伊方原発裁判「行政・資本寄り」裁判長降板/瀬戸内の島にカーボンリサイクル施設完成 広島発・原発ゼロへ光明か さとうしゅういち

◆爆心地選出なのに安倍さん以上に原発推進の総理

筆者の地元で爆心地も抱える広島1区選出の岸田総理。岸田総理は、GX(グリーントランスフォーメーション)と称して、島根原発3号機の再稼働はもちろんのこと、新規原発建設も含む原発推進姿勢に転じました。

ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰や、気候変動対策にも悪乗りした形です。311以降、安倍晋三さん率いる自民党でさえ、脱原発依存を掲げ、原発依存度の低下は選挙公約としてきました。それを選挙でマニフェストに掲げることもせずに、原発拡大路線に転換したものです。

しかしながら、原発というものは、日本においては、特に実は誰も責任を取らないしろものです。6月18日、最高裁は福島原発事故における国の責任を否定。また、現体制でも原子力規制委員会でさえ「合格」とはいうけれど「許可」を出すものではありません。こんなものは論外であるのは変わりありません。

そして、ロシアとウクライナの先頭にザポリージャ原発が巻き込まれ、人類はひやひやしている状況です。こうした中、世界で最初の戦争による核被害の爆心地選出の総理が原発推進に舵を切るとは、全日本人、全世界の人に、筆者は広島市民、とりわけ広島1区の有権者として大変申し訳なく思います。

いっぽうで、こうした中、原発ゼロへ向け、希望を持てる動きも県内ではあります。ご紹介しましょう。

◆「権力・資本寄り」男性裁判長が降板──伊方原発広島裁判

一つは、筆者も原告である伊方原発運転差し止め広島裁判の広島地裁の男性裁判長が前回第28回の口頭弁論から交替したことです。これまでの男性の裁判長は、以前、ご紹介した産業廃棄物処分場をめぐる裁判の仮処分申請裁判でも、裁判長を務めていました。

その男性裁判長は、業者に処分場建設作業再開を認める判断を出してしまいました。

そして、本裁判、すなわち伊方原発広島裁判の不当判断を出し、伊方原発三号機の再稼働を認めてしまいました。

9月14日の法廷後、新しい裁判長の姿勢について報告する伊方原発広島裁判原告弁護団(筆者撮影)

ところが、その男性裁判長が6月8日の第28回口頭弁論から姿を消しました。女性裁判長に変わっていたので、筆者も含めてすこし、参加者はどよめいていました。

女性裁判長がどのようなお手並みか。9月14日に開催された口頭弁論で、すこし片鱗が明らかになってきました。少なくとも「前任の男性裁判長よりは、まじめに証拠を調べよう」という姿勢がみられることです。

女性裁判長は、原告側が求める証人調べに積極的に応じ、来春以降、行われる可能性が高まりました。原告弁護団によると、件の男性裁判長なら「ほかの伊方原発を巡る類似の裁判で出た証人は本法廷としては呼びたくない。」という姿勢が見え見えだったそうです。

裁判長交代でひょっとしたら、「伊方原発運転差し止め判決」という朗報をみなさまに広島からお届けできる可能性が少し上がったのかもしれません。

◆国立研究開発法人NEDOのカーボンリサイクル施設が大崎上島に

もうひとつは、広島県中部の瀬戸内海に浮かぶ島に国のカーボンリサイクルの施設ができたことです。大崎上島には中国電力の石炭火力発電所(試験プラント)があります。大崎上島は広島県内の最大の都市・広島市と福山市の中間にあります。2000年に当時としては最新式の石炭火力発電所ができたのですが、トラブルが相次ぎ、2011年から休止状態にあります。

現在は、中国電力と電源開発の共同出資で2017年3月運転開始の高効率の石炭ガス化複合火力発電所の試験実証機が稼働しています。ガス化した石炭により動かすガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて発電するものです。

石炭火力と言えば、皆様も気候変動対策の敵のように思われるでしょう。毎回の気候変動枠組条約締約国会議(COP26などと報道されている会議)においても日本は石炭火力への固執で「化石賞受賞」などと報道されていることを皆様もご記憶と思います。

しかし、ロシアのウクライナ侵攻も背景に天然ガス価格も高騰している中で、日本国内でもまだまだ埋蔵量がそれなりにある石炭を使い、なおかつエネルギー変換効率も高い石炭ガス化複合火力発電所は、再生可能エネルギー100%への「中継ぎ」として有力なのではないのでしょうか?

そして、さらに、2022年9月、この大崎発電所の敷地内に、国立研究開発法人であるNEDOのカーボンリサイクル施設ができました。

発電所から出るCO2を分離・回収し、
・鉄などを触媒にして二酸化炭素からプロパンガスを作る基礎研究
・二酸化炭素を吸収させてコンクリートを固める技術を使って、ダムや橋などの大規模な工事にも活用する研究、
・二酸化炭素を藻の培養に使い、藻から抽出した油を航空機の燃料などに活用する研究
などを行うそうです。

https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101530.html

こうした技術革新が進めば、原発に頼らず、なおかつエネルギーの安定供給を確保しつつ気候変動対策も進めることができます。

広島県選出の岸田総理。あなたとわたしの地元である広島で、こうした素晴らしい技術革新を国がお金を出して進めているのですよ?

ロシアのウクライナ侵攻に便乗して短兵急に原発を新増設しようとしても完成にはどうせ、10年以上かかります。それよりも、地元で開発が進んでいる技術を活かしていきませんか?

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年秋号(NO NUKES voice改題 通巻33号)
タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年11月号

「燃える闘魂」アントニオ猪木さんを悼む 鹿砦社代表 松岡利康

アントニオ猪木さんが亡くなりました──われわれの世代にとって猪木さんは特別の存在です。力道山の時代からプロレスを観ていた私は、一時期観なくなった時期もありましたが、猪木さんやタイガーマスク(佐山聡)が登場しプロレスブームが到来するや、また観るようになりました。ストロング小林との死闘、モハメド・アリとの歴史的試合も観ました。

マイオカ・テツヤ画(『いかすプロレス天国』〔鹿砦社刊〕所収)
 
板坂剛『アントニオ猪木・最後の真実』【復刻新版】

特に1985年、板坂剛さんの『アントニオ猪木・最後の真実』(現在品切れ)を出版してから、どういう因縁かプロレス関係書をどんどん出版するようになりました。

遂には月刊『プロレス・ファン』を出すまでになりました。賞杯を出したりもしました。

しかし、その頃になるとプロレスは冬の時代に入り、猪木さん率いる新日本プロレスも経営が苦しくなり、全日本女子プロレスも倒産しました。

「吉本女子プロレス」なんて団体を吉本興業が作ったり、1冊写真集を出しましたが、全く売れませんでした。

というより、プロレス本自体が売れなくなり撤退を余儀なくされました。

『アントニオ猪木・最後の真実』は、序文を今は亡き岡留安則さん(いわずと知れた『噂の眞相』編集長)が書き、イラストは平口広美さんでした。一夜で、私が本文を入力し、初版は2000部、一日で売り切れすぐに増刷、ある書店からは600部の注文が入った記憶があります。ずいぶん売れました。

「元気があればなんでもできる」「苦しみの中から立ち上がれ」……慎んでご冥福をお祈りします。合掌。

(松岡利康)


◎[参考動画]アントニオ猪木 Antonio Inoki Tribute 2022-10-03 / Family secret story 家族秘話(めざまし8 2022-10-03 Fuji Tv )

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年11月号
『紙の爆弾』と『季節』──今こそタブーなき鹿砦社の雑誌を定期購読で!

携帯基地局のマイクロ波と「妄想」、隣人2人に同じ症状 黒薮哲哉

新世代公害とは、化学物質による人体影響と、電磁波による人体影響のことである。この両者が相互に作用して複合汚染を引き起こす。

 

米国のCAS(ケミカル・アブストラクト・サービス)が1日に登録する新しい化学物質の件数は、1万件を超えると言われている。勿論、そのすべてが有害というわけではないが、地球上は化学物質で溢れ、それに電磁波が重なり、生態系へ負の影響をもたらしている。透明な無数の牙が生活空間のいたるところで待ち構えている。

1年ほど前から、わたしは電磁波が人間の神経系統に何らかの影響を及ぼした可能性がある事例を取材している。具体的には「妄想」である。あるいは精神攪乱。2005年から、電磁波問題の取材をはじめた後、稀にこうした事例に遭遇してきた。ただし電磁波以外が「妄想」の原因である可能性もある。わたしは医師ではないので、このあたりのことはよく分からないので、事実を優先するのが基本的な取材の方針だ。

◆欧州評議会の勧告を上回る電磁波強度

今回、ここで紹介する事例の取材対象者は、AさんとBさんである。いずれも70歳前後の女性である。Aさんは一人暮らしで、Bさんは夫と二人で暮らしている。隣人同士である。住居の所在地は、神奈川県川崎市。郊外の緑が多い地域である。

最初、わたしはBさんから、「頭痛やめまいに悩まされている。電磁波の影響ではないかと疑っている」と電話で相談を受けた。わたしは現場を調査するためにBさんの自宅へ足を運んだ。Bさんの自宅には、Aさんの姿もあった。Aさんも、Bさんと同じような症状に悩まされていることをわたしは、その場で知った。

持参した電磁波測定器で、Aさん宅とBさん宅のマイクロ波(携帯電話の通信に使われる電磁波)の強度を測定した。Aさん宅でもBさん宅でも、優に1μW/c㎡を超えていた。1μW/c㎡という数値は、総務省の規制値はクリアーしているものの、欧州評議会の勧告値に比べると10倍も高い。欧州では危険な領域とされる数値に入る。Bさん宅では、2μW/c㎡を超えることもあった。

 

◆森を隔てて巨大な鉄塔型の基地局

近辺に基地局があるに違いないと考えて、わたしはAさんとBさんに、自宅近辺の環境について質問した。しかし、2人とも基地局の形状を知らない。従って基地局があるのかどうかを答えようがなかった。

 そこでわたしは徒歩で基地局の有無を確認することにした。その結果、2人の自宅から、200メートルほどの位置に鉄塔型の巨大な基地局があるのを発見した。鉄塔の周りに、10本以上のアンテナが設置してあった。

基地局は、二人の家からは森に遮られて見えないが、強い電磁波はこの基地局が発生源である可能性が濃厚だった。たまたま基地局の近くで子供が遊んでいたので、

「頭痛や吐き気に襲われることはないか?」

と、聞いてみた。子供らは、「いいえ」と答えた。

◆自宅の周りに巨大な金属フェンス-電子レンジの状態

Bさん宅の玄関から5メートルのところに廃材置き場がある。Bさん宅の敷地と廃材置き場は、金属フェンスで仕切られている。廃材置き場の地形が入り組んでいて、Bさん宅はちょうど「コの字」金属フェンスに囲まれた中央部に位置している。金属は電磁波を反射するので、基地局から放射されるマイクロ波は、金属のフェンスに反射して、Bさん宅を直撃している可能性があった。ただし、Bさんの夫は特に体の不調はないとのことだった。

Aさん宅もそれに近い位置関係になる。

「コの字」型の金属フェンスと電磁波の関係について、わたしは電磁波問題に詳しい大学の専門家に問い合わせた。グーグルの航空写真で現地を確認してもらいコメントをもらった。

「巨大な電子レンジの中で生活しているような状態になっている」

わたしはAさんとBさんに、基地局を所有する電話会社と撤去の交渉をするように勧めた。二人は電話会社に苦情を申し入れたが、電話会社は総務省の規制値を守って操業しているので、対策するに及ばないと相手にしなかった。

◆顕著な被害妄想が現れた

その後、わたしはAさんとBさんから断続的に聞き取り調査を続けた。そのうちに2人とも奇妙な事を口にするようになった。Aさん宅とBさん宅に隣接するCさん(わたしは面識がない)が、夜になると殊更に荒々しく窓を閉めたり、騒音を出したりして、「自分たちを攻撃している」と言うのだった。

植木の鉢も壊されたので、警察に相談したが、相手にしてもらえなかったという。Bさんの方は、体調不良で自宅に住めなくなり、ホテルへ「避難」することが増えているという。実際、わたしに、

「どこか電磁波から逃れられる施設はありませんか」

と、尋ねてきた。

「福島県にありましたが、今はコロナで閉鎖されています」

ふたりの症状はさらにエスケレートした。Aさんは、

「自宅へ戻ってくると、見知らぬ男が投光器で光を放射したり、大声で怒鳴りちらしたりします。部屋の中をのぞかれたこともあります。嫌がらせの電話もかかってきます」

と、話す。

Bさんも同じような妄想めいた内容の苦情を打ち明けた。わたしは、2人の訴えを電話で繰り返し聞いた。その口調から、ウソを話しているとは思えなかった。

AさんとBさんのどちから1人だけに、「妄想」が現れているのであれば、マイクロ波と妄想の接点は弱いが、隣同士の2人が「妄想」を訴えているわけだから、マイクロ波が原因である可能性も考慮する必要があった。タブーに近いテーマを本稿で事例を紹介したゆえにほかならない。

それにわたしは他にも類似したケースを取材したことがあった。たとえば鎌倉市の事例では、男性が「夜になると、基地局からものすごい音がする」と訴えていた。基地局からは、低周波音はですが、「ものすごい音」というほどではない。従って男性の話は、マイクロ波による「妄想」の可能性があった。男性の妻は、音については否定していた。夫妻のうち男性にだけ「妄想」が現れたことになる。

米軍が所有するマイクロ波の武器

◆マイクロ波で精神を攪乱する技術
 
マイクロ波が人間の精神を攪乱することは、昔からよく知られている。この点に着目して、マイクロ波を使った武器の開発が進められてきた。たとえば1977年2月に発行された『軍事研究』に興味深い記事が掲載されている。短いものなので、全文を引用してみよう。

ソ連マイクロ波兵器を開発

国防総省報告によると、ソ連は現在、人間の行動を混乱させたり、精神障害や心臓発作を起こさせるマイクロウエーブ(極超短波)兵器を開発中である。

同報告はさらに、ソ連はすでにマイクロウエーブやその他の波長の電波による人体への科学的作用や脳機能の変化を実施しており、マイクロウエーブの照射によって、敵の外交官や軍部高官の思考を狂わすことを狙っているようだ。

すでにソ連はさきにモスクワの米大使館にマイクロウエブ照射を行って情報収集電子機器を狂わせ、米国務省から抗議を受けている。

また、英国BBCは、「米外交官らがキューバで体調不良、マイクロ波攻撃の可能性=米報告書」(2020年12月20日)と題する次のような記事を掲載している。

米外交官らがキューバで体調不良、マイクロ波攻撃の可能性=米報告書

キューバでアメリカの外交官らが原因不明の体調不良を訴えたのは、マイクロ波に直接さらされたのが原因だった可能性が高いと、米政府が報告書で明らかにした。

米国科学アカデミーがまとめた報告書は、マイクロ波を誰が発していたのかは特定していない。

ただ、50年以上前に当時のソヴィエト連邦が、パルス無線周波エネルギーの効果を研究していたと指摘した。

この体調不良は2016~2017年に、キューバの首都ハバナのアメリカ大使館職員に最初にみられた。

◆「妄想」を取材対象に

マイクロ波を使って精神を攪乱したり体調の異変を誘発する技術は、すでに完成していると言われている。マイクロ波で敵地を軍事攻撃したり、デモ隊を解散に追い込む戦略も実現可能になっている。マイクロ波で、激しい吐き気を引き起こしたり、戦意を喪失させたりする戦略である。

AさんとBさんに見られる「妄想」が、本当に携帯電話基地局からのマイクロ波によるものかどうかは現時点では判断できない。しかし、「妄想」が現れている人を指して、単純に「精神の病」と判断することは避けなければならない。マイクロ波が影響している可能性もあるのだ。

以前、わたしは「妄想」を訴える人は、電磁波問題の取材対象から外していたが、最近は、積極的に取材する方針に変えた。精神疾患が原因で「妄想」が現れたのか、それともマイクロ波が原因で精神疾患になったのかは分からないからだ。

今後も、この問題の推移を追っていきたい。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年11月号
黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』

タイムキーパーは目立たぬも重要な任務 堀田春樹

◆裏方の一角

過去、「音色で奏でるゴングの魅力」編で少々タイムキーパーに触れていますが、今回この任務について、目立たぬ部分を語りたいと思います。

昭和の名タイムキーパー、語り草となっている荒木栄氏(1991年頃撮影)

試合進行に関わる各担当者は、それぞれの苦労が多い任務を担っています。リングアナウンサー、レフェリー、タイムキーパー等は稀にミスをしても、直ちに訂正して進行させることは立派な役割を果たしていると言えます。マズいのは間違いに気付かず進行すること。しかしその気付かない間違いが、観衆には気付かれている場合も多々あり、また観戦者が知らないルールの意味も多々あるようです。

◆試合進行の重要な役割

タイムキーパーの任務は時間計測及びレフェリー指示による中断での時間の一時停止。ノックアウトタイムの記録。ノックダウンの際、レフェリーに伝える正確なカウント。キックボクシング団体や興行によっては採点集計と公式記録の作成などがあります。

試合はレフェリーがドクターチェックを要請する場合など一時中断を指示しない限り、第1ラウンド開始からノックアウト時、または最終ラウンド終了まで、1ラウンド基本3分、インターバル基本1分をストップウォッチの秒針を刻みながら延々続けます。

プロボクシング(JBC)では通常、タイムキーパーは2名で行ない、二つのストップウォッチを同時にスタートさせ、ゴング係とノックダウンカウント係に分かれています。

レフェリーがノックダウンコールすると、タイムキーパーによるカウントが始まります。これはレフェリーがノックダウンを奪った選手をニュートラルコーナーへ誘導する等、タイムラグが生じる為、ノックダウンとなってから正確な経過秒数をレフェリーに伝えるフォローの役目を果たします。

ノックアウトタイムはカウントアウトやレフェリーストップとなる瞬間

「カウントはレフェリー主導」とされるのはムエタイが主でしょう。日本でも「何でタイムキーパーがカウントするんだ? レフェリーがカウントするもんだろ!」という意見も聞かれますが、タイムキーパーのカウントは、ノックダウンに至るダメージを負ってから何秒経過したかが重要で、ノックダウンを奪った選手がすぐにニュートラルコーナーに行かないとカウントを進めず、ダウンした相手に回復のチャンスを与えてしまうという概念ではなく、ダメージによる10秒境界線を曖昧にしないという視点です。

ノックダウンからの正確な秒数経過が解っていれば、レフェリーが、ニュートラルコーナーに行かない選手の誘導に時間が掛かっても、最終的には「レフェリー判断による」という最高権限者の判断に移りますが、この「基本1秒毎のカウントでの10秒ライン」を把握することが出来ます。

タイでのレフェリー講習会にて、見えぬ姿のタイムキーパーも任務の中

1990年2月11日、東京ドームで行われた世界ヘビー級タイトルマッチ、マイク・タイソンvsジェームズ・バスター・ダグラス戦は第8ラウンドまでに優勢だったダグラスが、タイソンの右アッパーに崩れ落ちた際のロングカウントが物議を醸しました。「10秒超えていただろ!」と言われたように、カウントはレフェリー主導でいいとしても、最初のカウントからの正確な経過をしっかりレフェリーに伝わっていないと「基本10秒」から、どれだけ大きくズレているか、レフェリー自体が把握出来ないことになるでしょう。ダメージ深い失神状態ならノーカウントのレフェリーストップとなるでしょうが、意識はあるが効いてしまって直ぐには立てない場合、最初のカウントの始まりが遅くて、基本10秒時点でカウントがまだ5(ファイブ)だったら、そこから逆転のノックダウンが起こった場合に、その相手にはしっかり10秒でテンカウントに至っていたら、ダグラス戦の物議を醸したような事態が起こるでしょう。

キックボクシング等では観衆に伝える為のカウントになっていて、レフェリーの後に続いてカウントしている姿をよく見かけますが、本来はこのようなパフォーマンスではありません。タイムキーパーよりレフェリー側のお話になりましたが、タイムキーパーが関わる重要な部分でもあるのです。

昭和の後楽園ホール、電光掲示板はラウンド表示のみ(他に電光ランプあり)
現在の後楽園ホールの電光時計、プロレスでも使用されたことあります
ルンピニースタジアムでのゴング(鐘)と計測器らしき物。ベルもあり

◆過去の汚点

昔、プロボクシングでタイムキーパーにあった汚点は、1988年(昭和63年)6月5日のWBC世界戦、井岡弘樹vsナパ・キャットワンチャイ初戦で、最終12ラウンドの、井岡弘樹がパンチを喰らって劣勢になったところで終了ゴングが鳴り、20秒ほど早かった事態がありました。あれは物議を醸した汚点で、悪い前例が出来た為に、後にタイでも別の世界戦でやり返されました。

過去のキックボクシングに於いては、ストップウォッチの準備が足りず腕時計で計測したり、後楽園ホール等の設備が整った会場では、バルコニー辺りのボクシング試合用電光時計を頼りにしていた興行もあり、試合開始したものの操作し忘れたまま1分も経った頃にタイムを動かしだした試合があったようです。すでにノックダウンを奪われた圧倒的劣勢選手が、「残り時間2分50秒」辺りの電光時計を見て唖然としている表情があったと言われるも修正しようがなく、そのまま進行した様子。過去にはタイムはしっかりストップウォッチで計測しているものの電光時計を操作せず開始し、「オイ、時間止まってるぞ!」と観衆から野次られる光景もありましたが、計測は問題無いものの、誤解が起きないよう電光時計も正確に作動させた方がいいでしょう。

◆責任重大な任務

以前、触れた件でのマッチメイカーをやりたい人も、欠員が出ることは少なく滅多に募集もされませんが、機会があればこんな裏方仕事から体験していった方がいいでしょう。JBCではタイムキーパーを経験してからレフェリーに移っている様子も窺え、各任務を体験していることがスムーズな連携プレーに繋がるようです。

「時間ぐらい俺でも計れる」と思う人は多いでしょうが、簡単そうでも責任重大な任務です。

確かに誰でも簡単に小学生でも計れます。しかし、雑談せず延々と集中力を持って、アクシデントにもパニックにならず毅然と続けることは難しいことでしょう。

もし計測をミスしてラウンドを延ばしてしまった上にノックアウトが起こったら、選手の運命、人生を変えてしまう恐れもあり、各ジム陣営から恐ろしいほどの恫喝を受けるでしょう。

このようにタイムキーパーはレフェリーが試合を成立させる裏方となる存在ながら、正確な計測で試合を進行させる為の重要な任務です。

論点ズレした部分はありますが、裏方の存在の一つを紹介させて頂きました。

試合開始を告げるゴングを打ち鳴らす足立聖一氏(2022年3月13日)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年11月号

あさま山荘事件から50年後に考える「連合赤軍問題の本質」〈前編〉 暴力について「深く」思考するためのシンポジウムと書籍 小林蓮実

「武装闘争や内ゲバをどのようにとらえるのか」。それは、おそらく関係者も、もちろんわたしたちにとっても、明確な答えを出しにくい問いであるのかもしれない。

2022年6月18日、「あさま山荘から50年─シンポジウム 多様な視点から考える連合赤軍」と題されたイベントが開催され、会場である目黒区中小企業センターホールに多くの人が集まった。わたしは成り行きで受付の(役に立たない)手伝いをしていたが、客層は老若男女、多様だ。

このイベントでは、大学1年生の安達晴野さんからの暴力に関する質問に対し、岩田さんは「正義が勝つのでなく、世の中は勝った者が正義をつくっている」と、ガンディーに触れたことに対し、金廣志さんは「暴力についてはいちばん悩んできた。我々は暴力をなくすための暴力と考えていた」「歴史上、システムがチェンジする時に暴力が行使されなかったことはない」「本当にそんな暴力はあるのか、いまだに解決がつかない。あなたたちも一緒に考えてほしい」と答えていた。

さらに安達さんがガンディーは非暴力・不服従を訴えたことに触れ、暴力に異論を唱える。それに対し、金さんは「ガンディーのインドが世界で最も軍事大国の1つであることを含め、我々は暴力についてもっと深く考えたい」「非戦を語り続けること以外に、どうやって未来社会がつくれるんだということが、一応、わたしの建前上の考え」と返した。これらのことが、わたしにとっては特に印象に残ったことだ。

ガンディーは非暴力で御しやすかったからイギリスが評価したという内容の、アメリカの監督が描いたドキュメンタリー映画を観たことがある。非暴力を訴え続けるだけで争いがなくなるという形に、現在、なっていない。また、日常的に暴力にさらされ、報道もなされ続けている。

戦争や暴力が身近に語られるなか50年の節目にあたり、今回の前編と次回の後編を通じ、改めて連合赤軍の問題について考えたいと思う。(以下、敬称略)

シンポジウムにて、若者からの質問に当事者が答える様子
 
椎野礼仁・著『連合赤軍事件を読む年表』(ハモニカブックス)

◆時系列で「連赤」の真実を追う

1月10日、『連合赤軍を読む年表』(椎野礼仁・著/ハモニカブックス)が発行された。本書は、長年にわたる「連合赤軍の全体像を残す会」の活動や発行媒体などをもとに、50年の節目に向け、改めて発刊されたものだ。

連合赤軍は共産主義者同盟赤軍派と京浜安保共闘革命左派によって結成され、1971~72年に活動。革命左派は山岳ベースを脱走した2名を「処刑」し、連合赤軍としても山岳ベースではメンバー29名中12名の命を奪った。また、72年にはあさま山荘で人質をとって立てこもり、機動隊員2名、民間人1名も死にいたったのだ。

本書では、題名通り年表形式で、新左翼運動、革命左派・赤軍派、社会状況、警察・メディアの動きなどを追っている。メンバーが運動に参加するようになった背景・きっかけ、永田が川島に性的暴行を受けていたこと、永田と坂口の結婚、上赤塚交番襲撃時に警官による発砲でなくなった柴田のための救援連絡センター主催による人民葬、アジトの様子、最初の「処刑」決定に関する永田と坂口の記憶の食い違い、「処刑」に対する森の反応、森の論理や革命左派と赤軍派とのヘゲモニー争い。そんな内容から始まる。

次に、「連合赤軍の成立と『総括』」という章が立てられており、永田の女性問題への関心が批判へと結びついていく様子やセクハラ問題の対処から暴力への展開などが読みとれるのだ。また、「共産主義化」という方法論の登場、暴力に対する尾崎の感謝の言葉、その他、総括を要求される各人の反応、死亡者が出た際の周囲の反応などが、立て続けに記されている。さらに、逮捕時の永田の心境にも触れられていた。

続く「あさま山荘の10日間」の章では、坂口の、「敵から政治的主張を言えといわれたことで『政治的敗北をヒシヒシと感じざるを得なかった』」というような内面も吐露される。あさま山荘で人質にされた女性は、「銃を発砲しないで下さい! 人を殺したりしないで下さい! 私を楯にしてでも外に出て行って下さい」と叫ぶ。そして、妻を人質に取られた管理人の思いや坂東の父の自殺にも触れていた。この短い章の間にも、ドラマチックな展開を感じてしまう。

次回の後編では、続きの内容を追った後、わたしがイベントや本書を通じて考えた暴力に関する考えを伝えたい。(つづく)

▼小林 蓮実(こばやし・はすみ)
1972年生まれ。フリーライター。『現代用語の基礎知識』『週刊金曜日』『紙の爆弾』『NO NUKES voice(現・季節)』『情況』『現代の理論』『都市問題』『流砂』等、さまざまな媒体に寄稿してきた。労働・女性運動を経て現在、農的暮らしを実現すべく、田畑の作業、森林の再生・保全活動なども手がける。取材等のご相談も、お気軽に。
Facebook https://www.facebook.com/hasumi.koba

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)
『一九七〇年 端境期の時代』

《書評》『紙の爆弾』11月号 圧巻の中村敦夫インタビューと特集記事 「原罪」をデッチ上げ、「先祖解怨」という脅迫的物語を使う統一教会の実態 横山茂彦

まずは巻頭の中村敦夫のインタビュー(書き起こし)が圧巻だ。『紙の爆弾』11月号、この巻頭記事だけのために買ってもお得である。

部分的には知っていたが、中村氏は70年代から統一教会(歴史的記述なので、統一教会名で統一する)に関心を払い、テレビのワイド番組で警鐘を鳴らしてきた一人だ。ために、協会側から刑事告訴もされている(不起訴)。

中村氏は70年代の黒板講話に触れている。正確には70年代後半(78年ごろ)からだが、原理研が街頭に小さな黒板を持ち出して、共産主義の「原理」「悪魔性」を解説・批判するというものだ。もちろん漫画的な共産主義論だった。

筆者も通っていた大学のある駅前で、この黒板講話に議論を挑んだことがある。サンシモンやフーリエの社会主義思想はもとより、バブーフやマルクス、エンゲルスの一語も読んだことのない彼ら(彼女ら)は、わたしの質問に何も答えられなかったものだ。共産主義のイロハを知らない人たちが、得意そうに「解説・批判」していたわけだ。

◆宗教は基本的に「無料」である

「原罪」をデッチ上げ、先祖解怨という脅迫的物語を使う統一教会の手法を、中村氏はこう断じる。そして「信教の自由」についても説き起こす。

「現在の報道でも、『信教の自由』に絡めて話す人が多いが、私に言わせれば、これは宗教ではない。そこに信教の自由を持ち込むことは、問題に正面から取り組むのを避けるために、あえてハードルを高めているように見える」(本文より)

つまり、宗教を騙る脅迫的な商売に、信教の自由を持ち込む愚を批判しているのだ。そもそも宗教の大半は、現実社会から生じる心の不安をやわらげる役割を持っているにすぎない。

現世の不幸を嘆き、来世の幸福を祈念するのもいいだろう。ただしそれは、庶民が満足に文字を読めなかった時代とはちがい、本やビデオなどを媒介に得られるようになった現代において、ほぼ無料でなければおかしい。

高僧や導師、牧師の説教を聴くのも、大半は無料である(寺院の講話会や教会のミサ)。寺院運営のための駐車場経営や幼稚園経営、簡易な寄付やバザーなど以外に、宗教が金儲けをするのは、ほとんどすべてが詐欺なのである。※この文脈は、中村氏のものではありません(筆者)。

◆中村氏の原理的批判

さすがに中村氏は勉強家で、統一教会の教義の批判に踏み込んでいる。旧約聖書を曲解した「原理講論」がそれである。その内容が、韓国語版・英語版・日本語版で異なっている点がミソであるという。

圧倒的にキリスト教の影響がつよい韓国においては、その教義は限定的で反日的である。原罪国家とされる日本においてこそ、反共思想とむすびついて爆発的に布教が拡大したとする。その役割を果たしたのが、安倍晋三の祖父、岸信介だったのだ。

そして冷戦が終わって反共が商売にならなくなると、こんどは北朝鮮とむすびついて共和国におけるビジネス(ホテル事業)を展開する。中村氏の指摘するとおり、統一教会は思想的一貫性のある政治団体でもなく、その正体は宗教団体を装ったビジネス団体なのだ。それも会員の無償労働をもとにした、搾取と収奪、霊感詐欺商法である。ここを明確にしないと、信教の自由という隘路に迷込むことになる。
「そんな教団になびいた日本の保守政治家も、思想や政策が一致するかどうかは関係なかった」(本文より)。

ネトウヨや政治に一知半解な人々が、自民党が反日団体と手をむすぶのはおかしい。あるいは思想と政治が一致していない、などと悩んでいるのは、自民党政治を知らないからである。

剥き出しの政治の原理は「奴は敵だ。敵は殺せ」(『幻視の中の政治』埴谷雄隆)であるとともに、「敵の敵は味方」である。思想と政治が一致するなどと思っているのは、自民党右派に期待するお花畑なネトウヨレベルと指摘しておこう。

たとい思想的に正反対にある党派でも、当面の敵の前には味方というのが、自民党政治の本質なのである。そして選挙に敗れて「ただの人」にならないためには、誰とでも(暴力団や反社とでも)手をむすぶ。統一教会を積極的に取り込む。まさにこれが「選挙で圧倒的につよい」安倍政治の本質だったのだから。

最後に中村氏の推測として、安倍晋三が拉致問題の「解決」に統一教会を利用した可能性を挙げておこう。近い将来に、自民党に「切られた」統一教会側から、愕くべき真相が飛び出してくる可能性を指摘しておこう。

◆政治と宗教を議論しよう

広岡裕児の「いまこそ考える政教分離の本質」は、政治と宗教を正面から議論する必要を提起している。このテーマこそ、いま日本において煮詰めていく政治論である。

広岡氏は公明党の山口那津男代表が今回の事件を「政治と宗教一般のことに広げるべきではない」(8月1日)という言葉を冒頭にあげ、石井幹事長の記者会見(8月19日)の矛盾点を指摘する。

すなわち「国家が特定の宗教を擁護したり、国民に強制したりすることを禁じている」ことが、公明党(創価学会)において、矛盾しないのか。という論点である。

じっさいに公明党は政府(国家)に参加し、さまざまな政策を実行しているのだ。創価学会が選挙を「法戦」(宗教行為)と位置づけて戦い、その意をうけた政権与党(公明党)が支持者(創価学会=宗教団体)に有利な政策を行なうことは、まさに上記の政教分離に違反する。※広岡氏はこの部分で疑問を提起するにとどめている(筆者)。

広岡氏によれば、宗教政党には二つに分類できるという。

ドイツやフランスのキリスト教民主主義政党においては、多元主義(政治的な人権・博愛主義)を基礎に、キリスト教会が伝えようとしている価値観を推進する。社会の法が優先し、キリスト教精神はその思想的基礎にすぎないというものであろう。アメリカ大統領が聖書に手を置いて宣誓するのも、この典型である。

いっぽう、イランイスラム共和国ではイスラム教政党が政権をにぎり、アフガニスタンではタリバンが、宗教的価値観によって全体主義国家を形づくっている。だがこれは「キリスト教とイスラム教の違いではない。この二種類はどんな宗教にもある」(本文から)という。

ところで公明党においては、いまだに池田大作の「池田精神」が「社会の法」に優先すると広岡氏は指摘する。そこから「(宗教)政党が権力を掌握するにあたっては、大小新旧教義を問わず、すべての宗教を認めたうえで宗教とは距離を置かなければならない。これが政教分離の本質ではないか」と提起する。

対立宗派である日顕派を認めない創価学会(公明党)に宛てた提起だと、筆者は深読みした。まさしく、政治と宗教を本気で論じなければならない時代なのだ。

さて、その公明党の代表が大方の予想をくつがえす、山口那津男の続投(8期連続)となった。その裏側には何があったのか。大友友樹のレポートが興味ぶかい。熊野議員のセクハラ問題の隠ぺい、創価学会内の山口人気への池田会長の判断など、こちらも火種は少なくないようだ。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年11月号

『紙の爆弾』2022年 11月号
目次
中村敦夫が語る50年 旧統一教会「口封じ」の手法
旧統一教会問題が選挙に与えた衝撃 沖縄県知事選で白旗を上げた自公政権
メディアに“逆ギレ”する議員たち 旧統一教会信者たちが語った自民党議員への怒り
特集●すでに進んだ日本の「戦時体制」
「防衛費」を積み上げてつくる「基地の島」
法律からみた安倍・菅・岸田の戦争準備
米国覇権を超克する「真の安全保障」
東京五輪汚職捜査はどこまで進展 自壊する岸田文雄政権
政党交付金の要件を満たしているのか 統一協会より「自民党の解散」こそ急務
巨大製薬企業に国家予算流出 政府に阻害された「日本製ワクチン」
「政治と宗教」問題の防波堤 公明党・山口那津男代表続投の裏側
「政治と宗教」そして民主主義 いまこそ考える「政教分離」の本質
スウェーデンの新聞が報じた米国の「ドイツ・EU弱体化のためのウクライナ戦争」謀略
「女性蔑視」でトヨタにも古傷が 香川照之“性加害”騒動の波紋
シリーズ 日本の冤罪31 飯塚事件
連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
ニュースノワール 岡本萬尋
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
キラメキ★東京漂流記 村田らむ
裏から世界を見てみよう マッド・アマノ
権力者たちのバトルロイヤル 西本頑司
元公安・現イスラム教徒 西道弘はこう考える
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵
amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0BGXK3QNM/

『紙の爆弾』最新号に寄せて 『紙の爆弾』編集長 中川志大

9月27日の「安倍国葬」には、当日まで多くの反対の声が響きました。やってしまったら終わりではなく、「反対の中、強行された」という事実を残さなければなりません。そのためには、今回集まった声を、より具体的な安倍・菅・岸田政治の検証につなげていく必要があります。

そのひとつとして、11月号では現在日本の「戦時体制」について特集を組みました。安倍政権の解釈改憲によって、憲法を改定せずとも日本が危険な状況に置かれてしまっていることを、あらためて確認するのが目的です。護憲と同時に、憲法解釈もとり戻すことが必要となっています。そもそも憲法で縛られる側である政府が勝手に解釈を変更すること自体、立憲主義の否定であり、許されないことです。そこにおいて着目すべきは、自衛隊の海外派遣による「戦争のできる国」化だけではありません。「国民監視」の強化こそ、私たちがいま、もっとも危険視すべきことではないかと考えます。

さらに「GDP2%」目標は、実現すれば米国・中国につづく世界第3位の軍事予算。金額ありきなのは、すなわち増加分が、米国の軍産複合体への貢献だからです。その米国は、ウクライナ戦争で儲けつつ、11月の議会中間選挙に向けて「台湾政策法案」など、中国煽動も強めています。中国に対しても「力による現状変更」という言葉を使い始めていますが、仮に台湾有事において米国が出兵することがあれば、米国の立ち位置はロシアのそれであり、米国に協力する日本はベラルーシの役割を演じることになる、という指摘があります。あらためて反戦と日本の安全保障について考えなければなりません。本誌特集は、その一助となるものです。

連日報道が続く旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の問題については、霊感商法被害、二世信者の問題、政界との癒着など内容は多岐にわたりますが、それらが今に始まった問題ではない以上、現在においてもっとも考えるべきテーマは「なぜ問題が放置されてきたのか」です。今月号では1993年にテレビでの発言で教会から刑事告訴を受け、98年には参院議員として国会で追及した中村敦夫氏に話を聞きました。一方、週刊文春(9月29日号)が小川榮太郎氏について報じた「岸田首相に国葬を決断させた統一教会“弁護人”」をはじめ、“保守派”の正体にも注目が集まっています。これも、注目すべきひとつのテーマといえるのではと思っています。もちろん、旧統一教会は日本進出において、右翼勢力と深い関わりを持ってきました。それと、現在の“保守派”の関係も気になるところです。

さらに今月号では、新型コロナワクチンについて記事を掲載しました。とくに、「国産ワクチン」開発が政府により阻害され、巨大製薬企業に日本の富を流出させてきた事実に焦点を当てています。そこからワクチン広域接種の“目的”が見えてきます。厚生労働省がワクチン効果に関するデータを改ざんしていたことをレポートした8月号記事とあわせてお読みいただければ幸いです。新ワクチンなど接種推進がここにきて加速するなか、ワクチンそのものについての分析も、さらに必要性が増しています。その他にも多様なレポートを盛り込み、「紙の爆弾」は全国書店にて発売中です。ご一読をよろしくお願いいたします。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年11月号

『紙の爆弾』2022年 11月号
目次
中村敦夫が語る50年 旧統一教会「口封じ」の手法
旧統一教会問題が選挙に与えた衝撃 沖縄県知事選で白旗を上げた自公政権
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「政治と宗教」そして民主主義 いまこそ考える「政教分離」の本質
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ピョンヤンから感じる時代の風〈08〉 歴史教育における「日米統合」とは?  森 順子

高度情報化、グローバル化時代を担うグローバル人材育成を目的とする教育改革のもと、今年、4月から新教科書が使われ、新しい教育としてスタートした。

歴史教育は、「歴史総合」という新科目が、高校の必修となった。戦後の歴史教育の大きな転換になる可能性を秘めていると言われるこの科目は、これまでとは全く違う学び方という意味では、歴史教育の基本となる科目だ。

教科書の執筆者の一人である歴史学者の成田氏は、このように言われている。

「これまで世界史と日本史に分かれていた歴史科目を、18世紀以降の近代史として、『総合』した形として学ぶ新科目です」また「これまでの日本史の教科書のような、一国だけの歴史(ナショナルヒストリー)ではない。日本と世界をグローバルヒストリーとして学ぶことに主眼がある」そして「世界的な相互関係のダイナミズムから歴史をとらえます」と。

すなわち、「歴史総合」新科目は、歴史を日本史としては教えず、18世紀以降からの世界史として、「近代化」「国際秩序の変化」、「大衆化」、「グローバル化」の3編からなるテーマ史として教えるようになっている。

ここで問題は、歴史を日本史としてではなく、世界史としてとらえていることである。

言い換えれば、歴史を日本と世界の歴史、グローバルヒストリーとしてとらえると言いながら、その基軸を、どこまでも日本ではなく、世界に求めているということだ。

現在、「米中新冷戦」体制下にある日本に求められているのは、米国との「統合」である。そして、そのための教育改革が推進されているなかにあって、「歴史総合」科目は、自分の国を基本にして見る歴史を、世界を基軸にみる歴史にとらえ直して、教える教科だと言っているが、この意味するものは、何なのだろうか。

日本の歴史を日本独自の歴史ではなく、世界史の一環として見るというこの見方は、日本の独自の歴史、日本の歴史事実をなくしてしまうということではないのだろうか。教科書検定において、過去、日本がアジアで犯した植民地支配という行為に対して、その歴史事実を歪曲する教科書を合格させ、隣国、アジアに対する蔑視と軽視の立場を教科書に載せた。ちなみに欧米は、自己の植民地支配の歴史を全く総括していない。このことをとっても、歴史教育改革とは、何であるかが示されているのではないだろうか。それは、歴史の基軸を自国に置かず、とくに、欧米、近代史に置くことにより、日本の歴史、「日本史」を欧米史のなかに溶解させ、自分の国という観点を持たない人材、そういうグローバル人材育成のための歴史教育だと言えると思う。

すなわち、これが、日本を米国に「統合」するための教育改革だと言える。「英語とIT技術」を身に付けるだけでなく、日本人としての帰属意識やアイデンテイテイを持たない人材、無国籍のグローバル人材を育て、日本人の内面的側面をも溶解させアメリカ化するというではないだろうか。

 
森 順子『いつまでも田宮高麿とともに』(2002年7月鹿砦社)

新科目「歴史総合」は、「戦後の歴史教育の大きな転換の可能性を秘める」と言っているが、まさに、こういうことかもしれない。

20年以上続けてきた、グローバリズム、新自由主義によって、日本の教育はどうなったのか。一番、憂慮されることは、若者が自分の国を語れず、日本人としてのアイデンテイテイを失いつつあると言われていることだ。日本人という概念があいまい化され、日本の将来に対する不安を広げ、自己肯定感のない自分に自信が持てず、そういう社会、そういう自分の国を語れなくなっているということだと思う。

自国の歴史を知らなければ、自分の国を語れずと言うが、「日米統合」のための教育改革とは、グローバリズム、新自由主義をもう一度,蘇えさせるための「統合」だということができる。それゆえ、グローバリズム、新自由主義の全面化、徹底化であり、日本の教育のアメリカ化である。そして、それは、日本人をグローバル人間に、米国人への改造だと言えるかもしれない。こんなふうになれば、真の意味で日本人はいなくなり、日本人がいなくなれば、国が無くなってしまうというしかない。これが、「日米統合」のための教育改革の核となる重要な問題として提起されているように思う。

▼森 順子(もり・よりこ)さん
1953年5月12日、神奈川県川崎市で生まれる。法政女子高等学校卒業。1978年に田宮高麿と結婚。ピョンヤン在住。「アジアの内の日本の会」会員

7日発売 タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年11月号
『一九七〇年 端境期の時代』
『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

六代目三遊亭円楽さんの死去に想う 鹿砦社代表 松岡利康

円楽(襲名前・楽太郎)さんが亡くなりました。

落語家としての世間の評価は高いようですが、私の関心は別の所にあります。

円楽さんは1968年に青山学院大学に入学、やはり時代かなあ、彼も学生運動の波に巻き込まれます。新左翼の主流派・ブント(共産主義者同盟)系の活動家の時期もあったとのことです。

 
六代目 三遊亭円楽(1950年2月8日-2022年9月30日)

青学と言えば、ブント系でも中央大学と共に、後に叛旗派となる勢力が強かったです。これは事実で、私の知人のTJ氏は青学の叛旗派の中心メンバーとして71年三里塚第二次強制収容阻止闘争で逮捕・起訴されました。罪状は凶器準備結集罪とともに、なんと「殺人」容疑! 機動隊が3名亡くなった激しい闘いでした。私もこの闘争には参加しましたが、この現場には居合わせませんでした。TJ氏はその後、別の大学に入り直し学究生活に転じ、のちに早稲田の教授となりました。早稲田の奥深さを感じさせる逸話ではあります。

今では考えられませんが、60年代後半から70年代にかけての時代は芸能人、あるいは芸能界に身を転じる人たちも積極的に学生運動や反戦運動に関わった時期でもありました。北野武(明治大学工学部)さんもそうですし、同じ明大で言えば、往年の女優・松原智恵子さんもブント系の活動家だったとは、同じ明大学生運動OBの横山茂彦さんの証言です。

『家政婦は見た』で有名な故・市原悦子さんは、1971年、中村敦夫さんや原田芳雄さんらと共に老舗の劇団・俳優座で叛乱を起こし、その後も反戦歌『フランシーヌの場合』で一世を風靡した歌手・新谷のりこさん(古い!)らと共に長く中核派系の「杉並革新連盟」の候補者の推薦人でした。『家政婦は見た』の市原さんからは想像もできません。けっこう過激な方だったようです。

さて、円楽さんですが、青学の主流派だった、のちに叛旗派に流れる系列とは違い、なんと「さらぎ派」シンパだったとの噂を聞きました。どなたかとの対談で話されているとのことです。「さらぎ派」は別名「蜂起派」ともいい、トップの「さらぎ徳二」さんは当時のブントの議長で、69年4・28沖縄闘争で破防法(破壊活動防止法)の被告人でもありました。69年7月6日には、赤軍派によってリンチされています(いわゆる「7・6事件」。この報復として叛旗系の人たちに赤軍系の同志社大学の先輩・望月上史さんが拉致・監禁され、のちに亡くなります。新左翼運動最初の内ゲバの犠牲者と言われ、盛り上がった学生運動に汚点を残しました)。

話がマニアックになった感がありますが、円楽さんは、本当にそんな系列(さらぎ派)にいたのでしょうか? 信じられませんが、当時は多くの学生・青年が学生運動や反戦運動の渦に飲み込まれた時代ですから、ありえない話でもありません。もう50年余りも経ったのですから、どなたか詳細をご存知ならば、ぜひご教示いただきたいものです。

このところ私と同じ歳か、ちょっと上の世代がどんどん亡くなっています。訃報を聞くたびに、「明日は我が身」と思わざるをえません。特に私と同じ歳で言えば、忌野清志郎さん、大杉漣さんが亡くなった時にはショックでした。

(松岡利康)


[参考動画]【三遊亭円楽さん死去】「笑点」メンバーが追悼 好楽さん「早すぎるよ」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年11月号
『一九七〇年 端境期の時代』
『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

この秋、噴出し続ける広島政治・行政の積年の膿 ガツンと物申す気風で大掃除を さとうしゅういち

この夏の後半から秋にかけて、広島の政治・行政の膿が噴出しています。

◆噴出する膿1 総理腹心の石橋議員ら、旧統一協会と深い関係

まず、旧統一協会問題です。この間、岸田文雄総理自身の地元の腹心ともいえる衆院議員が旧統一協会と関係が深いことが明らかになりました。

岸田総理腹心の石橋林太郎衆院議員の政治活動用ポスター。広島3区で筆者撮影

石橋林太郎衆院議員は、広島県議会議員を経て河井克行受刑者の自民党離党に伴う、広島3区の自民党広島県連の公募に応募。過去に日本維新の会の衆院議員だった方、あるいは候補者だった方を押さえて、自民党の公認候補に選ばれました。ただ、この広島3区は、自民党の不祥事で議席が失われるということで、連立与党の公明党から候補を出すことが自公の本部間で決定。比例ブロック衆院議員だった斉藤国交大臣が3区の公認候補に選ばれました。そして、衆院選2021では、石橋さんが自民党の比例中国1位で当選。斉藤国交大臣も不利という当初の下馬評を覆して3区で当選しました。

その石橋林太郎衆院議員は実はお父さんの良三さん(県議)時代から統一協会と親密でいらっしゃいました。お父さんも広島の日韓トンネル推進組織のリーダーをされていたことが、一連の「文春砲」であきらかになりました。さらに、石橋議員の腹心ともいえる読売新聞記者出身の市議も統一協会との関係が明らかになりました。ただ、これらのことは、そもそも、地元では有名だったのですが、地元のマスコミがほとんど取り上げてこなかった。それだけのことです。

◆噴出する膿2 知事の湯崎さん腹心の教育長の不祥事

そして、もう一つの膿は、筆者の元職場・広島県庁内の不祥事です。すなわち、湯崎さんが肝いりで連れてきた平川教育長による官製談合疑惑です。
(※https://www.rokusaisha.com/wp/?p=43780

平川教育長がご自分の地元・京都のNPO法人「パンゲア」を事業への公募で優遇した、というよりも「文春砲」が正しければ「教育長がお友達に県費で仕事をつくってあげた」疑惑というほうが相応しい展開になっています。

教育長ご自身は、疑惑発覚の直後には「問題ない」と木で鼻を括ったようなことを記者会見でおっしゃっていました。

しかし、追加の文春砲が出てくるにつれて、教育長は追い込まれます。そして、ついに9月中旬、「外部の専門家による調査をさせる」と約束せざるを得なくなりました。最初に「問題ない」と断言してしまってこの展開は、一番まずい展開です。

◆アンチ河井系の与党回帰で自民党が盤石に……安倍暗殺直前の広島情勢1

さて、いわゆる河井事件発覚の前、河井案里さん、そして夫の克行受刑者は、自民党広島県連主流派からは孤立しており、自民党・公明党推薦の広島県知事の湯崎さん、市長の松井さんとも関係が悪いことで有名でした。

そのため、自民党の県議や市議でも、国政選挙の時は、極端な場合「わしは河井が大嫌いじゃけん、野党候補を応援する」と半ば公言している地方議員もいらっしゃいました。その反映で広島3区を中心に、「地方選挙は自民だけど、国政は野党」という有権者の方が多かったのが広島の特徴でした。

ところが、案里さん・克行被告の失脚、そして地元の岸田総理の誕生によりそういう議員も、斉藤国交大臣支持で固まりました。かつて、日本維新の会で活動されていたような元候補者も自民党の公募に応募するような状況も起きたのです。これが、2022年7月8日の「安倍暗殺」直前の広島の情勢の特徴でした。

◆アンチ知事・市長系の議員の失脚で知事・市長の「安倍化」加速……安倍暗殺直前の広島政治情勢2

また、一方で、河井案里さんを参院選2019で応援し、なおかつお金を河井夫妻からもらっていた自民系議員には、知事の湯崎英彦さん、市長の松井一実さんに批判的な方が比較的多かったのです。

皮肉なことですが、河井疑惑の追及で、知事も市長も大助かりになった。

このお二人、とくに知事の湯崎さんは、8.6の平和記念式典のあいさつは毎年それなりに素晴らしいことでは有名です。一方で、県政の中身では問題山積です。一言でいえば「安倍化」しているのです。

筆者の家の前の高速道路5号線二葉山トンネル問題では木で鼻を括ったような対応が続いています。説明しないで逃げるというのはまさに、故・安倍晋三さんうりふたつです。

産廃処分場問題では全国でも、大甘の姿勢が目立ちます。実はいわゆる産廃税は導入していますが、立地を規制するような条例がないために、効果は限定的なのです。(https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/zei/1177301663057.html

その結果、安佐南区で産廃処分場を外資が購入して大幅拡張したり、三原市では水源地のど真ん中に平気で処分場が許可されたり、ということが起きています。外資など企業のやりたい放題に大甘。まさに安倍晋三さんそのものです。

◆「河井にはそれなりに厳しく、知事・市長に甘い」広島のマスコミ・野党第1党は反省を

しかし、なぜ、こんなことになってしまったのか?

政策論議不在の広島の政治の構造については、筆者はこの12年間、ずっと街頭などで訴えてきました。政策論議が不在だから、「河井夫妻のようなお金か」、「総理、知事、市長のような組織か」の政治になってしまうのです。

そして、その構造の責任の一端は、広島のマスコミにもある、と筆者はみています。

すなわち、以前から、広島県内各社の姿勢は、自民党広島反主流派であった河井案里さん克行受刑者に対してはそれなり厳しいけれども、岸田総理や知事の湯崎さん、市長の松井さんに批判的な報道はほとんど見られません。

なお、安倍晋三さんに対しては、その政治姿勢や2度の水害時の危機管理に対してそれなりに批判的な姿勢もあったように記憶しています。

確かに、露骨に金をばらまいた河井夫妻=広島自民反主流派は最悪の金権政治家ではある。しかし、一方で、河井批判の陰で旧統一協会を含む組織がちがちの政治をやってきた総理、知事、市長ら自民系主流派の問題点の追及がおろそかになったのではないでしょうか?

野党も広島の場合、野党第1党は事実上、労働者のほんの一部でしかない重厚長大大手企業の労働組合のための党であり、知事や市長の議案に反対することはほとんどありません。したがって、知事や市長の問題点を街頭などで訴えるのも日本共産党さんと筆者くらいです。最近では、社民党さんもそれなりに街宣をがんばっておられるようですが。マスコミや野党第1党の知事や市長に対して腰が引けた対応という要因が解消されないと、今後もまた、膿がたまっていくことでしょう。

◆とにかく総理、知事、市長にガツンとモノ申し続けよう!

こうした中、筆者は、9月16日朝、広島市安佐南区中筋駅で街宣(文末写真左)。

「多くの方を苦しめた旧統一協会の広告塔になった安倍さんの国葬はおかしい。国もせっかく、旧統一協会問題電話相談をしているのに、安倍さんを国葬で持ち上げたら統一協会の宣伝になってしまい、逆効果だ。」

「安倍さんは河井事件では、1.5億円の最終責任者なのに最後まで何も語らないで亡くなってしまわれた。亡くなられたことはお悔やみするが、何も説明責任を果たさなかったのは許しがい。2014の大水害ではゴルフ、2018の大水害では宴会やカジノ法案優先という、まずい危機管理で広島県民に迷惑をかけた方だ。」
と指摘しました。

広島県知事の湯崎英彦さんに対しても、「湯崎さんがそういう人の国葬とやらに参加するのも納得できない。いま、県議会開会中なのだし、それこそ、統一協会で苦しんでいる特に2世、3世などの方を救う追加の補正予算とか検討されてはどうか?」と水を向けました。

生前、不祥事も多く、さらに広島を襲った水害時の危機管理がまずかった安倍さんの国葬強行で、いままで「岸田さんにそれなりに期待しておられた方」でも岸田さんへの失望が広がっていくのが感じられます。こうした皆様の思いにもこたえていきたいものです。

筆者は、2023年統一地方選挙・広島県議選を前に、特に元上司でもある知事の湯崎さんに対してガツンとモノ申し、海の大掃除をしていく先頭に立っていく覚悟です。具体的には、毎週日曜日に安佐南区イオンモール広島祇園前、そしてフジグラン緑井前で街宣をおこなっています(文末写真右)。当面は知事の湯崎さんの「安倍化」をただしていくとともに、国葬参加に反対、旧統一協会被害者も含む「何があっても心配しないで良い広島」を訴えていきます。

◎筆者の今後の街宣の予定

9月25日(日)10時 イオンモール広島祇園前
10月2日(日)10時 緑井フジグラン前
※以降、毎週交互にイオンモール広島祇園前と緑井フジグラン前で街宣
11月6日(日)午後 安佐南区内 勉強会 食料問題と広島 外部講師

[写真左]9月16日朝、広島市安佐南区中筋駅で街宣。[写真右]毎週日曜日に安佐南区イオンモール広島祇園前

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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