歌舞伎町ぼったくり裏事情《8》警察の弾圧が盛り場の「食物連鎖」を増殖させる

外国人が同国人を安心させてぼったくりするのは「同胞ぼったくり」なんて呼ばれている。
「韓国人や中国人が同胞をだますのが多いですね。たとえば、『私が出資しているから大丈夫』とか『観光ガイドにはない裏情報で長い間、日本にいる僕しか知らない』として、ぼったくり店にぶちこむ。出てきた客に文句を言われる前に姿を消す」と韓国人キャッチ。

影野臣直氏氏。20歳の頃、大学生ながら歌舞伎町でぼったくりを始める

◆歌舞伎町の「食物連鎖」

こうした「ぼったくり」は、歌舞伎町ならではの「食物連鎖」だと影野氏は指摘する。

「ホステスがホストに金をつぎこむ。そしてホストが遊んでぼったくりに遭う。ぼったくりで儲けた男の連中がホステスにつぎこむ、という風に回転する。私は、ぼったくりが減らないひとつの原因はキャッチが増えたことによると考えています。昔は脱サラで一攫千金を夢見てキャッチになりたがる人がたくさんいたんですが、最近は、ほかの業界で使いものにならなくなった連中にくわえて、半グレのような不良が『ひとまずキャッチでもやるか』と気軽に入ってくるようになった。僕らがぼったくりをしていた時代はそれが本業なのでもう少し人情もあったものです。客が数十万円を払ってショックを受けているところへ、私たちも立場があるから、せめて泣き半にして、半分にしましょう。30万なら15万に、という人情があった。それに比べるといまのぼったくりは、すぐ暴力をふるってしまい、まるで余裕がないのです。それが、まるで弱肉強食の『食物連鎖』、キャッチの声のかけかたも強引になる。それで警察がさらにきつくマークする」

不良少年たちが安易にキャッチになることが確かに増えた。歌舞伎町では、未成年との淫行をガイドする連中も増えているという。

◆事件性があれば警官はいつでも容疑者をパクれる

今年6月10日、歌舞伎町交番に「ぼったくり被害に遭った」と駆け込んできた客を警察が保護し、新宿署へ搬送、そして加害者側の店員を取り調べた。この手の弁護士に強いぼったくり側の弁護士が登場しても警察は怯まなくなっている。

「飲食店がこれまでバカのひとつ覚えみたいに『民事不介入』を振りかざして調子にのっていたからです。いくら民事不介入といっても、事件性があれば警官はいつでも容疑者をパクれる(逮捕できる)。これは借金の取り立て、地上げの立ち退き、どんな民事上の事件でも、いきすぎた行為には恐喝等で、事件送致できますし、これは僕らが逮捕された時代からあまり高圧的な態度で相手を畏怖させたり暴力行為、また「飲み代を払え」と強く請求することは犯罪となります。私自身も強盗と恐喝2件で逮捕されたのですからね。これまで逮捕された店側の人間は、略式起訴で罰金50万円以下程度だったところ今後は正式な起訴(地裁での公判請求)もありうるので、そうなれば店員は20日間の検事勾留もついて身柄拘束されるでしょう」

これまで「文句があるなら警察に行きましょう」と自ら客を連れて交番前に行き、警察が対応しないことを嬉々として見せつけていた連中がいたが、これだけ警察が本気になると交番前のパフォーマンスもできなくなる。

こうなるとキャッチは立場がますます弱くなり、最近は「4000円ぽっきりだというなら証拠に一筆書いてくれ」とスマートフォンで顔を撮影されることもあるという。

「ただ、こうなると店側もまた新しい抜け道を探すでしょう。警察にもメンツがありますから街頭の防犯カメラでキャッチと客のやりとりを無断で録音したり、客を装って店内に潜入する囮捜査など、不当捜査があるかもしいれませんし、泥沼のいたちごっこになる可能性もあります」と影野氏。

苦しいキャッチはさらに悪質化。「私に前金を払ってください。追加一切なし」といって、客から路上で料金を受け取り店に紹介。店側は後に「金をもらってない」と再請求するケースもある。

「あまりに極端なぼったくりが頻発すると、今後は条例を強化した改正もありうるでしょう。たとえば料金表について営業許可を申請する際に東京都公安委員会に届け出る仕組みとか。国家権力が店の営業にも関与するようになると、歌舞伎町の飲食店は成立しなくなりますよ」(影野氏)

今日もまた、歌舞伎町では多くのキャッチが「4000円ぽっきり」などと客に声をかけているが、その動向は歌舞伎町の治安に直結している。

◆警察監視強化で歌舞伎町から池袋、上野、錦糸町にシフトするぼったくり店

10月上旬、ある土曜に歌舞伎町を歩いていると、まったくキャッチを見かけなくなった。見かけるのは、居酒屋のユニフォームを着て「3000円で飲み放題、いかがですか」と声をかけている“合法な声かけ”の店員たちだけ。

歌舞伎町のスナックのバーテンが言う。
「もう、キャッチをしていると、すぐに二人組で赤いベストを着た警官が『やめなさい』と止めに入る。常に見張られているのです。歌舞伎町でぼったくりは難しくなったと思います」

そして、クラブ店員が言う。
「10月上旬に、警官たちがぼったくり店やキャッチを徹底にパトロールした。『このままだと摘発されるぞ』と。それで、逮捕されては叶わないと、ぼったくり店はあわてて池袋、上野、錦糸町などに散ったのです」。 [完]

歌舞伎町ーセントラル通り(撮影 小林俊之)

(小林俊之+影野臣直)

小林俊之+影野臣直!強力タッグの短期連載ルポ[全8回]
新宿・歌舞伎町ぼったくり裏事情──キャッチ目線で見た「警察の対応変化」
《1》「ぼったくり店」はどうやって生まれるのか?
《2》なぜ銀座のクラブにはゴタがないのか?
《3》メニューに金額明示があれば違法性はない?
《4》東京五輪を前に警察が浄化作戦を始動?
《5》御一人様51万円「クラブ・セノーテ」事件の衝撃
《6》ベテランキャッチが語る「ぼったくり」の世界
《7》「ガールキャッチ」復活と増えるプチぼったくり
《8》警察の弾圧が盛り場の「食物連鎖」を増殖させる

スクープ!武黒一郎=元東電フェローを直撃! 大注目の総力特集は「脱原発と反戦・反安保」!

11月25日発売開始!『NO NUKES voice』第6号!

原発は菅直人×武黒、反戦はSEALDs×ハンスト学生の『NO NUKES voice』第6号!

この夏は熱かった。11月も後半になり記憶が薄れかけている向きもあろうが、安保法案をめぐる抗議行動は国会周辺だけでなく全国で多彩に闘われ、そこではこれまで少なかった若者の姿があった。その中心としてメディアの寵児にのし上がった感すらある「SEALDs」。中心メンバーの奥田愛基さんは国会でも発言するなど多くの注目をあつめた。「本当に止める」、「民主主義ってなんだ」といたフレーズがネット上でも飛び交い、大きな話題となった。

だからこそ、本日11月25日発売の『NO NUKES voice』(NNV)第6号の特集は「脱原発と反戦・反安保」だ。

◆菅直人元首相の「告白」から見えてくるマスメディアが伝えてこなかった真実

まず、特集の頭を飾るのは、当時首相であった菅直人さんの激白だ。「いまこそ、私の話を聞いてほしい なぜ、あの時、情報が正しく伝わらなかったのか?」は、反原発運動に長年携わってきた槌田敦さん(物理学者)が聞き手となることにより、他媒体では決して実現できない踏み込んだ事実をいくつも掘り起こしている。首相官邸内でどのような思案がめぐらされたのか、情報は正確に伝わっていたのか、最高責任者として事故直後福島に飛ぶ決意をした理由とは……。息をのむような事実がこのインタビューでは明らかにされている。

少しだけ種明かしをすれば、「菅インタビュー」は今日のマスメディアが重要な事柄を全くと言っても過言でないほど「伝えていない」ことを示す証拠を読者に提供してくれる。

◆「SEALDs」奥田愛基に鹿砦社松岡社長が挑む激論生録インタビュー!

「SEALDs」奥田さんへのインタビューは発行人である松岡社長自らが敢行した。このインタビューは「提灯持ち」視点からのそれではない。よってこれまで他のメディア(一部右派メディアを除く)で紹介されたのとは全くことなる角度から遠慮なく疑問がぶつけられており、「SEALDs」現象が一体何だったのかを理解するためには必読だ。

同時にやはり松岡社長自ら斬り込んだミサオ・レッド・ウルフさんへのインタビューも「激論」と表現しても過言ではないだろう。「反原連」の指導者として、これまでもNNVに登場したミサオ・レッド・ウルフさんへの松岡直撃は予定調和と対極に位置する。反・脱原発運動が今後進むべき道筋、3・11後これまで歩んできた道程を振り返り、成果と問題点を浮かび上がらせる示唆に富んでいる。「反原連」支持者、「反原連」に違和感を抱く方双方にとって読み逃すことが出来ない。

◆「SEALDs」現象と対を成す「ハンスト実行委員会」の学生たちの座談会実現!

若者の活躍では「ハンスト」を戦術に闘った「ハンスト実行委員会」の座談会は内容において「SEALDs」現象とは一線を画す「硬派」のそれと言えよう。僅か10数人のメンバーが4人のハンスト実行者を支え、最長149時間のハンストを戦い抜いた学生たちが見据える未来は「現状肯定」ではなかった。「SEALDs」現象との対比は必ずや読者に強い刺激となるだろう。

◆鹿砦社が執念で実現した武黒一郎=元東電副社長のおっかけスクープルポ!

そして、鹿砦社といえば名物「直撃取材」だ。今回のターゲットは元東電副社長で検察審議会により強制起訴が決定した「武黒一郎」だ。我が取材班の執念は果たして実ったのか……。捕捉した! 武黒の変わり果てた姿を長時間の張り込みの末に自宅で激写に成功!武黒と取材班のやりとりも執念のなせる技。NNV取材班の執念恐るべしである。

◆上野千鶴子さん、鎌仲ひとみさんの熱きインタビュー、各地の運動報告もますます充実!

他にも社会学者の上野千鶴子さん、映画監督の鎌仲ひとみさんなど熱きインタビューが盛りだくさんだ。そして、特集を締めるのは今号で編集長を降りる松岡社長による「解題 現代の学生運動―私の経験に照らして」である。自ら「SEALDs」や「ハンスト実行委員会」に接触し、語った松岡社長にとって「学生運動」は他者のそれではなく、現在の彼を規定している一部である。自らの経験とこんにちの「学生運動」を解析し若い世代へ送る辛口のエール。この文章は「ヘサヨ」、「ブサヨ」といった語彙を持つ方々からはたいそうな顰蹙を買うであろうし、賛否両論激論を喚起すること必至だ。

運動報告では経産省前テント広場裁判「被告」の淵上太郎さんが東京高裁の不当判決を糾弾し、高木久美子さん(笑顔でつながろ会代表)、本間龍さん(元博報堂)、渋谷三七十さん(ライター)、納谷正基さん(『高校生進路情報番組ラジオ・キャンパス』パーソナリティー)、中村通孝さん/松浦寛さん(FB9条の会)など全国各地の情報が満載だ。

雑誌は「総力特集」、「全力取材」をキャッチコピーに多用するが、NNV6号は誇張抜きに取材班が「総力」を挙げた濃密な報告と思想と行動が詰め込まれている。今すぐ書店へ! (田所敏夫)

タブーなき総力取材!「脱原発」×「反戦」の共同戦線雑誌
『NO NUKES voice (ノーニュークスヴォイス)』 第6号
11月25日発売!

●主な内容●
秋山理央(映像ディレクター、フォトジャーナリスト)
ALL STOOD STILL Vol. 6『冬ニモマケズ』
[報告]淵上太郎さん(経産省前テントひろば裁判「被告」)
経産省前テント裁判控訴審 東京高裁不当判決に抗議する!
[報告]本誌特別取材班
福島原発事故A級戦犯=武黒一郎(東電元フェロー=副社長)を直撃!

[特集]脱原発と反戦・反安保―世代を超えて
[インタビュー]菅直人さん(元内閣総理大臣)
いまこそ、私の話を聞いてほしい なぜ、あの時、情報が正しく伝わらなかったのか?
[インタビュー]上野千鶴子さん(社会学者)
知っていたのに 何もしなかった私も 共犯者だった
[インタビュー]鎌仲ひとみさん(映像作家)
映画と一緒に旅しながら民主主義のエクササイズ続ける
[インタビュー]Misao Redwolf さん(首都圏反原発連合)
再び脱原発のコールの爆発を!──今後の超党派市民運動の行方
[提案]佐藤雅彦さん(ジャーナリスト)
うたの広場
[インタビュー]奥田愛基さん(「SEALDs」メンバー)
デモするたびにパクられてたら 俺、国会行ってないすよ
[座談会]学生ハンスト実行委員会
私たちは直接行動で状況を切り開こうとした
[報告]松岡利康(本誌発行人)
解題 現代の学生運動―私の体験に照らして
[報告]高木久美子さん(笑顔つながろ会代表)
3・11 放射能汚染に負けない! 笑顔でつながり、みんなで立ち上がろう!
[報告]本間龍さん(元博報堂社員、作家)
原発プロパガンダとは何か?(第四回) 福島民報・福島民友(三)
[報告]渋谷三七十さん(ライター)
地獄への道案内は罪! もはやつける薬がない「原発推進メディア」を斬る!
[報告]納谷正基さん(『高校生進路情報番組ラジオ・キャンパス』パーソナリティ)
反原発に向けた想いを次世代に継いでいきたい(5)
このシリーズの連載を始めた真の意味を、そろそろ打ち明ける時がきた……
[運動情報]中村通孝さん/松浦寛さん(FB憲法九条の会)
原発をゼロにしてから死ぬのが、大人の責任だと思う
ほか

「Paix2」のプリズン・コンサート365回達成をギネスブックが認定却下した理由

全国には刑務所や少年院が300以上あるという。そのすべてをボランタリーに訪れ「プリズン・コンサート」と称されるようになった「慰問」を継続している女性ミュージシャンデュオ「Paix2(ペペ)」の活動は既にご存知の方も多いだろう。

が、ご存知ない方のために、念のために再度ご紹介しておこう。「Paix」はフランス語で「平和」を意味する。manamiさん、megumiさんの二人は2000年にデビューし、その年に1日署長を務めた鳥取県倉吉警察署の方の勧めにより刑務所や少年院などの慰問をはじめる。

◆他の慰問とは一味違う自由な「Paix2」の「プリズン・コンサート」

Paix2「しあわせ」(日本コロムビア2015年6月17日発売)

デビュー以前、manamiさんは岡山大学研究所の技術補佐員で、megumiさんは看護師だった。「Paix2」はその後も精力的に「プリズン・コンサート」を続け、2005年には法務大臣から「プリズン・コンサート」を評価され表彰を受け、2012年には『逢えたらいいな プリズン・コンサート300回達成への道のり(限定版)』を鹿砦社から出版している。さらに2014年には「保護司」に、2015年には「矯正支援官」にそれぞれ法務大臣から任命されている。芸能界きっての活躍である。杉良太郎も「特別矯正監」に任命されているが、杉良太郎の「慰問」は講演が殆どだそうで、果たしてどれほど施設内の人が喜ぶものだろうか。

『体験的獄中マニュアル 新法下での過ごし方』(西本裕隆著 2009年鹿砦社)で「慰問」についての興味深い言及がある。「刑務所では1~2か月に1回、土曜の午前中に慰問が行われる。これは外部の人間が受刑者の前で歌を歌ったり踊りを披露したりするもので、娯楽の少ない刑務所生活においてはこの慰問が楽しみだと言う受刑者もいる。しかし、大多数の受刑者は楽しみにはしていない。かえって迷惑だと思っている受刑者の方が多い。それはこの慰問が強制参加であることと感謝の強制があるからだ。(中略)慰問の内容だが、外部の一般の人が演奏会をしたり、踊りを踊ったりあるいはカラオケ大会をしたりといった素人芸を見せられるというものである。」

素人のカラオケ大会に「感謝の強制」をさせられたのでは受刑者も迷惑千万だろう。

逆に「Paix2」の「プリズン・コンサート」では施設にもよるが、通常許されない「手拍子」などが比較的自由に許されるケースもある。刑務所が「Paix2」の活動を理解しているので受刑者もこの時ばかりは(限られてはいるけれども)、感情の発露を許されることがあるそうだ。そして多くの受刑者は彼女たちの歌や演奏に感激し、涙を流す姿も珍しくないという。出所後「Paix2」のコンサートを見にくる方も少なくないそうだ。

◆ギネスが「Paix2」の偉業を却下した理由

その「Paix2」が全国全ての刑務所を訪問したのをきっかけに約1年前「ギネスワールドレコーズ」に申請を行ったところようやく下記の連絡が返ってきたそうだ。

「ギネスワールドレコーズよりご連絡いたします。
この度は、ギネス世界記録へのご申請をありがとうございます。
ご申請頂きました内容について、審議いたしましたので、ご連絡いたします。

ご申請内容:15年間に亘り、全国の刑務所・少年院で「Prisonコンサート」と称し、ボランティアで通算365回のコンサートを行った女性デュオ

残念ながら、ご申請いただきました記録名に関しては、ギネス世界記録の記録としては、認められません。ギネス世界記録ではたいへん多くのお問合せおよび申請を頂いており、本ケースのように新しいカテゴリーの場合は、まず弊社の理念と照らし合わせたうえで、あらゆる角度から審議され、新たなカテゴリーとして設定可能かどうか判断させて頂いておりますことを、まずご報告いたします。

ご申請内容が記録対象となり得るかどうかにあたり、「微細化されていないこと」、「狭義に過ぎないこと」等も検討されます。この度いただきました申請に関しましては、コンサートの開催場所について「刑務所で」などの細分化はしていないため、残念ながら、審議した結果、ギネス世界記録の対象にはあたらないと判断されました。」

要するに「却下」だ。かつては大食い世界記録やドミノ倒しの数、けん玉を多数の人が同時に載せる人数などは認めているのに、刑務所・少年院への365回の慰問の意味が「ギネス」にはわからないらしい。

この判断を下したのは「ギネスワールドレコーズジャパン 記録管理部」なるセクションだ。「ギネス」は日本の刑務所は「世界的にも劣悪極まりない」と悪評が高いことを知らないのか、あるいは「Paix2」の活動自体を評価する気がないのか。恐らく回答は後者だろう。

そりゃあ、たくさんの申請があるだろうけども、そのほとんどは「質」ではなくてもっぱら「回数」や「量」に審査の重点がおかれているんじゃないか。そもそも「ギネス」ってなんなんだ? そう思って調べてみたら日本で買うと馬鹿高いあの「ギネスビール」の販売元が始めたのが、この「どんなことでも質より量」を競わせる「お遊び」の胴元だった。なーんだ。ビール屋の余技だったんだ。

◆「無料」申請とは別に有料95,000円の申請ルートもあるギネスブック商法

それにしては世界中で既に権威化したといっても過言ではない「ギネス」。かつては「ギネスブック」で大儲けして現在では記録の申請を「有料」と「無料」の2つの方法で受け付けている

「有料」申請の金額を見て驚いた。なんと9万9千円もする。しかもこれでも値下げした金額らしく、かつては12万5千円も取っていたと書かれている。「有料」申請は「ファーストトラック」と呼ばれ、申請への返答も「無料」よりも短時間であるらしい。

「無料」申請でも「証拠物の最終審査結果のご連絡」の「目安」は「約3ヵ月」となっているが「Paix2」への回答には1年近くを要している。か・な・り、怪しくはないか。この「ギネス申請商法」。

「Paix2」への回答で「申請内容が記録対象となり得るかどうかにあたり、『微細化されていないこと』(中略)も検討されます。(中略)この度いただきました申請に関しましては、コンサートの開催場所について『刑務所で』などの細分化はしていないため、残念ながら、審議した結果、ギネス世界記録の対象にはあたらないと判断されました。」と自ら設けた「微細化されていないこと」基準に「Paix2」の申請は「細分化されていない」、つまり「問題なし」と書いておきながら結果が「却下」なのは文章として意味をなさない。

私の邪推かもしれないが「Paix2」が「有料」で申請をしていたら記録は受理されていたのではないか。この「却下」回答理由文章のいい加減さと「有料」申請の異常ともいえる高料金がそう想起させるのだ。

ただ、金を払って「質は関係なく、量や回数だけ」(頭を使うなということか?)に没頭すれば獲得できるのが「ギネス」記録の実態のようだ。重ねて強調するがこの申請料金の9万5千円はいかにも胡散臭い。

「Paix2」の価値を汚さないために申請が受けつけられなかったのはむしろ僥倖というべきかもしれない。

Paix2『逢えたらいいな―プリズン・コンサート300回達成への道のり』(鹿砦社2012年04月20日刊)

Paix2 official website

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Paix2 official blog of Manami(まなみ)
Paix2 official blog of Megumi(めぐみ)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎安保法採決直後に若者弾圧!ハンスト学生への「不当ガサ入れ」現場報告
◎「反社会勢力との取引」を拡大解釈する銀行の「口座開設拒否」は人権侵害だ!
◎挙句の果ての「1億総活躍」──狂気、矛盾、悪意、恫喝づくしの安倍暴走政権

スクープ!武黒一郎=元東電フェローを直撃! 大注目の総力特集は「脱原発と反戦・反安保」!

11月25日発売開始!『NO NUKES voice』第6号!

歌舞伎町ぼったくり裏事情《7》「ガールキャッチ」復活と増えるプチぼったくり

ここのところ、「ソープやデリヘルが歌舞伎町で激減している」と聞くが、歌舞伎町の最新流行では「ギャルの手こきサービス」がある。

「風俗のメッカだった歌舞伎町も、時代の流れで性風俗が減退。客もハードなエロスが求めなくなった。ただ、手軽な20分1500円の“手コキ”は大流行。AVルームに現役の女子大生や仕事を終えたOLが大量に働いていて、相場3000円程度でやっているんですが、現役の女子大生ですとか言って10万円以上の値段で案内したこともある。これは事前に値段交渉で提示するので絶対に揉めません。これこそメディアが報じない『隠れたプチぼったくり』なんですよ」

ぼったくりに遭わない方法は「キャッチを無視するしかない」という。

一方、「ガールキャッチ」も最近、復活しつつある。6月、歌舞伎町のキャバクラ店「LUMINE」で、22歳のホステスが逮捕。容疑は2015年3月11日の深夜、20代の男性会社員2人に「料理は何を頼んでも3000円。時間も無制限」と紹介しておいて、実際にはテーブルチャージ代7万円を請求するぼったくり。

男性2人は1時間超の飲食で24万円を請求され、全額支払った。一説には同店の背後には中国系のマフィアがいたとされるが、女性が客を誘う「ガールキャッチ」は過去、歌舞伎町で横行していた手口だ。

◆「ガールキャッチ」の元祖、影野臣直氏が嘆く「にわかぼったくり店」の跋扈

ぼったくりを始めた頃の影野臣直氏(撮影/渡辺克己)

1999年2月、新聞に「梅酒一杯15万円」の見出しで報道された「元祖ぼったくり事件」の逮捕者で、その後は「元ぼったくりの帝王」として作家になった影野臣直氏は「ガールキャッチ」を始めた元祖だ。美女を路上に立たせて「安く飲めますよ」と男性にしなだれかかり、そのまま彼女が客の相手をする。この「ぼったくり」の原型を作った人物だけに、現在のぼったくり事情にも精通している希有な人物だ。
「ゲリラぼったくりとは、聞こえがいいけど、私に言わせれば『ぼったくり』の美学も知らない『にわかぼったくり店』ですよ。ほかの場所からブラリとやってきて、1、2ヶ月で稼いではほかの盛り場に移るということをやっている。彼等は、客を踏みつけるように根こそぎ金を奪う。私たちがやっていた時代は、ぼったくった相手に、『せめてもの店からのプレゼントです』とヘネシーを一本プレゼントしたり、客の懐具合を見て適度なぼったくりをしていました。歌舞伎町には昔から私以前にも連綿とぼったくり業者がいたんです。ぼったくり条例は、『明確な料金の義務化』と『乱暴な言論や暴力による料金不当取り立ての禁止』をうたっていますが、値段表なんて、たとえば店内を赤い照明にして、細かい赤い文字で書けば読めませんし、料金取り立ても、やんわりと『遊んだ分は払って下さいよ』と丁重に請求すれば条例に触れない。キャッチと聞いた値段とは違う、という主張も店としては『そんなキャッチは知らない』と言い張ればいいだけで、抜け道はいくらでもあるんですよ。客は払わないと無銭飲食になるわけですしね。そもそも『飲食業』で登録していれば一定の値段をつけますが『サービス業』の登録店は、どんな値段をつけてもOKという仕組みがあります。そういうこともあって警察も民事不介入だったんです。『ぼったくり防止条例』もザル法だったので、成功例を見た半グレたちが、『みかじめ』さえ払えば堂々と営業できる歌舞伎町でぼったくりを始めました。だからこそ、ゲリラぼったくりの飲食店が増えたのでしょう」

◆現役ガールキャッチ女性の告白──「人生経験として、一度ぼったくられるのもいいかも」

風林会館の前にいた現役のガールキャッチ女性に話を聞いた。24歳で、鹿児島出身の真鍋かおり似。彼女は、ガールキャッチだが女性客を捕まえるのがうまい。

カップルを狙って、「彼女の前でかっこつけそうな男」をバーに連れて行くのだが、相方の女性の服装を褒めるなどして親しくなり、信用させる。ときには「前に会ったことある」とウソをついて近寄るという。

まずはこのカップルをしこたま飲ませて泥酔させ、数十万円を支払う伝票にサインさせる。2人を別の部屋に分けて彼には「彼女が支払いはあなただと言った」と言い、彼女には「彼が支払いはあなたからもらえと言った」と言い、二重に金をとるひどいこともやるという。

「1年くらい前は、居眠りをする薬をビールに入れて泥酔させて、ATMまで客を連れて行って、金を引き出させたこともある」と女性。ぼったくりに関して、罪悪感はないのか。

「歌舞伎町に来て、そんな警戒もせず安く飲めると考えるほうがおかしいでしょ。それに、こうして勉強になった方がいいんです。人生経験として、一度ぼったくられるのもいいかも」[つづく]

歌舞伎町ーセントラル通り(撮影小林俊之)

(小林俊之+影野臣直)

小林俊之+影野臣直!強力タッグの短期連載ルポ[全8回]
新宿・歌舞伎町ぼったくり裏事情──キャッチ目線で見た「警察の対応変化」
《1》「ぼったくり店」はどうやって生まれるのか?
《2》なぜ銀座のクラブにはゴタがないのか?
《3》メニューに金額明示があれば違法性はない?
《4》東京五輪を前に警察が浄化作戦を始動?
《5》御一人様51万円「クラブ・セノーテ」事件の衝撃
《6》ベテランキャッチが語る「ぼったくり」の世界
《7》「ガールキャッチ」復活と増えるプチぼったくり
《8》警察の弾圧が盛り場の「食物連鎖」を増殖させる [近日掲載]

スクープ!武黒一郎=元東電フェローを直撃! 大注目の総力特集は「脱原発と反戦・反安保」!

11月25日発売開始!『NO NUKES voice』第6号!

一番人気はチアリーダー? 日本ラグビーはなぜ五郎丸効果を活かせないのか?

鳴り物入りで、英ワールドカップの日本代表の活躍を受けて開幕した感のある今年の「ジャパンラグビートップリーグ」。初日に続いて「集客」が2日目もぱっとしない。試合はつまらなく、天気も駄目ダメだったが、この悪しきムードを一掃したのは、「秩父宮」に登場した意外な「大和撫子」だった。

◆「五郎丸効果」で関係者は盛り上がっているものの……

五郎丸歩(ヤマハ発動機)の「五郎丸ポーズ」が流行語大賞をとり、ラグビー日本代表メンバーはテレビ番組、CMに雑誌にと引っ張りだこ。ラグビーの大ブレイクがやってきたと思いきや、なんと11月13日に行われた開幕戦の「パナソニックーサントリー戦」で前年の8月の開幕戦より370人少ない、1万792人の観客数で責任問題となっているのが「ジャパンラグビートップリーグ2015-2016」 。ここではラグビー関係者が観客をかき集めるのに奔走している。

初日を終えると「ジャパンラグビートップリーグ」の関係者たちは、出場する東芝やリコーの関係者のみならず、マスコミ相手に急遽「来てください」と緊急コール。ホームページには、磯山さやかが初戦を観た「楽しかったです」との感想のツイッターと前出・人気ラガーの五郎丸のつぶやきを並列で掲載するなど痛いほど必死に集客をPRしている。

2日目、秩父宮ラグビー場で行われた「リコーブラックラムズ VS NTTコミュニケーションズシャイニングアークス」(午前11時40分開始)と「東芝ブレイブルーパス VS クボタスピアーズ」(午後2時開始)は、雨がぱらつく中、少しずつ観客が集まってきて、スタンドの半分強をなんとかして埋めた。

「それでも、マスコミは押し寄せました。記者は25人、カメラマンは30人以上。こんなにマスコミが押しかけたのはちょっと記憶がありません。平尾誠二(現神戸製鋼コベルコスティーラーズ総監督兼任ゼネラルマネージャー)が率いた全日本が1991年にワールドカップで初勝利して以来かも」(ラグビー雑誌記者)

◆「記念観戦」の一見客がほとんどだった

しかし試合は「リコー VS NTTコミュ」は、39-12でNTTが勝利し、「東芝-クボタ」のマッチは47-3と一方的で、ダブルヘッダーにもかかわらず後半は2試合とも負けているためかバックスも守備で走らず、やや気が抜けた雰囲気がスタンドを支配。2試合目の「東芝 VS クボタ」戦では日本代表のキャプテンで、東芝でフランカーを務めるリーチ・マイケルが最初のトライを決めた前半が終わると「雨も強いし、もういい」とばかりに多くの人が席をたった。つまり「記念観戦」の一見客がほとんどだったのだ。

「休みなのに観戦しろと言われたので来た」(20代の東芝社員)、「派遣社員ですが、昨夜に上司から頼まれたので応援に来ました」(30代リコー派遣社員)という、「人数合わせ」の観客ばかりの中、西側スタンドで「GO! GO! スピアーズ!」と黄色い声をあげて男性客の視線を集めたのは、「スピアーズ」のチアガールたちだ。

◆クボタ「スピアーズ」のチアリーダーは質が高い……

ちょうど踊りの練習をしていたのだが、これが売店でごった返す空間で行っていたため、いっせいに男性客に取り囲まれる。

「撮影しないでください」とスタッフが注意してまわる。
「じゃあ、こんな目立つところでやらなくても」という声もある中、
「実は『スピアーズ』のチアリーダーは質が高くて、ファンがついているメンバーがいるほどなんですよ。僕も実はチアリーダー目当てに来ました」(男性客)というラグビー関係者が涙ぐみそうな人も。

それでも、初心者でもわかるように、「今のプレイはノックオンです。ボールを○○選手が落としたために反則となります」などプレイのひとつひとつに電光掲示でリプレイが出て、解説のアナウンスがついたり、ファンサービスで試合前にプレゼントを選手が観客席に投げ入れるなどして、集客への工夫が感じられた。

「03年からリーグがあるが、チームで実力差がありすぎる。少なくとも実力を均衡にしないといけない」(前出・ラグビー雑誌記者)との声も。

一番盛り上がるのが「チアリーダー」では情けない。2019年のワールドカップに向けてさらなる充実が求められるラグビー界の現状と課題がかいま見えた秩父宮だった。

(小林俊之)

◎歌舞伎町ぼったくり裏事情《6》ベテランキャッチが語る「ぼったくり」の世界
◎山口組が分裂した本当の理由──マスコミが注目する「内部抗争」の真実
◎「工藤會壊滅ありき」で福岡県警が強引に人権を無視し続ける邪な理由

独裁者を撃つ反骨の砦『紙の爆弾』!

 

キック新時代を牽引するRIKIXジムの「NO KICK NO LIFE」

“リキ”と“キック”を掛け合わせジム名にしたRIKIXジムの小野寺力会長が主催する「NO KICK NO LIFE」興行が通算で5回目を迎えました。

RIKIXジム「NO KICK NO LIFE」会場(2015.11.9)

メインイベントは62.0kg契約ノンタイトル5回戦で、日本ライト級チャンピオンの勝次(高橋勝次/目黒藤本/62.0kg)VS WPMF日本ライト級チャンピオンの黒田アキヒロ(フォルティス渋谷/62.0kg)戦。チャンピオンが多いと言われている中での日本の代表的立場同士の戦いはかなりの好カード。全8試合で全28ラウンドと観る側も疲れない、ほどほどの長さの興行で、2回目となる「TSUTAYA O-EAST渋谷」というライブハウスを利用した入場者数は今回平日でも約800人という超満員の来場。

キックボクシングとしては小規模ながら、こういう「客席がリングに近い会場」は今後も人気が上がりそうで、“土日祝日”に興行が重なる日、または平日の狭間を狙った小規模興行は、会社帰りのファンの足運びも考慮した時間帯で、帰り道でも飲食に困らない繁華街と交通の便がいい渋谷など主要駅のライブハウスの利用が予想されます。

◆“キックの赤い薔薇”小野寺力会長が生んだ「NO KICK NO LIFE」の世界

小野寺力会長の現役時代デビュー戦。山田浩に判定勝利(1992.11.13)。今日に繋がる第一歩を踏み出した日ともいえる

小野寺力氏は現役時代、“キックの赤い薔薇”というキャッチフレーズを持ち、キックの老舗の名門・目黒ジムに所属した歴代チャンピオンの中でも一番と言われるテクニックを持った元・日本フェザー級チャンピオン。まだ現役時代の2002年9月にライブハウスのSHIBUYA-AXで興行を打ち、メインイベントを務めるとともに興行運営に関わり、アイディアマンとなって現在に活かされています。

2003年11月にはRIKIXジムを大田区北千束(大岡山)に開設。2005年10月には自身の引退興行として大田区体育館で「NO KICK NO LIFE」を初開催。同年、ラジャダムナン系とルンピニー系のフェザー級王座統一を果たしたアヌワット・ゲオサムリット(タイ)にパンチの強打で2ラウンド3ノックダウンでKO負けを喫するも、最強相手を選んでの完全燃焼に更なる評価を得ました。

プロモーター小野寺力RIKIXジム会長(2014.2.10)

8年4ヶ月ぶり「NO KICK NO LIFE」開催となった2004年2月、大田区総合体育館で今度は後輩の、前・ラジャダムナン・スーパーライト級チャンピオンの石井宏樹(目黒藤本)がムエタイ4階級制覇のゲーオ・フェアテックス(タイ)とWPMF世界スーパーライト級王座決定戦で対戦。ハイキック一発で2ラウンドKO負け、2005年2月の第3回開催では、RIKIXジムから初のチャンピオンとなった愛弟子・田中秀弥が引退試合、シュートボクシングの代表的名チャンピオンのアンディ・サワー(オランダ)にハイキック一発で2ラウンドKO負けを喫しました。この完全燃焼しての引退は選手の理想像となり、今後も選手の感情を受け止め、その舞台に力を注ぐであろう小野寺会長です。

◆日本チャンピオン対決「高橋勝次 VS 黒田アキヒロ」戦は黒田が逆転勝利!

この日、メインイベントの日本チャンピオン対決は、勝次がパンチで先手を打ち主導権を握る。飛び蹴りも多発、勝次の攻勢が続くも第4ラウンドに入ると黒田のローキックが効いたか、勝次も手数が減る。黒田も簡単には崩れない強さがあるのだと感じさせるチャンピオンの意地。第5ラウンド終了が近くなる2分30秒あたりで、黒田の右ストレートが勝次のアゴを捕らえる展開逆転のダウン。残り少ない時間(20秒)では再び逆転も難しく、3-0(49-47、49-48、49-47)の判定で黒田アキヒロが逆転勝利を飾りました。

勝次(右)vs黒田アキヒロ(2015.11.9)
勝次(ダウン)vs黒田アキヒロ(ポーズ)(2015.11.9 )

「勝次は相手を見過ぎるクセがあり、そこを突かれる場合が多い」と言う目黒藤本ジム陣営。「チャンピオンなんだから、今更、事細かな基本を教わる立場ではない。それまでに教わったことを反復練習と、相手の攻撃を避ける練習を繰り返しやらないといけない。」という別の厳しい陣営の意見もありました。

新日本キックボクシング協会代表・伊原信一氏、目黒藤本ジムの藤本勲会長も並んで観戦。ステップアップして上のステージへ進みたい勝次への査定は厳しいものとなるかもしれないが、12月13日の目黒藤本ジム主催興行では、勝次の日本ライト級王座初防衛戦を同級3位の春樹(横須賀太賀)を相手に行なわれます。汚名返上へ、あと1ヶ月で、原点に返って立て直さねばなりません。

◆セミファイナル「前口太尊 VS 中尾満」戦は激闘の末、前口がKO勝利!

セミファイナル出場のJ-NETWORKライト級チャンピオンの前口太尊(PHOENIX)は、梅野源治が所属する強豪揃いのジム。マイク・タイソンから名前を肖り、一発で試合を終わらせるハードパンチを持つ。対する中尾満(元・日本ライト級暫定チャンピオン/エイワスポーツ)は、新日本キックで伊原ジムに所属していた2010年8月、石井達也(目黒藤本)との日本ライト級挑戦者決定戦で勝利し、後に暫定王座に昇格した経緯を持つ。

63.0kg契約5回戦で行なわれたこの試合、前口太尊が第2ラウンドにコーナーに詰めヒザ蹴り連打と更に右フックで2度ダウンを奪った後、中尾満が右フックで逆転のダウンを奪う。こういう展開は勝負がわからなくなる盛り上がりを見せるが、結局、再び前口太尊がロープに詰めヒザ蹴り連打をする中、レフェリーが止め、前口が第2ラウンド2分56秒、3ノックダウンによりKO勝利を収めました。

前口太尊(左)vs中尾満.最初のダウン(2015.11.9 )
前口太尊のマイクアピール(2015.11.9)

セミファイナルとメインイベントでの、逆転の攻防で締め括られ、ファンのボルテージも最高潮。(錯覚とはいえ)渋谷の街全体が盛り上がった印象でした。

全8試合中、RIKIXジムから4人が出場で1勝2敗1分。目黒藤本ジムから2人が出場で1敗1分。他はフリーのジムが中心です。来年はまた大田区総合体育館から始まる予定。どこの団体問わず、今度はどんなメンバーが揃うかも期待されます。興行も継続化され「NO KICK NO LIFE」も軌道に乗ったと言えるでしょう。

「NO KICK NO LIFE」のラウンドガールたち(2015.11.9)

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない。」

◎ルール変更の紆余曲折から辿る日本キックボクシング界の栄枯盛衰クロニクル
◎新日本キック「MAGNUM39」──トップ選手のビッグマッチと若いチャンピオンたち
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ラグビー、フィギュア、そして来季の金本阪神タイガースに胸躍る

食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋と何をするにもいい季節ですね。ご飯は美味しいし、今年はスポーツ界も話題が満載です。

ラグビーのW杯では、いや腰を抜かしましたよね。まさか南アフリカに日本が勝つのを生きているうちに見られるなんて夢にも思いませんでした。それだけでなく、中3日で対戦したスコットランド戦以外(ラグビーは激しいスポーツで怪我が付き物なので中3日での対戦は国際レベルでは「無理」と言われています)は全て勝利の3勝1敗!この結果こそ驚嘆に値します。日本はこれまでW杯では1勝しかしていなかったんですから。それ以前にW杯に出場すら出来ない時代も長く続きました

文芸春秋『Number』特別増刊「桜の凱歌 エディー・ジャパンW杯戦記」表紙を飾った五郎丸歩選手(2015年10月23日臨時増刊号)

◆ラグビーは日本で稀なボーダレス・スポーツ──次のW杯は2019年、日本です!

日本人選手の実力アップは嬉しい限りですし、外国人選手を大胆に起用したのも勝因ですね。ラグビーに詳しくない方には「なんで日本代表チームなのに外人がたくさんいるの?」と思われた方も多いのではないでしょうか。ラグビーはその国の国籍を持っていなくても、一定の条件を満たせば代表になれる、素敵な意味で「ボーダレス」なスポーツなんです。

そしてW杯の次回開催は2019年日本なんですよ! 自国開催だから益々力が入ることは間違いなしです。今大会で3勝1敗なのにベスト8に残れなかったのはちょっと残念ではありましたが、それは次回2019年日本大会で実現してもらいましょう。大会はニュージーランドの2連覇で幕をとじました。でもベスト15になんと五郎丸選手が選ばれたのです。日本選手がベスト15に選ばれるのはもちろん初めてで世界からも五郎丸選手をはじめとした日本チームの力が認められた証ですね。本当に立派だったと思います。拍手!

◆フィギュアスケートは羽生選手の「限界演技」に要注目!

シーズンが幕を開けたフィギュアスケートW杯のカナダ大会ではソチ五輪で金メダルの羽生結弦選手が2位に入りました。残念ながら勝利は1年半休養していた地元カナダとパトリック・チャンに譲りましたが、フリー演技の構成は世界中で羽生選手しか出来ない難度の高い技の連続でした。フィギュアスケートは技ごとに決められた基礎点を加算した技術点と芸術点の合計で点数が決まりますが、技をいかにきれいに決めたか、によって加点される仕組みになっています。簡単な技でも完璧、綺麗にこなすと1点プラスという具合です。

今回のパトリック・チャン選手は4回転ジャンプを1回、3回転半も1回というプログラム内容だったのに対して、羽生選手は4回転3回、3回転半1回というチャレンジングなプログラム構成でした。回転ってすごく体力を使うそうです。とくにプログラム後半のジャンプは転倒の危険もあるから、自信のない選手は後半にジャンプは入れません。

でも羽生選手はジャンプ盛りだくさん(これ以上はルール上も入れられないギリギリ)の「限界演技」を選択したわけです。フィギュアの選手はシーズンを通して同じプログラムを滑り、完成度を高めていくのが一般的です。羽生選手のプログラムはまだまだ「加点」要素がたくさんあります。技と技のつなぎもこれからさらに磨きがかかるでしょう。怪我さえしなければ今シーズンの終わりごろにはトータルで300点近い点数をたたき出す可能性もある、期待に満ちたプログラムです。要注目!

◆そして我が阪神タイガースは金本監督時代へ──「バカボン」掛布二軍監督にも期待大!

そして我が阪神タイガース。真弓、和田と地味な監督の後を引き継いだのが「アニキ」金本監督!二軍監督には天才バカボンのパパのように太って顔もそっくりになった懐かしの掛布!しばらく見ない間にバカボンのパパのような好々爺になった掛布二軍監督は選手がエラーしても「これでいいのだ」なんて言わないでしょうね(笑)。

でも伝説のバックスクリーン3連発、甲子園でこの目で見た私にはあの雄姿が忘れられません。甲子園当時はまだ外野席はプラスティックの椅子がなく、セメントの階段でした。もちろん自由席です。だから入場者数を数えるのもいいかげんで、内野から外野の通路が見えれば5万人、通路が見えなえれば5万5千人というのが基準だったそうです。

その満員の外野席、バックスクリーンにバース、掛布、岡田が巨人槇原投手に3連発を浴びせました。85年優勝した年です。あの時の甲子園の騒ぎ方はもう優勝決定のような喧騒でした。そういえばあの頃は観客の喜怒哀楽が今よりもっと激しかったような気がしますね。槇原が何度もマウンドに座り込んでいたのが印象的でした(関係ありませんが槇原は愛知県の大府高校出身です。この高校は公立でそれほど強くないけど時々秀でた選手を輩出します。元阪神の赤星も大府高校出身です)。

金本監督は秋季キャンプで全開モードです。フルイニング出場の世界記録をもつ47歳はまだ現役時代と体が全く変化していません。打撃だけなら今でもクリーンアップを任せられそうな筋肉のはりがあります。阪神に来る前は広島で鍛え抜かれた金本監督。広島といえばキャンプで練習をさせ過ぎるから、スタートダッシュはいいけれども例年鯉のぼりが空を舞う頃には落下が始まると比喩されるほど、伝統的にきつい練習で有名です。若いころの日々を金本監督は忘れてはいないでしょう。キャンプ2日目には7時間の練習を敢行したそうです。若手選手は「死にそうです」と弱音を吐いている中、金本監督は、なんと練習終了後トレーニングルームで足と膝のトレーニングを始めたそうです。選手はビビりますよね。3日にはキャンプを見に来ている観客が多いので、急遽練習メニューを変更して「今日は予定を変更して紅白戦をやります」と金本監督みずからマイクでアナウンスしました。観客は大喜び。

金本、掛布に加えて、矢野、今岡も脇を固めます。ピッチングコーチが誰になるのかが注目ですが、もうこの首脳陣の名前だけで観客を呼べるでしょう。プレーをする選手も全く気が抜けないでしょう。

来年の公式戦が今から楽しみです。


◎[参考動画]阪神タイガース 秋季練習 最終日 2015年10月30日

(伊藤太郎)

◎何度死んでも本当は死なない「笑点」歌丸師匠の真顔話が遺言のようで気にかかる

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歌舞伎町ぼったくり裏事情《6》ベテランキャッチが語る「ぼったくり」の世界

昔から歌舞伎町を知る飲食店の経営者に聞くと「最近のぼったくりは暴力団追放の流れと無関係ではない」という。

「もともと歌舞伎町には縁もゆかりもない不良連中が突然やってきては短期間で稼いで売り抜ける「ゲリラぼったくり」が多い」という。セノーテもそのひとつだった。これは大手を振って暴力団が仕切っていた頃はなかった現象だった。

「いまの歌舞伎町でのヤクザは他からの侵出にうるさくなくなった。酒と少々の金を持って挨拶されたら、その後にどんなひどい営業をしていても黙っているし、あいさつに来ない者を脅しに行くこともなくなっている」と経営者。

歌舞伎町ーセントラル通り(撮影 小林俊之)

◆「セノーテ」のベテランキャッチが語るぼったくりの世界

ぼったくり店「セノーテ」のキャッチをやっていた山崎哲夫(仮名)はこの世界でのベテラン。30年以上もキャッチを続けている。

「昔は店の前に店員を立たせて『いらっしゃいませ』と通行人に呼びかける通称『ポーター』だったんですよ。でも、2006年にいわゆる『新風営法』ができて、客引きが禁じられ、独立したキャッチになったんです。俺らはいま店とは直接関係ない立場。客がキャッチに3000円ぽっきり飲み放題と聞いたと騒いでも、店側はそれは知らないと言い張ることになっている。ときどき店がキャッチを主犯に仕立てようとすることもあるけどね」

セントラルロードに立ち尽くし、客が望むならストリップ、キャバレー、カラオケ店、裏ビデオ店……。どこでも連れて行くのが山崎氏の仕事だ。たとえ1円の利益にもならなくても、客に信用されるために道案内をすることもある。

「ストリップ劇場はとり半(50%)、キャバクラは30%前後」
客を紹介すれば見返りに店からキックバックを受け取る。キャッチのがんばりに、店側も応えようとする。多くのぼったくり店は、キャッチが入れた客の売上げによって歩合を支給する。もし新人のキャッチの場合、だいたいは、売上げの2割前後とされる。

売上だけではない。入れた客の本数(人数)に賞金をつける店も多い。5本入れたらいくら、10本入れたら何万円など……。今や稼げないキャッチでも、1日2万円前後。稼ぐキャッチは1ヶ月で200万円以上の収入を手にするのだという。

◆不景気と『半グレ』進出で増えてきた悪質ぼったくり店

山崎氏はバブルの時代も歌舞伎町で稼いだ。オールバックで、一見してキャバレーの支配人風。こぎれいなグレーのスーツを着た男性は上品な顔つきだ。そんな人物でも悪質なぼったくり店に客を紹介したのは、近年の不景気のせいもあるという。
「セノーテを始めた経営者のTは、もともと池袋でやっていた水商売の業者。開店にあたっては資金のスポンサーを集めていました。その中で中国人の事業家から開店資金を引っ張っていた。そこで僕らキャッチにも連絡がきて、当初はぼったくりをやるということは聞いていなかったけど、すぐにそっち系だというのが分かった。僕らはぼったくりだから仕事を断るということはしたくないけど、昔より仕事は少ないからこれは仕方ない」

ゲリラぼったくり店は基本、公安委員会に必要な届け出を出していないことが多いという。許可が出ていない状態で2、3ヶ月で一気に稼いですぐ消えることもあるという。最近は『半グレ』と呼ばれる不良連中の進出も増えたという。

「揉めた客には路地裏で取り囲んだり、警察が呼べないようにうまくやっていた。でも、そういう連中のせいで、今の歌舞伎町は青パト(行政がパトロール用に巡回させている警備車)もかなり増えて、『キャッチはすべて違法です』という放送も流れるようになった。いまは何度めかのぼったくりブームだと思いますが、本来は『ゲリラぼったくり』があると困るのは我々。窮屈になっている」

山崎は、酔って『おい、きれいな姉ちゃんがいる店を紹介しろ』『ちゃんと案内しろよコラ』という傲慢な態度の客にはあえて「ぼったくり店」に案内する意地悪もあるという。

「態度が悪い客に、ぼったくりだったと文句を言われたら、『もう一度、案内させてください。チャンスをください』と懇願して、2軒目のぼったくり店に案内したこともあります。その客だけで10万円近くキックバックがあった」
この非情なキャッチの話は続く。

「僕自身は風営法が改正された直後の1991年に客の進路をふさいだという微細なことでヨンパチ(警察署で48時間勾留)を2度くらったことがあり、それで罰金を払ったことがあります。風営法違反で5万円の罰金は痛かったですが、長くやっていてもその程度」

歌舞伎町ーセントラル通り(撮影 小林俊之)

◆ここぞとばかりに高い金を払う外国人観光客もいいカモ

外国人観光客もターゲットだ。韓国人や中国人の観光客にも声をかけるという。
「外国人はポールダンスをする店に引き入れることが多いです。追加料金を払えば女性を連れ出して『抜き』もできるんですが、観光客はここぞとばかりに高い金を払うのでいいカモです。だいたい、こっちには韓国人や中国人の仲介人もいますから、もはやなんでもあり。歌舞伎町には14歳の少年キャッチもいますよ」

キャッチになりたいという若者がやってくることもあると山崎。
「やりたいやつがいたら、30~40%の手数料をとってやらせます。成績が上がらないやつはダメでも内情を知ることになるので、暴力団とか身近なところで働かせて飼い殺しにするんですよ。ただ、今のキャッチになりたい若者は、『いつか歌舞伎町で店をもちたい』とか『こうしてのしあがる』というビジョンも野望もない。『ガソリンスタンドの仕事がおもしろくない』『営業の仕事はもう嫌』という『デモしか』キャッチしかいないような気がします」

中には山崎よりベテラン、40年以上もキャッチをしているおばあさんもいるという。
「彼女は通称マリアって呼ばれていて、伝説の人です。誰にもでもつきまとう。相手がヤクザだろうが警官だろうが気にしない。店を案内させたら天才的なうまさで、前に摘発されたときは裁判で『私はマリア様だと呼ばれている。ぼったくり店に案内するわけがない』と叫んだそうですよ」[つづく]

(小林俊之+影野臣直)

小林俊之+影野臣直!強力タッグの短期連載ルポ[全8回]
新宿・歌舞伎町ぼったくり裏事情──キャッチ目線で見た「警察の対応変化」
《1》「ぼったくり店」はどうやって生まれるのか?
《2》なぜ銀座のクラブにはゴタがないのか?
《3》メニューに金額明示があれば違法性はない?
《4》東京五輪を前に警察が浄化作戦を始動?
《5》御一人様51万円「クラブ・セノーテ」事件の衝撃
《6》ベテランキャッチが語る「ぼったくり」の世界
《7》「ガールキャッチ」復活と増えるプチぼったくり [近日掲載]
《8》警察の弾圧が盛り場の「食物連鎖」を増殖させる [近日掲載]

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愛国的な韓国人や日本のネトウヨが卒倒しそうな韓国艦「テ・ジョヨン」の姿

「韓国人が卒倒しそうな写真」がここにある。これらに国際情勢は関係ない。韓国と日本の友好的なドラマがある。それは「軍人」同士にしかわからないドラマだろう。

10月15日、開かれた海上自衛隊観艦式予行での映像で、愛国韓国人が卒倒しそうなシーンを撮影した。旭日旗の向こうで、韓国国旗をかかげる韓国海軍最新鋭艦「テ・ジョヨン」の姿がこれだ。

旭日旗と韓国海軍の最新鋭艦「テ・ジョヨン」

「観艦式」は3年に1度、海上自衛隊が首相に艦と普段の訓練の成果を見せるいわば「洋上パレード」である。性質上、艦隊運動の連携を取る必要があり、事前に共同訓練が必要だ。また、実弾発射を含む場合もあり、危険も伴う。

観閲者は首相であるが、一人だけに見せるわけではなく、納税者である国民への公開サービスであり、将来の自衛隊員をリクルートするためのショーでもあり、観覧者は一般にも募集される。

海自ではそれぞれの基地祭や、艦艇公開を行っているが、観艦式は最大規模となる。

また、観艦式のない年は陸自の「観閲式」、空自の「航空観閲式」が行われる。これらは大抵、朝霞の基地で見る事ができる。

観艦式も一発勝負、というわけにはいかないので、本番を10月18日(日)とし、12日、15日を練習日としている。この写真を撮影したのは15日の予行であるが、予行、本番含めて3日間、同じ光景が出現するはずである。

◆反日や排他的な保守の考えとはまったく違うロジックで動いている日韓同盟

観閲式は観閲者に艦を見せるのが目的であるから、観閲者(この場合は安倍首相)の乗った観閲艦と、受閲艦がすれ違う事によって成り立つ。受閲艦もいくつかの艦隊を作る。外国艦は艦対列の中で「祝賀艦隊」を形成し、観閲艦とすれ違う際、乗員は登舷礼というスタイルで並び、マストには日本に対する礼として日章旗をかかげ、乗員は旭日旗をかかげる観閲艦に敬礼するのである。

つまり、韓国海軍の最新鋭艦である「テ・ジョヨン」が日の丸を揚げ、韓国人が「戦犯旗」と侮蔑する旭日旗に敬礼するのである。愛国韓国人が発狂しそうな光景である。

だが、外国艦が他国の旗かかげるのは、世界的に見てごく普通の光景である。今回の観閲式には外国艦として、アメリカ、オーストラリア、インド、フランスも参加しており、これらの艦もやはり日の丸を揚げ敬礼してくる。

逆に自衛隊の護衛艦、海上保安庁の保安艇も、外国の港に入港する際、あるいは外国の式典に参加する際、同じように外国旗をかかげ礼を取る。

それどころか、ある国の軍隊が他国軍と共同訓練をするのは、あらゆる面から見て望ましいのである。

軍と軍が共同訓練をすると、お互いに相手の実力、動きを理解できる。共同作戦を取るのであれば、友軍の実力や動き方を知っていれば、効率的な行動が取れる。

将来的に交戦するようになったとしても、相手の実力が判っていれば攻撃も効率的に実施できる。また、相手がきわめて強い、という認識があれば「逃げる」という選択もある。逃げるというと卑怯な手段に思えるかも知れないが、圧倒的と判っている相手にぶつかって無駄死にするよりは一度引いて態勢を整えるのが合理的である。あるいは降伏もあり得るだろう。

ましてや、日本と韓国は緩やかな軍事同盟にある。より緊密に連絡を取りあい、共同訓練を実施すべきなのだ。

少なくとも「韓国軍」は、旭日旗を敵視する朴大統領、あるいは韓国人差別をむき出しにする保守の考えとはまったく違うロジックで動いている。

韓国では国策として反日政策を採っているが、今回の「テ・ジョヨン」観艦式参加では、現場はより現実的な認識をしていると見るべきであろう。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」の管理人。

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パリ襲撃事件報道の違和感──言葉の収奪、意味の無化を進める不平等な世界

現地時間11月13日の夜パリの劇場、レストラン、競技場などで起きた襲撃事件はオランド大統領が「ISによる戦争行為だ」と断定し、16日現在、犠牲者は130人を超えている。フランス全土に非常事態宣言が発せられ、主たる国境は封鎖されているらしい。

◎[参考動画]Terrifying Video Shows Shootout Between Police & Terrorists Outside Bataclan, Paris (2015年11月15日 付PrayForParis)

◎[参考動画]FRANCE 24 live news stream: all the latest news 24/7

このニュースの陰に隠れてほとんど見向きされないけれども、フランス北東部ストラスブール近郊で14日、高速列車「TGV」の試験車両が走行中に脱線し運河に転落、少なくとも11人が死亡し、37人が負傷した。1981年の開業以来、TGVの関連事故で死者が出たのは初めて。フランス公共ラジオが伝えた。

◆どこで、どんなふうに、誰が殺された(死んだ)かで命と事件の軽重は違うのか?

Cartoon of the day by Carlos Latuff

どこで、どんなふうに、誰が殺された(死んだ)のかによって、命と事件の軽重はメディアによって重量が決定される。同じフランスという国の中にあってさえそうだ。意地悪ないい方をすれば、「できるだけ惨く、劇的な殺戮が名立たる都市部」で発生することほど、メディアにとって貴重な報道資源はない。

それは同様の「惨く、劇的な殺戮」が注目を浴びない国・地域、あるいは紛争地帯で起こった時の何百倍もの情報資源(商品)となり、政治的・軍事的野心を抱く人々に本来、関係ない意味を付与され、大変便利な材料へと転化させられる。

殺戮による被害者は表面上の弔意と裏腹にとことん利用される。

各国の首脳が「フランスと共に闘う。ISを撲滅する。テロは許さない」と勇ましい言葉を吐く。東京タワーを三色に照らしたり、世界中でその情報を聞いた一般市民までが「フランスと共に」と態度表明することが、何か立派な行動のような雰囲気が蔓延している。

私の大いなる違和感は増すばかりだ。

本音を告白すれば気持ち悪いことこの上ない。

◆不平等極まりない世界は、言葉をも収奪して、意味を無化しようとしている

1月7日に起きた「シャルリー・エブド襲撃事件」の後に感じたのと似た感覚だ。あの時は世界中が「Je suis Chralie」(私はシャルリー)と発言したり、プラカードを持つ人がフランスだけでなく、世界に溢れた。私はこのコラムで「Je suis Chralie」に疑問を呈し、私はその立場ではないと表明した。

その後被害者や、敵を主語にした語感に馴染めないこのいい回しが流行した。日本においては「I am not Abe」のように。

ひねくれ者の私は「I am not Abe」にも軽い眩暈がした。「あべ」を苗字にする人以外は誰も「Abe」じゃないことは当たり前じゃないのか。こんな表現のどこに「反安倍」の怒りを詰め込めるというのだ。何百人、否何千人もの人が集会で「I am not Abe」のプラカードを頭上に掲げているようすに、何か違うの思いは増すばかりだった。

やはり、ごく初歩的な語法にのっとっても「Je suis Chralie」や「I am not Abe」はシニフィアンとシニフィエがあまりにも倒錯しているのではないか。それは権力者や抵抗者の意に沿いつつも、裏切りつつも。

パリ襲撃事件の分析や解説は専門家に譲る。それよりも今、現在において私がもっとも支配されている感情は事件の衝撃・背景や凄惨さ、ISの今後ではなく、語感と意味を歪曲された世界に生きている不快感と不安である。そのことを正直に語っておくことの方が、私の頭脳のレベルの低さを露呈するにしても、誠実というものだろうと感じる。

不平等極まりない世界は、言葉をも収奪して、意味を無化しようとしている。

こんな感想は不謹慎か。

▼田所敏夫(たどころ としお)

兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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