「かかりつけ薬局」「癌登録」制度導入は百害あって一利なし!

5月21日の本コラム「『医薬分業』や『お薬手帳』で利を得ているものは誰なのか?」でこの制度への疑問を述べた。22日の各紙朝刊は「かかりつけ薬局」制度導入を政府が模索していることを報じた。

共同通信によると、「厚生労働省は21日、全国に約5万7千カ所ある薬局を、2025年までに患者の服薬情報を一元管理できる『かかりつけ薬局』に再編する検討に入った。薬の飲み残しや重複を防ぎ、膨らみ続ける医療費の抑制にもつなげる狙い。患者各人がかかりつけ薬局を決め、どの病院を受診してもその薬局に処方箋を持ち込める環境を目指す。24時間調剤に応じたり、在宅患者に服薬指導したりする機能も整備する。塩崎恭久厚労相が26日の経済財政諮問会議で、将来に向けた『薬局構造改革ビジョン』(仮称)を作成すると表明する。16年度の診療報酬改定で、かかりつけ薬局普及に向けた考え方を反映させる」そうだ。

先の記事で私は「医薬分業により薬の過剰投与が抑制されることはない」と指摘したが、この疑問に答える形で「かかりつけ薬局」制度が準備されようとしているらしい。

◆「かかりつけ薬局」制度で投薬の一元管理が進み「国による個人の監視」は強化される

だが、何気ない記事の中でさらりと言及されているが「かかりつけ薬局」導入の目的は「患者の服薬情報を一元管理」することだ。これは一見合理的で患者本位のようにも受け取られるかもしれないがその実「国による新たな個人の監視」に他ならない。

個人の健康状態や通院、服薬状態が包括的に把握された上での処方は「過剰投与」防止の観点から一定程度は有効だろう。しかしそれを国に管理される理由はないし、これぞ正に秘匿性が高い「個人情報」ではないのか。また「どの病院を受診してもその薬局に処方箋を持ち込める環境」は現状の制度でも全く問題なく行える。処方箋を受け取った患者のほとんどは実質的な「かかりつけ薬局」を既に持っているだろう。

◆医薬をめぐる一連の流れは個人の「健康」に主眼を置いたものではない

ここで厚労省が目指しているのは現状のような「選択的かかりつけ薬局」ではなく「どの病院を受診しても特定の薬局に処方箋をも持ち込まなければならない」制度だ。投薬の一元管理により個人の健康、通院、服薬状態を国が把握しようとするのが真の目的である。

国が目指す「かかりつけ薬局」制度導入の背景には前述の通り、「医薬分業が実質的には過剰投与や薬価抑止にはつながらない」という明白な批判をかわす狙いがあろう。また「医薬分業」自体が厚労省、製薬会社の牽引の元推進され、それに文科省も大学に「薬学部」の新設を促す形で便乗し進められてきた「国策」との背景を見れば、一連の流れが個人の「健康」に主眼を置いたものではないことは明らかだ。

しかし、「医薬分業」は当初「どこの薬局でも処方された薬がもらえるようになります」とその利便性を広報していたではないか。患者にとって最も役に立つと宣伝されてきた「どこの薬局でも」は早々に姿を消して、「かかりつけ薬局」という名の「特定の薬局」へと患者は囲い込まれようとしている。

外資系の製薬会社に勤務する知人によると「薬価」自体が実はかなりあいまいで、発売直後(特許有効期間)の薬は開発費や諸経費で高価だけれども、いわゆる「ジェネリック」になると価格が大幅に下がる。さらに「ジェネリック」の価格であっても利益率は途方もなく高いらしい。「どう転んでも大手製薬会社は儲かる仕組みになっている」と知人は言う。利益率に費えは企業秘密だそうだ。

◆来年1月から始まる「癌登録制」──どう転んでも大手製薬会社が儲かる仕組みは変わらない

一方「癌登録制」が来年から始動することを読者はご存知だろうか。「国立がん研究センター」によると、「『全国がん登録』とは、日本でがんと診断されたすべての人のデータを、国で1つにまとめて集計・分析・管理する新しい仕組みです。この制度は2016年1月から始まります。『全国がん登録』制度がスタートすると、居住地域にかかわらず全国どこの医療機関で診断を受けても、がんと診断された人のデータは都道府県に設置された「がん登録室」を通じて集められ、国のデータベースで一元管理されるようになります」とのことである。

「かかりつけ薬局」強制を前に、来年度から癌患者の情報は国に一元管理されることになる。「癌登録制」には様々導入理由が述べられている。どれもこれも「ああ、そうなのか」と一見合理的にその利点を述べてはいるが、その全てが本音ではないだろう。

完全な私見だけれども、福島原発事故による癌患者増加とその動向を国は「観察」したがっているのではないか。純粋に癌治療の向上を目指すのであればともかく、この議論が原発事故後俄かに盛り上がり、ほとんどの国民が認知しない中で来年早々に導入されるのはあまりにもうさん臭くはないか。福島だけでなく食物の流通により内部被曝は全国に拡散している。その結果を探りたいのではないのか。

医療と、製薬・薬局業界は利にまみれている。彼らの本音を見抜いておかないと我々は必ず美名を冠した制度の犠牲者となろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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鬼才板坂剛による天才ポール・マッカートニー「逆襲」来日ライブ写真集の怒涛!

ポール・マッカートニーがついに武道館に帰ってきた! 連日満員の東京ドームと、49年ぶりに戻ってきた日本武道館での「体験」を700枚超の写真とともに記録した本が出た。

ポール自身も「とてつもなくクレージーで、最高の夜だった」と評した日本での出来ごとを振り返るフォトブックだ。

『2015 PAUL in Japan』(鹿砦社2015年05月25日) 板坂 剛=編著 B5判/128ページ/オールカラー/カバー装 定価:本体1600円+税

◆YouTubeがまだなかった1990年、ポールの初来日ライブ体験は衝撃だった!

初めてポールのコンサートにでかけたときは、就職を4日後に控えた90年3月13日のことだ。初来日に日本中が涌いている中、ポールは次の演奏曲をやった。そして私と友人は、ボロ泣きしながら、完全にポール・フリークとなっていた。

1990年3月13日のポール来日コンサートのセットリスト

そして次にポールと接触するのは、留学の本を作っていたときに、ポールが自費を投じて作った音楽学校の紹介記事なのだが、とにかく、ここで語るのははばかれるほど、ポールが音楽界に果たした功績は大きい。

今でこそ、YouTubeで楽しめるが、その昔は音源が手に入りにくい「ウイングス」時代の曲「グッドナイト」などは、探すのが難しく、ここ10年ほどは聴けなかったが、今年、YouTubeで10年ぶりに聞いた。そうした意味で今はなんでも聴けていい時代だと思う。

◎[参考動画]Paul McCartney – Out There Tokyo Japan 2013 東京公演HD完全版
Tokyo Dome, TOKYO 2013年11月21日

◆ポール日本公演実現までの長く曲がりくねった道

編著者の板坂剛氏は、「リベンジの来日!」と題して前がきでこう書く。

ポール・マッカートニーは、今回の来日を〝リベンジ〟だと位置づけた。この言葉には、複雑な情感が込められているような気がする。

これまで、ポールの日本公演は決して平和裡に実現したわけではなかった。1966年のビートルズ(初来日にして最後の来日となった)武道館公演からして、「ビートルズを日本から叩き出せ」という右翼団体の罵声を浴び、「神聖な武道館を河原乞食に使わせるな」と、あるテレビ番組から悪質な中傷を全国に流布された。(〝河原乞食〟の芸が歌舞伎座で上演されることは許されるのか?)

そこに当時の首相の佐藤栄作首相までが「(ビートルズは)武道館にふさわしくない」と発言。この〝佐藤発言〟はそれほど辛辣なものではない。しかし、たかが(と言ってはポールに悪いが)ロックバンドの公演に一国の首相が言いがかりをつける大人気なさに、当時の若者たちは皆「国家権力の正体見たり」と冷ややかに反応したものだった。

(中略)日本公演に続くフィリピンでの受難、あるいは、ウイングス時代の麻薬がらみの公演中止事件も、カリスマ性を持つ人間が大衆をリードすることに対する国家権力側の嫉妬に充ちた嫌がらせだったとしか思えない。1966年、『時事放談』というテレビ番組で暴言を吐いた小灯利得も細川隆元も、また首相の佐藤栄作も、もちろん「ビートルズを日本から叩き出せ」と言い切った大日本愛国党の赤尾敏も、その後、武道館がコンサート会場として常時、数多くの〝河原乞食〟に使用されることに対しては全く非を唱えようとはしなかった。彼等は、ただただビートルズという巨大カリスマが憎かったのである。

だから今、ポールの口から〝リベンジ〟という言葉を聞かされると、どうしても彼等のふてぶてしい顔が、まず目に浮かんでしまう。彼等は既にこの世にはいないが、死者に鞭打つなという批判を退けても、私は、佐藤栄作、赤尾敏、小灯利得(おばまとしえ)、細川隆元の4人がもし今も生きていたら、首に縄をかけて武道館に連行し、ポールの前に土下座させたい気分でいることを正直に記しておきたい。

4.28 日本武道館にて (板坂剛「まえがき」より)

鬼才・板坂の文章はこの本ではコラムとしてスパークする。そこにはポールとジョンがなぜ仲違いしたのか解説しているが、これは買ってのお楽しみとしてとっておきたい。ポールファン、ビートルズのファンは見逃せない一冊だといえるだろう。

(小林俊之)

◎[参考動画]Paul McCartney – Out There Japan Tour 2015 大阪公演HD完全版
Kyocera Dome, OSAKA 2015年4月21日

『2015 PAUL in Japan』

《韓国特派員・ウナの留学日記》 MERSアタック!? in ソウル

「誰かがMERSにかかったら皆に感染するかもしれないので、週末は街に出ないでください」

6月5日、韓国の地方都市にある大学の留学生宿舎で、こんな通達が出た。この2、3日前より韓国内では「MERS」(中東呼吸器症候群)の流行が懸念されるようになり、「ラクダと密接な接触は避ける」(韓国内の一体、どこにいるのか)「せっけんと水でよく手を洗う」「滅菌してないラクダの乳や、生肉を摂取するのは避けて」(韓国内の一体、どこで売っているのか)などと書いてあるお知らせが、公共の場所に貼り出されるようになった。

この街ではまだMERS患者が出ていないため、ウィルスを持ち込ませないようにするための措置だと、学校関係者は語った。通達が出た直後、アメリカやカザフスタン、ウクライナなどからの留学生たちは、一斉にマスクをし始めた。この地方都市でも、繁華街にあるセブン・イレブンやダイソーの店頭からは、既にマスクは消えていた。

翌6日の土曜日、ソウル市のカンナム地区にあるバスターミナルは、休日の午前中にも関わらず閑散としていた。マスクをして歩いている人が、時折姿を見せる。女性や高齢者の割合が高かったものの、男性もいないわけではない。バスターミナルがある駅から、14番目の患者となった男性が入院するサムソン・カンナム病院までは地下鉄でわずか6駅。この病院には6月8日現在、34人もの感染者が入院しているという。

マスク姿の女性が目立つ、高速バスターミナル

「こんなに人がいない清潭洞は、見たことがありません」
“シモンズ”など高級家具のブランドショップやカフェなどが並ぶ、ハイソな街の清潭洞界隈も、正月の丸の内並みに閑散としていた。ウォン高円安による不景気で、買い物に来る人が激減したのもその理由だろうか?

「いや、全部MERSの影響ですよ。本当に今日は街に人がいない」
そう語ったのは、清潭洞でハンバーガーカフェを経営する男性だ。ちなみに彼は、かつて日本語を学んでいたことがあり、「もうほとんど忘れてしまいましたよ~」と言いながらも、なかなか流暢な日本語を話してくれた。

ガラガラすぎる、日曜日午後の清潭洞

「政府が情報をきちんと発表しないのが、全部悪いんですよ!」
ソウル近郊に住む40代の女性は、マスクをしたまま怒りをあらわにした。彼女によるとサムソン・ソウル病院にはサムソンの李健煕会長が心臓の病気で、昨年から長期入院している。感染者がいる病院の情報が週末まで公開されなかったのは、サムソンと会長の名誉を守るためではないかと疑っているそうだ。

「国民がこんなに大変な時なのに朴槿恵大統領は、14日から18日まで訪米するんですよ。彼女は何が起きても側近任せで「私は知らない、わからない」と言うばかり。あと2年半も、この政権が続くなんて……」

弘大でばらまかれていた謎のチラシ。「MERSよりも大統領が怖い。責任を取らない政府、国民たちは自分の力で生き残らなければならない現実。これが国家か?!」と書いてある

韓国政府によると、6月11日現在の感染者は122人で、死者は10人。前述の大学ではこの日頃から留学生たちのマスクは、N95対応のものまで見られるようになった。

▼サ・ウナ
韓国の地方都市にある某大学に留学中の女子大生。世界中から来ている学生たちによる、ミックス言語で繰り広げられている「かわいい~」「○○さんかっこいい~」「○○が××のことを好きだって言ってたよ~」などの会話に、日夜イライラしながら学業に勤しむ25歳。

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◎第3回「前田日明ゼミin西宮」──田原総一朗氏を迎えて聴衆120人の大盛況!
◎《ウィークリー理央眼002》福島/名古屋ヘイトデモ反対行動
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《ウィークリー理央眼002》福島/名古屋ヘイトデモ反対行動

最近は回数が減ってきてはいるものの、今でも街に出てヘイトスピーチを繰り返し行なう人々がいる。
しかし、それ以上にヘイトスピーチに反対する人々もいて、今ではレイシスト(差別主義者)達はヘイトをする度に各地のカウンターに叱られまくっているのだ。

5月30日(土)は東京と福島、31日(日)は東京・愛知・大阪、2日間5ヶ所でヘイトスピーチ・デモ/街宣が行われた。
今回は私が撮影に行った福島駅前と愛知県名古屋市のカウンター映像を紹介しようと思う。


[動画]2015.5.30福島ヘイト街宣へのカウンター(6分47秒)

この街宣は、『在日特権を許さない市民の会(在特会)』の桜井誠・前会長が4月25日に福島県郡山市で主催した
ヘイトスピーチ街宣に共産党員が反対の声を上げに来ていた事にかこつけた、共産党批判を目的とした街宣であった。
…のはずだったのだが、実際には共産党とは全く関係のない人種差別や妄想を連発するばかりであった。

そんなレイシストは9名(+子供2名)、反対の声をあげるカウンターは7名。
レイシストの差別発言を物理的に打ち消す為、あるいはデマ発言を訂正する為、カウンターの人々は大声を張り上げる。
この映像はそういった直接的なカウンター行動しか捉えていないのだが、福島駅前で差別街宣が始まる前に、これからヘイトスピーチが行われる事への注意喚起と、ヘイトスピーチに関する理解を深めてもらうための事前周知行動のチラシ配りもちゃんと行っている。
さらに言えば、午前中から機動隊を使い、在特会の差別街宣の「場所取り」を行っていた福島県警察に対しての抗議も行っている。
私たちは自分にできる事をできる範囲で行うといった、差別主義者たちに対してのあらゆるカウンターをどんどんしてやるべきなのだ。

[2015年5月30日(土)・福島県]


[動画]2015.5.31名古屋ヘイトデモへのカウンター(12分24秒)

ここではかなり激しいアクションが行なわれているが、名古屋で毎回こういう反対行動が行なわれているかと言えば決してそうではなく、むしろこれまでは非常に小規模なカウンターしか行われてこなかった。
今回は桜井誠・在特会前会長がわざわざ名古屋にヘイトスピーチをしに来たので、東京からも大阪からもカウンターが集まり、過去最大のアクションになった。

今まで様々な方法でカウンターはレイシストの差別を止めさせようとしてきたが、今回のこの映像には桜井誠・在特会前会長に文句を言いにきた右翼の街宣車が登場している。
カウンターも新たなフェーズに突入したという考え方もできると思うが、以下、右翼街宣車のスピーチ部分の文字おこしを読んでもらいたい。

『デモ隊のみなさん、大変暑い中での保守行動、ご苦労様でございます。
私どもは、中部地方を中心に民族活動を展開しております○○○○○有志一同です。担当は○○でございます。
今日はみなさんの保守行動を展開するにあたりまして、一つ、二つ、お願いごとをしにやってまいりました。
普段ですね、テレビや新聞などで見かけるヘイトスピーチなる差別的な行動は今日は絶対にやめて頂きたい。
私どもも日章旗そして旭日旗を掲げ、日々民族運動を展開しておりますので、みなさんの意向は分かりますが、一部の人間を差別するような言動は同じ日本人として、もちろんそれは、人間として見苦しい行動であると考えております。
今日のように不特定多数のみなさんがいる、このような環境では啓蒙活動だと信じておりますが、みなさんの行なっている行動が抗議行動であるというのであれば、是非、名古屋市内にあります、領事館、また役所などに出向いて頂きまして、抗議行動を展開してください。
このような場所で、死ねだ、バカだ、そのような見苦しい言動をされますと、同じ日本人として私は本当に恥ずかしいので絶対にやめてください。
デモ隊のみなさん、暑い中で、わざわざ恥をさらす必要はございません。
もう少しですね、良識のある日本人として恥ずかしくない行動をとって頂きたい。
日の丸を掲げて、旭日旗を掲げて、恥ずかしい思いは絶対にしないでください』

右翼といえば皆、自分たちの仲間だと思っていたヘイトデモ参加者も多かったはずで、まさか自分たちのデモが右翼の街宣車に追いかけ回されて注意を受けるとは思ってもみなかったはずだ。
差別主義者は右翼からも見放され、もう完全に孤立してしまった。

ただし、上の書きおこしを読めば分かるように、この右翼街宣車の中の人は決して本来の意味での「カウンター」をしに来ているわけではなく、自分達の「保守」活動の足を引っ張る、いわば調子に乗りすぎている「桜井誠」や「在特会」に(優しく)「お仕置き」しているだけなのだ。
実際、彼らは「差別はやめろ」と同時に、在特会のデモではおなじみの「日韓断交」や「中共が嫌い」との言葉も発している。
また、カウンターに対しては攻撃的な態度をとっており、ヘイトデモを「保守行動」と表現しているところから、一応は在特会を「保守」仲間として捉えてはいるようだ。

「カウンター」と呼ばれる人々は、要は「差別を許さない市民」のことで、共通する何らかの思想があるわけではない。
中には右寄りだったり左寄りだったりする人はいるが、ヘイトスピーチをなくす為に大体同じ方向を向いているだけの大雑把に分類された人々のことを言う。そういう意味では、今回のこの右翼の街宣車も、大枠ではある種の「カウンター」であったと言えよう。
やはりレイシストの居場所は日本にはないのだ。

[2015年5月31日(日)・愛知県]

▼秋山理央(あきやま りお)
1984年、神奈川県生まれ。映像ディレクター/フォトジャーナリスト。
ウェブCM制作会社で働く傍ら、年間100回以上全国各地のデモや抗議を撮影している現場の鬼。
人々の様々な抗議の様子を伝える写真ルポ「理央眼」を『紙の爆弾』(鹿砦社)で、全国の反原発デモを撮影したフォトエッセイ「ALL STOOD STILL」を『NO NUKES voice』(鹿砦社)にて連載中。

◎《ウィークリー理央眼001》150回目の首相官邸前抗議

月刊誌『紙の爆弾』は毎月7日発売です。

 

《脱法芸能40》安室奈美恵「移籍劇」は芸能界決壊への「パンドラの箱」を開いたか?

これまで本連載で何度も指摘してきたが、芸能界の問題の核心部分は主要芸能プロダクションのほとんどが加盟する業界団体である日本音楽事業者協会でタレントの引き抜きが禁じるカルテルを結び、独立阻止で一致団結していることだ。

タレントが他の事務所に移籍できず、独立もままならないとすると、所属事務所の言うがまま隷属状態に置かれることになる。実はこのことはタレントにもあまり知られていない。

安室奈美恵オフィシャルサイトより

◆「芸能界の掟」に阻まれ頓挫したサンミュージック小島よしおの人力舎移籍

もう何年も前のことになるが、サンミュージックに所属するお笑いタレントの小島よしおが他の事務所への移籍を画策した時期があったという。

サンミュージックといえば、1980年代は松田聖子がブレイクし一世を風靡したが、86年には所属タレントの岡田有希子が事務所が入居していた四谷のビルから投身自殺をし、大きなイメージダウンとなった。さらに稼ぎ頭だった聖子が89年に独立してしまった。この時は業界をあげて聖子を干したが、聖子の離反でサンミュージックが受けた打撃が回復することはなかった。

90年代になると、トレンディドラマのブームになり、特に野島伸司脚本のドラマではサンミュージック所属タレントが多く起用されたものの、2000年代に入るとそれも失速し、大きく方針を転換し、お笑いに力を入れるようになった。そこで出てきたスターがダンディ坂野やカンニング竹山、小島よしおなどだったが、事務所全体の勢いは伸び悩んだ。特に稼ぎ頭の小島には、事務所に対する不満が募っていったという。

そこで小島は、おぎやはぎが所属する人力舎への移籍を打診したという。だが、人力舎側からは「サンミュージックさんとはお付き合いがありますので」と体よく断られてしまった。

◆「事務所のメンツ」を潰したタレントの復帰は難しい

また、「事務所に迷惑をかけた」と烙印を押されたタレントの芸能界復帰は難しいという。

最近でいいえば、たとえば、オセロの中島知子のケースだ。中島は2011年ごろから家に引きこもって仕事ができない状態が続き、同居していた占い師との関係が取りざたされ、洗脳騒動が持ち上がった。

2013年3月、中島は『ワイド!スクランブル』で洗脳騒動以来初のテレビ出演を果たし、洗脳騒動の真相を明かしたが、これは所属事務所、松竹芸能の意向を無視した中島の独断だった。松竹芸能は中島に対しただちに契約解除を申し渡した。

それ以降、洗脳騒動以来中島のメンタル面をサポートしてきたという脳科学者の苫米地英人が中島の連絡窓口となることが明らかとなった。この時の説明では、「次の事務所が決まるまでの間」とのことだったが、未だに移籍先が決まっていない。
現在、中島が出演しているのは、苫米地が出演しているMXTVの番組に限られ、本格的な芸能界復帰には至っていない。

この間、中島自身も事務所移籍の希望はあったようだが、他の芸能事務所からは「松竹さんとはお付き合いがありますので」という理由で受け入れを拒絶されたという。結局、松竹の許しを得たということが確約されなければ事務所の移籍はできないようなのである。芸能界にとっても最も重要なのは事務所のメンツであり、そこに経済合理性はない。たとえタレントに需要があったとしても事務所の論理によって潰される。


◎安室奈美恵 / 「Stranger」 (from New Album「_genic」)

◆なぜ安室奈美恵はライジングからエイベックスに移籍できたのか?

芸能界ではタブーとされる「引き抜き(移籍)」だが、今年1月には大きな動きがあった。ライジングプロダクションからエイベックスへの安室奈美恵の移籍した一件だ。

安室奈美恵といえば、昨年8月に独立騒動が表面化し、安室に独立を炊きつけ、“洗脳”した人物として音楽プロモーターの西茂弘氏の名前が取りざたされ、所属事務所、ライジングプロダクションとの関係悪化が深刻化していた。

12月には怒り心頭のライジング側は「独立するなら安室奈美恵の名前は使わせない」として7月、特許庁に「安室奈美恵」の名前を商標登録として出願していたことが報じられた。だが、「安室奈美恵」は芸名ではなく本名であり、本人の承諾を得ずに商標として登録されることはない。

そんな報道があった矢先、電撃的にエイベックスへの移籍話が持ち上がり、2015年1月14日付で安室とライジングの専属契約は終了し、その翌日から安室のマネジメント業務窓口がエイベックス内のレーベル「ディメンション・ポイント」で行うことになったという。

芸能記者は「これは大揉めするなと思っていましたが、関係者に取材すると『全然揉めていない』とのことで拍子抜けしました」と語る。

その後の報道によれば、安室の移籍に関連して、エイベックスがライジングの要望を聞き入れる形で、違約金や一定期間の活動停止処分、CDなどの印税収入の分配などを受け入れたともいうが、安室の芸能活動には支障はないようで、この6月には未発表曲のアルバムが発売され、9月から2016年2月まで全国ツアーが予定されている。

また、安室に独立をそそのかしたとしてやり玉に挙がった西氏は安室の移籍後も引き続き、安室のコンサート制作に携わるという。


◎安室奈美恵 / 「Birthday」 (from New Album「_genic」)

◆音事協は安室の「独立」を防ぐために「引き抜き」を認めざるをえなかった?

あまり大事とはならなかったこの移籍劇は、芸能界にとって大きな意味があるように思える。というのも、安室を引き抜いた格好のエイベックスも引きぬかれたライジングもともに音事協に加盟する芸能事務所だからだ。

そもそも音事協はタレントの引き抜きを防止するために設立された組織だ。私が知る限り、音事協内でタレントが移籍したケースは、過去に一度もない。タレントが独立するのは仕方がない。だが、徹底的に干すというのが芸能界の流儀だったはずだ。安室の移籍は、音事協の存在意義を否定するものであり、「引き抜き解禁」というパンドラの箱を開いたことになりかねず、芸能界にとって極めて重大な禍根を残すことになる。

筆者の考えでは、音事協は安室の独立を防ぐために引き抜きを認めざるをえない状況に追い込まれたのではないかと推測する。コンサート運営のプロである西氏が安室の独立の黒幕だとするならば、西氏には「安室が独立したとしてもコンサートはできる」という読みがあったはずだ。

近年、安室はテレビ出演を抑え、芸能活動の軸足をコンサートに移していた。コンサートさえできれば、安室は芸能界で生き残れる。さらに、近年はYoutubeなどを始めとするインターネットの新興メディアが勃興しており、仮にテレビに出演できなくとも新曲のプロモーションは可能だ。

安室ほどの大物であれば、テレビなどの既存のメディアに頼らず、独自の芸能活動ができた可能性が高い。だが、実際に安室の独立が成功してしまうと、音事協の存在意義が問われることになる。芸能事務所はタレントになめられたら、おしまいだ。音事協に力がないと思われれば、タレントの独立が相次ぐようになるはずだ。それは「芸能界液状化現象」を意味する。安室の移籍は、そのような事態を恐れ、言わば次善の策として認められたのではないだろうか。だが、それは芸能界の決壊を先送りしただけに過ぎない。


◎安室奈美恵 / 「Fashionista」 (from New Album「_genic」)

◎安室奈美恵オフィシャルサイト http://namieamuro.jp/

◎安室奈美恵New Album「_genic」サイト http://dimension-point.jp/amuro/_genic/

▼星野陽平(ほしの ようへい)
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。

星野陽平の《脱法芸能》
◎『あまちゃん』能年玲奈さえ干される「悪しき因習」の不条理
◎ヒットチャートはカネで買う──「ペイオラ」とレコード大賞
◎宮根誠司──バーニングはなぜミヤネ独立を支援したのか?
◎松田聖子──音事協が業界ぐるみで流布させた「性悪女」説

芸能界の歪んだ「仕組み」を綿密に解き明かしたタブーなき傑作ノンフィクション『芸能人はなぜ干されるのか?』

『芸能人はなぜ干されるのか? 芸能界独占禁止法違反』

第3回「前田日明ゼミin西宮」──田原総一朗氏を迎えて聴衆120人の大盛況!

6月7日ノボテル甲子園で前田日明ゼミ第3回目がゲストにジャーナリスト田原総一朗氏を迎え約120人の聴衆が参集し行われた。

前田氏は冒頭、前回ゲストの孫崎享(うける)氏が「安倍首相は戦後最悪の売国奴」と看破したことに驚き、「様々調べたところ、年金原資の25%が株式購入に充てられていること、また日銀も年間3兆円株式を買っている。日本の国債発行残高は1200兆円あるが、そのほとんどは現状郵貯などが引き受けているので、実はそれほど心配ないが、2018年からはルールが変わり格付けの悪い国債を金融機関が引き受けることが禁止される。そうなれば国家予算が組めるだろうか。東京オリンピックなんてできるのかと思う。アベノミクスの本質は実はとんでもないモノかと気がついた」と語った。

田原総一朗さんと前田日明さん

◆小選挙区になってから自民党の中に反対勢力が居なくなった(田原氏)

次いで田原氏が「自民党が変わった。中選挙区時代は自民党の中に主流派、非主流派もあった。ところが小選挙区になってから自民党の中に反対勢力が居なくなった。先日憲法に関する自民党推薦の有識者参考人が3人とも『自衛隊の集団的自衛権は違憲だ』と予想外の発言があった。かつてなら反主流、非主流派からごうごうたる非難を浴びているはずだ」と述べた。田原氏は「自分も当時は中選挙区制は金がかかり過ぎるから小選挙区に賛成した」とも述べた。

田原総一朗さん

◆立派だと思った政治家は鈴木宗男と亀井静香くらいだった(前田氏)

休憩を挟んだ質疑に移ると前田氏は会場から「前田さんは自身が将来政治家になるつもりは?」との質問に「5年間、民主党を応援したが、正直政治家には魅力のある人が少なかった。立派だと思ったのは鈴木宗男と亀井静香くらいだった。今やろうという気にならないですね」と述べた。

田原氏は参加者から寄せられた「小選挙区」に関する質問に回答を試みたが、的を得ないと感じたので私は「小選挙区で金がかかるのは自民党だけの話しではないですか」と問いかけた。

「小選挙区導入議論の際に今日語られる弊害が予想されたので、大きな反対があったが、何故賛成されたのか」と質問した。回答は「今は小選挙区制は間違っていたと思う」とお答えを頂けた。

田原総一朗さんと前田日明さん

次の予定があり田原氏は懇親会に参加なさらなかったが参加者にとっては濃密な時間となった。

次回ゲストは前田氏が尊敬する政治家と称賛した、鈴木宗男氏との発表が懇親会の席であった。

写真左から鈴木邦男さん、田原総一朗さん、前田日明さん、松岡利康=鹿砦社代表(前田ゼミ開始前の昼食兼打ち合わせの席にて)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎《6.8公判傍聴報告》やっぱり不当逮捕だった!火炎瓶テツさんら3人全員釈放!
◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気

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《6.8公判傍聴報告》やっぱり不当逮捕だった!火炎瓶テツさんら3人全員釈放!

6月8日午前10時から東京地裁429号法廷(有賀貞博裁判長)で、5月28日に「建造物侵入」容疑で逮捕された「火炎瓶テツ」さんを含め3名の「勾留理由開示公判」が行われた。

公判前の8時30分、支援する人々は東京地裁近くに集まり、9時30分に30余席しか無い傍聴席の傍聴抽選が行われた。抽選には100名近くが傍聴券を求め列をなし、この「不当逮捕事件」への関心の高さが伺われた。

私は残念ながら傍聴券抽選には外れたが、取材の意義に賛同して下さった有志の方から傍聴券を譲って頂き傍聴をする機会を得た。この場を借りてご協力頂いた方に深くお礼を申し上げたい。

◆「嫌がらせ」としか思えない行為を傍聴女性に行う職員たち

本コラムでご紹介した通り429号法廷はいつも「警備法廷」だ。法廷前では多数の裁判所職員が列をなし、鞄や携帯電話などの所持品は全て裁判所の命令で「一時預り」を強いられた。

筆記用具だけは持ち込みが認められているはずなのだが、女性傍聴者に対して複数の職員が取り囲み「ノートの中を見せろ」と不当な恫喝をかける。私もノートの所持は確認されたが、中を見せろとは言われなかった。

429号法廷では女性に対して、嫌がらせとしか理解出来ない行為が多発していると聞いていたが、目前で不当行為を目にする事になった。私を含め数人が「自分はノートの所持を確認されただけなのに何故この人にだけ内容確認を強要するのか」と問い詰めると職員は何と「金属探知機」を持ち出し、女性のノートの裏表に「金属探知機」をかざし(何の意味があるのか?)「ご協力有り難うございます」と発言し、去って行った。

◆警察官に連れられて入廷した「被疑者」と言う名の「不当逮捕被害者」

傍聴者が法廷に入ると裁判官は「傍聴者は声を出したり拍手などをすると退廷を命じます」と恫喝とも言うべき異例の注意を言い渡した。定刻7分遅れで手錠と腰縄をかけられた「被疑者」と言う名の「不当逮捕被害者」が警備の警察官に連れられて入廷し、手錠と腰縄を外され、正面から裁判官と向かい合う位置に二人、弁護士席の前に警察官を挟んで着席した。

この着席位置に弁護側から「被疑者を全員弁護士席の前に着席させよ!」と要求が出されたが、裁判官は取り上げなかった。が判官が事件名を小さな声で読み上げ、弁護側の主張に移った。

弁護士は「本件は逮捕建造物侵入を容疑とした逮捕自体が不当であり、3人は即時に保釈されるべきである」と8項目の求釈明を求めた。しかしそれに対して裁判官は肝心な質問には「答えません」とまともな回答をしない。堪り兼ねた傍聴席から「説明しろ」と声が上がると、裁判官はすかさずその傍聴者に「退廷を命じます」と最初の退廷を出した。

◆被疑者の住所を不明としながら3人の自宅の家宅捜索を行った不合理

その後も弁護団から厳しい質問が相次ぐが、相変わらず裁判官は「答えません」を連発する。

明らかに裁判官は回答から逃げており法律の素人にもその矛盾が明らかだった。

特に勾留の理由に被疑者の住所が不明としながら3人の自宅に家宅捜索を行っている不合理は際立っていた。

その後、3被疑者の意見陳述に移り、各人が10分不当逮捕を糾弾した。被疑者の発言に共感した女性が小さく拍手をすると、裁判官はまたしても退廷を命じ、5、6人の職員が女性を抱え上げ法廷から排除した。

次いで弁護団の意見陳述が行われ「明確な不当逮捕」を厳しく追及して、一連の審理は終わった。

◆閉廷後にも拘わらず「全員退廷!」命令を出した裁判官

その瞬間、傍聴席から「仲間を取り返すぞ!」と大声が上がった。すると傍聴席に控えていた職員が傍聴席と法廷の間に列をなし傍聴者の静止を試みる。しかし法廷内の被疑者は両手を上げて強い意思を示し、応じるように傍聴者から次々激励と裁判官糾弾の声が相次ぐ。

たまらずに裁判官は閉廷後にも拘わらず「全員退廷!」命令を出した。

午後2時、裁判所は3人の保釈決定を弁護団に伝えて来た。

午後6時半、釈放された3人がテント前広場に集い報告集会が行われている。


◎[参考動画]岩上安身による火炎瓶テツ氏インタビュー(2013年12月30日)


◎[参考動画]火炎瓶テツさん、「憲法改悪と護憲」について語る(2013年4月29日)


◎[参考動画] 火炎瓶テツ@辺野古新基地建設NO!防衛省抗議行動(2015年1月13日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

◎火炎瓶テツさんの勾留理由開示公判が東京地裁「429号法廷」で行われる意味
◎「火炎瓶テツさんを救え!」が始動──6月8日東京地裁で「勾留理由開示」公判!
◎火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎3.11以後の世界──日本で具現化された「ニュースピーク」の時代に抗す
◎〈生きた現実〉の直撃弾──鹿砦社松岡社長が自身の逮捕経験を「告白」講義

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格闘技にエロスと笑いを共存させた美戦士達のCPE「キャットファイト」が凄かった!

Cat Panic Entertainmentが運営するキャットファイトを5月23日に新木場まで見に行った。キャットファイトの中でも、お色気が見たい場合は、この団体の試合を見てスカッとするのもいい。キャットファイトは、女どうしの戦いを意味するのだが、ここでは、かわいい女の子が「そんなに激しく戦うのか」と驚きをもって観戦する種類のものと定義する。したがって、脱がしたり、股間をさらすシーンは男性にとってうれしいものがあるが、まちがっても凶器や流血などは存在しない。

観客は、20代から50代の男性がメインで、9割ほど。「全日本プロレス」や「新日本プロレス」のTシャツを着ていたりする。いわゆるおたくの臭いはほぼしない。第一試合からして、「負けたほうが官能小説を読む」という罰ゲームが用意されていた。そうなのだ、こうした演出こそがこのイベントのナイスな肝なのだ。地下アイドルがリングの合間に歌うのも、見どころで、観客の迷惑を顧みずに、ひたすらに踊る最前列のおっさんもいた(あとで後ろの席の人に謝っていたが)。


◎[参考動画]5/23(土)CPEキャットファイト全対戦カード発表!

寝技回春ガールズ

とりわけ、初代ミニスカポリスの福山理子 、アイドルレスラー鳳華、はたまた舞台女優、若林美保などのきれいどころとも出会えるのが魅力だ。開始から最後まで見たが、キャットファイトはよりエンターテインメント性が高まっており,解説もアナも笑いをとらせたら一級品という感じがした。追いはぎマッチや、バナナを尺八する技をあらそう3対3のバトルも、ローションの中のバトルロイヤルも魅力だが、メンバーがいれかわってもなお迫力があるパフォーマンスを見せてくれた。

個人的には、小司あんももえりがまだがんばっているのを発見して、「いまだがんばっているのか」と感慨が深かった。初めて見たときは少女のような初初しさがあったが、もはやベテランの領域だ。ちなみに「あやまんJAPAN」は、初期メンバーはすでに脱退したが、メンバーがいれかってもなおレベルの高いパフォーマンスを見せてくれた。

◆格闘技にエロスと笑いを共存させる『バトルビーナス』たちの饗宴

実は、格闘技とエロスとお笑いを共存させるのは、とても難しい。名前を伏せるが僕の友人もキャットファイトの運営に関わったが、どうしても女の選手たちは「あの子よりも前に出たい」と顕示欲が強くて分裂に分裂を繰り返して、やがて団体は消滅していった。今、残っているキャットファイトの団体の人気の秘密は「美しい戦士たちが汗まみれで戦う」、その姿が崇高だという点だろう。アキバ系のキャットファイトのイベントでも、そうした『バトルビーナス』をリスペクトするカメラ小僧であふれているのだ。

同時に、いつの世の中にも「強い女」に憧れる男はいるもので、彼女たちをリスペクトして、全国に女子プロレスラーを追いかけている中年も一部ではいるのも事実だ。もしかしたら、自分もそうした「女子プロレスラー」の追っかけになっていた可能性は高いのだが、幸いにも自分はプロレスラーの「アイドル性」や「カリスマ性」を追跡するよりも、「試合そのもののおもしろさ」を伝えるライターとなった。したがって、人気があるから選手をとりあげるような真似はしない。試合が秀逸だから、活字たりえるのである。

紫龍みほ(右から2人目)

もしも女子プロレスラーや格闘技家で、魅力ある人がいたなら、ひたすらに追跡していたような気もする。

しかし女子の格闘技家が「旬でいられる時間」が短いのも、僕がどうしても女子の格闘技イベントから遠ざかる原因ともなってきた。お誘いはたくさんあったので、ここでお詫びするなら、どうしても土日は、ボクシングの重要な試合があったのだ。

もしも往年のプロレスファンがこのブログを見ていたら、であるが、リッキー・フジ木原文人も、男女混合のローションプロレスに参戦していたので、この点からも興味を持つかもしれない。

◆キャットファイトの魅力──相反する要素がミスマッチ的に同居

はてさて、話をイベントに戻せば、ラストのローションファイトでは、水鉄砲が配られて、レスラーの股間や乳房水をぶっかけられる。もはや脱力するほどのユルさだ。しかしこうした「脱・日常」こそが、キャットファイトの魅力なのだろう。

桃杏めるのライブ

山田ゴメスは、かつてこう観戦記に書いた。

ポイントは、エロからもっともかけ離れた位置にあるはずの“笑い”(“失笑”もおおいに含む)と、本来ならもっともエロの身近になければならないはずの“下世話”(もっと断言するなら“下品さ”)であるようだ。これらの相反する要素がミスマッチ的に同居する、乱暴なフレイバー感こそがキャットファイトの魅力なのかもしれない。(日刊SPA!

なかなか的確に捉えている言葉だ。いずれにせよ、次回は9月に行われる。
もし日程があればまた出かけてみたい。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、著述業、落語の原作、官能小説、AV寸評、広告製作とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。格闘技通信ブログ「拳論!」(http://genron1.blog.fc2.com)の管理人。

◎「THE OUTSIDER 第35戦」観戦記──朝倉海の強さと佐野哲也の安定感に注目
◎不良達の登竜門「THE OUTSIDER」は凄まじ過ぎる興奮
◎川崎中1殺害事件の基層──関東連合を彷彿させる首都圏郊外「半グレ」文化
◎売り子に視界を遮られ、肝心なプレイを見逃す東京ドームのキャバクラ化
◎アギーレ解任前から密かに後任候補を探していた日本サッカー協会の本末転倒

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火炎瓶テツさんの勾留理由開示公判が東京地裁「429号法廷」で行われる意味

先日来お知らせしている「火炎瓶テツ」氏の「勾留理由開示公判」が6月8日(月)10時から東京地裁429号法廷で行われるとの情報を得た。

やはりかと思ったが、法廷は「429号」だった。

東京地裁429号法廷は特別な法廷だ。通常の法定であれば刑事事件(裁判員裁判の殺人事件)であっても、民事事件であっても、傍聴席に空席がある限り、開廷前であれ、開廷中であれ誰でも法廷の傍聴席に自由に出入りできる。

が、東京地裁「429号」法廷は特別だ。ここは常時「警備法廷」として準備されている特別に警戒が厳しい部屋として、業界では悪名高い。

通常の法廷であれば傍聴者は荷物を持って傍聴できるけれども、「429号」法廷の場合ほぼ間違いなく裁判所の職員に鞄所持品、携帯電話などを預けなければならない。加えて私の過去の経験から言えば、裁判所入所時に金蔵探知機で所持品を調べられているのに、この部屋に入る際に更に全身を調べられた。

部屋の前の廊下には目つきの鋭い裁判所職員(?)が常駐し、その姿は何も知らずに訪れると、相当威圧感を受ける。

◆「429号法廷」とは傍聴者たちに対しても「本気で弾圧するぞ」という権力の意思表明

「火炎瓶テツ」氏の「勾留理由開示公判」が429号法廷で開かれること自体、裁判所や検察は「本気で弾圧するぞ」と言う意思を示していると了解しても間違いないだろう。この場所は主として新左翼活動家や暴力団の抗争などの刑事事件で専ら使われる法廷でもある。

当日、傍聴予定の方はあらかじめ、そういった場所であることを覚悟しておいた方がいい。一般の法廷と雰囲気が全く違う、威圧的な雰囲気の中で「勾留理由開示公判」は行われる。

高々建造物侵入(といっても「押し入った」わけではないのに)容疑で「警備法廷」をあてがうほど、国家(権力)は警戒しているということだ。

「火炎瓶テツ」とその仲間たちは丸腰の人ばかりなのに。

◎[参考動画]2015.05.28『戦争法案反対国会前集会』シュプレヒコール【5/10】

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◎火炎瓶テツさんら経産省前「不当逮捕」が示す安倍ファシズム第二段階本格稼働
◎合法ラディカルな自由メディアの天使「ノエル」少年を権力が恐れる本当の理由

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《脱法芸能39》叶姉妹──芸能界に蔓延する「枕営業」という人身売買

芸能界では昔から「枕営業」と呼ばれる人身売買が行われているとされているが、時に報道などによってそれらが明らかとなるケースがある。

2010年には契約解除をめぐる紛争でタレントの眞鍋かをりが芸能事務所、アヴィラと裁判沙汰になったが、この裁判の準備書面で眞鍋側は「仕事場の楽屋でマネージャーから(中略)『タレント某は社長と性的関係を持ったから、番組に出演出来た』などの低俗な話を聞かされた。実際に話題に上ったタレントの仕事量が増えた」「性的関係を持った女性タレントに小遣いを渡していた」などと主張し、物議を醸した。

◆頻発する犯罪報道で明らかになる「枕営業」強要の実態

2014年12月には「ちょいワルおやじ」という流行語を流行らせ一世を風靡した中年男性向けファッション誌『LEON』を創刊した有名編集者、岸田一郎氏から、『東京ガールズコレクション(TGC)』への出演を引き換え条件に肉体関係を強要されたとして23歳のモデルが『FRIDAY』で告発した。

2015年1月にはオリコンランキングで1位を獲得し人気が急上昇していたアイドルグループ、仮面女子のメンバーらが運営会社社長に日常的に性接待を強要されていたという告発が『週刊文春』で報じられた

こうした報道は最近、特に増えている。

先月は、アイドルグループ、PASSPO☆のメンバーがツイッターで枕営業の実態をほのめかす内容の投稿をし、大騒動となり、また、元芸能プロダクション社長田代オリバーことベレン・オリバー・オリベッティ容疑者がタレント志望の女子中学生に「俺がデビューさせてやる」と持ち掛け、みだらな行為をしたとして、児童福祉法違反の疑い逮捕された。

さらにその数日後にも、東京、原宿でスカウトした女性の着替えの様子を盗撮していた芸能プロ社長ら5人が逮捕される事件も起きた。

叶恭子『トリオリズム』 (2006年小学館)

◆叶姉妹とミス・コンをめぐる1999年『週刊ポスト』スキャンダル報道の衝撃

筆者が調べた範囲では、「枕営業」に関する過去の報道でもっとも衝撃的だったのは、『週刊ポスト』が1999年11月から12月にかけ、5回にわたって報じた叶姉妹とミス・コンテストをめぐるスキャンダルだ。

叶姉妹といえば、97年ごろから高級ファッション誌『25ans』に「スーパー読者」として紹介され、瞬く間に人気を獲得した、叶恭子、叶美香による姉妹ユニットだが、その実態は謎のベールに包まれていた。

『ポスト』の報道には、叶姉妹と密接に公開した資産家令嬢のA子さんが登場し、「絶対にあの姉妹を許せません」として2年間にわたった「レズ奴隷生活」を告発した。

記事によれば、A子さんは数年前に知人宅を訪問したところ、その知人が叶恭子、叶美香を呼び出し、以降、交流が始まったという。

初対面の恭子は、「私のこと、知らない? ミスコンの審査員をしてるの」と切り出し、しきりにミスコンへの出場を誘った。

恭子は毎日のようにA子さんに連絡をし、買い物などに同行させ、仕舞いにはレズ関係を迫られるようになった。恭子は「3人目の妹になりたいなら頑張らないと」といつも言っていたという。

さらには、ある日、美香から「会えば絶対、勉強になる」などとと言われ、コンドームを手渡され、ホテルチェーンを経営している2代目という青年実業家を紹介され、関係を迫られた。

それが終わってから、美香はA子さんにこう言ったという。

「あの人はバカだから(利用するには)ちょうどいいの。あなたは初めてだから、ああいう人がいいのよ。電話番号は教えてないでしょうね」

それから1週間ほどして美香から「この間の人から電話が来たわよ。よかったわね。A子ちゃん。これでしっかりつかんだわ」と連絡があり、再び青年実業家との面会がセッティングされた。再び、面会した青年実業家は「君を紹介してもらうのはとても大変だったんだよ」と話していたという。

A子さんが、この間の経緯を恭子に説明し、抗議すると恭子は、「美香がやったのね。私は関知してないの」と釈明したという。

同様のことはその後も続く。そして、叶姉妹は、A子さんに自分たちが運営側として関係し、世界4大ミスコンテストの1つとされ、フィリピンが主催国の「ミス・アジアパシフィック」の日本代表選考会への出場を強く薦め、「A子ちゃんの頑張り次第で日本代表になれるから」と言った。

◆「ホントにやる気だったら、オレと寝ろ。2年でビッグにしてやるから」

そして、大会が1か月後ぐらいに迫ったある日、美香が「ミスをとったあと、A子ちゃんのために個人事務所をやってくれるという人がいるの。絶対あなたのプラスになる人だから会ってみない」と紹介され、音楽関係のプロデューサーを紹介してもらった。

だが、このプロデューサーは、初めて会ったその日にバーに誘い、「ホントにやる気だったら、オレと寝ろ。(ミスコンの)代表になるには2000万~3000万円かかる。そのカネはオレが出すから最低2年はつきあおう。2年でビッグにしてやるから」と迫ったという。

これを聞いて気が動転したA子さんはその場から席を外し、叶姉妹に電話をかけたが、電話に出た美香は「A子ちゃん次第よ。でも、絶対あなたのためになる人だから……」と説得したという。

叶姉妹に憧れ信用しきっていたA子さんは、代表になるためには仕方がないと重い、いやいやながら部屋に行った。

その後もこのプロデューサーはA子さんにたびたび面会を求め、美香からも「会ってほしい」としつこく要請されたが、A子さんは拒絶した。

結局、A子さんは「ミス・アジアパシフィック」で小さな賞をもらったものの、代表にはなれなかった。

◆メディアが叶姉妹を攻め切れない理由──訴訟代理人・弘中惇一郎という脅威

叶姉妹というと、ネガティブな報道に対してはすぐに訴訟を起こすことで知られる。おまけに訴訟代理人は、「無罪請負人」という異名も持つ剛腕の弘中惇一郎弁護士であり、メディアにとっては脅威だ。

『週刊ポスト』側も叶姉妹からの訴訟に備え、連載開始直後から告発者のA子さんを何ヶ月も各地の温泉に連れ出し、匿っていたという。だが、『ポスト』の記事については叶姉妹サイドの反論として「A子さんは叶姉妹のストーカーだった」という記事が女性週刊誌に出たものの、結局、裁判には至らなかった模様だ。

最近、芸能界のセクハラ事件が相次ぐ事態を受け、ある芸能プロダクションがツイッター上で次のように呼びかけ、話題となった。

「現在、事務所の社長やマネージャーにセクハラされたり、体を要求されてる方がいたらご連絡ください!未成年の方は、保護者の方と一緒にご連絡ください!そういう糞事務所を叩き潰しましょう!」

その意気は買いたいが、芸能界の中枢から末端まであちこちではびこる人身売買は、構造的なものであり、直ちに改まるものではない。権力者が恣意的にキャスティングを歪め、オーディションがまともに機能していないという問題にメスを入れない限り、今後も似たような事件が起こり続けるだろう。

※追記=6月6日の本通信の記事で『裁判にはならなかった』と記述したが、この記事を見た関係者のインサイダー情報として『ポスト』と発行元・小学館関係者が刑事告訴されたことが判明、『ポスト』側が家宅捜索や逮捕を恐れ屈服し極秘に和解したという。具体的な和解内容は不明、現在取材中だが、和解後小学館から叶姉妹の写真集が刊行されている。

▼星野陽平(ほしの ようへい)
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。

星野陽平の《脱法芸能》
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◎爆笑問題──「たけしを育てた」学会員に騙され独立の紆余曲折

芸能界の歪んだ「仕組み」を綿密に解き明かしたタブーなきノンフィクション『芸能人はなぜ干されるのか?』