANNnewsCH 2019/7/23公開)

一期目で国会と政治について真摯にまなび、二回生で政治家生活に慣れてくる。そして三回生になると、政治家という立場におごり何でもできると思い込んでしまう。つまり「本性」を顕してしまう、危険な季節なのだ。

ところで、この石崎クン。NHKから国民を守る会の立花孝志代表から「わが会派へ」と誘いをうけている。北方領土視察で「北方諸島は戦争で奪い返すという選択肢」や「夜の街に出て、女のオッパイを揉みたい」なる発言で離党せざるをえなかった丸山穂高クンもまた、立花代表の秋波を受けている。こちらはすぐにでも合流しそうな雰囲気だ。丸山議員もまた、魔の三回生なのである。


◎[参考動画]N国・立花代表「多数派工作をしたい」(テレ東NEWS 2019/7/25公開)

過去にもこんな人たちがいた。いずれも自民党議員だ。

◆務台俊介「長靴業界はだいぶ儲かったんじゃないか」

職員におんぶされるニュースが記憶に残る人だ。2016年に台風被害を受けた岩手県岩泉町を視察したとき、長靴を準備してこなかったので、職員におんぶさせて水たまりを渡ったシーンである。しかもこのとき、カメラに「撮るな」と釘をさしていたという。

革靴でそのままジャブジャブと歩いていたら、やや残念とはいえ勇敢な復興政務官として記憶に残ったはずなのに、あまりにも恥ずかしいシーンを記録されてしまった。後日、政治資金パーティーで「長靴業界はだいぶ儲かったんじゃないか」などと発言して炎上、内閣府政務官の職を辞した。あまりにも恥ずかしい、本人にとっては消してしまいたい記憶にちがいない。


◎[参考動画]「長靴業界もうかった」発言 務台政務官が辞表(ANNnewsCH 2017/3/10公開)

◆大西英男「まず自分が子供を産まないとダメだぞ」

上西小百合議員の質問中に「まず自分が子供を産まないとダメだぞ」と発言。自民党の勉強会で「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番だ。文化人や民間人が不買運動をつうじて、日本を危うくするマスコミはとんでもないと経団連などにはたらきかけて欲しい」

巫女さんに「自民党はあまり好きじゃない」と言われて、「おい、巫女さんのくせになんだ」と思ったと発言。

自党の三原じゅん子議員が、ガン患者の立場の向上や権利について議論しようとすると「ガン患者は働かなければいいんだよ」と発言。けっきょく、都連の副会長を辞任することになった。この人の場合は、ひたすら言葉に慎みがないというほかない。


◎[参考動画]セクハラやじ被害の上西議員会見 自民議員が電話で謝罪(Kyodo 2014/7/4公開)

◆穴見陽一「異物混入は珍しくない」

2015年にファーストフード店などの異物混入の続発をめぐり「異物混入は珍しくない」と発言。穴見はファミリーレストラン運営会社の代表であり、このトンデモ発言は業界を擁護するものと、はげしく批判をあびた。

2018年の衆院厚生労働委員会で、肺ガン患者の代表が参考人として受動喫煙について意見を述べていたところ「いい加減にしろ!」とヤジをとばす。参考人は喫煙にともなう受動喫煙の被害を述べていたものだが、これを喫煙者にたいする批判に受けとめてしまったのだ。穴見はヘビースモーカーで、愛煙議員連盟「もくもく会」の会員である。けっきょく、公益法人大分がん研究振興財団に対し、問題の責任を取る形で理事辞任の届け出を提出した。

愛煙家に苦言をすることになるかもしれないが、喫煙が肺気腫・肺ガン・喉頭ガンのリスクになることは、疫学的にも医学的にも認められている。そして喫煙の中毒性についても、医療として禁煙療法が行われている。つまり喫煙は「病気」なのである。飲食店での禁煙が条例化されるなか、選挙公報において喫煙の有無が記載されるべき時代が来たのかもしれない。


◎[参考動画]小泉進次郎 街頭演説 自民党公認大分一区 穴見陽一 (jimin anami 2017/10/17公開)

◆田畑 毅 フェイスブックをつうじて知り合った女性に乱暴

2018年、フェイスブックをつうじて知り合った女性と交際をはじめ、名古屋市内でいっしょに飲食したあと、女性の自宅で避妊具なしで乱暴(つまり強かん)。さらに裸の画像をスマホに保存。被害を訴える女性に示談を申し入れるも、準強制性交の告訴状を愛知県警に提出される。自民党内でも「けっして許される行為ではない」と問題にされたが、田畑は離党したものの議員辞職には抵抗。けっきょく、辞職後に愛知県警に書類送検された。ようするに性犯罪者である。弁解の余地なし。


◎[参考動画]田畑毅衆院議員が辞職願を提出 女性問題で自民離党(ANNnewsCH 2019/2/27公開)

ここ数年、選挙の投票率が60%を下回るようになり、ついに今回の参院選挙では50%を割った。政治への不審感、あるいは誰がやっても同じという政治離れが加速している。犯罪者でも政治家になれる、いや政治家も犯罪者なのだから、選挙などしても虚しいと感じているのかもしれない。それがまた、民主主義の劣化を加速させているのだ。政治家の劣化を象徴する「三回生」なる言葉だが、まだ記憶に新しい二回生も付録にしておこう。

◆宮崎謙介 「育休」不倫

2016年、金子恵美議員が出産(切迫早産)のため、緊急入院していた1月30日から31日にかけて、宮崎が自身の選挙区にある京都市伏見区内の自宅マンションに女性タレントを招き入れ、ともに宿泊したと週刊文春が報じた。問題の日、宮崎は京都市長選挙の応援のために京都市内を訪れ、女性タレントも伏見稲荷大社など京都市を訪れていた。女性タレントは一泊した後に帰京した。

女性タレントは1月4日にも衆議院第一議員会館を訪れており、同日行われた自由民主党の新年会において和装で登場した宮崎の着付けを担当した。新年会には妻の金子も出席していたという。その後、宮崎は不倫で辞職した最初の衆議院議員となる。ちなみに、宮崎の前の妻は加藤鮎子議員(山形)で、こちらの離婚事由も宮崎の女性関係(不倫)だった。


◎[参考動画]予想以上の冷たい反応・・・自民党議員「育休」宣言(ANNnewsCH 2015/12/24公開)


◎[参考動画]不倫疑惑の「育休」宮崎議員 釈明会見1(ANNnewsCH 2016/2/12公開)

◆豊田真由子 「このハゲー!」「ボケー!」

「このハゲー!」「ボケー!」「真由子さまの言うことがきけないのかぁ!」である。議員辞職後、再出馬するも落選したのは周知のとおり。


◎[参考動画]豊田真由子の暴言まとめ(Amaterras 2017/6/23公開)


◎[参考動画]豊田真由子 笑顔と耳鳴りと質問にキレる謝罪会見(tatsu ryuryu2017/9/19公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

安倍晋三までの62人を全網羅!! 総理大臣を知れば日本がわかる!!『歴代内閣総理大臣のお仕事 政権掌握と失墜の97代150年のダイナミズム』
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「思いよ とどけ!」と闘ってきた3年間 ── ハンセン病家族訴訟原告団副団長の黄光男(ファン グァンナム)さんに聞く【後編】(聞き手=尾崎美代子)

6月28日熊本地裁で勝訴判決が下されたハンセン病元患者家族訴訟は、7月9日安倍首相が控訴を断念したことで、患者の家族も差別で多大な被害を受けてきたとの判決が決定した。今回お話を伺った黄光男さん(ハンセン病元家族訴訟原告団副団長)は当初、「自分に被害はない」と原告になることを最初断ったという。しかし長く切り離された故、家族関係をうまく築けず、母の亡骸に涙一粒出せなかったことは、黄さんの一番の「人生被害」ではなかったか。[※インタビューは7月14日、大阪市西成区集い処はなで行われたものです。]

7月14日、政府の控訴断念で勝訴が確定した2日後、黄光男さんは筆者のお店「集い処はな」でミニライブ&お話会を行ってくれた

── 尼崎工業高校時代からの友人でドランカーズのメンバーである孫敏男さんが裁判を傍聴し、国に怒鳴りつけるように証言した黄さんを見て、「その瞬間、僕は黄さんは変わったと思った」と話してましたが?

黄  弁護士に質問されたあと、最後に「国に言いたいことはありますか?」と聞かれてね。僕は国側のほうを向き直し、「国は、元患者の家族に差別はないといっていたが、どこを見て言っているのか? あなた、もう反対する理由がないから、東京に帰ったらすぐ厚労大臣に『もう裁判を終わらせてと言って下さい』と言いました。大声を出しすぎて裁判長に注意されました(笑)。

── 判決前夜の集会で黄さんは「親のことはしゃべらないまま死のうと思ってきた。それをこんなに公然と法廷の場でしゃべり切った。その自分の勇気、その勇気はその原告1人1人の心の豊かさにつながったのではないかと思う」と発言していますが、黄さんの中でどのような心境の変化があったとお考えですか?

黄  僕だけじゃなくて、原告になった569人、全員が豊かさを感じたと思う。変な言い方だが、裁判が楽しかった。本当に「やってよかった」と言う裁判でした。記者会見は顔を出せる人しか出なかったが、その後の懇親会は原告と弁護士だけですから、みんな本当に楽しそうだった。それまでは不安もあったが、それを一気に吹き飛ばすみたいなね。

── 勝訴した当日の黄さんは「台無しにされた人生、こんなお金で何が変わるか」とコメントしてます。1人33万~143万、確かに金では解決しませんが、それにしても安い気もします。

控訴断念の要請行動で歌う黄光男さん

黄  そうですね。実は親と断絶してなかった、頻繁に会えていた、という理由で33万しか支払われない原告の方が圧倒的に多い。あと沖縄の原告の方は、日本に返還された1972年前の補償は認められなかった。今後一律の補償を要求していく必要があります。

── 次は国側が控訴するかが焦点となって、原告団、弁護団、支援者らは東京に集まり,控訴断念の要請活動をされてきたのですね? どんな活動でしたか?

黄  じつは6月28日に判決が出るまでに、すでに要請行動をやっているんです。3月と5月に週に1回、原告団、支援者らが11か12のグループに分かれて国会に行き各議員を回る。連絡してたのもあるが、突然ピンポンと行ったのもある。あの場面は凄かった。

── 「良い判決を」と言う要請ですか?

黄  いや、勝つと言うことを前提に、「控訴しないように」と言う要請行動ね。

── 黄さんからのメールに「東京に要請行動に行くが、控訴断念は必ずする」と書いてあり、その自信はどこから来るのか、と思っていましたが。

家族の思いが書かれた短冊の写真

黄  3、5月の国会議員周りが非常に効いていると思っていたから。自民党の森山議員がハンセン病の議員懇談会を超党派でつくり、全ての党に声をかけてくれていた。議員の皆さんも「この問題はきちんとしなくてはならない」と、その反応が凄かった。すでにあの当時「控訴できない」と言う外堀は埋められていた感じでした。で、勝訴判決が出たあとは、今度は「控訴させない」と言う感じで議員の部屋を回りましたが、そこでも皆さん、一致していました。自民党含めですよ。

── じゃ、安倍の「極めて異例」は何だったのでしょうね?

黄  安倍は控訴したかったのでしょう。でも出来なかったと言うことじゃないかな?

── で、あの「政府声明」を出したのでしょうかね? 悔しくて。

黄  そうだね。

家族の思いが書かれた短冊の写真

── 安倍首相の「控訴断念」の発表を受け、午後から原告らの記者会見がありました。そこで黄さんは「安倍の控訴断念の言葉に違和感がある。書面を見ても、なぜ断念したか、明確なことばがない」と発言されていましたが。

黄  うーん、僕は安倍の会見は見てないけどね。でも書面ということは判決文を見てたのかな? ただ今回の安倍の「控訴断念」は抜き打ちですよね。2011年の時とは違う。2011年のときは、小泉首相が原告と直接あって話を聞いて控訴を断念している。

── そうですね。2001年の控訴断念までの経緯をみると、当時の坂口厚労大臣が医師ということもあり、資料を読んで「これは酷い。隔離する必要ない」とまず考え、その後自民党の野中広務さんの紹介で、原告と面会し、ちゃんと話を聞いている。そこで控訴はありえないと決めた。法務省は控訴と決めていたが、小泉首相も原告に会って話を聞き、そのうえで控訴断念を決めている。今回安倍は原告の話も何も聞いていない。

黄  首相に面会も要求したが、かなわなかった。G20前の忙しい時、吉本新喜劇で池野めだからには会うが、僕たちとは会わないという(笑)。 ただそのあとの「首相談話」で原告と会うとなっているからね。会ったら「首相を辞めて」と言いたいけど(笑)。それでは話(折衝)が前に進まないからね。

── 7月13日付け東京新聞のコラムに「わざわざ謝罪する人間が『極めて異例』などと値打ちをつけますかね?」とあります。そして安倍の「談話」とともに出た「政府声明」、堅山さん(ハンセン病意見国賠訴訟全国原告団協議会事務局)がFBで「ハンセン病家族の被害を本当に知っていたら、あのような政府声明など恥ずかしくて出せるわけがない」と厳しく批判されていましたが、黄さんはどう思われましたか?

黄  談話と政府声明は完全に矛盾してるよね。声明は、判決のあそことあそこが間違いと言っている。だったら控訴すればいい。菅官房長官が会見で、談話の方は一語一句読んでいるが、政府声明は読んでない。あれもおかしいよね。

── 両方読んでいたら、記者から「どっちやねん」と質問される?

黄  そう! だから菅が両方読まないのはずるいね。

── 今後はどのような活動をやっていくのですか?

黄  原告団は去年の12月、全国で4つのブロックに分かれ作られてます。そこでこれからハンセン病の全面解決に向けての取り組みをやっていくことになります。具体的には、確定した判決にそって政府との折衝をやっていく。厚労省、文科省、法務省、の3つと話し合っていきます。

── 裁判のいろんな場面で歌われた「思いよ届け」はどんな思いで作られたのでしょうか?

黄  「思いよ届け」の言葉は国宗弁護士が考え、垂れ幕などでずっと使ってきた。これで曲を作りたいと思っていたが、忙しくてできなかったけど、去年暮れに裁判が結審し、大阪に帰る新幹線の中で曲ができました。詩はあとで、家族の人たちの新聞記事や意見陳述など聞いて書きました。たった3行でその人の人生を語るなんて、無謀な歌詞なんですね。4番まであって、本当は560人の原告がいるので560番まであっていいんですね。皆、それぞれ被害が違いますから。

── この裁判は国だけではなく、私たち1人1人が問われる裁判だったと、仰ってましたが?

黄  どうやって差別をなくすかという問題ですね。2001年の判決は厚労相と国会議員に責任があるとしたが、今回はそれに加え法務大臣、文科大臣にも責任があるとした。法務省は人権啓発する所管だが、それができてなかった。文科省は学校のなかでもそういうケアができてなかったと判決は明確に言っている。国は慌てていると思う。「これから何をすればいいの?」と。そんなことは自分で考えろといいたい。

啓発がうまくいかなかった理由は、結構難しい。私も役所にいたから、役人は研修とか山ほど受けている。ハンセン病は語れなかったが、「差別はいけない」と研修をうける。なのになぜ差別がなくならないか? 今回の判決では、差別をかもしだす社会構造の問題を指摘している。個人個人が全員差別者でもないが、なぜ差別が簡単に許されるのか。

例えばハンセン病患者さんの娘と結婚しようとして、当事者も家族もいいと言うが。遠い親戚のおじさんが反対する。そのとき当事者も家族もおじさんにしっかり反対できない。おじさんはそういう社会構造を知っていて説明する。「次はあんたの家族が差別されるよ」と。だから「おじさんのいうことも一理ある」と思ってしまう。そういう社会構造を壊そうと思ったら、おじさんに対して「差別はだめ」と全員で言い切る、説得する力を持たないとだめだ。

ハンセン病は「感染しにくい」と説明するだけの啓発ではだめ。ではどうしたらそういう空気がなくなるのか? じつは答えは簡単で、1人1人がその空気を読むおじさんと闘い続けないとだめだということです。これからも1人1人、闘い続けて行きましょう!

── 今日は長時間ありがとうございました。(了)

「思いよ とどけ!」と闘ってきた3年間 ── ハンセン病家族訴訟原告団副団長の黄光男(ファン グァンナム)さんに聞く【前編】(聞き手=尾崎美代子)

黄光男(ファン グァンナム)さん。1955年大阪府吹田市で在日朝鮮人二世として生まれる。1歳の時に母親と姉がハンセン病を発病、岡山の療養所に隔離され、本人は岡山市内の福祉施設で育つ。1964年家族5人が社会復帰し、尼崎で暮らす。尼崎工業高校卒業後、尼崎職員に採用。ハンセン病の親のことを長らく語らなかった。2016年2月、「ハンセン病家族の集団訴訟」の原告副団長となる。尼崎市在住。「思いよ とどけ!」は黄光男さん作詞・作曲の歌


◎[参考動画]ハンセン病家族訴訟 思いよ 届け(宮崎信恵さん2019/7/1公開)

▼尾崎美代子(おざき・みよこ)https://twitter.com/hanamama58
「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主。

〈原発なき社会〉を目指す雑誌『NO NUKES voice』20号 尾崎美代子さんの福島現地報告「原子力ムラに牛耳られた村・飯舘村の「復興」がめざすもの」掲載
創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』8月号

検証・冤罪疑われる今市事件の自白調書【上】嘘を見抜くポイントは漫画と服装

2005年12月に栃木県今市市(現在の日光市)で小1の女の子・吉田有希ちゃん(当時7)が失踪し、刺殺体で見つかった「今市事件」では、殺人罪に問われた勝又拓哉被告(37)が一、二審共に無実を訴えながら、無期懲役判決を受けた。そして現在、勝又被告は最高裁に上告中で、土俵際まで追い込まれた格好だ。

東京拘置所。勝又被告は現在、同所に収容されている

もっとも、裁判のそんな現状と裏腹に、冤罪を疑う声が非常に多いのがこの事件だ。事実関係を見れば、そうなったのはむしろ当然と言える。

何しろ、裁判では、検察側から有力な物証や証言が何ら示されず、勝又被告は事実上、捜査段階の自白のみで有罪とされている。その事実上唯一の有罪証拠である自白にしても、裁判員裁判だった宇都宮地裁(松原里美裁判長)の第一審でこそ信用性を認められたが、東京高裁(藤井敏明裁判長)の控訴審では、次のように大部分が否定されている。

「本件自白供述のうち、殺害犯人であることを自認する部分を超えて、本件殺人の一連の経過や殺害の態様、場所、時間等に関する部分にまで信用性を認めた原判決の判断は是認することができない」(控訴審判決より)

つまり、控訴審の裁判官たちは、勝又被告の捜査段階の自白のうち、自分が犯人だと認めている部分以外は、「信用できない」と判断したわけだ。

そもそも、勝又被告は当初、まったく別件の微罪の容疑(偽のブランド品を販売目的で所持した商標法違反)で栃木県警に逮捕されており、長期に渡る身柄拘束の末、今市事件の容疑を自白し、再逮捕されていた。この経緯を見ただけでも、自白偏重の捜査が行われたのは明白だ。裁判で自白の信用性に疑問が投げかけられたのは案の定の展開でもあった。

さらに裁判では、被害者の吉田有希ちゃんの遺体から、勝又被告とは別人のDNA型が検出されていたことも判明している。そのDNA型については、「殺害犯人のものである可能性が高いとはいえない」(控訴審判決)と片づけられているのだが、そのDNA型が誰のものかは特定されていない。これでは、そのDNA型が「真犯人」のものである可能性を疑われ続けても仕方ない。

◆女の子をさらいに行く前に漫画を借りていた!?

そんな今市事件について、私も当欄で繰り返し冤罪の疑いを指摘してきたが、勝又被告の自白調書の内容を改めて検証したところ、自白が嘘であることを示す形跡が新たに色々見つかった。そこで、その検証結果を3回に渡って報告したい。

今回はまず、勝又被告が被害者の女の子・吉田有希ちゃんを車で連れ去った状況などを供述した2014年6月20日付けの自白調書(作成者は宇都宮地検の阿部健一検事)を見てみよう。

この調書では、勝又被告はまず、《私は、事件の2、3年くらい前から子供の女の子に興味を持つようになりました》と切り出し、《「事件を起こす1カ月くらい前から、小学生の女の子をさらってセックスなどをしてみたい」と思うようになりました》と供述している。そして、鹿沼市の自宅アパートから車で今市市の大沢小学校近くまで赴き、小学生の女の子をさらおうと考えたと述べている。

《大沢小学校を狙ったのは、そこらへんの道をよく知っていて、当時住んでいたアパートから遠かったからです》

調書では、勝又被告はそのように供述しているが、この部分に不自然さは見いだせない。元々は台湾生まれの台湾人である勝又被告(逮捕される数年前に帰化)は、小6の時に来日し、大沢小学校とその隣にある大沢中学校に通っているためだ。勝又被告が大沢小学校周辺に土地勘があったのは確かだろう。

この調書で最初に出てくる問題供述は、事件当日の2005年12月1日の行動に関する以下の部分だ。

《記憶では午後2時から3時頃、下校途中の小学校の女の子をさらいにカリーナED(引用者注・勝又被告が当時乗っていた車)で大沢小学校の近くに行きました》

被害者の有希ちゃんはこの日、下校中の午後3時頃に行方不明になっている。つまり、勝又被告の供述は時間的な辻褄は合っているわけだ。

では、この供述の何が問題なのか。それは、この直前の時間帯の勝又被告の行動と整合しないことだ。

勝又被告が事件発生直前に借りていた「カペタ」の6巻と7巻

というのも、宇都宮市内にあったCDやDVD、漫画のレンタルショップ「ハーマン駒生店」(現在は閉店)の利用履歴には、勝又被告がこの日の午後1時58分頃、2冊の漫画を返却し、新たに2冊の漫画を借りた記録が残っていた。これから小学生の女の子をさらい、セックスしようとしている人間が漫画をレンタルショップで借りてまで読もうとするだろうか。普通、そういう行動はとらないはずだ。

ちなみに、勝又被告がこの時にレンタルショップに返した漫画は、FIを題材にした「カペタ」という漫画の4巻と5巻で、借りたのは同じ漫画の6巻と7巻だ。勝又被告のこの時の関心は、小さな女の子とセックスすることではなく、「カペタ」という漫画に向けられていたことが窺える。

げんに、ハーマン駒生店の利用履歴によると、勝又被告はこの時に借りた「カペタ」の6巻と7巻も、翌日の午後3時32分頃までに返却している。勝又被告が事件当日、この2冊の漫画を借りてすぐに読み始めたことは明白だ。

◆被害者の服装を「覚えていない」という不自然

有希ちゃんの服装は警察募集のポスターで詳細に紹介されていた

調書によると、勝又被告はカリーナEDで大沢小学校のあたりに到着後、女の子が1人で歩いているのを見つけたことになっている。被害者の吉田有希ちゃんだ。そこで、カリーナEDで有希ちゃんの横まで近づくと、運転席の窓からこう声をかけたという。

「お父さんに頼まれて迎えに来たよ。お母さんが大変だから」

きわめてベタで、犯人でなくても容易に思いつきそうなセリフだが、それはさておくとしよう。不自然さを見過ごしがたいのは、有希ちゃんに声をかけた直後の言動に関する次の供述だ。

《有希ちゃんは、「えっ」と言うと、ちょっと後ずさりしました。それで、私は、「信用されてないな」と思いました。私は、運転席のドアを開けて、身体を少し外に出して、有希ちゃんの脇の下に両手を入れて抱きかかえ、運転席を通して助手席に無理矢理乗せました。有希ちゃんは赤いランドセルを背負っていたことは憶えていますが、服装はよく憶えていません》

この供述の何が不自然かというと、勝又被告が有希ちゃんについて、《服装はよく覚えていません》と述べていることだ。

何しろ、この日の有希ちゃんの服装は、黄色いベレー帽をかぶり、アニメ「とっとこハム太郎」の絵が描かれたピンクのスニーカーを履いているなど、きわめて特徴的だった。しかも、事件発生から8年半後に勝又被告が逮捕されるまでの間、栃木と茨城では、後掲のような警察の情報提供募集のポスターが県内のあちらこちらに張り出されていたのだ。

本当に勝又被告が犯人であれば、このポスターで詳細に紹介されている有希ちゃんの服装を《覚えていない》ということはありえない。

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。近著に『平成監獄面会記 重大殺人犯7人と1人のリアル』(笠倉出版社)。『さよならはいいません ―寝屋川中1男女殺害事件犯人 死刑確定に寄せて―』(山田浩二=著/片岡健=編/KATAOKA 2019年6月 Kindle版)。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)
創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』8月号

【対李信恵第1訴訟控訴審判決報告】 「反差別」に名を借りた暴言に警鐘!  差別に反対し人権を尊重するという崇高な営為と相容れない暴言と暴力は、即刻やめるべきだ! 鹿砦社代表 松岡利康

 
「反差別」運動のリーダー・李信恵氏が批判者に対して言い放ったツイート

「鹿砦社はクソ」「クソ鹿砦社」などと、「反差別」運動のリーダーが口にするとは到底思えない汚い言葉で私たちを攻撃してきた李信恵氏に対して、鹿砦社は李信恵氏を名誉毀損で提訴しました。裁判の終盤になって李信恵氏が「反訴をしたい」と、突如表明しましたが、これが認められずに別個の訴訟となりましたので、私たちは前者を「対李信恵第1訴訟」、後者を「対李信恵第2訴訟」としています。

李信恵氏自身の汚い言葉は日毎にエスカレートし、さらにこれに付和雷同する者らも続出して来ており、これ以上放置していては取引先などへの悪影響も出かねず会社の名誉が著しく毀損されると、小なりと雖も会社の経営者としては日々心配が募っていました。

これ以前にも李信恵氏らは、彼女に批判的な人たちに対して、職場に内容証明を送ったり電凸攻撃したりして、職場にいづらくする手法を取ってきました。これにほとんどの人たちは訴訟で対抗することもなく、いわば泣き寝入りしてきました。普通の人が訴訟ひとつ起こすことは大変なことですから。

例外的に不当な攻撃に立ち向かったのは、公立病院に勤める金剛(キム・ガン)医師、四国の自動車販売会社を経営する合田夏樹社長らがおられます。人の命を扱う病院の秩序を乱すような電凸攻撃など、日頃「人権」を語る者として疑問がありますし、合田社長に対しては、メーカーの本社などにも電凸攻撃が激しかったとのことで、普通なら取引停止にもなりかねません(合田社長の会社は販売実績が良かったのでこれを免れたそうです)。さらには国会議員の宣伝カーを使った自宅訪問(未遂?)までありました。

 
李信恵氏の仲間で、M君リンチの場にもいた伊藤大介氏による恫喝

鹿砦社に対する誹謗中傷は、もうしばらく泳がせていたら、もっと証拠は集まったでしょうが、気が短い私は、到底待つことはできませんでした。「警告書」を送っても馬耳東風で止む気配はありませんでしたし、代理人の神原元弁護士から開き直ったような回答が来るほどでした(神原弁護士の回答が血の通ったものであったなら、おそらく提訴は思いとどまっていたでしょう。李信恵氏らカウンター界隈の人たちは、一神教のように神原弁護士に頼る傾向があるようですが、これは考え直したほうがいいのではないでしょうか)。

やむなく2017年9月28日、大阪地裁に300万円の賠償金と謝罪(広告)を求めて提訴した次第です。

さすがに提訴したことで少しは懲りたのか、鹿砦社に対する誹謗中傷は鎮まってきたようでした。私たちは訴訟を起こす資金的、精神的余裕もありましたが、仕事や生活に追われる普通の人はそうもいきません。

2019年2月13日、大阪地裁第13民事は、李信恵被告の不法行為/名誉毀損を認め賠償金10万円を言い渡しました。鹿砦社の勝訴、李信恵被告の敗訴です。金額は小さくとも李信恵被告の不法行為/名誉毀損を裁判所が認定した意義、それまで「正義は勝つ!」と豪語し「法律しばき」などと放言してきた神原元弁護士らに一泡吹かせた意義は大きいと見なしていますし、そうしたことによって彼らなりに“反省”(しているでしょうか?)し少しは暴言を自粛するようになったのであれば、所期の目的は果たされたと言っていいでしょう。

「李信恵という人格の不可思議」(『真実と暴力の隠蔽』巻頭グラビアより)
 
何が「極左の悪事」やねん!? 李信恵氏代理人にしてしばき隊の守護神・神原元弁護士によるツイート

残念ながら不法行為/名誉毀損を認められなかった部分の認定と賠償額増額を求めて鹿砦社は大阪高裁に控訴し、また李信恵氏も逆転勝訴を求め控訴、つまり双方控訴という形になりました。

李信恵氏は一審を舐めてかかっていたようで、一度も出廷せず、いったん承諾した本人尋問を翻意、陳述書も出しませんでした。さすがに控訴審では、結審ぎりぎりになって陳述書を出してきました(私は、これに対する反論も迅速に行いました)。そうして去る7月26日、大阪高裁は双方の控訴を棄却、つまり原判決維持の判決を下しました。すなわち鹿砦社の勝訴ということです。李信恵氏が上告するかどうかは分かりませんが、おそらく引っくり返ることはないでしょう。

先に上告棄却となったM君リンチ事件の訴訟は、獲得目標に至らず不満の残る内容ではありましたが、暴力に対して賠償金を裁判所が課す判決が確定したことで、明確なM君勝訴でした。これは集団暴力に対する訴訟でしたが、くだんの対李信恵第1訴訟は、いわば“言葉の暴力”=暴言に対する訴訟でした。これも鹿砦社勝訴です。裁判所の判断も、賠償額は小さいですが、李信恵氏らが決して清廉潔白ではないことに気づいてきています

李信恵氏らカウンター界隈の人たち、李信恵氏の代理人を務めている神原、上瀧浩子弁護士らも、「法律しばき」など品性のない言葉を使わずに、もっと理性的に動くべきではないでしょうか? ましてや「私怨と妄想にまみれた極左の悪事」などと私たちを侮蔑するのは、弁護士としての品位を著しく欠いていることは自明でしょう。

ところで、第1訴訟控訴審で李信恵氏は、一審では出さなかった陳述書を出してきました。さらに驚くことに、先日の第2訴訟では、意外にも李信恵氏本人が出廷してきました。第2訴訟の前にあった、李信恵氏が高島章弁護士を訴えた訴訟でも出廷し高島弁護士との直接対面があったようです(私は傍聴していませんが、傍聴した者の証言)。第2訴訟では、本人尋問も陳述書提出もあるかもしれません。望むところですが、第1訴訟をおざなりにして敗訴したことに懲りてのことだと推察されます。

李信恵氏に付和雷同して発信された仲間らのツイート(『カウンターと暴力の病理』巻頭グラビアより)

かつて鹿砦社は激しい裁判闘争で1億円以上のお金を遣い、(今話題になっている)大きな権威・権力に対して闘い存在感を示しました(ちなみに、最近、芸能界の奴隷契約について公正取引委員会が動き出しました。これは、鹿砦社刊行の星野陽平氏の力作『芸能人はなぜ干されるのか?』に公取委の職員が注目し、星野氏を呼んで勉強会を行ったりして今回の警告に繋がりました。7月26日付け本通信参照)。判例集に載っている判決もあります。

人は、お金の問題ではなく、闘うべき時には闘わないといけません。神原弁護士の言う「売名と集金」などではありません。今回の対李信恵氏との訴訟についても、最後まで全知全能、全身全霊で闘い、「反差別」に名を借りた不当な暴言・暴力に対して断固として立ち向かうことを、あらためて決意するものです。

(おことわり;M君の訴訟は広く多くの皆様方のカンパで最後まで闘うことができましたが、くだんの対李信恵第1、2訴訟は全額鹿砦社の資金で闘っています。1円たりともM君訴訟で集めたカンパを流用していません。あらためてお伝えしておきます)。

最後に、もうひとこと言わせてください。M君リンチ事件訴訟で、エル金こと金良平氏は、確定した賠償金を未だ支払っていません。M君を村八分にし「エル金は友達」などと騒いでいた人たちは金良平氏を助けないのでしょうか? あなた方の「友情」とはその程度のものですか? リンチの現場に同座していた李信恵氏らにも道義的責任、連帯責任があると考えますが、この期に及んで知らぬ存ぜずでは人間としていかがなものでしょうか?

7月26日大阪高裁近くにて

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