ニュースサイト「THE PAGE」8月5日に「『原発にミサイルを撃ち込まれたら?』山本太郎議員の質問は杞憂」と言う記事が掲載されており、6日午後現在アクセス数が一番多い政治記事と表示されている。

ネット上には数多くのニュースサイトが存在するがその真贋(あるいは信用度)は玉石混合で、かなりの確度で情報が正確なサイトから明らかに偏向した視点から主張を展開するものまで幅広い。私が読んで正確さを疑うことが多いのは、「FOCUS-ASIA.COM」、「Record China」そして「産経新聞」などが展開するニュースサイトだ。「THE PAGE」は記事により質にばらつきが目立つ。

同サイトの記事を批判する前に断わっておくが、山本議員の質疑の内容はあくまでも「国が現在想定している」ことへの疑問であり、私自身は中国や朝鮮が現実に日本への「攻撃」を行う可能性はゼロではないが極めて低いと考える。しかし「日中平和友好条約」で「相互不可侵」が明確に謳われていても現政権は中国を実質的な「仮想敵国」として国会答弁を続けている(こんな失礼なことはない。「同盟国」とされる米国情報機関は安倍の自宅をはじめ日本の省庁などの電話を「盗聴」していたことが報じられているが、それに対する政府の反応は極めて腰が引けている。同様の「盗聴」をもし中国が行ったら大騒ぎするだろう)のだから、その矛盾と原発の危険性及び事故時対策の無策を指摘することが山本議員の質問の本質的問いと感じた。

◆勝手に想定したシナリオで山本太郎議員の国会質問を歪曲させる「THE PAGE」

8月5日の「THE PAGE」掲載ニュースには誤りが多い。記事中「弾道ミサイルに原発を狙えるピンポイント攻撃能力はない」の中で、「そもそも弾道ミサイルには原発施設に命中を期待できるようなピンポイント攻撃能力はありません。例えば北朝鮮は核兵器と弾道ミサイルをセットで開発しようとしていますが、これは命中精度の低い弾道ミサイルには大量破壊兵器を組み合わせないと効果が著しく低いことが理由の一つです」とある。

これは仮定が誤っている。「命中精度の低い弾道ミサイルには大量破壊兵器を組み合わせないと効果が著しく低い」のは「THE PAGE」が勝手に想定するシナリオであって、命中精度だけの向上を目指すのであれば「ミサイル」にGPSを搭載するだけでピンポイント攻撃は可能になる。

ちなみに最新のICBM(大陸間弾道ミサイル)は1万キロ以上先の標的から半径200メートル以内に着弾する確率が50%を超えている。「原発銀座」である福井県と北京の距離は1,787キロ、ピョンヤンからは979キロだ。この距離の原発を狙うのであれば「大量破壊兵器」を搭載する必要はなく、格納容器と圧力容器を破壊できる程度の爆弾を搭載すればよいし、稼働中の原発ならばミサイル着弾の際に、制御棒挿入による緊急停止(スクラム)は出来ないから、格納容器を破壊しなくとも冷却系配管の破壊を起こすだけで原発は暴走する。このような能力を持つミサイルはイスラエルのパレスチナ攻撃やシリア内戦で政府軍が実戦使用している。中国は独自開発、朝鮮にはスカッドミサイルが配備されていると推測されるが、弾道ミサイルの弾道部分を軽くして、最近の自家用車にも搭載されているGPS機能を搭載することはいともたやすい技術である。

また、「なお巡航ミサイルならばピンポイント攻撃能力がありますが、北朝鮮は保有していません」では、意図的に中国が巡航ミサイルを保有していることへの言及を避けている。政府は答弁で中国と朝鮮の脅威を語っているのだ。政府意見の擁護を試みるのであれば中国を度外視しては反論にならない。

さらに、「核弾頭を保有しているなら原発を狙う必要がない」という、攻撃側の意図を勝手に限定した見出しの文章の中では、「ロシアや中国の場合は核弾頭を大量に保有しており、核弾頭を積んだ弾道ミサイルを相手の都市部に落とせば確実に大被害をもたらせるので、原発へのミサイル攻撃を行う意味がありません。核弾頭をまだ大量保有していない北朝鮮にしても、弾道ミサイルの弾頭に高レベルの放射性物質を搭載するという方法があります」と、議論の本質から逸脱した主張を行っている。

「そんなことは、わかっとるちゅうの!」の一言だ。前提が違うだろう。山本議員の質問は「原発にミサイル攻撃があって被害が出たらどうするか」を政府に尋ねているのだ。「原発へのミサイル攻撃の必要はありません」というのは勝手だけれども、これを書いた「JSF/軍事ブロガー」なる人物は中国や朝鮮の政府や軍の責任者に「日本攻撃作戦」の手の内を取材したことがあるのか。

◆安倍政権の矛盾だらけの政策を代弁しているだけ「JSF/軍事ブロガー」

そして道理を外れた憶測・推測を重ねている割には、「原発への攻撃は戦時国際法違反となる」といきなり真っ当なジュネーブ条約を持ち出してくる。しかし以下の文章は何が言いたいのだろう。
「このジュネーブ条約第1追加議定書は日本の仮想敵国であるロシア、中国、北朝鮮も締約しています。これらの国が戦時国際法を遵守するという保証はありませんが、重大な違反行為と規定されていることを破るとなると、大きなリスクを背負うことになるでしょう。また仮にアメリカが、同盟国の稼働中の原発へ攻撃が行われた場合は大量破壊兵器の使用と同等と見做し核報復を行うと宣言した場合、強力な核抑止力が発生します」

え? 仮想敵国は「ジュネーブ条約に加盟している」けど「遵守するか」どうかはわからない? 「また仮にアメリカが・・・強力な核抑止力が発生します」は全く論理が通っていないぞ。「アメリカが報復攻撃を行うと宣言しなかった」らどうなるのだ。米国はジュネーブ条約加盟国だけれども、イラクやアフガニスタンで数々のジュネーブ条約違反を犯している事を帰還兵が告発している国でもある。一旦核戦争が起これば「ジュネーブ条約」もあらゆる国際法も吹っ飛んで、世界は破滅に向かうことを想像できない発想力の低さには恐れ入る。

極めつけは、「ミサイル対策よりもテロ対策」として、「もしも『可能性が低くても原発への弾道ミサイル攻撃の対処が必要だ』とした場合は、自衛隊がミサイル防衛システムを用いて迎撃する、あるいは地下原発・海底原発といった防御力が強固な施設への転換を図るという選択が考えられますが」と、どうあっても原発を継続しないと気が済まないらしい。

要するにこの「THE PAGE」の記事は現政権の矛盾だらけかつ無謀な政策を代弁しているだけで、しかもその抗弁も国会答弁並に「穴だらけ」で説得力がないということだ。

クソ暑いのに余計に不快指数が上昇する。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎広島原爆70年──被爆者の「戦争責任」発言を中学校長が制止するこの国の行方
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「村山談話」、「河野談話」が時に現政権から批判体に話題にされる。安倍は正式な談話を出すことをどうやら諦めたようだが、果たしていかなる形でまとめるであろうか。

知人から冗談半分だろうけども、「お前が書いてみろよ」と言われた。私は貧乏な一市民に過ぎず国を代表しての談話を書くなどおこがましすぎるけれども、「村山談話」を読み返すと「今ならこのままじゃないな」と言う箇所が思いの外多いことに気が付いた。そこで僭越に過ぎると承知しながらも「村山談話」を私なりに書き直してみた。

「敗戦後70年を迎えるにあたっての談話」

先の大戦で日本が敗戦してから、70年の歳月が流れました。戦争の災禍を知る多くの人々は既に亡くなり、あの大戦はあたかもはるか昔の「歴史」のように捉えられつつあることも事実であります。しかし、戦争自体を経験していなくとも、我らの国が犯した罪が無くなるわけではありません。むしろあの戦争によって犠牲となられた内外の多くの人々に思いを馳せ、決して忘れないことこそが我らの世代の責務と言えましょう。

敗戦後、日本は、焼け野原から、幾多の困難を乗りこえて、経済体な発展を遂げました。しかしその背景には「朝鮮戦争特需」、「アジア諸国への実質的経済侵略」があったことを無視してはなりません。20年前、村山首相は「今日の平和と繁栄を築いてまいりました」と談話で言及されましたが、そこでは戦後も続いたアジア諸国への我々の「加害者」としての視点が欠如していました。2015年我々は戦争中から引き続きアジアを中心とする諸国の犠牲の上に繁栄をえたことを再確認し、反省します。

一方国民が繁栄に向け一人一人の英知とたゆみない努力を惜しまなかったことに、私は心から敬意の念を表わすものであります。ここに至るまで、世界の国々から寄せられた支援と協力に対し、あらためて深甚な謝意を表明いたします。また、アジア太平洋近隣諸国をはじめ、世界の全ての国々との間に今日にも増して平等かつ公平な平和的関係を構築すべく、その決心を明らかにします。

「平和で豊かな日本」は過去のものになりました。私たちはこの20年で「平和の尊さ、有難さを忘れた」政策を容認して来てしまいました。私たちは過去のあやまちを2度と繰り返すことのないよう、戦争の悲惨さを若い世代に語り伝えていかなければなりません。とくに近隣諸国の人々と手を携えて、アジア太平洋地域ひいては世界の平和を確かなものとしていくためには、なによりも、これらの諸国との間に深い理解と信頼にもとづいた関係を培っていくことが不可欠と考えます。政府は、この考えにもとづき、特に近現代における日本と近隣アジア諸国との関係にかかわる歴史研究を支援し、各国との交流の飛躍的な拡大をはかるために、この2つを柱とした平和友好交流事業を展開しております。また、現在取り組んでいる戦後処理問題についても、わが国とこれらの国々との信頼関係を一層強化するため、私は、ひき続き誠実に対応してまいります。

いま、戦後70周年の節目に当たり、われわれが銘記すべきことは、来し方を訪ねて歴史の教訓に学び、未来を望んで、人類社会の平和と繁栄への道を誤らないことであります。その為に再度憲法前文及び9条の具現化に政府は力を尽くします。

わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。

敗戦の日から70周年を迎えた今日、わが国は、深い反省に立ち、独善的なナショナリズムを排し、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義とを押し広めていかなければなりません。同時に、わが国は、被爆国としてまた世界最大の原発事故を引き起こした国としての体験を踏まえて、核兵器及び原子力発電の究極の廃絶を目指し、率先して原子力発電を全廃するものであります。核不拡散体制の強化など、国際的な軍縮を積極的に推進していくことが肝要であります。これこそ、過去に対するつぐないとなり、犠牲となられた方々の御霊を鎮めるゆえんとなると、私は信じております。

二度と戦争の惨禍を引き起こすことのない国際関係の構築を目指し、我々は憲法の原点に立ち返り、その精神の具現化のため「自衛隊」を「災害救助隊」へ改組します。米国と締結している「日米安全保障条約」はこれを破棄することを、ここに宣言し不戦の誓いといたします。

2015年8月15日
日本国首相 田所敏夫

参考までに、以下が村山談話本文である。

先の大戦が終わりを告げてから、50年の歳月が流れました。今、あらためて、あの戦争によって犠牲となられた内外の多くの人々に思いを馳せるとき、万感胸に迫るものがあります。

敗戦後、日本は、あの焼け野原から、幾多の困難を乗りこえて、今日の平和と繁栄を築いてまいりました。このことは私たちの誇りであり、そのために注がれた国民の皆様1人1人の英知とたゆみない努力に、私は心から敬意の念を表わすものであります。ここに至るまで、米国をはじめ、世界の国々から寄せられた支援と協力に対し、あらためて深甚な謝意を表明いたします。また、アジア太平洋近隣諸国、米国、さらには欧州諸国との間に今日のような友好関係を築き上げるに至ったことを、心から喜びたいと思います。

平和で豊かな日本となった今日、私たちはややもすればこの平和の尊さ、有難さを忘れがちになります。私たちは過去のあやまちを2度と繰り返すことのないよう、戦争の悲惨さを若い世代に語り伝えていかなければなりません。とくに近隣諸国の人々と手を携えて、アジア太平洋地域ひいては世界の平和を確かなものとしていくためには、なによりも、これらの諸国との間に深い理解と信頼にもとづいた関係を培っていくことが不可欠と考えます。政府は、この考えにもとづき、特に近現代における日本と近隣アジア諸国との関係にかかわる歴史研究を支援し、各国との交流の飛躍的な拡大をはかるために、この2つを柱とした平和友好交流事業を展開しております。また、現在取り組んでいる戦後処理問題についても、わが国とこれらの国々との信頼関係を一層強化するため、私は、ひき続き誠実に対応してまいります。

いま、戦後50周年の節目に当たり、われわれが銘記すべきことは、来し方を訪ねて歴史の教訓に学び、未来を望んで、人類社会の平和と繁栄への道を誤らないことであります。

わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。

敗戦の日から50周年を迎えた今日、わが国は、深い反省に立ち、独善的なナショナリズムを排し、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義とを押し広めていかなければなりません。同時に、わが国は、唯一の被爆国としての体験を踏まえて、核兵器の究極の廃絶を目指し、核不拡散体制の強化など、国際的な軍縮を積極的に推進していくことが肝要であります。これこそ、過去に対するつぐないとなり、犠牲となられた方々の御霊を鎮めるゆえんとなると、私は信じております。

「杖るは信に如くは莫し」と申します。この記念すべき時に当たり、信義を施政の根幹とすることを内外に表明し、私の誓いの言葉といたします。

村山総理大臣談話


◎[参考動画]戦後70年談話は村山談話を継承し、謝罪と反省を明確に プレスクラブ(2015年6月9日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎ヒロシマ70年──被爆者の「戦争責任」発言を中学校長が制止するこの国の行方
◎安倍話法──「大きな嘘」で「解釈改憲」を無理やり正当化し続ける
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎百田尚樹「沖縄2紙を潰せ」発言で強まる「琉球独立」という島唄の風

戦後70年は安倍晋三「退陣」の年!話題の『紙の爆弾』9月号発売中!

 

キックボクシングの「BLADE.2」は8月1日、大田区総合体育館で15時から行われたが、実は開場は13時30分。正午には、もはや37度を超えている猛暑の中、大田区総合体育館の入り口には、ケバブ、カレー、パン、ホットドックの売店が並んでいた。

◆食事処「不毛地帯」の大田区総合体育館が会場なのだからフード店充実を願う!

このあたりの地域は格闘技ライターなら知っているが「地図から食事処が、ほぼ消えたエリア」だ。たとえば大田区総合体育館のすぐ横にはラーメン屋があるが、このほかに歩いていける食事処を探すのは至難の技だ。第一京浜を歩き、ローソンで右折、JR蒲田駅方向に歩くとレストランや食堂の選択肢が広がるが、遠すぎる。ローソンで買うにも、もはや早く来た客が弁当を買って売りきれるケースも多い。

「実は、正午から体育館入り口でフードを買えるといったって、開場は13時30分だから、食べる場所は13時30分までないんだよ。だから、みんな食べてから来るか、体育館の中で、あらかじめコンビニで買ってきた弁当なんかを食べるのでしょう。ここの体育館入り口付近のフードはいつも売れないよ」(格闘技雑誌ライター)

なるほど、正午から13時30分まで見ていたが、4つの店でフードを買ったのは、わずかに25人だった。ただし、パン屋で販売していたかき氷は、つぎからつぎへと客が「レモンください」などと押し寄せていた。

正午ごろ、カレーショップに「この時間に買っても食べる場所はありませんよね」と聞いてみたが、「開場したら、中で食べられると思います」とのこと。そもそも、この猛暑の中をケバブも、カレーも、焼きたてとはいえパンも、ホットドッグも食べる気にはならないのがたいていの大衆の嗜好ではないのか。

「駅前で冷やしうどんを食べました。そうですね。冷やし中華とか、冷やしそばとか、冷えたサンドイッチとかが体育館入り口にあったら買ったかもしれませんがまずないですからね」(40代の男性)

僕は、体育館横のラーメン屋に入り、つけ麺をオーダーした。なかなか独特のコクがある鰹節風味だ。

確か5月に別の格闘技のイベントで来たときも、正午近くで食事に困った記憶がある。会場が開くまで食べる場所がないのに、なぜ売店でフードを売るのだろう。このあたりの「かゆいところに手が届かない」運営のいたらなさが、キックボクシングのファンがいまひとつ集まらない原因のような気がする。

◆『BLADE FC JAPAN CUP』は「無敗の16歳」那須川天心が予想通り優勝!

キックボクシングの「BLADE.2」の今回の目玉は、「-55kg」の王者をトーナメント形式で8人が争う『BLADE FC JAPAN CUP』で、デビュー以来6戦全勝で第6代RISEバンタム級王者となった「神童」こと16歳の那須川天心を誰が止めるかに大会の話題は集中していた。おおかたが予想した通り、那須川天心が現役高校生とは思えぬふてぶてしい勝負度胸と常識離れしたスピードで圧倒、いとも簡単に賞金の300万円を手にし「いや、さすがに3戦連続は疲れました」と笑顔を見せた。その賞金の一部でぜひキックの大会の改革をお願いしたいものだ。

ただし、フードはまったくNGで残念でも、「BLADE」のスタッフの動きは機敏で、「席がわからない」と客がいえばすぐにスタッフが連れて行き、客が選手について質問すれば「戦績がこうで、得意な技はこうで」と気さくに解説してくれるし、選手と客が撮影するときも自らカメラマンをかって出る気配りを見せてくれた。このような気配りのある真摯な運営姿勢と、那須川天心のようなスターの創出、この両輪がキックボクシングを、きっと明るくするだろう。

◆「神童」那須川に負けじと黄色い声援を集めた格闘家の武蔵

この日、女子の人気を集めるという点では、アルメン・ペトロシアンと真っ向勝負して惜しくも判定で敗れたひょうきんな男、城戸康裕もいたし、ワイルドな顔つきで女子の人気沸騰中の谷山俊樹も、ジャニーズにいそうなさわやかイケメン、小笠原裕典もいたのだが、「神童」那須川に負けじと黄色い声援を集めたのは、なんと解説でやってきた格闘家の武蔵だ。
「いまだに、太い胸板と、ごついマスクで渋い男らしさを感じる。引退して5年もたつのに締まった体つきは素敵のひとことです。あのスラッとした立ち姿にしびれます」(25歳・フリーター)
「あれだけK-1を引っ張った貢献者なのに、偉ぶらないところが好きです」(28歳・OL)

武蔵は、スカイAの番組解説でやってきたが、同世代の天田ヒロミが42歳でいまだに現役で頑張っている姿に触れた。天田も一度ノックアウトされたが、最後まで踏ん張り、判定に持ち込んで30~40代の女性の「黄色い声援」を受けた。これを見て、武蔵は「熟年格闘技家として、私のかわりにガンバっていただきたい」とエール。

東側のスタンド前にカメラが映り、休憩の間に、解説陣を集めて行われた、勝者予測のコーナーでは、われもわれもとファンが撮影ポイントに押しかけて、映像の照明マンがライトを踏ん張って、照明がもてなくなり、ぶれる始末。映像カメラマンが「まったく(照明が)あたってない。しっかりあててください」と怒鳴り声が響いた。

うだるような試合会場は那須川が出てくると別な会場みたくテンションが上がる。まるで「那須川の、那須川による、那須川のための」大会となったが、ところがどっこい「まだまだ渋いおじさま格闘家」の武蔵にも女子の熱い視線が送られているのが意外だった。

記者はたった9人で、ややさみしいものがあるが、「神童」人気と、熟年パワーで「BLADE」は今後も盛り上がっていくだろう。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」の管理人。

◎《格闘技“裏”通信04》BLADE.2 JC-55kg──優勝候補は16歳の那須川天心!
◎不良競馬ライター、30年ぶりに大井競馬場で勝負してみた
◎売り子に視界を遮られ、肝心なプレイを見逃す東京ドームのキャバクラ化
◎川崎中1殺害事件の基層──関東連合を彷彿させる首都圏郊外「半グレ」文化

「新国立競技場茶番劇」の大トリ 安藤忠雄の逃走──詳細はタブーなきスキャンダルマガジン『紙の爆弾』9月号で!

 

7月20日(月・祝)、熊本県熊本市中央区で安保関連法案(戦争法案)に反対するデモが行われた。路面電車がすぐ横を通る辛島町公園で集会を行い、アーケード街を下通?上通まで総勢600名で行進した。
このデモを企画したのは、熊本の学生・若者を中心に組織された『WDW(We Disagree with War=「私達は戦争に反対する」)』だ。


[動画]戦争法案反対×若者デモin熊本 – 2015.7.20 熊本市(4分8秒)

600という数字を聞いて正直驚いた。
この街でそれだけの人数を集めるのがどれだけ大変か、熊本でのコンサートやイベント等があまりないことからも想像に難くない。ましてや、エンターテインメント分野でも何でもない「デモ」でのことだ。熊本県には水俣病問題があり、社会運動の土壌がないというわけでもないのだが、非常に保守的な土地なのである。無党派市民のデモは成熟しておらず、大学生たちが独自に企画したデモがここまでの盛り上がりを見せたのは本当に凄いことだと思った。

私は全国のデモや抗議を撮影して5年目になるのだが、熊本でのデモ撮影は今回が初めてだった。デモの絶対数が多くないだけでなく、年齢の高い人々が運動の中心になっており、情報がほとんどネットに上がらず関東に住む私には捕捉することができなかった。
それに対し今回の若者デモは、ネットでの告知にも力が入れられており、告知が開始された日に私はデモの存在を知ることができた。もちろん、情報は結果として必要としている人へと届けば良いので、オフラインの告知が悪いわけでもないし、その優劣の話をしているわけではない。

今、全国各地で起こっている「若者デモ」を分類する場合、ネットでの告知をしていることが必須条件と言えるだろう。あるいは、SNSを活用しているというのが「若者デモ」の特徴の一つと言える。
今回のデモも見ず知らずの大学生ら4人の若者がネットで出会い、行動を起こしたという。それはインタラクティブなデジタルメディアが切り開いた、情報収集と発信を欠かさない今の運動を象徴しているようだ。

上に掲載した映像にスピーチが収録されていないのは、デモコースがアーケード内だったので、拡声器の音が物凄く反響していて内容が聞き取れなかったから編集でカットしてしまった。
これは録音した音声だけでなく、現場にいても喋っている内容を聞き取るのは大変だったので、アーケード内では思い切ってスピーチを無しにしたり、拡声器を向ける方向や音量を下げたりして反響を減らす工夫をしたほうが良いだろう。またアーケード街は商店街であるので、音が大き過ぎる行進は迷惑になる。

厳しいことを言うようだが、現場でのスピーチの効果については疑問を持つことが多い。それは、足を止めてデモのスピーチを聞く人は少ないし、話し手は移動し続けているので、沿道で通して聞ける人はいないからだ。断片的な言葉が耳に入るだけでは、歩いている人は聞き流してしまい、何の話かもわからずアピール力は少ないと思ってしまう。
であるので、取材や記録のカメラに向けた良質な音声の提供ということを戦略的選択としてするのも一つの手としてあることを頭の片隅に置いておいて欲しい。撮影されたデモの動画が拡散されることによって、街中では断片的にしか耳に入らなかった言葉がひとつのスピーチとして再びその存在が形となり、全世界をも駆けることになる。市民にとって意思表示をするツールとして、動画は非常に有効で大きな「武器」になる。

とは言うものの、カメラを意識し過ぎては街の人に伝わらないので、その場にいる人を意識してアピールをしなくてはならない。街の人々に届かない言葉は、カメラや記者を通した先の人々にも届かないと思って臨むべきだろう。



ここ火の国からも安倍政権が進める国づくりに抗う狼煙があがった。

[2015年7月20日(月・祝)・熊本県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《014》緊急寄稿・朝日新聞と冨永特別編集委員のおわび
◎《013》戦争法案に反対する若者たち VOL.8 福岡
◎《012》戦争法案に反対する若者たち VOL.7 甲府
◎《011》戦争法案に反対する若者たち VOL.6 国会前
◎《010》戦争法案に反対する若者たち VOL.5 鳥取
◎《009》戦争法案に反対する若者たち VOL.4 新潟
◎《008》札幌攻防戦!ヘイトスピーチを撮影せよ!
◎《007》戦争法案に反対する若者たち VOL.3 渋谷
◎《006》戦争法案に反対する若者たち VOL.2 札幌
◎《005》戦争法案に反対する若者たち VOL.1 京都

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朝日新聞社の冨永格・特別編集委員が、”Japanese nationalist demonstration in Tokyo. They are supporting PM Abe and his conservative administration.”と、ナチスの旗の写真とともに(要するに「ナチス旗デモ参加者は安倍政権支持者だ」と)ツイートし、批判を受けて削除した事が問題になっています。

これに対し、朝日新聞は8月5日午前5時に『報道姿勢に疑念抱かせおわびします 朝日新聞社特別編集委員、不適切なツイッター』と題し、「冨永記者はツイッターにナチスの旗などを掲げてデモをする人たちの写真を載せ、英語で『東京であった日本の国家主義者のデモ。彼らは安倍首相と保守的な政権を支持している』と投稿し、フランス語でもほぼ同様の内容の投稿をしました。
冨永記者は投稿について、事実関係の裏付けをしておらず、写真も撮影者の許可をとらずに転載していました」とのおわびの文章を掲載しました。

冨永さんがツイートした写真は、私が2014年3月に西葛西で撮影したものです。それで「秋山理央の写真を無断借用してる!」と怒っている人々がいますけど、私的にはあのツイートの趣旨であれば別に使ってもらっても構いませんし、本日現在、朝日新聞の担当者と、冨永さんからは直接、無断借用に関しての謝罪を受けています。
そもそもこの件についてまだよく知らない方に読んでもらいたいのが、以下の記事です。
リンク先で記事全文を読んでもらいたいのですが、面倒な場合は引用部分だけでも目を通して下さい。

『朝日記者ツイート:カギ十字写真に「安倍政権の支持者」』(毎日新聞)

「朝日新聞社の冨永格特別編集委員が、自身のツイッターにナチスの『カギ十字』の旗や旭日旗を掲げたデモとみられる写真とともに『東京での日本のナショナリストによるデモ。彼らは、安倍首相と彼の保守的な政権を支持している』との内容を英語と仏語で書き込み、その後削除していたことが分かった」

『ナチス旗デモ掲載「首相を支持」 朝日編集委員ネット書き込み』(共同通信)

「朝日新聞社の冨永格・特別編集委員が、同社公認の自身のツイッターに、ナチスの旗や旭日旗を掲げてデモする人たちの写真を掲載し、英語とフランス語で『東京での日本の国家主義者のデモ。彼らが安倍首相と保守政権を支持している』と書き込んでいたことが4日、分かった。既に削除している」

『朝日新聞特別編集委員 不適切ツイートで謝罪』(NHK)

「朝日新聞の特別編集委員が、自身のツイッターにナチス・ドイツのカギ十字の旗などを掲げたデモ活動の写真とともに、『彼らは安倍首相を支持している』などと英語で不適切な書き込みを行い、その後、削除して謝罪しました」

富永さんが私の撮った写真をツイートしたのも何かの縁ですし、本来なら消すべきではないのに消してしまったものですから、私は撮影者として、改めて「ナチス支持者が安倍を支持している」と以下のようにツイートしました。

「【撮影記録】2014年3月・東京での日本の排外主義者によるネオナチデモ。
ハーケンクロイツを掲げたデモの参加者は、8月2日に銀座で行われた安保法案賛成デモにも参加。彼らは安倍首相と彼の保守的な政権を支持しているのだ。(撮影:秋山理央)」

同時に英文でもツイートしています。
「Japanese neo-nazis with swastika, Tokyo Mar.2014, its members joined in the rally supporting LDP’s war bill Aug.2015.」

自分の写真を使い、事実をつぶやいているだけですから誰からも文句を言われる筋合いはないのですが、筋違いなリプライが非常に多いです。ネトウヨが凄い勢いで攻撃してきて大変なことになってますが、在特会みたいなネットのカス達を普段から批判しまくっているので、こういうことにも慣れてしまいました。
「ナチス支持者が安倍支持者」ということを否定する人も多いのですが、そういう人たちがどう捻じ曲げて信じたくても、これは事実です。それにも関わらず、冨永さんがツイートを削除・謝罪してしまったから、そのツイートの内容がデマだという印象が生まれてしまい、それが事態をややこしくしていると思います。
私が改めて上記の「事実」をツイートすることにしたのは、そういうわけです。

文句を言ってくる人の中には、私が書いた日本語の文章を理解できない人も多く、トンチンカンな意見や先入観だけで語ったり、頭が痛くなってしまいます。
これは今回の件に限らないのですが、「それ、言う前にちょっと調べろよ!」という意見が本当に多いです。まずは検索してから発言する事をお勧めします。
というか、誰も彼も、もっと検索する癖をつけるべきで、高校で「とりま検索」って教えた方が良いと最近よく思います。
前衆議院議員・次世代の党の中山成彬さんもちゃんと調べてからツイートした方が良かったかもしれません。
「かつて天声人語も書いていたという朝日の富永格編集委員がナチスの旗を掲げたデモの写真と共に『東京での日本人の国家主義者によるデモ、彼らは安倍首相と彼の保守的な政権を支持している』とツィートした。相変わらず日本人を貶める為なら捏造も厭わない。削除したが本音を呟くというから本音だろう』

この中山氏のツイートに対し、対レイシスト行動集団のC.R.A.Cが「在特会の前会長桜井誠が呼びかけた安保法制賛成デモに、元国家社会主義者同盟(ネオナチ)の瀬戸弘幸が星条旗を掲げて参加し、ここでハーケンクロイツ持ってるやつらがそれに続いてましたよね。どこが捏造?」というリプライをしていました。

「ナチス支持者が安倍支持者」って事は、否定できないでしょう。
ナチス旗デモ主催の荒巻氏は、安倍政権を支持していないらしいのですが、デモ主催者と参加者が全く同じ考えとは限らないですし、ナチス旗デモと安保賛成デモの参加者が実際に一致しているのは事実です。
それに加え、白昼堂々ハーケンクロイツ(ナチス旗)を掲げ、外国人集住地域に出向き、そこに住む外国人を排斥するデモを行なっている集団がいることも大問題でしょう。しかも、オリンピックを控えた東京都内でのことです。
今回の写真に対し、「ナチスの旗なんて合成だろ!」と言われもしましたが、何を寝ぼけたことを言っているんでしょう…。むしろ、合成ならどんなに良いことか。しかし、事実なのだから仕方ありませんし、事実だからこそ問題にしなくてはならないと思います。
こうしたデモは例外なくヘイトスピーチを伴うものであることも忘れてはいけません。そうした事実こそが問題とされ、メディアがしっかり事実を探り、公にするべきだと思います。

安倍内閣、自民党、その支持者、ヘイトスピーチ、ネオナチ、ハーケンクロイツ(ナチスの旗)といったものが結びついていることは、もっと社会的大問題とされて良いと思いますので、引き続き、私は撮り続けていきたいと思います。

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、
全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

《ウィークリー理央眼》
◎《013》戦争法案に反対する若者たち VOL.8 福岡
◎《012》戦争法案に反対する若者たち VOL.7 甲府
◎《011》戦争法案に反対する若者たち VOL.6 国会前
◎《010》戦争法案に反対する若者たち VOL.5 鳥取
◎《009》戦争法案に反対する若者たち VOL.4 新潟
◎《008》札幌攻防戦!ヘイトスピーチを撮影せよ!
◎《007》戦争法案に反対する若者たち VOL.3 渋谷
◎《006》戦争法案に反対する若者たち VOL.2 札幌
◎《005》戦争法案に反対する若者たち VOL.1 京都

自粛無用の『紙の爆弾』9月号は本日7日発売です!

 

 

70年目の広島原爆の日を迎えるにあたり、「将来への希望」や「平和の希求」を語ることを控える。それらは全く胸中に思いを抱かない安倍と言う人間の口から軽々しい言葉で語られることが必定だからだ。真意の全くこもらない空疎の限界を超越した「言葉」や「意味」への侮辱が今年もまた繰り返されるだろう。見なくともわかる。準備した原稿のみに目を落とし、よく回らない舌で精一杯必死に本心と真逆の「ことば」を職務としてこなす不誠実極まりない奴の姿が。安倍に抗議する意味でも、むしろこの日に敢えて寒々とした現実を直視しようと思う。

◆中学校長による「被爆者への言論弾圧事件」を島原市の教育委員会はどう考えているか、聞いてみた

少し古い話だが、2014年7月1日に島原市のある中学校での「平和学習」に講師として招かれた被爆者である末永浩氏(79)が被爆体験や戦争責任、原発事故の話を語ったところ、校長が「やめてください」と大声で遮るという事態が起きていたことが先日の報道で明らかになった。

当該中学校の名前が明らかにされていないので、末永氏の話を遮った校長本人には取材できていないが、島原市の教育委員会学校教育課の平田氏に電話で事情を聞いた。

平田氏によると「校長、末永氏双方平和を望む気持ちは同じと理解している」らしいが校長が「一方的な意見だけを末永氏が正しいと思い込み話をしていた」ので「制止」をしたそうだ。この件について島原市宮原照彦教育長は「校長と講師の被爆者が幸せを願う気持ちを持っている。今回のような残念な結果にしてしまい大変遺憾に感じている。今後はこのような事態を引き起こさないように各学校での平和学習に努めたい」との声明を明らかにしている。

しかしこの「声明」は何かを語っているようで、役人特有の「事なかれ主義」により読む者を煙に巻き、中学校長によって行われた「被爆者への言論弾圧事件」を曖昧に誤魔化そうとした出来の悪い作文だ。

◆日本のアジア侵略は「歴史的に定まっていない」という立場をとる教育委員会

平田氏によると「事前の打ち合わせでは無かった内容だったので校長が末永さんの話を制止したのは仕方ない」というのが教育委員会の見解だそうだ。では問題とされたのはどのような話なのだろか。

末永氏は長崎で被爆した自身の体験を話したあと、「アジアで原爆を語ろうとすれば、日本がしてきたことを反省して語らなければならない」と説明しながら、中国や韓国の博物館が旧日本軍による侵略に関するものとして展示している写真を生徒に見せ、日本の戦争責任について話した。さらに、「原爆と同じように核分裂によって放射線を出す」と、福島第一原発の事故など原発問題について語り出したところ、校長が「やめてください」と大声で遮ったため、末永氏は「原発についてもみんなでよく勉強し考えて下さい」と述べて話を終えた。というのが平田氏の説明だ。

「平和学習」の中で被爆者末永氏が上記のような話をした中の一体どこに問題があるのだろう。校長が「一方的な意見」と感じたのは一体どの部分なのか。被曝者が講師に呼ばれて戦争や放射能の話に文句を言われるのであれば、どんな話をしろというのだろうか。これに対して平田氏は「事前の打ち合わせではあくまで『被曝体験』を語って下さいと校長は依頼していたが、戦争責任や原発の話に及んだので打ち合わせ外の話と判断した」そうだ。え、正気か? 島原市教育委員会?

平田氏がそのように説明してくれたので、私は「では、被爆者が核兵器の話をするのは構わないのでしょうか(馬鹿げた質問ではあるが)」と尋ねると「それは勿論構いません」とのお答え。では「核兵器だけでなく兵器や戦争について被爆者が見解をのべることは」と聞くと、これまた「問題はありません」だ。更に「被爆者を苦しめている放射能について原発も同様の問題を孕んでおり、実際に事故が起きたことに言及することは如何か」との質問にも「問題はありません」との回答だ。

ならば、末永氏の講演のどの部分が「一方的な意見」に該当するというのだ。個別の話を1つ1つ点検して行ったが、どこも「問題」にされる部分はないじゃないか。そう糺すと「日本の戦争責任に言及した部分が事前の打ち合わせにはなかった」と平田氏は発言した。島原市教育委員会によると「アジア諸国への日本の戦争責任」を語るのは「一方的な意見」に当るそうだ。私は「日韓条約」では不十分ながら日本政府は戦時の賠償をしていること、更には「村山談話」や「河野談話」で日本政府は正式に戦争責任を認めていることを紹介した。国が「侵略」の事実を認め国際条約上も確定していることに言及することのどこに問題があるのかを平田氏に重ねて聞いた。平田氏は「社会科の教科書には『日本の侵略行為』には諸説議論があるとの記述がある」事を根拠に持ち出し、日本が中国・朝鮮をはじめとするアジア諸国を侵略したかどうかは「歴史的に定まっていない」ともとれる発言をした。

爆心地からは離れているとは言え、原爆を落とされた長崎県の島原市教育委員会にして戦争への認識がこの程度なのだ。これがあの「天草四郎」を生んだとされる島原の今日的現実=知的退廃である。平田氏に「満州国を知っているか」と聞いたらさすがに「知っている」と回答されたけれども、満州から中国へ広がった戦線が「侵略」でないはないというなら日中戦争をどう解説するつもりなのだろうか。

◆原爆被爆者が「戦争責任」や「原発事故」に言及してはいけない「平和学習」

被爆者を講師に呼んでおきながら「戦争」の真の意味や歴史、戦争責任を語らせない「平和学習」には微塵の意味もない。「平和学習」は正式な「科目」ではないのだから講師を呼べばそれぞれの考えや個性に基づいた話を展開するのが当たり前だろうに、被爆者に「戦争責任」や「原発事故」への言及を禁じる「平和学習」など「アリバイ造り」以外の何物でもない。その証拠に教育委員会は中学校長の「言論弾圧行為」を全く問題にしていないどころか、末永氏の歴史認識を「一方的な意見」と決めつけている。本来強く責められるべきは中学校長の憲法21条違反行為と教育委員会の憲法99条違反行為だ。

ここ数か月学校現場での明らかな歴史改竄策動事件や、国の過剰介入を何件か紹介してきた。もうこの程度の話は全国に溢れているということだ。私如き暇人でも一々取り上げきれないくらいに「教育現場の戦争体制化」は拡大している。残念だがもう決壊したダム同様、止めようがない。

つまり、私(達)は圧倒的に敗北している。しかも決定的な最後の敗北の寸前まで押し込まれている。この事実を直視し自分の身の丈と時代の容貌とのとてつもない差異を冷徹に確認しながら、少なくとも身内3人を死に至らしめた原爆の日の自省とする。


◎[参考動画]元ちとせ「死んだ女の子」

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎「人文社会科学系学部」ではなく、まず文科省を廃止せよ!
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎恣意的に「危機」を煽る日本政府のご都合主義は在特会とよく似ている
◎百田尚樹「沖縄2紙を潰せ」発言で強まる「琉球独立」という島唄の風
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎円安からデフォルト──税金引上げ、年金引下げ、社保切り捨ての後の総崩れ

〈生きた現実〉の直撃弾で独裁者を撃つ鹿砦社『紙の爆弾』は毎月7日発売です

 

著者の塩見孝也が駐車場の管理業をしていたときに理不尽な目に遭ってからというもの、感じた不公平について深く考え、つづった一著だ。そう、筆者の塩見孝也氏は、「日本のレーニン」とまでいわれた赤軍派の元議長である。

現実に目の前で僕らにも気兼ねなく話をしてくれる塩見孝也氏は、柔和で、そのトークは人を飽きさせない。だが、政治家やふざけた善導者に話題が触れると、怒りが止まらないようだ。そうした意味で「赤子の魂、百まで」だ。若き日の情熱を隠すことはできない。

誰でもそうであるが、塩見孝也氏の評価はたとえば左翼の間でも分かれているらしい。あちこちで「是」の話を聞くし、「非」の話も聞く。だが僕は「過去」には執着しない。常に「今、どう生きているか」しか興味がない。

◆温泉施設の駐車場管理業務は気が抜けなくて辛かった!

伝説の男が帰ってきた! 革命的シルバー労働者、塩見孝也の『革命バカ一代 駐車場日記  たかが駐車場、されど駐車場』

今回、塩見氏の著書を紹介するが、中身は買ってからのお楽しみで、読者に譲る。なのでまず僕が38歳のときに体験した「警備員」としての駐車管理業務のエピソードから始めよう。警備員を学生のときに3か月、38歳のときに半年やった。その中でも、駐車場管理業務は筆舌に尽くしがたくつらかった。僕の場合、今流行している街中の温泉施設の駐車場だったが、まったく気が抜けない。 もし気を抜いたら、まったく温泉施設とは関係ない車が一時的に停めようとするし、ホームレスが中に入ってきて施設近くで眠ろうとする(冬は施設近くは暖かいので)のだ。

ただし日給8000円でそんなに贅沢は言えない。もっともこの寒空の下、田舎道で休憩もなく車を誘導している同僚がいれば、東京から名古屋まで車を飛ばして着任している人もいるのだ。

つまり、その駐車場は評判としては、相対的に「楽なほう」だった。なにしろ着任も退任も時間が固定されている。13時に着任し、22時までいればいい。しかも駅から出ている温泉施設が抱えるバスに乗っていいときている。もはやVIP待遇だった。

◆警備のベテラン、酒飲み『ゲンさん』は有能でタフなプロだった

警備のバイトは、朝7時集合のつぎの日は夜11時に集合で夜警、なんていうのが続き「不規則」なこと、この上ない。そうしたところでは感謝すべき任務だったのだが、いかんせん、休憩できないのは体にこたえた。休めても、15分が2回くらいがもっともとれた休みで、その時間内に食事しろという。

つらい現場は数あるが、まだ「ブラック企業」なんていう言葉がなかった時代で、しかも真冬だ。このときにコンビを組んだ、通称『ゲンさん』 は、警備員歴20年以上のベテランだ。この男と僕は何度も現場が一緒になるのだが『ゲンさん』は現場まで何十キロ原付で現場を移動していた。しかも、原付がパンクしても自力でパンクを完全に修理するセットやレインコート、そして緊急のためのカンパンまで原付の後ろのボックスに積み込んでいたのだ。こういうのをプロという。

こうしたベテランには、現場を差配する「指令室」にも気を遣うもので、相性が悪い人がコンビにならないようにしたり、工事現場では、気が合わない監督と一緒にならないように最大限の配慮をしていた。それでも『ゲンさん』は「ここの現場は飽きた。どこかマンション建設の現場でもない?」なんて平気で指令室に聞いてあきれられていた。ゲンさんについて僕ら警備員の賛否は分かれていたが、本音でいつも誰に対しても話すゲンさんを、僕は好きだった。

◆道路誘導の警備員は警備会社と保険会社の「人柱」

そして2005年あたりは、道路での誘導に資格が必要になったり、鉄道警備の列車見張りの資格、駐車場監視員の資格を会社がとらせようとす る「資格取得」ブームが来るのだが、ゲンさんは「資格がなくて仕事がないのなら、仕事なんかいらない」と資格ブームには背を向け、試験勉強に明け暮れる仲間をしり目に、毎晩酒を飲んでいた。

あるとき、現場からの帰り道で、信号は黄色だったが車が強引に横切ってきて、ゲンさんは車にはじき飛ばされた。その瞬間を、後ろを原付で走っていた僕は目撃した。

このときにゲンさんはしたたかに頭を打ち、しばらく起き上がって来なかったが、僕が警察に電話し、説明にもたついていると意識を取り戻して「ダメだな。俺が説明する。貸せ」と携帯電話を僕からとりあげた。実にしっかりしている男だった。
もしも日雇いのような警備員ではなく、建設やスーパーにでも勤めていたら、そこそこいい仕事をしたはずだ。だが転職するにはゲンさんは年をとりすぎていた。

また、「コンビニを数軒、経営しているが、警備の仕事が好きなので、警備会社に登録して働いている」という変わり種もいた。とにかく変わった人が警備会社には多かった。

仕事ができる奴は、当然であるが、転職していく。だから常に警備員としては、レベルが低くかった。現場に集合してみて、学生っぽいのが4人いるから「何か月やっているの?」と聞いたら、全員が経験2週間以下の学生で、経験1か月の僕がリーダーをやらざるを得ない、という現場もあった。しかもその現場は、車がわんさかと行きかう場所で、片道通行を誘導しなくてはならなかった。それも細かく移動しながらの工事工程だ。この日は無事故だったが、僕は何度も「しっかり誘導せい」と怒られた。だが、クライアントにとっては、仮に事故が起きても、警備会社が補償してくれるから安心できる存在だろう。警備会社としては莫大な金を保険会社に払っている。要するに警備員は人柱だったのだ。

よく、どの工事現場でも通行者に道案内をして工事現場で少しでも現場を離れると、「おいおい、事故が起きたらどうすんだよ、現場にいろ」と怒られた。要するに「その場にいる」のが警備なのだ。いさえすれば、問題はない。

ずっと立ちっぱなしなので、おそらく喫煙者にはきついだろう。だが、仮に車の誘導だとしても、車がいないタイミングで隠れるようにして僕たちは、路上でもタバコをふかしていた。

そんな経緯があり、塩見氏とパーティなどで会うと、一瞬だが命の危険が迫った警備員時代を思い出す。

塩見氏は先の新座市議選挙で惜しくも落選したが、選挙での勝敗など、時の運がだいぶ左右する。また挑戦するかどうか聞いていないが、また挑戦する「日本のレーニン」が見たいものだ。なにしろきつい駐車場管理という試練をくぐりぬけた「同胞」なのだから。

(小林俊之)

◎「工藤會壊滅ありき」で福岡県警が強引に人権を無視し続ける邪な理由
◎731部隊を隠蔽し続ける米日の密約──近藤昭二さん講演報告
◎むやみやたらと強化される「ドローン」規制の余波

独裁者を撃つ鹿砦社のタブーなき月刊誌『紙の爆弾』は毎月7日発売です!

 

さいたま市立指扇(さしおうぎ)中学校の「学校だより」7月号に新井敬二郎校長が「憲法より礼儀が大事」と題した文章を作成し生徒に配布していたことが判明した。私の手元には問題の「憲法より礼儀が大事」はないので、7月3日午前電話取材で新井敬二郎校長に詳しい経緯と見解を伺った。

◆「私には憲法軽視の気持ちは全くありません」

新井校長は開口一番「私には憲法軽視の気持ちは全くありません」と前置きし、「指扇中学の生徒は最近礼儀正しいと近隣住民からお褒めを頂いていることもあり、そのことへの賞賛から文章は始まっている。夏休みを前にして益々精進しようと激励の気持ちで前プロ野球監督の野村克也氏の著作から当該部分を引用した。『礼に始まり礼に終わる』は特に素晴らしい言葉だと考えた」とのことだった。

新井校長は長くソフトボール部の顧問として活躍し埼玉県内では指導した中学では県内でかなりの好成績を収めた実績の持ち主でもある。「学校だより」5月号も陸上で近年活躍をする愛知県の豊川高校の例を挙げ「どうやったら勝てるか」などの実例が紹介されている。

◆「今考えると軽率だったと思います」

それにしてもなぜ、わざわざこの時期に野村氏の引用でなければならなかったのだろうか。新井校長は「憲法軽視ではない」と仰ったけれども、憲法と礼儀を同等(正確には憲法が礼儀より価値的には下位とする)文章を何故中学生に配布したのだろうか? 中学校の校長先生だから話し方は穏やかだったが、新井先生に悪意はないものの、「遵法」意識は極めて希薄だったと言わざるを得ない。

「今考えると軽率だったと思います。ここで『憲法』の部分を削っておけば良かったんですね」と新井校長は語ったが、表題自体が「憲法より礼儀が大事」となっているのだからこの文章を掲載するにあたって新井校長が現在の戦争推進法案を一顧題しなかったとは考えられない。

新井校長に対しては、さいたま市の教育委員会が既に電話で事実確認を行っており、3日午後、新井校長本人が直接教育委員会へ赴き事情を聞かれるとのことだ。新井校長は「始業式の際に生徒には改めて真意を説明するなりしなければいけないですね」と言われたので「始業式が行われる時にはもう『安保関連法案』が成立していたらどうなさいますか? 尊敬する新井校長先生から『憲法より礼儀が大事』を教わった生徒さんの中には夏休み中に保護者にその話をする人もいるでしょう。早急に訂正文を出されてはいかがですか」と伝えると「そうですね」と黙り込んでしまった。

話をしていて新井校長は生徒指導に熱心な先生だということは理解できた。しかし問題は中学、高校の教育現場でこの時代「熱心」とされる教師の中には「礼儀」、「校則」を守ることを熱心に教える先生は沢山いるけれども、その先生たちの大半は日本国憲法を本気で読んだことがある人が殆どいないことだ。

◆「教育指導要領」の憲法軽視

教員採用試験受験の為には大学の資格課程で「憲法」が必須だから今教育現場にいる先生方は「憲法」について大学時代に講義は受けている。資格課程は採っていなかったが私も「憲法」は受講した。しかし大学で「憲法」の講義を受講したことが、現在問題になっている「改憲策動」を理解する材料になるかと言えば、それはかなり疑わしい。

また「礼儀」、「校則順守」に熱心な先生の中には、「遵法意識」から逸脱してしまう先生もいる。「親や家族を大切にしろ」と教えるのはいいけれども、その教材に某右寄り宗教団体のパンフレットを配布して校長に注意された先生は確かに「生徒指導」には熱心な先生ではあった。

問題の核心は初等教育(小学校)中等教育(中学・高校)で教育の指針となる「教育指導要領」に実際の社会生活で重要な法律について教えることが殆ど記載されておらず、従って普通科高校を卒業した人でも「刑事事件」と「民事事件」の違いを明確に説明が出来ないほど「法律」についての教育が手薄だということだ。

◆諸悪の根源は「教育基本法」と「教育指導要領」で教育委員会を縛る文科省

実はこれは大問題で「基本的人権」に属する「逮捕された際の黙秘権」や「接見交通権」などを実践的な知識として持ち合わせている大学生は少数だ。本来ならば義務教育の段階でこの様な「基本権」は教えられるべきだと思うが、それを譲るにしても高校卒業までには教示されておくべき内容ではないか。学校を卒業して仕事に就いたら誰もその様な知識を教えてはくれない。

逆に言えばそのような初歩的な法律も中等教育では教えないし、教育指導要領は改悪された教育基本法に沿ってどんどん「国家に奉仕する」国民養成に邁進しているから教育現場でも「憲法よりも礼儀が大事」という実践的な本音が飛び出すのだろう。

たしかに中学校の中だけで生活している限り、生徒にとって「憲法」は差し迫った課題ではないのかもしれないが、それは生徒レベルの感覚であって校長先生が率先してこのような意見表明をしてはならない。

教育現場は先生たちが忙しくて残業過多のようだ。ヒラの先生から副校長(教頭)、校長までが雑務に追われているという。文科省が押し付けてくるどうでもよい「統計」や「資料」の作成に膨大な時間を割かれ、本務である授業準備や教材作成が後手に回ってしまうと嘆く先生が多い。

改悪された「教育基本法」とそれに準拠する「教育指導要領」の縛りはてきめんで、各市町村の教育委員会はこれにビビりきっている。猛暑だから頭がヒートして「憲法よりも礼儀が大事」と中学校長は間違えたのではない。

文科省、教育指導要領が暗にそれを期待しているのだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎今こそ同志社を<反戦の砦>に! 教職員有志「安保法制を考える緊急集会」開催
◎同志社大学長発言を「個人の意見」と容認した理事会に反省なし!
◎なぜ安倍政権には「正論」が通じないのか?──加速度を増す日本の転落

タブーなき月刊『紙の爆弾』は毎月7日発売です

 

自分の怪我は痛い。指先を数ミリ切っただけで気になって手仕事が進まなくなる。たったそれだけの怪我でも鬱陶しいものだが、横で仕事をしている人に「指先を切ってね、仕事が進めにくいんだ」と言うほどの大事ではない。でも横の同僚が気遣いの細かい人だったらあなたが何を語らなくてもいつも通りではないあなたの仕草に気が付き「どうかしたの?調子悪そうだけど」と声をかけてくれることがあるかもしれない。

これは注意力(洞察力)が繊細かどうかという個性に起因する反応だが、その上であなたが「ちょっと指先を切ってね」と言った時に「ああそう」と答えが返って来るか「あらら、ちょっとの事でも指先の怪我は気になるよね」と声をかけてくれるかは「感性」(想像力)に属する反応と言えよう。他者の「痛み」を自分も想像して共感できるか、あるいは「他人の事は他人の事」とそこで思考停止するかは社会的な問題に対する態度にも繋がって来るだろう。

◆徐々に迫ってくる危機を自分の生命の危機と繋げて想像すること

私達の多くは戦争の実体験はない。でも同時代に他国で実際に戦争が起こっていることは知っている。また私達の多くは「直ちに健康に影響はない」(言い換えれば「いつかは健康に影響が出るかもしれない」)放射能がばら撒かれた島国で生活していることを感性の鈍くない人ならば意識をしている、と思っていた。

でも私の見込みは随分外れていた。私のようにもうどうでも良いほど年を取っている人間よりも若い人々が将来に対して不安が強いのではないか、と心配しながら想像していたが若者の多数は私が心配するよりも放射能に対して脅威を感じていないことを知らされる機会に直面した。

若者に原発や放射能について語り掛ける人の前で多くの若者は眠そうにしていたり、露骨に居眠りをしていた。

「おいおいお前達! 被害を食らうのは君たちだという話をされて、それでも居眠りしていられるのか・・・」と私は内心少し腹も立ち、それ以上に彼らは大丈夫だろうか、と心配が湧き上がってきた。自分の生命の危険に関わることに生物は敏感で、それを回避しようとするのは、考え方や思想と言ったレベルの話ではなく「反射」に近いはずだと考えていた。目に見えない危機だから若者は危険性を察知できないのだろうか。危機は目に見えるまで察知されないとすれば、放射能に限らず事故や伝染病について彼らはどう反応するのだろう。

ましてや「戦争」といった現実に起きているけれども、「自分の目の前にはない」ことが徐々に迫っていることを彼らは自分の生命の危機と繋げて想像することができるだろうか。

◆ソウル・フラワー・ユニオンの「極東戦線異状なし!?」

私は歳を取ったと痛感する。このようにグタグタ考えることは大学に勤務している時はなかった。学生が「戦争」についての関心が薄ければ直接語り掛けたり、その非道さを示す証拠を示したりして少なくとも私なりに感じる危機を伝えようと試みたものだが、それに割くエネルギーが徐々に枯渇してきているとの実感がある。要する私自身がどんどんダメになってきているのだ。

だがやはりこれだけ明確に迫りつつある「戦争」についてはそのおぞましさを伝えるのが義務の様な気がして(ここが私の往生際の悪いところだ)逃れることが出来ない。「戦争になったら君達が一番最初に戦場に連れて行かれるんだよ」、「戦場では『人殺し』が義務なんだよ。敵前逃亡すれば見方から撃ち殺されるんだよ」、「指先を数ミリ切ってもチクチク痛いけど、砲弾の破片が体に刺さると取り出しにくくて、寝ることが出来ないほどの痛みが続くんだよ」・・・・。

やはり絞り出す言葉に迫力がないなぁ。こんな陳腐な言葉にはきっと反応してくれないだろうな。私の「伝達力」は日々低下しているのだろう。彼らの「想像力」はどうなっているのだろうか。言葉を吐けば吐くほど自分の脳髄や感覚までもがどんどん摩耗していくのではないかと、こちらの方が心配になる。情けない。

ソウル・フラワー・ユニオンに「極東戦線異状なし!?」という楽曲がある。「極東戦線異常発生」の今日この曲はどのように聞こえるだろうか。


◎[参考動画]ソウル・フラワー・ユニオン「極東戦線異状なし!?極東戦線異状なし !? ALL QUIET ON THE FAR EASTERN FRONT !?」(2004年6月11日)

戦争推進法制が仮に成立すれば、数年以内に確実に戦争がやって来る。自分が戦場に赴くことなど金輪際ない政治屋どもが決める悪法は「君たちを片道切符で戦場へ送り出す」ための準備以外の何物でもない。考えよう。想像しよう。私は「戦争」で誰にも死んでほしくない。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎「不逮捕特権」を持つ国会議員は「体を張って」安保法案を阻止できる!
◎安保法案強行採決!「大きな嘘」で日本政治をレイプしまくる安倍話法の本心
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎「目が覚めた」人たち──抗議行動はいろんなカタチがあっていい

『慨世(がいせい)の遠吠え  強い国になりたい症候群 内田 樹 鈴木邦男 対論』

 

僕は、人生で3度、競馬に仕事として携わった。

一度目は、学生のときに、大井競馬場で警備のアルバイトをした。
負けた客は気性が荒く、人をつき飛ばして歩いていたり、いち早く無料送迎のバスに乗り込みたくて、ダッシュで駆け込むのを注意して、殴られそうになるなど、とても危険なバイトだった。

二度目は「東京中日スポーツ」という新聞社で記録係のアルバイトをしていたときに、記録すべき対象として見ていた。具体的な仕事としては、予想でもなく現場のルポでもなく、「その日の戦績」をひたすらフォーマットに流していくのが仕事だ。確か「武豊の恋人」と呼ばれたシャダイカグラが89年に桜花賞、ローズステークス、ペガサスステークス、そしてJRA最優秀4歳牝馬を受賞した年で、JRAは人気絶頂の中にあった。

とりわけ、なんのレースであれ、一直線に並んで突っ込んでくる前から撮影したアングルには、感動のひと言。そして、社会人になり、編集プロダクションにいた僕は『競馬の達人』という光文社の雑誌の競馬企画を作ることになった。とはいうものの、僕よりも競馬に詳しいライターが当時二人もいたので、制作進行にまわることになった。

このときにたてた企画は、おもしろかった。
「競馬で負けた客は、もしかしてくじ運まで悪いのか。帰りがけアミダくじ勝負!」
「3位が定位置、ナイスネイチャという生き様」
「土曜3時の天使、斉藤陽子に密着取材」
などなど、変化球ばかりの企画だったが、負けた人たちが本当にくじ運が悪いのには驚いた。確か20人にやってもらって、くじで勝ち抜いて図書券をもって帰ったのはひとりだけだったような気がする。

◆若いOLたちもやってきて、すっかりおしゃれになっていたナイター競馬

そして30年の時を経て、大井競馬場にやってきた。
浜松町からモノレールで大井競馬場駅へ。駅を降りるとそこはもう馬舎が連なっており、馬糞の匂いが鼻をつく。
実はナイターで競馬を一度は見てみたいと思っていた。
かつてよりは食堂も、パドック周辺もきれいに整備されて、夜になるとライトアップがとてもおしゃれだ。若いサラリーマンたちが男女混合でビール片手にゴール前に陣取っていたり、若いOLがふたりで競馬新聞を片手にやってきているのにも驚いた。

果たしてこの日、大井競馬場には、イメージキャラクターの剛力彩芽が来ており、レースの合間にファンに向けて話をしていたが、「実は競馬はよく知りません」とのたまい、ファンに「ひっこめ」とヤジを飛ばされる始末。

地方競馬だと舐めてかかってはいけない。この日もメインレースには、中央競馬の武豊が騎乗して、5番人気の馬をうまく操り、2位にすべりこませていた。

そして、8Rから11Rを100円ずつちびちびと買い、トータルではマイナス150円。感想としては「仕事ではなく、手ぶらで競馬をやるとこんなにも楽しいのか」が、正直なところだ(こうして書いているので、仕事になってしまったが)。

もしチャンスがあれば、今度はゴンドラ席に陣取ってみたいものだ。

◆ゴールドがまさかのスタート失敗

28日の阪神競馬場における「宝塚記念」をたまたま見ていたが、ものすごいことが起きていた。
————————–スポニチ・アネックスより———————–
【宝塚記念】ラブリーデイG1初制覇!ゴールドまさかの15着 スポニチ・アネックス 6月28日(日)16時10分配信
<宝塚記念>ゴール前、逃げ切り快勝のラブリーデイ(奥)
第56回宝塚記念(G1、芝2200メートル・晴良16頭)は28日、阪神競馬場11Rで行われ、川田騎手騎乗の6番人気、ラブリーデイ(牡5=池江厩舎、父キン グカメハメハ、母ポップコーンジャズ)が、直線抜け出し優勝した。勝ち時計は2分14秒4。

1番人気のゴールドシップが大きく出遅れる波乱のスタートからレッドデイヴィスが先頭に立ち、2番手にラブ リーデイ、その後はトーセンスターダム、ネオブラックダイヤなどがつける展開。

4コーナーから直線に入り、逃げたレッドデイヴィスが苦しくなると、2番手でレースを進めたラブリーデイが 一気に抜け出す。直線半ばを過ぎ、外からデニムアンドルビーが猛追するが、最後までしぶとく粘ったラブリーデイが首差抑えてG1初制覇を 果たした。

2着デニムアンドルビーから1馬身1/4差の3着にはショウナンパンドラが入った。なお、史上初JRA同一 G1・3連覇に挑んだゴールドシップは15着に敗れた。

◆ラブリーデイ 5歳牡馬、父キングカメハメハ、母ポップコーンジャズ。北海道安平町のノーザンファーム生 産。馬主は金子真人ホールディングス。戦績は23戦7勝、重賞4勝。獲得賞金は4億2806万1千円。

————————–スポニチ・アネックスより———————–

こう見ると、いかにもスタートが遅れただけという感じがするが、じっさい、ゴールドシップは、前足をそろえてスタート時点で立ち、「スタートしたくない」という意志を示したのだ。

「まさかとは思うが、同じレースを3年連続で制覇した、初めてのケースとなる期待が多すぎたと馬が感じたのだ ろうね。賢い馬は、そうしたことをちゃんと感じ取るのさ」(競馬ライター)

買わなくてよかった。そもそも、栗東や美浦のトレセンに行き、早朝から馬を見て、調教師や厩舎関係者たちにも話を聞いているプロの競馬記者たちが当たらないのに、素人が当たるわけがない。

ましては日刊スポーツの表紙を飾っていた「馬券勝負師」は大外しだ。誰とは言わないが。

かくして、僕は再び競馬の世界に戻ってきた。
不良競馬ライターとして、もし伝えることがあれば、ここで展開しよう。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」の管理人。

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