◆はじめに

菅義偉前首相は2020年10月の所信表明演説でCO2など温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにすると宣言した。その後、日本政府は自動車産業においては電動化し、2030年代半ばにはガソリン車の新車販売を廃止するという方針を打ち出している。

電気自動車(EV)は確かに走行中はほとんどCO2を発生しない。だから「人為的CO2温暖化説」に基づいて欧米諸国はEVを強力に推進する。EVは2020年には726万台(新車の9.5%)生産され、21年に比べて7割増大した(2023年4月9日付け京都新聞)という。日本の自動車メーカーは出遅れているが、EV化を急ぐ。

しかし、そもそもIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などが主張する「人為的CO2温暖化説」は正しいのか。また、電気自動車(EV)はCO2削減に役立つのか、さらにEV化に伴う大幅な電力需要の増大が岸田政権の打ち出す「原発の最大限活用」につながっている問題点について考えたい。

◆「人為的CO2温暖化説」に科学的根拠があるか

前述の「実質ゼロ宣言」を受けて2021年11月、衆参両院も全会一致で「気候非常事態宣言」を採択。「1日も早い脱炭素社会の実現をめざす」とした。「脱炭素」の根拠はIPCCの「人為的CO2温暖化説」(以降CO2説)であるが、これに対して科学者の中には「科学的根拠が薄弱なまま政治的に引き回されている」(小出裕章『隠される原子力・核の真実』)などの意見が根強い。

確かに19世紀後半以降、温暖化の傾向は見られ(150年間で1度程度の上昇)、CO2は増大している。しかし、地球はこれまで温暖化と寒冷化を繰り返してきた。そして気温の高い時、CO2の濃度は高い。その理由は、温暖化により海洋に溶けていたCO2が大気中に放出される結果、CO2が増大するのである。「CO2説」は原因と結果を取り違えている(近藤邦明『温暖化の虚像』電子書籍)。

そして、「気候変動」についても十分な検証が必要である。温暖化による「台風の巨大化」について、池田清彦は「気象庁のデータを全部調べてみたが、日本では台風の数は傾向として徐々に減っているし、大きさも小さくなっているし、被害総額も昔の方がうんと大きかった」(池田清彦『環境問題の嘘 令和版』2020年MdN新書)と述べる。

このように「CO2説」は科学的根拠が薄弱な上、「気候変動」も統計による事実と異なっている。しかし、「脱炭素」を名目にEVに多額の補助金、減税が注がれている。そして、日本政府が「脱炭素」の根拠とするIPCCの提言の最大の問題点は、化石燃料に代わる「クリーンエネルギー」として、再エネ発電と共に原発を推奨していることである。

◆EVでCO2は減らせない

「CO2」説の是非はさておいて、EV化によってCO2は減らせるのか。確かにEVは走行中はCO2を出さないが、充電する電源は、77%が化石燃料を用いた火力発電である。(2018年度資源エネルギー庁)。

ガソリンエンジン車のエネルギー効率(燃料の燃焼熱のうち、自動車駆動に利用できるエネルギー)は20%台である。

一方、EVに火力発電による電力を充電して使用する場合、火力発電のエネルギー効率を35%として送電や車載リチウムイオン電池に対する充電・放電損失を考慮すると、やはり20%となり、ガソリン車と同程度となる。

しかしEVに搭載するリチウムイオン電池の重量は日産のEV「リーフ」では300kg以上もある。EVの重量はガソリン車よりも30%程度重いため、火力発電所で投入される化石燃料は30%程度多くなる。

また、リチウムイオン電池の製造には大量の電力が必要なことなどを総合的に判断すると、ガソリン車よりもEVの方がCO2放出量は多くなる(近藤邦明『工業文明の持続可能性について』2023年)。

このようにEVは「脱炭素」を名目に推進されているにもかかわらず、かえってCO2放出量を増やしてしまう。(つづく)

本稿は『季節』2023年秋号掲載(2023年9月11日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

▼大今 歩(おおいま・あゆみ)
高校講師・農業。京都府福知山市在住

3月11日発売 〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年春号(NO NUKES voice 改題)

能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

《グラビア》能登半島地震・被災と原発(写真=北野 進

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 能登半島地震から学ぶべきこと

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 地雷原の上で踊る日本

《報告》井戸謙一(弁護士・元裁判官)
 能登半島地震が原発問題に与えた衝撃

《報告》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 珠洲・志賀の原発反対運動の足跡を辿る

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 「大地動乱」と原発の危険な関係

《講演》後藤秀典(ジャーナリスト)
 最高裁と原子力ムラの人脈癒着

《報告》山田 真(小児科医)
 国による健康調査を求めて

《報告》竹沢尚一郎(国立民族学博物館名誉教授)
 原発事故避難者の精神的苦痛の大きさ

《インタビュー》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表
 命を守る方法は国任せにしない

《報告》大泉実成(作家)
 理不尽で残酷な東海村JCO臨界事故を語り継ぐ

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
《検証》日本の原子力政策 何が間違っているのか《2》廃炉はどのような道を模索すべきか

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
すべての被災者の人権と尊厳が守られますように

《報告》平宮康広(元技術者)
放射能汚染水の海洋投棄に反対する理由〈後編〉

《報告》漆原牧久(脱被ばく実現ネット ボランティア)
「愛も結婚も出産も、自分には縁のないもの」311子ども甲状腺がん裁判第八回口頭弁論期日報告

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
本当に原発は大丈夫なのか

《報告》佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
日本轟沈!! 砂上の“老核”が液状化で沈むとき……

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
松本人志はやっぱり宇宙人だったのか?

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈23〉
甲山事件五〇年目を迎えるにあたり誰にでも起きうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか〈中〉

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
能登半島地震と日本の原発事故リスク 稼働中の原発は即時廃止を!
《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《志賀原発》藤岡彰弘(志賀原発に反対する「命のネットワーク」)
《六ヶ所村》中道雅史(「原発なくそう!核燃いらない!あおもり金曜日行動」実行委員会代表)
《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
《東海第二》久保清隆(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《地方自治》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)

《反原発川柳》乱 鬼龍

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2月25日、広島瀬戸内新聞取材班は県内でも人口減少が激しく、製鉄所の撤退などのニュースも続く呉市を取材しました。自治会連合会長の城健康様からお話を伺いました。以下は会長のお話しの概要です。

◆人口流出への歯止め、「都会だったころ」の発想では厳しい

 

自治会連合会長の城健康様

人口流出はここまではある程度仕方がなかった。しかし、今後は歯止めをかけていかないといけない。昔は、呉は海軍の軍港として人口が一時は40万人に達するほどまで栄え、戦後の高度成長期は国の直轄事業で栄えた。しかし、そういうお金がもうないのだから衰退は当然だ。

呉市は(広島市や東広島市と比べても)立地は悪く、企業誘致は現実には難しい。遊ぶところも広島市と比べれば少ない。昔、呉市が都会だったころの発想では難しい。現実を前提としないといけない。

当面の経済活性化策としては、(地元最大の企業である)自衛隊への呉の地元企業からの納入率を上げていくことだろう。呉の企業ができるものを調べ、(県外大企業中心だった)流れを変えていく。これは商工会議所が中心となってやってもらうしかないだろう。

◆公約破りのオンパレード、市民の意見を聴こうとしない現市長

そうした(厳しい状況の)中で、いかに呉に住んでもらうか?が大事だ。市民の意見を聴いて議論していくしかない。しかし、現市長はその市民の意見を聴くことをしようとしない。

市長は初当選時、「退職金は自分の働きぶりを市民が評価して決めてもらう」と公約したが、コロナを言い訳に反故にした。

安芸灘大橋も無料化すると新原市長は言っていたが反故になっている。

市議会議員も、十分に仕事をしているとは言えない。ただ、市長を変えれば、議員も動き方は変わってくると思う。

リーダーを変えていくしかない。2025年11月の呉市長選挙でのリーダー交代が必要だ。

◇      ◇      ◇       ◇

◆呉のことは官僚ではなく市民が決めよう

2021年11月の前回の呉市長選挙では、新原芳明市長は現職であるにもかかわらず新人に2000票差まで肉薄されています。普通、現職首長は広島県知事でも市長でも二期目を目指す選挙は圧勝する場合が多いので、新原市長への呉市民の不満が高いことはよくわかります。

新原市長は、2017年の初当選前は、市役所の新築に反対し、駅前そごう跡への移転を推進する人たちに推されていたそうです。当選されたらもちろん、新築された市役所で執務されています。

また、小村前市長のときに決まっていた駅前の整備を、前市長への対抗意識からか、いったん凍結してしまいました。その結果、2027年度をめどに完成、という状況になってしまいました。受け継ぐべきものは受け継げばいいのに、そうはしない。

城会長が、「現市長はあくまで、財務省から送り込まれた官僚。地元のことは全然わかっていない。」「市民も目覚めて、呉のことは官僚に決めてもらうのではなく市民自身が議論して決めていかないといけない。」と強調されていたことが、印象に残ります。

◆観光ボランティアガイドの皆様に呉市の過去を学び、未来を考える 

取材班は、この日の午後は、呉市の過去を学び、未来を考えるため、観光ボランティアガイドの皆様にお話を伺い、また「呉湾おさんぽクルーズ」に乗船しました。

H様、O様からお話を伺いました。H様(写真)はIHI退職者。5歳の時、呉大空襲(市街地が標的となった7月1日分)の経験者。空襲が終わってから外へ出ようとすると防空壕の地表に近い側でたくさんの方がなくなられていたのが印象に残っているそうです。

軍港呉の歴史にお詳しいO様は、「呉湾おさんぽクルーズ」 で我々をご案内いただきました。呉に海軍鎮守府が設置されてから軍港として栄えた歴史と、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、そして満州事変、日中戦争、第二次世界大戦の歴史について熱く語ってくださいました。大陸に「防衛」を大義名分に出兵を続けた敗戦までの日本の歴史を教訓に「防衛と言ってもエンドレスだ」と指摘。現在の岸田政権による軍拡に懸念を表明されました。クルーズから帰還後も、呉市と日本の将来について、意見交換をさせていただきました。「東京への一極集中政策を止めさせないといけない。」で一致しました。

[左写真]H様 [右写真]O様

※この取材のあと、3月4日に防衛省が呉製鉄所跡地を買い取り、拠点を整備する案を広島県と呉市に提案しています。要は、製鉄所を明治から敗戦まで海軍工廠だった時代に逆戻りさせるということです。

広島瀬戸内新聞では、呉市の課題について、呉市民の皆様、またそれ以外の皆様からもご意見をお待ちしております。

090-3171-4437 hiroseto2004@yahoo.co.jp または、
オンラインおしゃべり会「さとうしゅういちと広島の政治にガツンと物申す」にお寄せ下さい。

毎週金曜 21時15分から zoom meeting ID とパスコードは以下です。

ミーティング ID: 411 718 3285 パスコード: 5N6b38 
(顔出し、声出しされなくても結構です。チャット欄でもご意見お待ちしております。)

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

3月7日発売! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年4月号

『紙の爆弾』2024年4月号

郷原信郎弁護士が問う自民裏金事件 検察捜査の穴
自民党派閥解散の茶番 所得税法から見た裏金「脱税」事件
欧州農民デモの訴え EUのエコロジー政策が農業を潰す
鈴木宣弘東大大学院教授が警告 残留農薬・人工肉・農業基本法改悪で「日本の農と食」が崩壊する
浮かび上がる“巨大地震”の実態 なぜ能登半島地震の名称は「大震災」でないのか
政権交代に向け本格始動 泉房穂前明石市長の「救民内閣」構想
どの道を行っても「解散」か「総辞職」岸田“低空飛行”内閣の八方塞がり政局
アメリカの日本支配機関「日米合同委員会」廃止デモ
日テレドラマ「セクシー田中さん」問題 漫画原作者自殺事件を生んだテレビ界の権力構造
マスコミが報じない朝鮮半島情勢 核ミサイル開発よりも危うい「白頭山大噴火」の現実味
BBCジャニーズ報道から一年 相次ぐ「性加害」報道に垣間見える危うさ
東京五輪汚職と酷似「異次元の無法地帯」と化した横浜市の電通癒着
「入管法」不備を放置する日本政府の問題だ 川口市「クルド人問題」の本質
大逆心中?夢洲万引博打
戦争報道・対米報道・対日報道 中国は世界をどう報じているか
シリーズ 日本の冤罪48 仙台筋弛緩剤事件

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
【新連載】The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
【最終回】キラメキ★東京漂流記:村田らむ
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拙著『日本の冤罪』が出版されてから数か月、この本がご縁で素晴らしい方々と出会うことができた。

昨年12月24日、出版記念の集まりではないですが、Swing MASAさん(サックス奏者)と冤罪関連の集まりをもった。MASAさんらの演奏、井戸謙一弁護士の貴重な講演、そして4組の冤罪犠牲者の家族、関係者のお話など非常に貴重な時間を過ごせた。終了後の親睦会で「国賠ネットワーク」の方から、2月24日東京での集まりに来てお話してとお誘いを受けた。

2月24日『日本の冤罪』の編集をお手伝い頂いた鹿野健一さんと約1時間対談をさせて頂いた。終了後の親睦会で会員の土屋さんが「3月3日大阪に行くので店に寄ります」と言われた。3月3日は金聖雄監督の新作「アリランラプソディー」の大阪試写会に招待されていたので、店はやってませんとお断りさせていただいた(この映画については、またきちんと書きます)。

だが、その際、数日前ピースクラブのかじさんが話していたことを思い出した。

「3日は大事なパーティーがあるのよ。甲山事件の支援をされていた方々の……」

私はその男性に「もしかして3日来られるのは大国町ピースクラブですか?」

「えっ、なぜ知っているの。だったら、そこへ来れば」と言われた。

が、私は多分あいまいな返事をしていた。

3日日曜日、試写会会場の「いくのパーク」にカオリンズと向かった、ていうか、連れてって貰った。会場は体育館でフラットなので、背の低い私は前の席に座った。入口から金洪仙(キムホンソン)さんがさっそうと入ってきて、隣に座る。

そして、「昨日は4つも行きたいイベントがあったけどどこにも行けなかった」みたいな話をして「今日はこのあとピースクラブに行くの」というので、「えっ?」とどんな集まりなのか説明してもらう。

長く続いている、濃いつながりの仲間の寄りあいのようだ。私はホンソンさんに「東京でお会いした冤罪関係の方に『来れば』と言われてけど」と話し、たぶん辞めておくわと言ったと思う。

私は「アリランラプソディー」を見たあと、どうしてもキムチが食べたくて、鶴橋に寄ったら必ず寄る韓国料理の店で味噌チゲを食べ、「アリランラプソディー」のパンフを見ながらまったりビールを飲んでいた。

するとパーティーの準備などで早めにピースクラブに行っていたホンソンさんから「参加者名簿に『尾﨑美代子』とあるよ」と連絡がきた。「えっ? どうしよう」。

しばらく思案したのち、家に帰れば、東京にもっていった『日本の冤罪』20冊の残り6冊があるはず……急いで帰れば間に合うか。本を売りたい、いや、紹介したいと思ってしまい、急いで帰ってピースクラブに行く。いや、行った目的は本を売りたいためだけではないですが。その日の様子は金洪仙さんのFacebookの投稿を読んでください。

結果、素晴らしい人たちと出会うことが出来た。更に早めに帰るつもりが23時までいてしまった。私が余り知らなかった甲山事件について、甲山事件の弁護人の一人であり、私が大尊敬していた故・片見冨士夫弁護士のお話をたくさんお聞きすることができた。

なお、この寄りあいでは、もうひとつ、驚くような出会いというか、再会場面があったが、それはまた別の日に……。

連絡をくれ、繋げてくれた金洪仙さんに大感謝です!!

写真[左]石橋義之さんが長年作ってきた「ばじとうふう」に執筆してきた仲間の皆さんの寄り合いに参加することが出来た/[中央]3月3日の素晴らしい寄り合いに誘って下さった「国賠ネットワーク」の土屋翼(つちやたすく)さん/[右]3月3日午後から生野区「いくのパーク」で開催された「アリランラプソディ」試写会後あいさつする金聖雄(キムソンウン)監督

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

◎鹿砦社HP https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000733

自民党裏金事件をめぐり逮捕・起訴に至った議員は池田佳隆・大野泰正・谷川弥一の3氏のみ、安倍派幹部7人は「嫌疑なし」として不起訴。「なぜ?」の声が上がるのは当然で、そこに政治資金規正法の“大穴”があると指摘するのは元検事の郷原信郎弁護士。今月号では郷原弁護士が法の“大穴”とともに、東京地検特捜部の捜査の“大穴”についても、わかりやすく説明しています。さらにいえば、検察リークを主体とする大手メディアの問題も、そこに絡んできます。記事では「マスコミは検察の従軍記者」と喝破する郷原弁護士が、裏金議員を正しく追及する方法を解説します。

岸田内閣の支持率が擁護メディアですら危険水域を超えて下落を続け、退場へのカウントダウンが始まっています。しかし、この期に及んでも、政権交代より“ポスト岸田”が先行。自民党は不滅というのがマスコミの一貫した姿勢です。そのポスト岸田の面々に、まだ“派閥”の影響がみてとれます。そうなれば、派閥は「旧××派」となるのか、何か別の言葉に言い換えられるのか。言い換えといえば、「防犯カメラ」になった「監視カメラ」、「マイナンバー」になった「国民総背番号制」。後者はよく見ると、「政府が国民に割り当てる番号」が、いつのまにか「私の番号」となっていることに気づきます。

今月号では「食」と「農業」に関する話題についても重点的に採り上げました。その際に焦点が当たるのが「世界経済フォーラム年次総会」(ダボス会議)の存在です。今年1月の会議では、農薬世界最王手の独バイエルCEOが温室効果ガスの原因として、「水田稲作」によるメタン発生を槍玉に挙げたことが話題になりました。そこには、稲作の乾田化によって除草対策が必要になり、同社の除草剤「グリホサート(ラウンドアップ。人体に有害)」の需要を高める目論見もあるようです。またメタン発生では、長らく「牛のゲップ」が大きな要因であると批判されてきました。ドイツをはじめヨーロッパ各地で起きている農民デモの訴えに、日本の多くのマスコミはほとんど言及しませんが、農業を「悪」として、生産への規制や補助金停止の政策を進める各国政府への反発が、その背景にあります。

本誌では、グリホサートの危険性とともに、パンの残留農薬についても採り上げています。加えて、国産・輸入小麦にかかわらず、日本のパンの安全性についてしばしば注目されるのが、添加物の「臭素酸カリウム」。パンの膨らみや食感を良くするとされるものの、EUや中国では使用禁止、日本では完成品に残留が検出されなければ(検出限界以下なら)使用可、とされています。日本の食品基準の緩さはここにもあります。前号などでレポートした「ゲノム食品」もそうですが、問題は使用される成分だけでなく「表示義務」にもあります。安全性を求めるには、自ら信頼できる情報を探すしかありません。巻頭ページでデータを参照した「農民連食品分析センター」の活動は重要です。

その他、日テレ「セクシー田中さん」事件に表れたテレビドラマ制作現場の実情、そして「漫画原作ドラマが増える理由」。朝鮮半島情勢では、韓国・北朝鮮のファーストレディに同時勃発した「ディオール・スキャンダル」。東京五輪汚職と酷似する「2027年横浜花博」の電通癒着など、今月号も濃度の高いレポートをお届けします。全国書店で発売中です。ぜひご一読ください。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

3月7日発売! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年4月号

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連載
あの人の家
NEWS レスQ
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◆幾度も「冤罪」という言葉を耳にして

2月は、何かと「冤罪」というワードが耳に入る月だった。和歌山カレー事件の第3次再審請求が和歌山地裁で受理されたこと(2月20日)、死刑判決から再審無罪となった島田事件・赤堀政夫さんの訃報(2月22日)……。普段あまり関心のない人でも耳に入ったのではないだろうか。筆者も頭の中がこれらのニュースでいっぱいだった。

そんなタイミングで知人から「今週、再審や冤罪について考える講演会があるよ」と連絡が。冤罪被害の当事者らも駆けつけるという。行かないわけがない。二つ返事で当日会場へ向かった。

小雨の中、講演会場には300人以上がかけつけた

 

狭山事件の再審を訴えるのぼり

大阪メトロ四ツ橋線岸里駅から徒歩2分。建物前に大きなポスターが掲示板され、入り口でさまざまな事件の支援者がチラシを配布している。あれよあれよと両手にたくさんの紙が溢れた。

講演会の資料代500円を払って受付を済ませ会場へ入ると、すでにたくさんの人が椅子に座り資料を読み込んでいる。関係者によると、少なくとも300人以上が来場。中には関東や九州から来た人もいるという。

会場の後ろでは、さまざまな冤罪事件の支援者が本の販売や署名の依頼などを行っている。本の中には自費出版で製作されたものも。壁には横断幕やのぼりがあちこちに掲げられていた。
 
講演の前半は1963年に発生した狭山事件について。無期懲役が確定後、1994年に仮釈放され再審が続いている冤罪被害者の石川一雄さんがビデオメッセージを寄せた。また歴史学を専門とする大学教授が事件の概要や問題点などを紹介。来場者らが熱心に聞き入った。

◆3人の「冤罪」被害者たちの声を聞く

後半は、冤罪被害者やその関係者が登壇した。1995年に発生した東住吉事件で無期懲役となり、2016年に再審無罪となった青木恵子さん、2003年の湖東記念病院事件で懲役17年の判決を受け、2020年に再審無罪が確定した西山美香さん、1966年の袴田事件で死刑判決を受けたのち、再審開始決定を受け釈放中の袴田巌さん(再審公判中)の姉・ひで子さんの計3人だ。

※各事件の詳細は割愛する。ウィキペディアなどをご一読願いたい。

3人は会場やオンライン参加の来場者に向かい、マイクを通してそれぞれが強い思いを訴えた。

「ごく普通に生活していて、火事になったということだけで私の人生は狂わされた。警察は市民の味方だと思っていたのに。娘殺しの母親という汚名を取るまでは、死んでも死にきれない。冤罪被害者はみんなそういう思いで闘っている。諦めたらそこで終わってしまう。今も獄中でたくさんの人が無実を訴えている」(青木さん)

「冤罪は他人ごとではない。冤罪というものを多くの普通の人に広く知っていただき、冤罪がなくなる世の中にしたい。自分が(裁判に)勝ったからそれで良い、ではなく、今も仲間のために面会や手紙など自分にできることを続けている。順番に各事件が勝っていけるように私も闘いたい」(同上)。

「私も冤罪被害に巻き込まれたが、私よりも辛い経験をしている人がいることを青木さんらから聞き、昨年~一昨年くらいから活動を始めた。それまでは冤罪に巻き込まれて自分が一番不幸だと思っていた。再審改正のために力になれることをやっていきたい。他の冤罪犠牲者が救われることを願っている」(西山さん)。

「57年闘ってきた。5月22日に結審する。夏のうちに決着するのではないか。まだ終わっていないが無罪になることは確信している。(これまでに日本で再審無罪を勝ち取った)4人の死刑囚がみんな亡くなってしまった。時代を感じる」(ひで子さん)

「巌だけが助かればいいとは思っていない。冤罪で苦しむ方は大勢いる。泣いている。皆さんが助からなきゃ、再審開始にならなきゃいけない」(同上)。

冤罪被害者の(左から)青木さん、西山さん、ひで子さん

◆和歌山カレー事件の新証拠

冤罪ではないかと叫ばれている事件は、世の中にまだまだある。

直近では、2月20日に和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚が3回目の再審請求を行ったことがマスコミ各社で報道され、大きな話題に。翌日の地上波放送では、情報番組にコメンテーターとして出演していた有名弁護士が再審の重要性を強く訴え、さらに注目を浴びることとなった。

共同通信の記事によると、再審請求では会場にあった紙コップのヒ素と林家から見つかったヒ素が異なること、毛髪からヒ素が検出されたという鑑定を誤りだと主張。また目撃証言について、目撃が不可能だったことを示す航空写真を新証拠とするという。

事件関係者はもちろん国民が疑問を抱くさまざまな判決について、1日も早く再審が開始されること、誰もが納得できる判決が下されることを願うばかりだ。

▼紀多 黎(きた・れい)[写真・文]
幼少期から時事問題について議論する家庭で育つ。死刑制度や冤罪事件への関心が高い。好きな言葉は「見えるものではなく、見えないものに目を注ぐ」。

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

◎鹿砦社HP https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000733

これまで貴通信には日米統合一体化が進んでいることに警鐘をならす投稿をさせて頂いた。今回は、その流れの中で、今株価が上昇し、バブル歓迎論が出ていることに焦点を合わせ、それが誰により、何を狙ったものなのかを考えていきたい。

◆米国外資による「日本買い」

年初から高騰していた株価は、2月22日には、バブル期最高値である1989年12月29日の3万8915円を超える3万9098円を記録した。

株高はすでに、昨年の1月に始まっている。その時、マスコミは、「日本経済復興のチャンス」を謳い、国際投資アナリストなる大原浩氏などは「30年ぶりに日本の黄金時代がやってくる」(現代ビジネス)と手放しの歓迎ぶりであった。

そして今回もマスコミは「日本反転の契機に」「真の経済再生の好機」などと株高、バブルを歓迎する報道を行っている。

株高の要因はマスコミなども指摘するように「外国勢の『日本買い』」であり、その主役は米国外資である。そして米国は、それを煽っている。昨年春には、世界3大投資家の一人で「投資の神様」と言われる、ウォーレン・バフェットが来日し、「これからは、日本株」と持ち上げて見せた。

最高値に迫った2月15日、内閣府は昨年末にGDPでドイツに抜かれて、4位に転落したと発表したが日本経済の衰退は著しい。それなのに米国外資は「日本買い」に走っている。そうであれば、米国の意図は何かである。

それは米国の新冷戦戦略を考えてこそ理解出来る。今、米国は米中新冷戦を掲げ、西側を結集することで衰退著しい米国覇権を回復させようとしており、そのために日本の軍事、政治、経済などあらゆる領域で日米統合を進めている。

米国外資による日本株の上昇、バブル化は経済領域での日米統合のためのものだ。米国外資による「日本買い」自体がそのことを物語るが、こうした中で、日本株を買った米国外資が日本の企業を直接、管理支配する動きを強めている。

昨年1月から「日本買い」を始めた米国外資は、5月に集中した株主総会で「もの言う株主」として現経営陣の退陣と社外取締役の採用など「企業統治の改善」を要求してきた。

「企業統治の改善」、会社は公器、会社員のためのものであるという「日本型経営」を解体し、会社は株主のものだとして、株主である米国外資が経営権を握れるようにせよということである。米国の投資助言会社が日本的な企業防衛策である「持ち株会社」を問題視するのも、そのためだ。

すでに日本は、デジタル時代にあって「生命線」と言われるデータも米国企業に握られている。デジタル庁のプラットフォームはアマゾンであり、データを集積管理する「クラウド」もGAFAMなど米国の巨大IT企業が握っている。また、熊本のTSMCなど各地で進む、米国IT企業やその傘下企業を中心にした半導体生産基地建設など経済の日米統合一体化が進んでいる。そうした中で、米国外資による日本企業の直接管理支配までが進められているということだ。

経済アナリストの中には、今後の株高推移は、「企業統治の改善がカギになる」と言う人もおり、今年の株主総会では、米国外資による日本企業支配の要求が一層強まるだろう。

日本の企業を米国外資が支配すれば、米国の下での日本経済の統合は決定的に進む。経済がそうなれば、日本という国自体が米国の一部のようになってしまう。

◆岸田政権がそれを積極的に後押ししている

それをあろうことか日本の政府である岸田政権が積極的に後押ししている。

岸田政権が掲げる「資産運用」政策がそれである。昨年1月の「施政方針演説」で、「資産所得倍増プラン」を、7月の骨太方針では「資産運用立国」を打ち出し、12月には「資産運用立国実行プラン」を発表した。

岸田政権の「資産運用」は、2000兆円もの個人金融資産運用が目玉になっている。

今年の施政方針演説でも強調したのは「稼ぐ力」。それが米国外資による株価高騰に国民の個人金融資産を注ぎ込むものであることは言うまでもない。

「資産運用立国実行プラン」は、日本のメガバンクや大手証券会社などの金融機関グループに「資産運用力向上」と「企業統治改善」を求めることを求める内容になっている。

「企業統治改善」は、先に述べたように、米国外資による日本企業の管理支配を意味する。

「資産運用力向上」は、米系資産運用会社に資産運用を任せるということである。

米国資産運用会社は、リーマンショックを引き起こして問題視された「金融商品」の開発など資産運用に長けている。政府は、この「金融商品」を「資産投資商品」と名を変えながら、2000兆円もの国民の金融資産を「金融商品」に使えと言っているのだ。

岸田首相は、昨年9月にニューヨークで米国金融人200人を前に「資産運用特区」創設を表明し、そこでは「英語だけで手続できるようにする」などの優遇策や投資促進策であるNISA(小額投資減税策)の実施などを述べながら、日本の株式市場への投資を要請した。このことは岸田政権の「資産運用」政策が米国の要求に応じ、日本の企業や国民の金融資産を米国外資に委ね売るものであることを如実に示している。

岸田首相は4月10日に国賓待遇で訪米することが予定されている。昨年の訪米では、防衛費を倍増し敵基地攻撃能力保持することなどが約束されたが、その下で、今年の訪米では「資産運用」政策の貫徹、更なる拡大が約束されるのではないだろうか。

◆バブルは必ず破裂する

2月10日に株価が高騰した時に読売新聞の「編集手記」は、万有引力の法則を発見したニュートンが株式投資に失敗したことを挙げて、「今の株価が経済を適切に映さぬ『泡』でないことを願うばかりである。『はじける』が法則でないことも。」と結んでいた。

しかし、今の株価は経済の実態を反映していない「泡」であり、「はじける」のは法則なのである。マスコミは、国民に、そうした事実、真実を知らせることこそ自身の使命ではないのか。それにも拘らず、そうならないことを「願うばかりである」と誤魔化すのは許されないことだ。

そして今、「日本反転の契機に」「真の経済再生の好機」などと欺瞞的な言葉を並べ立て、「貯蓄から投資へ」「投資マインドの向上」などと、株式投資を煽っている。

しかし投資とは投機でありトバクである。トバクは胴元が勝つのが相場である。投機失敗の悲劇はすでに起きているが、私が危惧するのは、社会のトバク化、社会の犯罪化である。今後、経済犯罪もデジタル技術を使い高度化し、様々な犯罪が多発するのではないだろうか。

その犯罪の最たるものは、胴元・米国外資の「売り逃げ」だ。なけなしの2000兆円もの国民資産を食い潰した後の「売り逃げ」。そうなれば「日本再生」など消し飛び、最早、日本という国自体の存在を危うくする。

その上で指摘したいのは、「バブルの効用」である。このバブルは日米一体化の中で意図的に作られており、バブル景気は、日米一体化を正当化するものになるということである。

今、岸田政権の冷たい政治への批判が渦巻いている。しかし、バブルになれば、そうした批判も緩むのではないか。今、冷たい政治を終わらせ「救民内閣」の樹立を訴える泉房穂さんへの期待が高まっているが、バブル景気はこれに冷や水を浴びせることにもなるだろう。

バブルは必ず「はじける」。そして、そのボタンは米国が握っている。30年前のバブル破裂も米国外資の「売り逃げ」で始まった。そして、それを契機に、「日米構造協議」が開始され、その「規制緩和」で日本の強みが解体され、「失われた30年」となったが、次のバブル破裂では、日本という国自体が失われる。

 

魚本公博さん

米国の言いなりになって日本を米国に売り、日本が失われるような対米追随政治を何としても止めなければならない。

米国覇権が崩壊の兆しを強めている中、世界の流れは脱覇権になっている。それなのに何故、日本だけが対米追随を続けなければならないのか。日本は今こそ、世界の流れに合流しなければならないと思う。

ことは日本全体の問題である。日本の主権者である日本国民が主体となり、日米一体化で企業の経営権まで奪われようとしている経済人、経済界まで含めた「オール日本」を形成し、その力で、日米統合一体化、戦争策動に立ち向かい、日本のため、日本国民のための「救国、救民」の政権を一日も早く作らなければならないと切に思う。

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼魚本公博(うおもと・きみひろ)さん
1948年、大分県別府市生まれ。1966年、関西大学入学。1968年にブントに属し学生運動に参加。ブント分裂後、赤軍派に属し、1970年よど号ハイジャック闘争で朝鮮に渡る。現在「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

杉山空と谷津晴之は2021年10月16日に対戦し引分け。2年4ヶ月ぶりの再戦となった。その後、両者ともそれぞれの団体で王座挑戦があり、杉山空は昨年2月18日に王座決定戦で龍太郎(真門)に判定勝利してNKBフライ級王座獲得。

谷津晴之は2021年12月5日にNJKFフライ級チャンピオン、優心(京都野口)に挑戦も判定負け。昨年9月17日に2度目の挑戦も引分けで王座奪取は敵わず。今回、杉山空にとってはチャンピオンとして負けられない立場となっての再戦となった。

◎冠鷲シリーズvol.1 / 2月17日(土)後楽園ホール 17:30~20:35
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第11試合 52.0kg契約 5回戦

NKBフライ級チャンピオン.杉山空(HEAT/2005.1.19静岡県出身/51.45kg)
8戦5勝1敗2分
        VS
NJKFフライ級1位.谷津晴之(新興ムエタイ/2003.5.7神奈川県出身/51.8kg)
11戦5勝(1KO)4敗2分
勝者:杉山空 / 判定2-0
主審:前田仁
副審:加賀見50-47. 鈴木49-49. 笹谷50-48

ローキック中心に蹴りで距離感を掴みながらパンチの交錯の後、すぐ組み合ってから縺れ合い、ヒザ蹴りなどスピーディーな展開が続く。崩し転ばすのは杉山がやや上手。

好戦的に戦う両者にとっては最も苦しいであろう第4ラウンドも主導権を奪おうとする勢い衰えず、最終第5ラウンドには杉山空がバックハンドブローがヒットするインパクトを与え、ヒジ打ちで谷津晴之の左眉尻をカットし、谷津晴之は序盤から時折飛びヒザ蹴りを見せたが、杉山空の勢いに優ることは出来なかった。

杉山空のバックハンドブローが炸裂

全体ではパンチと首相撲からの崩しは杉山空が支配したか。ジャッジ三者が揃って10対9を採点するラウンドは無いほど差が付き難い展開ながら、幅がある分かれ方で杉山空が判定勝利した。

杉山空は「1年ぶりの試合で不安な要素もいっぱい有って、凄くパンチを練習していたんですけど、その成果が少し出せて、遠い所(静岡県裾野市)から応援団が沢山来てくれて、その人達の応援の力の御陰で最後まで粘って戦うことが出来ました。」

対戦相手の谷津晴之については、
「谷津選手のミドルキックを警戒していたんですけど、やっぱりそのミドルキックが強くて何とか凌いで攻めを上回ることが出来ました。次戦はまだ決まっていませんが、防衛戦になると思います。防衛戦に向けてパンチを強化して倒せる選手になりたいと思います。」
と語った。

杉山空が試合終了間際に主導権を奪って終えたと言える左フックがヒット

◆第10試合 バンタム級3回戦

キッシンチャイ(=森貴慎/AKSドミネーター/1992.1.13静岡県出身/53.5kg)
15戦12勝(7KO)3敗
        VS
雄希(テツ/2002.9.3大阪府出身/53.25kg)5戦4勝(2KO)1敗
勝者:キッシンチャイ / 判定3-0
主審:高谷秀幸
副審:鈴木30-29. 加賀見30-29. 前田30-29

元・JNETWORKバンタム級チャンピオン森貴慎がキッシンチャイとリングネームを変更し、5年ぶりの再起戦。雄希は202年12月デビューで4戦無敗の新鋭ながら、現在の両者の実力拮抗を量るマッチメイクとなった。

パンチとローキックの攻防は互角の展開。第2ラウンドにはキッシンチャイの左ストレートヒットと首相撲からの崩しでやや優勢を維持したか。大きな差は無いままラウンドが進んだが、第2ラウンドをリードしたキッシンチャイが辛くも判定勝利した。

雄希側陣営は試合内容、展開について「蹴りを上手くはやらせて貰えんかったですね。」と言っている間に、近くで聞いていた雄希本人が悔しそうに「動きは悪かったです。出直します!」と反省を述べていた。

[左]タイミングはズレたが、キッシンチャイの組み合った中でのヒザ蹴りで圧力掛けた/[右]5年ぶりの復帰戦を勝利で飾ったキッシンチャイ

◆第9試合 61.0kg契約3回戦

角谷祐介(NEXT LEVEL渋谷/1989.8.14富山県出身/60.7kg)23戦12勝8敗3分
       VS
山本太一(ケーアクティブ/1995.12.28千葉県出身/60.9kg)15戦5勝(4KO)7敗3分
勝者:角谷祐介 / 判定2-1
主審:笹谷淳
副審:鈴木30-28. 高谷30-29. 前田29-30

開始早々、山本太一は猛ダッシュで角谷祐介に飛びヒザ蹴りを浴びせる。ヒットはしなかったが、角谷祐介は焦ることなく冷静に試合を進め、蹴りからパンチの互角の攻防から徐々にヒットを増やしたが、山本太一のアグレッシブなパンチと蹴りの前進には評価は分かれる展開で、スプリットデジションとなる判定勝利となった。

試合開始早々に山本太一が突進しての飛びヒザ蹴りはヒットせず

角谷祐介の前蹴りが山本太一にヒット

◆第8試合 65.0kg契約3回戦

大月慎也(元・JKAライト級4位/TEAM Artemis/1986.6.19埼玉県出身/65.0kg)
22戦9勝(4KO)9敗4分
       VS
ちさとkiss Me!!(安曇野キックの会/1983.1.8長野県出身/64.6kg)39戦7勝(3KO)29敗3分
勝者:大月慎也 / TKO 3ラウンド1分25秒
主審:加賀見淳

蹴りの攻防から接近戦に持ち込みたいちさとに、離れた距離での蹴りでは徐々に大月慎也のヒットが増えていく。

第2ラウンドには左ハイキックでノックダウンを奪い、度々ハイキックがちさとを襲う。大月のローキックもヒットが増え、第3ラウンドにもガードが低いちさとに左ハイキックを後頭部ヒットで倒すと、立ち上がる様子はあったが、レフェリーがほぼノーカウントで試合を止めた。

大月慎也の左ハイキックがちさとを襲う、辛うじてブロックしたちさと

大月慎也の左ハイがちさとの後頭部にヒット、今度はブロック出来ず、大月慎也がTKO勝利に繋げた

◆第7試合 58.5kg契約3回戦

NKBフェザー級5位.半澤信也(Team arco iris/1981.4.28長野県出身/58.5kg)
30戦11勝(4KO)15敗4分
       VS
利根川仁(Realiser STUDIO/2003.1.24東京都出身/58.3kg)4戦4勝(4KO)
勝者:利根川仁 / TKO 2ラウンド1分25秒
主審:鈴木義和

パンチと蹴りの攻防は第1ラウンドから利根川仁が右ストレートのタイミングを探っていたか、第2ラウンドには追い詰めていく中でカウンターでヒットさせるとノックダウンとなってカウント中のレフェリーストップとなった。

利根川仁の右ストレートが半澤信也にヒット若い力がベテランを制した

◆第6試合 ライト級3回戦

猪ノ川海(大塚道場/2005.9.30茨城県出身/60.85kg) 3戦2勝(2KO)1敗
      VS
龍一(拳心館/1995.11.17新潟県出身/61.2kg)8戦7敗1分
勝者:猪ノ川海(赤コーナー) / TKO 1ラウンド2分52秒
主審:笹谷淳

開始から猪ノ川海の距離感で蹴りとパンチが優り、組んでのヒザ蹴りも効果的に攻める。龍一のパンチをやや喰らっても、すぐにパンチ、ヒジ打ちで巻き返し、左ハイキックから右ハイキック、更にパンチ連打から右フックで倒し切ると、レフェリーストップとなる圧勝となった。

◆第5試合 ライト級3回戦

魔裟屋(SLACK/1991.2.4岩手県出身/60.05kg) 3戦3敗
      VS
中山航輔(テツ/2002.10.13香川県出身/61.0kg)2戦2勝
勝者:中山航輔(青コーナー) / 判定0-2 (29-30. 30-30. 28-30)

◆第4試合 62.0kg契約3回戦

森野允鶴(渡邉/2001.1.17東京都出身/61.75kg)2戦2勝
      VS
鈴木ゲン(拳心館/1973.6.5新潟県出身/61.6kg)9戦6勝(4KO)2敗1分
勝者:森野允鶴(赤コーナー) / 判定2-0 (30-28. 29-29. 30-28)

◆第3試合 56.0kg契約3回戦

ATSUSHI(NK/2001.11.21大阪府出身/54.95kg)2戦2勝(1KO)
      VS
荒谷壮太(アント/2006.2.3千葉県出身/54.85kg)3戦2敗1分
勝者:ATSUSHI(赤コーナー) / 判定2-1 (30-29. 30-29. 29-30)

◆第2試合 51.0kg契約3回戦

TAKUMI(Bushi-Doo/1989.12.8新潟県出身/50.9kg)6戦6敗
      VS
緒方愁次(ケーアクティブ/2004.1.6東京都出身/50.65kg)1戦1勝
勝者:緒方愁次(青コーナー) / 判定0-3 (27-30. 27-30. 27-30)

◆第1試合 バンタム級3回戦

九龍悠誠(誠真/1999.12.1神奈川県出身/53.45kg)2戦1勝1敗
      VS
涌井大嵩(アルン/1997.3.2新潟県出身/53.2kg)2戦2勝(1KO)
勝者:涌井大嵩(青コーナー) / 判定0-3 (27-30. 27-30. 27-30)

 

北側応援団に向かって感謝を述べる杉山空

《取材戦記》

今年のシリーズ名、冠鷲のように杉山空は狙った獲物は逃さない、今年のエース格に上り詰められるか。

2022年10月29日より始まった、NKBに於ける12年ぶりのフライ級王座戦となった4名参加の王座争奪トーナメントで、翌年2月18日には杉山空が龍太郎(真門)との王座決定戦で判定勝利し王座獲得となった。そこから1年、試合が空いてしまうのは成長期に勿体無い事態だったが、今回の判定勝利で「次は防衛戦になると思います。」と言うように「防衛してこそ真のチャンピオン」をこのNKBでも実践して欲しいものである。

現在は興行運営一歩退いた感のある渡邊信久連盟代表理事は、NKB実行委員会代表としてもリングサイドに陣取り、大御所としての存在感は健在です。血気盛んに興行を担っていたお手製のチケットだった頃は、1枚1枚席番を押印する手作業をやっていたり、更なる昔は手書きの時代もあり、そんな昭和の時代は“切符”と呼んでいました。現在も“入場券”という言い方は残っていますが、若い世代の大方は“チケット” と呼んでいるでしょう。

長きに渡って続けられて来た“切符販売”は大変な苦労ですが、渡邊ジム設立以来54年続けられて来た販売の技と、日本キックボクシング連盟設立40周年の地道な継続の力での次回の冠鷲シリーズvol.2は4月20日(土)に後楽園ホールに於いて開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年3月号

広島市議会は2月14日から2月定例会がスタートしました。会期は3月26日まであります。

会期の前半では、2023年度分に関する議案(請願や当局提出の財産取得議案)などが審議され、2月27日に採決に掛けられました。

◆ようやく「イスラエル・パレスチナにおける武力紛争の終結を求める決議案」

広島市は、世界で最初に核攻撃を受けた都市であり国際平和文化都市を名乗っています。ところが、ガザにおける大量虐殺については、これまで市議会も松井一實市長も沈黙を保っていました。「あの」保守的な広島県議会ですら、停戦決議を求めています。

こうした中、10月以降、原爆ドーム前で「STOP GENOCIDE」のスタンディングを続けている広島市立大学院生でユダヤ系米国人のレベッカさんらが、広島市と広島市議会が行動を起こすように公開質問状を2月13日に提出。

さらに、オンライン署名を2月29日期限として呼びかけました。署名数が2月27日時点で15000を突破、28日には2万を超えるという情勢の中、広島市議会定例会は、27日の議案採択の中で、「イスラエル・パレスチナにおける武力紛争の終結を求める決議案」を全会一致で可決しました。

ICJ=国際司法裁判所は南アフリカによる提訴を受けて1月26日、イスラエルに対して・集団虐殺(ジェノサイド)の防止・虐殺を扇動する行為の防止やその処分・虐殺が疑われる行為の証拠保全・ガザの人道状況を改善するための方策の導入について、1カ月以内の対策を指示しています。そのことに決議案は触れていません。こうした不十分さはあります。もちろん、全会一致での採択を目指したということで、こういう文言になったという事情はあります。それでも、遅まきながら広島市も決議を出したということです。

問題は、広島市の執行部=松井一實市長がノーコメントということです。引き続き、市長を動かすためにも広島には「さらなる」行動が求められます。

◆市長の迷走「エールエールA館買い取り」可決

一方で、松井一實市長の「暴走・迷走」の象徴である中央図書館の「エールエールA館」移転。ついに、広島市が広島駅南口開発㈱=広島市出資の第三セクター=から、土地と建物を買い取ることが可決されてしまいました。この広島駅南口開発(株)=広島市出資の第三セクター=は、広島市が7割近くを出資し(残りは政策投資銀行と金融機関など)、広島市の元局長クラスの方が幹部をされています

中区選出の門田佳子市議(無所属)のSNSは以下のように報告しています。

【市民に説明できない第三セクター救済(中央図書館等移転)】

本日の広島市議会本会議、第140号議案、中央図書館等移転のための財産取得について。土地の一部買入れ約3.1億、建物の一部買入れ約65.9億。今までも広島市と金融団は広島駅南口開発が資金ショートする度に融資を繰り返してきました。今回も名目を変えた救済です。これでは市民に説明できないとして、反対討論を行いました。

結果は残念なことに、賛成多数で可決されました。中古ビルのフロア、土地を高額で取得。目的は赤字体質の第三セクター救済。そのうえ、翌年度予算にも残りの不動産取得や取得できないフロア賃料、共益費、修繕費等を払う見込みが示されています。これでいいのでしょうか、広島市。

中央図書館については、広島市中区の中央公園にある現在の図書館を本体は広島駅前のエールエールA館に移転、浅野文庫と広島文学についての図書は広島市長公舎跡地に新築するということです。しかし、そもそもバラバラにするより、一体にした方が便利なのは明らかです。なんでこんなことをするのか?やはり、市役所の先輩が多数「天下り」されている「広島駅南口開発㈱」の救済ありきではないのでしょうか?

◆湯崎知事暴走=平和公園へのサミット記念コーナー施設建設強行に反対の請願は否決 「修学旅行生の休憩は狭い場所で!」

「G7広島サミット記念コーナー(仮称)を設置しないことについて」という請願は否決されてしまいました。

これは、本来は、サミット県民会議=湯崎英彦広島県知事=の主導で行われる事業ではあります。しかし、平和記念公園を管理するのは広島市である以上、広島市が許可しなければできません。

https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/552710.pdf

この事業は、当初からサミット県民会議の予算に組み込まれていた5000万円を使って、7年間限定で記念館を設置するというものです。建設予定場所は、資料館北側、被爆樹木アオギリの西側、峠三吉詩碑の南側という地点です。資料館から出てこられた方が一休みしたり、修学旅行生や校外学習の児童生徒が集合したり、お弁当を食べたり、そういった場所を潰してしまうことになります。

「この請願を出された方以外からも、平和公園でボランティアガイドをしてくださっている様々な市民の方から、同じようなご意見を頂戴しています。」(前出・門田市議)

こうした疑問に対して、「集合場所等々でしてですね、活用できる場所については、今記念コーナーを設置する場所、と例えば公衆トイレの間ですとか被爆アオギリ、被爆遺構展示館の間の土地等のスペースがございますのでそちらを活用いただけるのではないかと考えております。以上です。」と、要約すれば「修学旅行生らは狭い場所で休憩しなさい」と言わんばかりの答弁を当局はしました。

湯崎英彦・広島県知事の暴走を市議会は止めることなく、修学旅行生らに狭い場所を強いることを選んだのです。もちろん、G7広島サミットの「広島ビジョン」は西側の核保有は肯定するような内容です。そんなサミットを平和公園を使って持ち上げるのはいかがなものか?と筆者は思います。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年3月号

《3月のことば》望郷 あの津波から十三年……(鹿砦社カレンダー2024より。龍一郎揮毫)

3月になりました ── 。

「1月は去(い)ぬ、2月は逃げる、3月は去る」と言いますが、1月、2月はあっというまに過ぎてしまいました。

年度末3月、慌しい日々が予期されますが、一日一日を精一杯過ごしたいものです。

今年も3・11がやって来ようとしています。

意に反し故郷を離れざるをえなくなった方々、きょうも故郷に想いを馳せておられるのでしょうか。胸が痛みます。

東日本大震災以降も本年正月の能登半島地震まで幾度か大きな地震がありました。

たとえば熊本地震。しかし熊本は今、時々メディアでも報じられているように未曾有の好景気に沸いています。

先日帰郷しましたが、街は活気に満ちています。

一方フクシマはどうでしょうか ── 残念ながら帰郷できない方も多く、故郷は(一部を除き)総じて廃れているようです。

やはり原発事故による放射能汚染があるのとないのとでは復旧・復興の度合いが決定的に違うのでしょうか。

あまり知られていませんが、ここ兵庫県西宮市は、29年前の阪神大震災で1126人の方が亡くなるほどの打撃を受けました(被害は神戸ばかりではありません。西宮、芦屋を忘れないで!)。それでも、「そんなことがあったのか」と思うほどの復旧・復興いたしました。原発事故があれば、そうはいかなかったのではないでしょうか。

能登半島は幸いに原発事故はありませんでした。おそらく復旧・復興は順当に進むのではないかと思っています。

豊かな自然と資源、海産物にも恵まれています。原発が爆発し放射能汚染が発生したならば、それも台無しです。フクシマも豊かな自然に恵まれていましたが、それも原発事故が台無しにしました。

一日も早いフクシマの復旧・復興を願わずにおれませんが、未曾有の原発事故故に困難な道のりの13年でした。被災された皆様、意に反し故郷を離れておられる方々の、この13年のご苦労を想起すると涙が出てきます。

3・11に発行される反(脱)原発雑誌『季節』も、私たちがフクシマの惨状に想いをいたし、私たちなりに決意を込めて創刊して、やがて10年が経とうとしています。1号も黒字にはなっていませんが、発行停止は考えていません。

今や老境に入った私が生きている間にどれほど復旧・復興するのか、同じ国に住む者としてあたたかい眼差しで見続けていきたいと思っています。

(松岡利康)

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年3月号

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2023年冬号

能登半島の地震で大勢の被災者が避難生活を余儀なくされているなか、一時期は避難所でコロナウイルスはじめインフルエンザ、ノロウイルスなども増大した。

以下は、3年前の3月、鹿砦社発行の反原発誌『NO NUKES voice』27号(2021年3月11日発売。現在は『季節』に誌名改題)に寄稿した記事で書いた、コロナ蔓延中は原発再稼働をやめろという裁判での原発コンサルタント佐藤暁氏が提出した「意見書」の一部である(尾﨑美代子「コロナ収束まで原発の停止を!」)。ぜひ今こそ、読んでほしい。今現在も能登半島の避難所はこういう状態ではないのか?

◆東京東京ドーム44個分の避難所が作れるのか?

 

いまから3年前、2021年3月に発売された『NO NUKES voice』Vol.27 《総力特集》〈3・11〉から10年 震災列島から原発をなくす道

2020年6月2日「新型コロナウイルス感染拡大を踏まえた感染症の流行下での原子力災害時 における防護措置の基本的な考え方について」を出した。それによれば、「自宅などで屋内退避を行う場合には、放射性物質による被ばくをさけることを優先し、屋内退避の指示が出されている間は、原則換気は行わない」としている。ここでの「自宅等」には、家屋の倒壊・損壊などで自宅におれず、移動した避難所なども含まれる。

また福井県の「新型コロナウイルスに備えた避難所運営の手引き」では、避難所のスペースについて、一般避難者については、「床に養生テープ等で、1人当たり4㎡以上のスペース、通路は幅2mを確保」、「ほかの感染症(ノロウイルス、新型インフルエンザ)対策も考慮するなら、一人当たり5.5㎡以上が望ましい」とし、濃厚接触者・感染が疑われる者の場合は「専用スペース、動線を確保できるかどうか事前に確認(他の避難者と一切交わらないことが望ましい)「2棟以上の建物がある場合」「農耕接触者や感染が疑われるもののみを収容する建物を決定」となっている。つまりコロナ感染予防対策を徹底するためには、従来1人あたり2㎡とされたスペースの2倍以上のスペースを確保しなければならないということだ。

これを、美浜原発が事故をおこしたと仮定した場合で算定すると、美浜町のPAZ及びUPZの人口37万9446人に必要な避難所のスペースは、379446人×5.5㎡=2086953㎡となり、東京ドーム(46755㎡)44個・6個分となる。このような避難所を確保することは、事実上不可能だ。

◆通常の原発運転でも危険が拡大

こうした原発事故からの避難と避難生活のなかで、放射能防護とコロナ感染拡大防止対策が対立する問題は、平常時に原発で働く作業員や運転員にもかかってくる。

昨年(2020年)4月14日、九州電力・玄海原発の特定重大事故等対処施設(いわゆテロ対策施設)の建設工事に従事していた作業員1名がコロナに感染、その後事務所社員1名の感染も判明し、九州電力は工事を中断、約300名の職員の出勤を見合わせたことがあった。

同じ4月27日には、東電の柏崎・刈羽原発でも感染者が発生し、工事の8割が中断することがあった。原発では、通常の運転時で1日約1500人、定期点検時には1日約3000人の作業員が働くことになるが、通勤時の車両、待機場所、脱衣所、休憩室など、いずれも3密状態を強いられている。

福井県の原発へは、関西など感染者が多い地域からの作業員も多い。しかも重層的下請け構造で、4、5次の末端業者では、作業員の健康状態などまともに把握されていないのが現状だ。

そんな中、先の玄海原発で1月24日までに次々と感染者を出すクラスターが発生したため、約400名の作業員を出勤停止にした。これが原発事故時であったならば、「工事の遅れ」などでは済まされない事態となったであろう。

◆過酷事故を起こした原発の暴走を止められるのか?

原発事故を起こしてしまった際の緊急時対策所がどのような状態になるか、今回仮処分の申し立てを行った美浜原発3号機を例に検証してみる。昨年7月20日に提出された「新型コロナウイルス感染拡大防止対策と原発事故対応が両立しないことについて」と題された準備書面によれば、美浜原発3号基の、緊急時対策所の要因は、重大事故などに対処するために必要な指示を行う要員等34名と、原子炉格納容器破損等による工場等外への放射性物質拡散を抑制するための対策に対処するために必要な要員36名の計70名とされている。

一方、緊急時対策所の延床面積326㎡のうち、緊急時対策本部要員34名が使う「本部スペース」は約84㎡で、ソーシャルでスタンスの2メートルの距離を取るとすれば、現状の5倍超の427・04㎡の面積が必要となる。それが確保できない場合、要員らが次々と感染し、事故対応ができなくなり、事故を起こした原発は制御不能のきわめて危険な状態に陥らざるを得ない。

大飯原発3、4号機、高浜原発1~4号機も同様だが、さらに迅速な事故対応を迫られる現場では、怒鳴り声や大声が飛び交うのは、福島の事故で経験したことだ。2メートルのソーシャルデイスタンスを取りながら小声で指揮などしていては、原発の暴走は止められないだろう。

◆コロナ禍で原発を動かす危険性

今回の仮処分の申し立てでは、申立書と同時に原子力コンサルタント・佐藤暁氏の意見書「パンデミック期間中の原子力発電所の運転継続に関する妥当性についての考察」が提出されている。

ここで佐藤氏は、地震など自然災害が発生した際の、コロナ対策と原発事故対応の困難さを「難度の高いジャグリング」に例えている。

「パンデミックは、原子炉事故の対応も自然災害の復旧活動もすべてを覆い、「3蜜」を見つければ、たちまちそこをクラスターの発生個所としてしまう。しかし、在宅勤務だけで事故対応も災害復旧も進むはずはなく、結局これは、とても難度の高いジャグリングである。原子力災害の被災者、自然災害の被災者、そして感染者の3個の球を、どれも地面に落とさないよう器用に回し続けなければならないのだが、少し手元は狂うとあっというまに3個とも落ちてしまう」と。

さらに佐藤氏は、こうも訴える。

「パンデミックも自然災害も人間がコントロールできないが、唯一コントロールできる原発事故のリスクであるのだから、原発をどうしても諦めないにしても、せめて手の中にすでにパンデミックという1個の球があるとき、原発事故の発生リスクを排除し、もう1個がこれに加わるのを予防するという案に合意できないか」と。
債権者の一人・水戸喜世子さんは、「コロナ禍にあって、一向に原発に言及しない国・自治体、そして電力会社の人権感覚に改めて深刻な危機感を抱いたのが、提訴しないではいられなかった動機だ」と話しておられた。

「パチンコ屋に営業自粛を迫るのであれば、被害が桁違いに大きい原発の営業自粛を何故求めないのか?」。

こうした、実に素朴な疑問から提訴を考え出した。この仮処分が申し立てられなかったら、多くの人たちが、コロナ禍でも原発事故の危険性に気付かされなかったかもしれない。

裁判資料を読みこめば読み込むほど、不安は増幅し、1秒でも早く原発を止めなければならないと確信する。原発事故も収束できないこの国が、コロナを収束できるはずもなく、ずるずる両方の収束を先延ばしにしていたら、もうこの国は終わりかもしれない。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2023年冬号

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

◎鹿砦社HP https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000733

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