《大学異論13》学園祭で「SMショー」は芸術か?ワイセツか?

学園祭はその大学の学風や個性を知るのによい機会だ。模擬店で軽食を売る光景はどこの大学でも見られるが、時に目を疑うような光景に出くわすことがある。

私が勤務していた当時、その大学にはなんと年に2回学園祭があり、業界では「知る人ぞ知る」存在であった。学園祭期間中、大学内の統治は実質的に「学園祭実行委員会」に委ねられ、私たち職員は万が一の事故や怪我、事件備えて事務室で待機していた。「待機」といえば聞こえはいいが、1名飲酒しない職員を確保して、その他の職員は昼間から学生ともども酒を食らっていた。

とはいえ、学園祭の前には事故や近隣住民と問題を起こさない為に「学園祭実行委員会」と我々大学側でかなり細密な打ち合わせを行っていた。進行の全体像は毎年の蓄積があるので双方さして異論はないが、一番の焦点になったのがメインステージで行われるイベントの内容だ。学生側はそれまで行われた企画を超えようと、さらにインパクトのある(危険であったり、ワイセツギリギリであったり)企画を準備してくる。大学としては物理的に明らかに危険が予知されるものは許可するわけにはいかないので、押し問答となる。

実際それまで学園祭で前例のなかった、3メートル超の高さから、じゃんけんで負けた方が飛び下りる、という企画を事前会議で提案された際、「この高さから飛び降りると、地面はコンクリートだから骨折の可能性がある。下にマットを2重に敷いて2メートルから君たちが実験して、危険がなければ」との条件を付けて認めたが、学生どもはその検証実験を行わなかった為に、じゃんけん敗戦者が飛び降りると大声をあげて痛みを訴える者が続出。中には脛から骨が飛び出している者まで出る始末。当日私は運悪く「飲酒禁止」の当番にあたっていたので、3人の学生を次々と病院に搬送する羽目となる。

模擬店や教室を利用しての企画ものは事前申込制で「学園祭実行委員会」が全て把握していたが、その枠を無視して多数俄作りの建物が出現する。学生の腕と工夫は見上げたものだった。学内的にも「規則違反」なのだが、建設現場で使う足場と発電機、さらには数十種類の洋酒を揃えた本格的なバー。周りを囲んで男女誰でもが順番に利用できるように作られた「五右衛門風呂」。そして極めつけは100人以上は収容できようかという複雑な建築様式で?「規則違反」をもろともせずに立てられた「SM小屋」だ。

◆「アバンギャルド」といえば、そうともいえる

学生が「SMショー」をゲリラ的に行うという噂は事前に入っていた。当日私は幸い飲酒禁止の当番ではなかったので、後にその大学で学長を勤めることになる教員の責任者と一緒に昼からいい気分になっていた。

「○○さん(教員の名前)、学生がSMショーやりよるって聞いてはります」
「知ってるで、うちの専攻の学生やわ。その子はMで女王様を東京から呼んでるらしいで」
「SMって、まさか女の子が裸になって、本当にやるんじゃないですよね」
「いや、やるみたいやで」
「どうします?フェミニズムの教員から後でたたかれたら厄介ですよ。それに裸といっても一体どこまで・・・」
「うん。見に行かなあかんな!職務として」
「ただのスケベ職員やて、いわれへんかなー」
「いや、芸術か、単なるワイセツかを見極めるのは極めて重大な大学の任務や」
「そ、そうですね」

というわけで「SMショー」が行われる「芝居小屋」に向かった。入り口には学生が列をなし、我々も入場料を徴収される。確か1000円だった。「職務権限」で押し切りはいることは無論可能なのだが、列をなしている学生の手前、またこれから始まる「ショー」が一体どんなものなのかという興味と不安で自然に入場料を支払ってしまう。

「先生、来てくれはったん!」と赤い皮の衣装を身に着けた女子学生がこちらに寄ってきた。同行している教員の教え子がこの子らしい。身に着けている皮の衣装はかなりきわどいが、幼い顔をしている。

「観客できたんちゃうで、? 勘違いせんといてや!」
「嘘や!先生私の喘ぐ姿見に着たくせに」
「いや、大学としての責任があるからな。何があるか見届けなならんし」

こんなすっ飛んだ会話、日本の大学ではもう100%ないだろう。牧歌的といえば牧歌的。アバンギャルドといえばそうも言える光景だった。

狭い舞台の上では小さなメガホンを握って、これまた怪しい風体の男子学生が素人とは思えない慣れた節回しで観客を誘導し、舞台開始までの間をつなぐ。そしていよいよ「女王様」の登場だ。170センチくらいある20代後半の女性が黒いムチを持って現れた。

やわらムチを地面に叩き付ける。「ビシッ!」
思いがけず大きな音に観客から「おおお」と声が上がる。
先ほどの赤い皮を着た学生が登場する。
あれ! すでに上半身は服を着ていない!
床に寝ころぶと女王様が彼女の腹部にムチを打ち付ける。
「あ、ああ」

「○○さん、これええんやろうか・・」
私は本来の職務を思い出し、教員に語り掛ける。
「今のところ、芸術や。問題あらへん」
「どこで、区別すんのよ。芸術とワイセツと」
「ワイセツが悪ではないで」
「え!なら何しても黙認するん?」
「黙認ちゃうがな、見ながら確認するんや」

このおっさん、酔ってるのか正気なのかわからない。
舞台の上のMの子は既に全裸だ。女王様の道具がムチから蝋燭に代わっている。
いかがわしい語り口の小さいメガホンが絶妙な合いの手と解説を入れる。
こいつら大学来ていったい何やっとんじゃ!と思いながらもその完成度に見入る自分が優ってしまう。

最後にMの子が悦楽に果て、ショーは終わった。
「冷や冷やもんでしたね」
「あそこまでやるとは、ワシ思わんかった」
「あれ、芸術ですか?ワイセツですか?」
「うーん・・・」

芝居小屋出る長蛇の列に並んでいるとまた赤い服をまとった学生が寄ってきた。
「先生、どうやった?私今日はホンマにすごかったでしょ」
「うんうん、よかったで」

何が「よかった」のか。芸術だったのか、ワイセツだったのか。
学園祭後も学内で特に「SMショー」が問題にされることはなかった。
現場にいた教職員はたぶん我々2人だけだったのだろう。と安心していたら、
「田所さん!学園祭でSMショーやってたん、知ってはります」と学生がやってきた。
「そんなん知らんけど」ととぼけると、
「フライデーに出てますよ。ほら」
なんと、事前にフライデーの記者が「学園祭でSMショー」を察知して、わざわざ東京から取材に来ていたのだ!

扱い自体は小さいが大学名も入ってるし、写真はあらわな学生の裸体を載せている。
「知らんかったわー。これ知ってたら早く教えてくれな」
「僕も知らんかったんです。後で噂聞いて。見に行きたかったなー」
「あほ。来年からこんなん禁止じゃ」

ヒヤヒヤモノであった。

(田所敏夫)

《大学異論01》「度を越した」改革で立命館が一線を越える日(前編)
《大学異論02》「度を越した」改革で立命館が一線を越える日(後編)
《大学異論03》職員の7割が「非正規」派遣・契約のブラック大学
《大学異論04》志ある「非正規」は去り、無責任な正職員ばかりが居坐る
《大学異論05》私が大学職員だった頃の学生救済策
《大学異論06》「立て看板」のない大学なんて
《大学異論07》代ゼミと河合塾──予備校受難時代に何が明暗を分けたのか?
《大学異論08》5年も経てば激変する大学の内実
《大学異論09》刑事ドラマより面白い「大学職員」という仕事
《大学異論10》公安警察と密着する不埒な大学職員だった私
《大学異論11》「草の根ファシズム」の脅迫に抗した北星学園大学にエールを!
《大学異論12》大学ゴロ──学生確保の裏で跋扈する悪徳業者たち

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《脱法芸能14》ビートたけし独立事件の裏側(2)──浮上するマッチポンプ疑惑

『週刊大衆』(1987年12月21日号)に「太田プロ関係者」の次のような談話が紹介されている。

「いまから四年前、たけしさんは独立するつもりで自分の側近に声をかけ、密かにスタッフ集めまで始めていたんです。そのときは、結局ウヤムヤに終わってしまいましたがね」

86年度の太田プロの申告所得は、3億5000万円で、芸能プロダクション全体で3位にランクインするほどだった。その稼ぎの大半はたけし絡みだとされていた。当然、太田プロとしては稼ぎ頭のたけしの独立を認めるはずはない。もし、たけしの独立がスムーズに行なわれれば、片岡鶴太郎や山田邦子など他の所属タレントにも追随の動きが出てくる可能性もある。

太田プロが加盟する芸能プロダクションの業界団体、日本音楽事業者協会ではタレントの引き抜き禁止、独立阻止で一致団結している。たけしが独立を強行すれば、業界全体から干される可能性が高いのである。たけしが4年前に独立を断念したのは、そうした芸能界の政治力学が分かったためであろう。

米『TIME』誌アジア版の表紙を飾ったビートたけし(2001年2月12日)

◆「オイラは紳助と違う」

では、なぜたけしは、88年2月にオフィス北野を立ち上げて独立を果たせたのか。これも芸能界の政治力学が大きく絡んでいると考えられる。

『アサヒ芸能』(88年3月10日号)が「ビートたけし『オレはハメられた!』巨額“独立御礼金”の計算違い」と題する記事を掲載している。

記事によれば、日本青年社とたけしの手打ちを実現するためにかかった7000万円は、たけしの借金という形で残り、さらにお世話になった芸能関係者それぞれに対し、独立後の3ヶ月間毎月200万円支払うという話もあった。日本青年社との和解工作で動いた関係者は15人ほどと言われていたから、9000万円程度の費用となるから、先の7000万円と合せて1億6000万円の借金を抱えることとなったというのである。

そして、たけしは元所属事務所の太田プロにも解決金を支払うことで合意したという。たけしは、独立と同時に巨額の負債を抱えることとなった。たけしが「オレはハメられた!」と言うのは、成り行きで借金を抱えることになったのではなく、最初からシナリオができていたのではないのか、という疑念があったからだろう。

『週刊文春』(2011年9月29日号)で、島田紳助が暴力団関係者との交際を理由として引退を表明したのを受けて、たけしが日本青年社との手打ちの真相について次のように明かしている。

「これまで何度も右翼団体から街宣活動をかけられたことがあったけど、オイラは紳助と違う。ヤクザに仲介なんて頼んだことない。最初はフライデー事件の後、日本青年社に『復帰が早すぎる』と街宣をかけられたときだな。一人で住吉の堀さん(政夫氏、当時・住吉連合会会長)のところに行って、土下座して謝ったの。その後、右翼の幹部にも会って、それで終わりだよ」

「オイラの行くとこ、行くとこ、街宣がかけられているのに、当時の事務所は何も動いてくれないから、『自分で話をつける』って全部、一人で回ったんだよ。えれぇ、おっかなかったけど。堀さんに謝ったら、小林さん(初代日本青年社会長)と衛藤さん(豊久氏、二代目日本青年社会長)のところへ行けって。それで二人の前で『芸能界辞めます』って言ったら、『まだもったいないだろう』という話になった。街宣をやめる条件は、当時の事務所を辞めるってこと。『お前は生意気だって噂もあるから、気を付けろ』って怒られて、赤坂でスッポンをご馳走になって帰ってきた。そのとき、色んなヤクザから助けてやろうかって言ってきて、それを断るのも大変だったよ」

タレントであるたけしは、立場上、直接的にも間接的にもヤクザや右翼にカネを払ったとは言えない。ここで重要なのは、日本青年社側が街宣中止の条件として、たけしに太田プロを辞めることを要求してきたということだ。

太田プロも所属する業界団体、日本音楽事業者協会(音事協)では、加盟プロダクション同士でタレントの引き抜きを禁じている。たけしが他のプロダクションに移籍することは基本的にできないから、独立せざるを得なくなったのである。

◆なぜ日本青年社はたけしに独立を迫ったのか?

では、なぜ日本青年社はたけしに独立を迫ったのか。それは、たけしの独立が日本青年社の利益になるからだろう。そこで、浮上するのが、マッチポンプの疑惑だ。つまり、日本青年社と仲介役となった芸能関係者らが最初から結託し、たけしに独立を迫り、たけし利権を太田プロから横取りすることを狙った、事実上の引き抜きだったのではないかということだ。

では、誰が絵図を書いたのだろうか。そのヒントとなると思うのが、日本青年社とたけしの和解工作をしたとされ、オフィス北野が設立された当初から、取締役に就任していたライジングプロダクションの平哲夫社長の存在だ。

後にライジングプロは、バーニングプロダクションとの関係を深め、「バーニング系」と言われるようになったが、バーニングプロダクションの周防郁雄社長も和解工作をしていたとされる。

だが、独立したたけしは、バーニング系と目されることはなく、バーニング系のタレントとの共演も特に目立つということもなかった。

実は、オフィス北野の設立と同時にバーニングに対し批判的な報道で知られる芸能ジャーナリストのA氏がたけしの顧問のような形で入っているのである。

A氏とたけしの親密ぶりは業界では有名だ。A氏はたけしの撮影現場にしばしば出入りし、A氏が地元で飲んでいるときに、フラリとたけしが現れることさえあるという。

また、A氏はたけし関係の記事を執筆することも多い。たけしのコメントが『東京スポーツ』で大きく掲載されるとき、このA氏が記事を執筆し、高額の原稿料が支払わるルールになっているが、『東京スポーツ』関係者は「Aさんがライターじゃないとダメだと、オフィス北野が指定してくるんです。なぜなのかは分からないけれども、昔からそうなっています」と言う。

A氏は、なぜ、たけしと関係が深いのかについて多くを語らないが、「オレは芸能界に功績があるんだ」とだけ言う。

あくまで筆者の仮説だが、たけしにとってのA氏の存在意義は、バーニングに対する防波堤のような役割なのではないだろうか。

仮にたけしが太田プロからの独立でバーニング系となったとしたら、どうなっていただろうか。たけしの番組にバーニング系のタレントが氾濫したり、映画のキャスティング権をバーニングに握られるというような事態も考えられる。

だが、現実にはそうはならず、たけしは、多くの国際映画賞や外国の勲章が授与され、国際的スターの座を手に入れた。その陰にはバーニングの介入から守るA氏の存在があったのではないか。そうであれば、確かにA氏には「オレは芸能界に功績がある」と言えるだけの資格があるだろう。

▼星野陽平(ほしの・ようへい)
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。

芸能界の真実をえぐる!『芸能人はなぜ干されるのか? 芸能界独占禁止法違反』

 

 

橋下・桜井面会はファシスト差別者同志の猿芝居!

大阪市長の橋下徹が在特会(在日特権を許さない市民の会)会長の桜井誠と10月20日、「面会」した。報道によると両者は「お前!」「お前と呼ぶな!」など罵倒に終始し小競り合いにSPが止めに入るなど、大した内容もなく10分で「面会」を終了したと報じられているが、その10分間に交わされた会話を子細に見ると、これは単なる怒鳴りあいではない。

まず、橋下は面会に先立って先週行われた会見で「在特会もだいぶまともになったんじゃないですかね。今日の主張なんか見てると問題ない範囲ですよ」と述べている。

何が問題ない範囲だ! 橋下にとって問題ない範囲は差別に対しては「無限大」。だから奴の尺度で判断されること自体が的外れだ。在特会が繰り返す「朝鮮人は国に帰れ」、「在日はゴキブリ」という表現に問題はないという大阪市長。温度も冷え込んできたからそろそろ道頓堀にでも飛び込んで頭を冷やしてはいかがか?

◆同じ穴の狢(むじな)

「会談」当時の内容も一見単なる怒鳴りあいに見えて、子細に見ると内容の上で双方が合致している。

橋下:大阪でな。大阪でもうそういう発言を止めろって言ってるんだ。
桜井:どういう発言かって聞いてるんだよ!
橋下:民族とか国籍を一括りにしてな、評価をするようなそういう発言は止めろって言ってるんだ。
桜井:朝鮮人を批判するってことがいけないって言ってるわけ?
橋下:お前な……(笑)。

ここで桜井が朝鮮人を批判するのがいけないのか、と聞いているのに対し、橋下は「お前な・・・(笑)」と朝鮮人差別を否定していない。また、

橋下:お前、国会議員に言え。
桜井:は?
橋下:お前の主張は国会議員に言えって言ってるんだ。
桜井:あんたの友達の国会議員に言ってるよ。
橋下:おう言えよ。
桜井:おう言ってるよ。
橋下:どんどん言えよ。
桜井:うん。それで終わりじゃねえか話は。
橋下:参政権を持ってない在日韓国人に言ってもお前、しょうがねえだろ。
桜井:その参政権を求めてるだろ彼らは。

と桜井は地方参政権を求めていることがあたかも「悪」のように断言しているが、それへの橋下の回答は、

橋下:強い者に言えよ。そんな弱い者いじめばっかりするんじゃなくて。

と極めてあいまいに逃げており、決して差別を否定していない。また、

橋下:……だからもうそういうな、在日の特定永住者制度とかそういうことに文句があるんだったら、それを作った国会議員に言えって言ってんだ。
桜井:言ってるんだよ! そして何よりもね、特別永住者制度なくしたらどうなるかくらい、わかるだろ?
橋下:だから、国会議員に言え。
桜井:言ってるって言ってるだろ。
橋下:特定の個人をな、ルール違反のことをやってる特定の個人がいるんだったら、刑事告発しろ。民族をまとめて、国籍をまとめて、それについて評価を下したり、ああいう下劣な発言は止めろ。

橋下は「特定永住者制度文句があるんだったらそれを作った国会議員に言えって言ってるんだ」と発言している。橋下自体が「特定永住者」制度に異議があるとも受け止められる発言だ。しかも制度に異議があるのならば政治家に言えというのは、逃げの発言だ。自分が桜井と「面会」を承諾しておきながら自分では何も責任を取る発言をしていない。

それはそうだろう。奴らは二人とも「同じ穴の狢(むじな)」なのだから。極めつけは次のやり取りだ。

橋下:もうとにかく、大阪ではお前みたいな活動はいらないから、ちゃんと政治的な主張……
桜井:私がいつそういう主張を大阪でやったんだって聞いてるんだよ。
橋下:政治的な主張と、通常の主張を、ちゃんと表現の自由に収まる範囲に変えろって言ってるんだ。
桜井:お前に、この間なんか見たけど、「在特会はおとなしくなった」とかなんとか言ってたろ? ああいうデモしか我々はやったことないんだよ! それ以外でね、あんたがいうヘイトだなんだっていうデモがあったんだったら、ちょっと日付言ってくれるか?

橋下は「大阪ではお前らみたいな活動はいらないから」と発言している。逆に言えば「大阪以外のことは知らない」ということだ。ちょっと待て橋下!
お前は大阪市長でもあるが、国会議員を擁する「維新の党」の共同代表ではないのか? 野党とはいえ一定数の国会議員を抱える政党の責任者が、「国会議員に言え」、「大阪ではやるな」など無責任にもほどがある。これでは「桜井と俺はちょっと立場が違うけど基本的に考えは変わらないよ」と発言しているも同然だ。

◆在特会を世間に広める効果

来年4月の統一地方選で、元在特会の人間が維新の党から選挙に出馬することが判明した。元在特会といっても、思想がそう簡単に変わるものではない。そのことについて大阪維新の会の松井大阪知事は「もう考えは変わっているから問題ない」と発言した。当人の思想点検やったのか? アホぬかせだ!

「弁護士タレント時代」にテレビで無責任な差別発言を連発して以来、橋下は確信的な差別者である。しかもこいつは、決定的にずるい。光市母子殺人事件の弁護団懲戒をテレビで呼びかけながら、自分自身は「それに時間を割く価値を感じなかった」と厚顔にも発言した。さすがにこの行為は大阪弁護士会で問題とされ懲戒処分を受けている。テレビでの懲戒呼びかけに日頃から「騙され続けている」人々が大挙参加し、弁護士としてごく当たり前の仕事をこなしている弁護団が、あたかも「悪人」のように報じられた。

テレビ報道で今回桜井を初めて知った方々には桜井が酷い物言いをする人間との印象が残っただろう。が、同時に橋下が同じレベルで話をしていた内容の危険さに気づいた人は少ないのではないか。私は今回の「面談」は両者の間で最初からストーリーが決められていた、猿芝居に思える。そうでなければ、言葉の上では喧嘩をしているように見えて、在特会の認知を世間に広める効果を持っただけだ。

断じておこう。橋下、桜井は同種の人間であり、橋下流に言えば「お前ら二人とも日本にはいらない!!」

▼田所敏夫(たどころ・としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しない問題をフォローし、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心が深い。

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小渕、松島以上に悪質な極右女性大臣たちの「在特会」献金疑惑!

小渕優子経産相、松島みどり法相が10月20日、辞任に追い込まれた。ざーまーみさらせ! だが、まだ足りない。女性大臣として任命された輩のうち高市、三谷、有村はまだ平然と職にとどまっている。高市は初めて国政選挙に出馬する前から統一教会(原理研=勝共連合)からの支援があからさまで、極右の人物として知られていたが、山谷、有村は、今をときめく「在特会」(在日特権を許さない市民の会)の支援者であり、山谷は外国人記者クラブでその件を質問された際、あわあわ、回答に窮していた。

首相が安倍なので側近がこのような極右女性大臣というのはお似合いではあるが、山谷が国家公安委員長とは悪い冗談にもならない。「在特会」の暴力、暴言を放置して、それに反対する市民をどんどん逮捕するだろう。だって、山谷自身が「在特会」と仲良しなんだから。因みに安倍自身も統一教会からの献金・支援を長年に渡り受けており、こいつを支持する「在特会」の心情は摩訶不思議である。

◆過激な「差別思想」の持ち主で固めた第二次安倍内閣の閣僚たち

女性政治家だからといって、男性よりも子供思いだとか、心優しいなどと、まさか信じている読者は少なかろうが、第二次安倍内閣で大臣に就任した女性政治家は以前から過激ともいる「差別思想」の持ち主が多数だ(小渕はボケているから幾分ましであったという見方はある)。

安倍すらが参拝を見送くった(実際は「玉ぐし料」という実質「賽銭」を姑息に行っているので卑怯極まりないが)、靖国神社にはしゃいで参拝するような連中である。早晩叩き潰されてしかるべきなのだ。政教分離の建前から「国家神道」の延長線上にある「靖国神社」を大臣が崇拝することは憲法違反が明確だ。

裁判所の判断などいらないし、関係ない。憲法を文字通り読めばそうなのだ。立憲政治において「文言の判断」など子供だましの言い訳である。戦前からの「国家神道」を未だに、いや、この時代であるからこそ参拝によって、衆愚政治を推し進めようとする大臣どもは万死に値する。

安倍は前回総理就任した際にも多数の閣僚不祥事から辞任を経て、自滅していった経験を持つ。中には在任中に自殺した人物さえいた。

弱者をいじめて、周辺アジア諸国を馬鹿にして、原発再稼働賛成の論陣を張っていた『週刊新潮』が今回は小渕のスキャンダルを取り上げた。新潮、久しぶりに仕事したやないかと、一応褒めておこう。

しかし、私が知るだけでも高市、山谷、安倍に対する直接、間接の「在特会」勢力からの献金は少ない額ではない。多数の記者を抱える週刊誌、まだまだ本気になれば取れる玉があるだろうが!

◆言論の逆境──『創』の危機

ところで、月刊『創』の経営が窮地に立たされているという噂を耳にした。巻頭写真ページを持っていた柳美里が原稿料の不払いをを理由に掲載をストップしているのが主因らしい。

『創』はマスコミ批判を柱に、『マスコミ就職読本』などで財政的には安泰と思っていたが、聞くところによると最近は『紙の爆弾』よりも実売数が下回っているという。鹿砦社の松岡社長には失礼ながら『創』には顕名でかなり名の知れた執筆陣が毎号寄稿しており、まさかそんな苦境に陥っているとは想像しなかった。『紙の爆弾』とは無縁な大企業の広告も掲載されているし、「柳美里氏は怖いので原稿料を払っているが他のライターは原稿料なし」というのが業界での常識だった。

私自身も何度か『創』には寄稿したが、原稿料をもらったことはない。社員数が極端に少ない『創』にいったい何が起こっているのであろうか?

ともあれ、路線や戦い方は異なっても多様な言論を確保するうえで、『創』の奮起を期待したい。余計かもしれないが、佐藤優のような「モサドから金をもらっている」という人間に誌面を提供することを止めるところから立て直しを図ってはいかがだろうか。そして安倍反動内閣や「在特会」へ本気で批判を浴びせば、読者は戻るだろう。

大きな書店には「月刊誌」、「総合誌」のコーナーがある。文庫新刊書をブラブラ見ながら好きな作家の新刊を漁って、最後に「総合誌」、「月刊誌」のコーナーへ行くのがかつての彷徨ルートだった。が、『噂の真相』、『月刊現代』が廃刊になり、手に取りたいと思う雑誌が激減し、リベラル・左翼系の月刊誌は探し出すのが一苦労だ。代わりに『WILL』や『新潮+45』、それだけではなく「嫌韓」、「日本の誇り」なる低俗唾棄すべき紙の無駄使いが山積みされている。

もう「月刊誌」、「総合誌」のコーナーは苦痛の場所だ。だから東電の広告を掲載していた『創』。執筆者に原稿料を払わなかった『創』、社員を苛酷に使いすぎるとの噂のある『創』、編集長の性格が難しい『創』であっても奮起を期待したい。

言論の領域がどんどん狭窄になる今日、『創』の存在は貴重である(もち上げ過ぎか?)。

(田所敏夫)

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《我が暴走04》「死刑のほうがよかったかのう」マツダ工場暴走犯面会記[下]

事件があったマツダの工場。引寺はこの正門から突入した

2010年6月、広島市南区のマツダ本社工場に自動車で突入して暴走し、社員12人を死傷させた引寺利明(47)。「現場の工場で期間工として働いていた頃、他の社員の集スト(集団ストーカー行為)に遭い、マツダに恨みがあった」という特異な犯行動機を語り、裁判では妄想性障害と認定されたが、責任能力も認められて昨年秋、無期懲役判決が確定した。引寺は今、どんな日々を過ごしているのか。前2回に引き続き、引寺が今年9月に岡山刑務所の面会室で筆者に語った本音の言葉をお伝えする。

被害者や遺族に対する罪の意識がないことをまったく隠さない引寺。「何の恨みもないのに、でかいことをやろうという思いだけでやった事件じゃない」と言うが、これまでの経緯を振り返ると、裁判中に法廷で不規則発言を繰り返すなど、自分の犯行を誇示するような言動も目立った。この男の思考回路は一体、どうなっているのか。筆者は今改めて、犯行後の「あの発言」について、尋ねた。

◆「秋葉原を超えた」発言の真意

── 事件の直後、知人の男性に電話して、「ワシは秋葉原を超えた」と言ってましたよね?
「ああ、事件の直後はそう思ったんよね。いっぱい撥ねたんで、ワシは秋葉原の事件よりたくさん殺したのう、と。実際に死んだ人は1人じゃったけどね」

マスコミ報道により、この「秋葉原を超えた」発言が有名になった引寺被告。この発言については、2008年に7人が死亡した秋葉原無差別殺傷事件を引き合いに出し、自分の犯行を誇示したものだと一般に認識されてきた。しかし、引寺本人としては、単純に「秋葉原の事件より多くの人間を殺してしまった」と言っただけだったというのである。

「あとで、1人しか死んでないと聞かされて、ワシはびっくりしたけえね」と引寺はシレっと言う。たしかに自動車を猛スピードで走らせ、何ら手加減することなく12人も撥ねたのだ。秋葉原無差別殺傷事件より多くの死者が出たと思い込んでも無理はないかもしれない。

「いずれにしても、“真相”が明らかにならんことには、怒りばっかりでね。ワシは今も怒っとるけえ」
現在、自宅アパートに侵入する「集スト行為」をしていた犯人は、実はマツダの社員らではなく、自分の父親と不動産会社の社長だったと主張している引寺。その“真相”が公に明らかにならない限り、怒りの気持ちばかりで、被害者や遺族への罪の意識はまったく持てないというわけである。

◆「被害者や遺族は“真相”を知る権利がある」

引寺はさらにこんなことも言った……。
「被害者や遺族の人がワシと話してみたいなら、自分がなんで事件を起こしたんかいうことをイチから説明してもええんじゃけどね。被害者や遺族の人はワシに対し、恨みつらみをぶつけてくれてもええしね」
── 被害者や遺族は引寺さんと関わりたくないと思いますよ。
「それなら片岡さんが遺族の人に会いに行って、ワシの代わりに“真相”を伝えてくれてもええよ。片岡さんなら第三者じゃろう」
── ぼくが引寺さんの伝言役として会いに行けば、やはり被害者や遺族の人はいやがると思いますよ。
「でも、被害者や遺族には“真相”を知る権利があると思うんよ。Aさん(=引寺に“真相”を教えたとされる知人男性)の言うことも100%正しいとは言えんけど、ワシはこれが“真相”じゃと思いよるけえ。遺族も“真相”は知りたいじゃろう。いずれにしても、“真相”が明らかにならんことには、自分は怒りのほうが強いけえ、謝罪感情はどっかに飛んで行ってしまうんよ。ワシは裁判で『引寺は妄想性障害じゃ』とキチガイみたいにされとるわけじゃけえね」

◆「死刑上等のつもりでやった」

この引寺の発言を聞き、身勝手なことばかり言いやがって――と思った人もいるかもしれない。だが、少なくとも筆者には、引寺自身は決して遺族を冒涜しているつもりはなく、「遺族は自分の話を聞きたいはずだ」と本気で思っているような印象を受けた。一方で、引寺はこんなことも言う。
「ワシについては、検察が『完全責任能力はあるけど、精神障害の可能性があるんで、極刑は躊躇する』ゆうて無期懲役を求刑したじゃろう。あれはワシとしては、納得いかんのんよ。ワシは死刑上等のつもりでやったんじゃけえ」

── 死刑上等ということは、死刑は怖くないんですか?
「う~ん、それはわからんよね。(犯行を)やる時は何も考えとらんかったけえ。実際に死刑判決受けて、拘置所に入れられて、毎朝、刑務官が部屋の前をコツ、コツ、コツいうて足音させて歩いてきて、部屋の前でノックしてきたら怖いかもしれんよ。でも、ワシは現実にそうなってないけえ。仮にワシが死刑判決受けて、今は広拘(広島拘置所)におって、片岡さんから『死刑は怖いですか』と訊かれたら、『怖い』と言うかもしれんけどね。まあ、今、現実に死刑判決受けとる人らは死刑が怖いんかもしれんね。こないだ2人執行されたニュースあったけど、あん時も死刑判決を受けとる人らは怖い思うたかもね」

死刑制度の是非をめぐっては、犯罪抑止効果があるのか否かということも論点の1つだが、少なくとも引寺に対しては、死刑制度の犯罪抑止効果はまったく発揮されなかったようである。引寺は無期懲役囚として送る刑務所生活について、こんなことも言った。
「まあ、こういう生活がいつまで続くんかのうと思うたら、たいぎい(=面倒くさい)気持ちになることもあるね。そういう時は『死刑のほうがよかったのう』と思ったりもするわ。まあ、もしも“真相”がきちんと明らかにされて認められとったら、死刑にされてもワシは満足じゃったろうね。今は“真相”が明らかにならんけえ、怒っとる。それだけじゃけえ。その怒りのせいで、謝罪感情が飛んでっとるんじゃけえ」

◆「刑務所に来て、甘党になった」

── 被害者や遺族のことがまったく気にならないわけではないんですか?
「ワシも人間じゃけえ、そういう感情がないわけじゃないよ。被害者や遺族らが今どうしよんかのお、とは思うね。ただ、ワシの中では事件が風化しよんよ。広拘におった時は被害者や遺族のこともみんな、フルネームで覚えとったんじゃけどね。今は苗字くらいしか出てこんもん。被害者や遺族はワシのこと、どう思うとんかのお……。じゃけど、不思議なんは、裁判の時に傍聴席からワシに罵声浴びせる被害者や遺族が誰もおらんかったことよ。ワシが逆の立場じゃったら、絶対に傍聴席から罵声浴びせるじゃろうと思うけどのお。片岡さんでも浴びせるじゃろう」

引寺はそうしみじみ語った。刑務所生活では、月に1回出る「ぜんさい(善哉)」が楽しみだそうで、こんなことも楽しそうに話していた。
「シャバにおる時は辛党の人でも刑務所に来たら、みんな甘党になるんよ。ワシもシャバにおる時は、ぜんざいなんか1年に1回食べるかどうかじゃったけど、こっち来てから好きな物ランキングが上がったけえね」
筆者はそんな引寺の話を聞きながら、被害者や遺族が傍聴席から引寺に罵声を浴びせなかった理由が察せられたような気がした。この男に罵声など浴びせても、まったくこたえないだろうし、空しいだけだ――。被害者や遺族はそう思ったのではないか。

引寺の人物像、現状については、今後もまた随時お伝えしたい。

【マツダ工場暴走殺傷事件】
2010年6月22日、広島市南区にある自動車メーカー・マツダの本社工場に自動車が突入して暴走し、社員12人が撥ねられ、うち1人が亡くなった。自首して逮捕された犯人の引寺利明(当時42)は同工場の元期間工。犯行動機について、「マツダで働いていた頃、他の社員たちにロッカーを荒らされ、自宅アパートに侵入される集スト(集団ストーカー行為)に遭い、マツダを恨んでいた」と語った。引寺は精神鑑定を経て起訴されたのち、昨年9月、最高裁に上告を棄却されて無期懲役判決が確定。責任能力を認められた一方で、妄想性障害に陥っていると認定されている。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年、広島市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、フリーのライターに。新旧様々な事件の知られざる事実や冤罪、捜査機関の不正を独自取材で発掘している。広島市在住。

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《脱法芸能13》ビートたけし独立事件の裏側(1)──手打ちの「返礼」

「暴力と芸能界」について、もっと掘り下げてゆきたい。今回、俎上に載せるのは、「ビートたけし独立事件」だ。

1988年2月、たけしは16年所属していた太田プロダクションから独立し、オフィス北野を設立した。この独立劇のきっかけとなったのは、その2年前に起きたフライデー襲撃事件である。

1986年12月8日、当時のたけしと交際していたとされる専門学校生の女性に対し、講談社発行の写真週刊誌『FRIDAY』の契約記者が手をつかむなどの乱暴な取材によって、全治2週刊の怪我を負わせた。これに憤ったたけしは、翌9日深夜3時、弟子のたけし軍団メンバー11人らとともに『FRIDAY』編集部に押しかけ、暴行傷害事件へと発展。たけしは事件の責任を取るため、謹慎処分が決定した。

ビートたけし&松方弘樹「I'LL BE BACK AGAIN...いつかは」(1986年Victor)

◆たけしを襲った住吉会系右翼団体の執拗な抗議

事件から7ヵ月後、87年7月18~19日放送の『FNSスーパースペシャルテレビ夢列島』への出演で、たけしはテレビに復帰したが、それを許さない勢力があった。広域暴力団、住吉連合会(現住吉会)系右翼団体、日本青年社がたけしのテレビ出演に猛烈な抗議活動を展開した。

「良識ある地域住民の皆さん! テレビ局は犯罪者・ビートたけしを出演させております。視聴率のために出演させ、たけしの暴言さえ許している……」

日本青年社の街宣車はテレビ局やスポンサー企業、太田プロなどに押しかけ、大音響でたけしのテレビ出演を糾弾した。

日本青年社の抗議は執拗で、たけしが羽田空港から『風雲! たけし城』(TBS)の撮影のため緑山スタジオに向かった際、右翼と見られる男に尾行され、途中でホテルに逃げ込んだことさえあった。気の弱いたけしは、これにおびえた。

だが、これに対して、たけしが所属する太田プロは有効な手を打てなかった。それどころか、右翼の尾行は太田プロからスケジュールが漏れたために起きたのではないか、とたけしは疑念を抱いた。

たけしに対する日本青年社の抗議活動は、12月初めまで続いたが、最終的に両者を手打ちに導いたとされるのが、女優、富司純子の父親で東映のヤクザ映画のプロデュースをしていた俊藤浩滋だった。たけしが『元気が出るテレビ』(日本テレビ)で共演していた松方弘樹の口利きで俊藤が和解工作に乗り出したと伝えられている。

俊藤は日本青年社の小林楠扶会長と以前から親しかったが、俊藤が京都で大手術をした際、小林会長が見舞いに訪れ、そのお礼のため俊藤が無理を押して上京して小林会長を訪ねたところ、これに小林会長が感動した。その場で俊藤がたけしの件を相談したところ、その場で抗議活動の中止が決定した、とされている。

◆手打ちの「返礼」が「たけし利権」争奪の口実に

だが、話はそれだけでは済まなかった。

この間、十数人の芸能関係者が事態収拾のため動いていた。名前が挙がった中には、バーニングプロダクションの周防郁雄社長やライジングプロダクションの平哲夫社長などがいた。当時の報道によれば、手打ちの成立には総額7000万円の費用がかかったとされる。彼らのためにたけしは、「返礼」をしなければならないことになったという。

義理を返す原資となるのが、「たけし利権」である。自分をマネージメントしきれなかった太田プロに対する不信感もあいまって、たけし独立という流れができていった。

だが、当時のたけしは年に5億円も稼ぎだし、太田プロの売上の大半を占めていたから、事は簡単に進まない。水面下では様々な駆け引きもあったと見られる。

88年2月10日、株式会社オフィス北野が設立され、たけしは約100人もいた、たけし軍団を引き連れ、太田プロから独立を果たした。オフィス北野といえば、現在社長を務める森昌行の顔が思い浮かぶが、設立当初の登記簿を見ると、代表取締役はTBS系列の大手技術製作会社である東通社長の舘幸雄が就任している。

さらにライジングプロの平哲夫社長がオフィス北野の取締役に就任している。平は2001年10月18日に脱税容疑で東京地検特捜部によって逮捕されたが、オフィス北野の登記簿を追うと、逮捕の2ヶ月前の8月20日に辞任していた。

オフィス北野設立時の資本金は1000万円。その内訳は、たけしが400万円、舘が400万円、平が200万円となっていた。

たけし独立の裏側では一体、何が起きていたのか?
(つづく)

▼星野陽平(ほしの・ようへい)
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。

芸能界の真実をえぐる! 『芸能人はなぜ干されるのか? 芸能界独占禁止法違反』

 

《紫煙革命05》知られざるタバコの真実──タバコの巻紙のりは木工用ボンド?!

デジタル鹿砦社通信をご覧の皆様、日々のお勤めゴクラク様です。毎週更新で『タバコは体にいいのではなかろうか?』っちゅうことを調査報告している、タバコ愛好家の原田卓馬です。
さて前回の記事で、JTの製造販売するタバコの燃焼促進剤がクエン酸塩だという知られざる事実が判明した。その話の続きをどうぞ。

── なんでクエン酸塩が添加されているんですか?

JTコールセンターの電話の人にたずねてみた。

「はい。クエン酸塩が巻紙とタバコ葉の燃える速度を調節するために、巻紙に添加されています。」

── じゃあ、巻紙にクエン酸ナトリウムとクエン酸カリウムが入ってないと、燃焼速度が安定せず、タバコ葉だけ先に燃えてしまうということですか?

「はあ、多分そうだと思いますけど」

おっと、こんな質問したところで、そう答える以外にないじゃないか!意味ないぞ!

── 巻紙に添加されているクエン酸ナトリウムとクエン酸カリウムがどういう理屈で巻紙の燃焼促進に効果を発揮するんですか?

「そういった詳しいことですと、こちらでは即答致しかねます。お調べするとなるとお時間の方が・・・」

◆火薬が燃焼促進剤だという都市伝説

── 本当かどうかわかりませんが、火薬の成分の硝酸アンモニウムとか硝酸ナトリウムが添加されているという情報をネットで見かけたんです。そういった火薬みたいな成分は燃焼促進剤として含まれていないんですか?

「過去に硝酸アンモニウムを巻紙の燃焼促進剤として使用していたかどうかの詳細は、判りかねますが、現在のJTにおいてはタバコ巻紙に硝酸アンモニウムを添加するということはないようでございます。他社さんのことについてはわかりかねます。それ以外の成分についても使用目的等の詳細はわかりかねます。」

開発者ではないのでさすがに専門知識となるとわからないのであろう。

◆巻紙のりは酢酸ビニル?

── じゃあ話変わって、JTのホームページのたばこ材料品添加物リストの巻紙のりについて質問しますけど、

電話口の向こうで、「こいつ、めんどくせ~」という無言の溜息が漏れた瞬間である。

── 巻紙のりに使用されている、酢酸ビニルというのはなんですか?


たばこ巻紙のり添加物一覧(右横の数字はシガレット一本に対する最大使用割合(%)

・エチレン-酢酸ビニル樹脂 0.2
・ポリ酢酸ビニル 0.07
・カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.02
・ 酢酸ビニル-ビニルアルコール樹脂 0.001

「酢酸ビニルは巻紙を接着するための糊にあたります。」

タバコの葉を巻紙で包んで、紙同士が重なる余白部分を貼り合わせるための接着剤としての糊は酢酸ビニルであると。これは、調べてみると木工用ボンドやチューインガムのベースになっているということだ。

なんだと?!普段から木工用ボンドを吸っているのか?なんとも不気味である。

── その成分は木工用ボンドと同じようなものでしょうか?

「酢酸ビニルは木工用ボンドにも使われている成分ではありますが、巻紙のり自体が木工用ボンドと同じ成分ということではないようです。詳細はわかりかねますが、含まれているのはご覧になっている添加物リストにうんたらかんたら── 」

酢酸ビニルを燃やした場合、完全燃焼させれば二酸化炭素(CO2)と水蒸気(H2O)になるようだ。しかし、水分を含んでいると不完全燃焼となり一酸化炭素やアセトアルデヒドを発生し得るようだ。

◆工場見学実施中

有害性についてあれこれ質問しても詳しいことまでは「わかりかねます」なので、どこかに窓口がないか聞いてみた。

── もっと詳しく知りたいんですけど、どこ行けば教えてもらえますか?JTの本社とか行けばいいですか?

「他の窓口については詳しくわかりませんが、タバコ工場の見学なら定期開催ではないのですが、予約可能です。」

──  工場見学!!!!!!!!

「東京にお住まいでしたら宇都宮の北関東工場か静岡の東海工場のどちらかが近いかと思います。」

── そいつぁどうも、ありがとうございます。やっほーい!

工場見学という萌え萌えな耳寄り情報に舞い上がって、上機嫌のまま勢い余って電話を切ってしまった。

・JTのタバコの巻紙の燃焼促進剤はクエン酸塩である。
・巻紙のりの接着剤は木工用ボンド(ではないが)みたいなものである。
・タバコ工場見学ができる。

以上の三つが今回の取材でわかったことだ。

次回は、工場見学かタバコ葉の添加物のお話です。

(原田卓馬)

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《屁世滑稽11》マッサンはウイスキーを作ったけどアベッチサンは何をしたの…の巻

屁世滑稽新聞(屁世26年10月18日)

マッサンはウイスキーを作ったけど

アベッチサンは何をしたの……の巻

(ヤン・デンネン特派員の大江戸情報)

【東京発】 昔の特派員仲間で、今はロシア内務省のアナリストをしている友人から、
日本政府の朝鮮対策について知りたいと電話があって、狸穴のスナックで久々に会った。
この男は――仮に名前をレヴィチンコとしておくが――滞日中は山渓新聞の編集局長など
をスパイとして利用したことで名を売り、ソ連解体後もロシア政府の有力者なのである。
ちなみに彼がソ連スパイとして用いた山渓新聞の編集局長は、暗号名が「カント(CUNT)」
だった。言うまでもなく「女陰」を指す。「左折れの男根」を暗示するような名前のソ連
外交官が、日本のマスコミ要人を「女陰」と呼んで利用していたことが何を意味するかは、
賢明な読者なら察しがつくだろう。

それはさておき、古い友人からのたっての頼みである。私ヤン・デンネンも一肌脱ごうと
いうことになり、いろいろな意味で朝鮮事情に通じているサンヤ李恵子にアプローチを
かけた。焼け跡世代の例にもれず、彼女もゴディバのチョコレートなどを差し出せば尻尾
を振って何でも喋ってくれるわけである。アポをとりつけて議員会館に向かった。勿論、
ゴディバチョコレートの詰め合わせを小脇に抱えて……。

私が彼女から聴き出した朝鮮事情や南北朝鮮への日本政府の秘策については、コンフィデ
ンシャルな事項だからここには書かない。だがこのときに交わした冗談くらいは、ここに
書いてもバチは当たるまい。以下はそのやりとりの一部である――

ヤン・デンネン特派員とサンヤ李恵子氏との会話(某日、議員会館にて)

ヤン 「やあ、こんにちワ! お忙しいところスミマセン」
李恵子 「初めまして。あなたのコラムは週刊侵腸で毎回拝読してますわ。おかげで腸をすっかりやられて下痢が止まりませんから(笑)」
ヤン 「それはソーリー、アベソーリー。いやいや申しワケない。ところで李恵子さん、ワタシあなたと初対面じゃないデス。あなたが幼い頃に、あなたの故郷の北陸でたびたび会ってましたよ」
李恵子 「あら!そうでした?」
ヤン 「朝鮮戦争のときにワタシ、北陸に張り付いて特派員やってマシタ」
李恵子 「えっ? 60年以上前のことですよ。そのころから現役の記者さんだったの?」
ヤン 「ハイ。終戦直後から記者稼業ひとすじでして……」
李恵子 「信じられない。どうみても50代にしか見えない! だわ。あなた老化しないの? もしそうなら秘訣を知りたいわ!」
ヤン 「ハイ。ワタシ、毛沢東からじきじきに教わった、中国歴代皇帝が愛用していた回春法をやってマス」
李恵子 「それはすごい! ぜひ教えてほしいワ!」
ヤン 「ザンネンながら殿方専用なのです。それに最近はクスリのほうで貞操観念が薄れてきて、梅毒とかヘルペスになるリスクも上がってきたので、回春どころじゃなくなってマスよ、ハハハ」
李恵子 「えっ? それって回春とかおっしゃってるけど、ひょっとして買春?」
ヤン 「オー!ミステイク! バレてしまった! ニッポンでは、そうも言うそうですね、イエス!」
李恵子 「とんでもないご老人ね。それはともかく、じゃあ父のことはよくご存じでは?」
ヤン 「モチロン! 朝鮮事情に通じた方でしたから。しかも地方新聞社の要職に就いてカツヤクしておられた」
李恵子 「朝鮮戦争のころから、その後に始まった在日北朝鮮人の帰国事業のことなど、父はずっと取材していましたから」
ヤン 「そのあとイロイロあって、郷里で選挙に立候補したけどお負けになって、それでアナタを連れて東京にお引っ越しになり、東京でもマスコミの寵児になりましたよね」
李恵子 「ええ、宇治山渓グループの放送局に職を得まして、ラジオパーソナリティの先駆けとして伝説的な活躍をしました」
ヤン 「存じ上げております。民族のキズナって強いものだなあ……と、そのたびごとに感心しておりました」
李恵子 「あらそうですの?」
ヤン 「クニが違えど同じ民族なのですから内輪もめはイケナイ。就職でも何でも仲間うちで融通しあって助けあう。そういう国際的にも通じる教訓を、お父様からも、あなたの生き方からも、ワタシ学んできたのデス」
李恵子 「あらまあ……。ところでヤンさん、あなた朝鮮戦争のときは戦地で取材したの?」
ヤン 「イイエ、日本の兵站拠点でもっぱら取材してマシタ。でもワタシ、その後、中国とソ連との国境紛争は、第三国人という立場を利用して、双方の“記者席”から戦闘を眺めておりマシタ」
李恵子 「それは興味ぶかい話ね。日本も周辺諸国と国境がらみの諍(いさか)いが激化してきたから、ぜひ中ソ国境紛争のことは聞いておきたいワ」

★          ★          ★

ヤン 「月日の経つのは早いものデス。もう45年も前のことデスが、きのうの出来事のように鮮明に覚えていますヨ。事件はアムール川の支流、ウスリー川に浮かぶ一つの小島で起きました」
李恵子 「竹島みたいに海にうかぶ孤島ではなかったのね」
ヤン 「大陸の二大国家ですから、大きな川が国境線になって、川のなかの島の所有権をめぐって紛争が起きたりするのデス。……で、この島を中国は“珍宝島”と呼び、一方のソ連は“ダマンスキー島”と呼んでいた」
李恵子 「まあ…………」
ヤン 「中国政府は『チンポー!』と叫び、ソ連政府は『ダマンスキ~!』と叫ぶ。それはもう大変なことになってマシタ」
李恵子 「…………(赤面して声も出ず)」
ヤン 「どうしました?」
李恵子 「あなた、私にセクハラしてるでしょ? 中国が『チンポ~!』と叫び、ソ連が『駄マン好き~!』と叫ぶなんて、そんな出来すぎたジョークあるわけないじゃない? それじゃ“男根vs女陰”のおかめ・ひょっとこ対決じゃないの(笑)」
ヤン 「ハァ? サンヤ先生なにか勘違いしてオラレル。珍宝島事件は歴史的な事実デ~ス! それに現地の人は、そういう名前を聞いてもそんなことは連想しませんよ。『チンポ』とか『駄マン好き』とか、それは日本語だから日本でしか通用しません」
李恵子 「あら。そうですの……(ひたすら赤面)」
ヤン 「ワタシの祖国のオランダにも、似たようなことがありますヨ。たとえばワタシはスケベニンゲンの出身なのデスが……」
李恵子 「スケベだなんて自己紹介したら人間終わりですわよ」
ヤン 「イヤイヤ、だか~らチガイマス! オランダの、北海に面したリゾート地ですよ。サカナがめっちゃウマイとこデンネン!」
李恵子 「まあ……。記者歴が長いと駄ジャレで自己紹介するようになるのね。それにしてもスケベな地名よね」
ヤン 「だ~から~、そう感じるのは日本語の“助平”と発音が似ているからで、日本人だけだってバ! だいたい東京にも“銀座スケベニンゲン”という、スケベニンゲン市長から正式に命名許可をもらったレストランがあるんですケド、ご存じ?」
李恵子 「いいえ。外食はもっぱら新大久保なので……」
ヤン 「銀座スケベニンゲンのパスタは絶品ですよ。ワタシ的には“チンチンコース3980円”がおすすめですケド」
李恵子 「え? チンチン食べちゃうの? あたし、なんだかワクワクしてきた……」
ヤン 「だ~から~チガウです、それ! チンチン(Cincin!)はイタリア語で“乾杯!”って意味ですよ。イタリアン酒場で“チンチン”って名前の店はザラにありますから」
李恵子 「そうでしたの? 外国語って、日本人が聞くとイヤラシイのが多いわね。やはり日本では欧米語よりもハングルを教えるべきよ!」
ヤン 「そうおっしゃりますケド、日本のことばだって、外国人が聞くとスケベ~な連想したりするものがアリマスヨ」
李恵子 「うそでしょ? 日本語は世界一美しい言葉なのですよ。言の葉というくらいですからね」
ヤン 「すべての言語はみな美しいし、みな立派で優れているんですよ。ワシらの言語がいちばん美しい、とか、優れている、とか自慢したり優越感を持つのは、世界の広さをしらないイナカ国家の三等国民くらいなもんですよ」
李恵子 「……美しい日本のわたし。」
ヤン 「60年以上の特派員経験があるワタシのお説教を、受け入れられないようデスから、じゃあ実例をすこし示しマスネ」

★          ★          ★

ヤン 「まず日本では電話で話しだすときに必ず用いる“もしもし”って言葉。あれドイツ人が初めて聞いたら驚愕シマス」
李恵子 「あんなの世界共通のあいさつでしょ?」
ヤン 「レディの前では口にするのも憚(はばか)られることなのですケド……。日本語でいう“お●んこ”は、ドイツ語だは“ムッシ(Muschi)”なんですヨ。元々“ムッシ”は子猫を指す言葉ですけどね。ちょうど英語で子猫を意味する“プッシー(pussy)”が“お●んこ”を指すようになったのと同じ事情でしょう」
李恵子 「えっ? じゃあ“モシモシ”って言ったら……」
ヤン 「オメコオメコって言ってるようなもんデス。相手はビックリします。次はニッポンの“サザエさん”に出てくるあのイガグリ坊やですケド……」
李恵子 「磯野カツオ……ね」
ヤン 「イタリア語では“私”が“イオ(io)”で、“私は何とかです”っていうのは“イオ・ソノ何とか”と言いマス。……で“おちんちん”は“カッツォ(cazzo)”なんですワ。だから“私はオチンチンです”ってイタリア語で言うと……」
李恵子 「イオ・ソノ・カッツォ……ですか?」
ヤン 「イエス! ふつうの速さで言えば“イソノカツオ”になってしまうんですワ。こういう、日本語を知らない外国人に要らぬ誤解を与えるコトバというのは、けっこうありマス」
李恵子 「それが人名だったら悲惨ですね」
ヤン 「イエス! たとえばワタシが好きなAV女優に麻生舞という人がいました」
李恵子 「駄マン好き~……ですか?」
ヤン 「ノゥッ! 名器です。ワタシ名器スキです。……それはともかく、ニッポンの皆さんは“麻生”をふだんどう発音してます?」
李恵子 「あそー……でしょ?」
ヤン 「ふつうに“アソー”と言うと、英語圏では“尻の穴(asshole)”と聞こえるんですよ。発音してみましょうか(http://ja.forvo.com/word/asshole/)」
李恵子 「あっ! 本当だ!」
ヤン 「昭和天皇がご存命のころ、軽く受け流すお答えの常套句として、“あっ、そう”をご愛用していましたが、あれも今考えれば冷や汗ものだったわけです」
李恵子 「世界の広さ、文化のギャップを感じますねえ……」
ヤン 「……で、麻生舞チャンですが、彼女が外国人の前で“マイ・ネーム・イズ・舞・麻生”と言ったら、どう受け取られるか……デスネ」
李恵子 「私のなまえは“私のお尻の穴”です……となってしまう。スゴイですねえ」
ヤン 「そんなこともあったせいか……彼女、その後、“沢口りな”の名前で仕事をするようになったのデス」
李恵子 「お詳しいですわね」
ヤン 「ファンでしたから(笑)」

★          ★          ★

李恵子 「麻生が“お尻の穴”に聞こえるとなると、麻生副総理が心配だわ」
ヤン 「麻生太郎さんの場合は、苗字だけじゃナイからネ」
李恵子 「……とおっしゃると?」
ヤン 「ニッポン人がふつうに喋るように曖昧な発音で“アソータロー”って言ったら、英語圏の人間には“尻の穴のテロ(asshole terror)”に聞こえるでショーね」
李恵子 「想像するだけで背筋が凍りますワ」
ヤン 「たしかに“私はケツの穴のテロです”なんて自己紹介されたら、お尻を押さえて逃げますよ(笑)」

「アソウ・タロウ」とハッキリ発音しないと
「Asshole terror」に聞こえてしまい、
あらぬ誤解を持たれることになる。

李恵子 「とくに麻生さんの場合は、訪米の際などは、はっきり正しく日本語を発音しないと命にかかわりますね」
ヤン 「テロリストと間違われてしまう恐れもアリマス。デカい図体のポリスメンが駆けつけて、あせった麻生さんが“ちょっと待ってくれ!”などと言いながら名刺を出そうと背広に手でも突っ込めば、その場で射殺されるかも知れません」
李恵子 「おお~こわい! プルアンハグナァ……」
ヤン 「ソレ、ニッポンのおまじないですか?」
李恵子 「アニョ、わたしの心のなかの叫びです。心配だなぁ……って呟(つぶや)いただけです」
ヤン 「まあ……しかし、犬のお尻から顔がでてきても、悪いことばかりじゃないかも知れませんよ。2006年にロサンゼルスのジェシカ・ホワイトさんが飼っていたテリア犬のお尻に、キリスト様が降臨して、世界じゅうで騒動になったことがありますから」

犬の尻の穴(asshole)には神が下りることもある……らしい。
(2006年に米国LAのジェシカ・ホワイトさんが撮影。ちなみに
愛犬の名は「アンガス・マクドゥーガル」、三歳の雑種テリア)

李恵子 「ほかに日本の政治家で、こういう要注意の名前の人っているんですか?」
ヤン 「イエス! レディの前で口に出すのも憚られるのですが……。あっ、これさっきも言いましたネ。……とにかく“キンタマ”のことを英語で“ナッカー(knacker)”といいます。これは物と物とが当たって出るコンコンッという音が由来の擬声語らしいのですが、2個の小さな丸い木片をヒモで結びつけて、コンコンッと音を出すカスタネットのような打楽器とか、それに似たキンタマを指す俗語です」
李恵子 「名前のなかに“ナカ”が入る人名ってたくさんあるわよ。中曽根康弘さんとか、竹中平蔵さんとか」
ヤン 「そのお二人がまさに問題なのデス。息子のことを英語で“ソン(son)”といいますが、俗語だと“そこの兄(あん)ちゃん”という卑近なニュアンスになります。さらにこれが“野郎・くそったれ・タコ・ぼけなす”などの罵倒の意味ももつわけデス。だから自己紹介なり他人からの紹介のときに“なかそね”と日本語でハッキリ発音すれば問題はないのですが、変に卑屈な日本人が外国人のまえでよくやるように、西洋人をまねた奇妙なアクセントや発音で“ナッカソーネ”なんて言ったら、聞く人がきけば“キンタマ野郎”と聞こえてしまうのです」
李恵子 「中曽根さんは総理大臣時代、訪米先の記者会見でいわゆる“不沈空母”発言をして世を騒がせたけど、“キンタマ野郎”が“不チン空母”発言なんかしたらシャレになりませんわ(笑)」
ヤン 「そのダジャレも、日本でしか通用しませんから(笑)」


「knacker」「son」はいずれも英語の俗語で、それぞれ
「キンタマ」「野郎」という意味だ。「なーかーそーね」と
母音をちゃんと伸ばして発音せずに、「ナッカソネ」などと
英語っぽく発音すると、「威勢よく突っ張ったキンタマ野郎」
と思われるので注意が必要だ。日本人の名前は、外人の前でも
ちゃんと正しい日本語で発音すべきである。

李恵子 「竹中さんはどうなんです?」
ヤン 「サンヤ先生、“ヘイズ(haze)”っていう英単語はご存じですか?」
李恵子 「煙……よね。あたしの好きな坂本冬美チャンが“パープルヘイズ音頭”っていうのを唄ってるのよ。パ~ヘイズ紫の~♪ けむ~り~がモクモク~♪」(→ https://www.youtube.com/watch?v=Dt4YxGCmO0Q
ヤン 「お歌がお好きでケッコウなことデシタ(笑)。“ヘイズ”って言葉は、モヤっとした煙や霞(かすみ)という意味があり、それが一番ふつうの用例なのですが、ほかにもいくつか意味があるんです」
李恵子 「煙だけじゃないんだ?」
ヤン 「ニホンゴでいえば“神”と“髪”と“紙”とか、“橋”と“箸”と“端”とかネ。由来はちがっても現代では同じ音になっていて、漢字で書かないと違いがわからない言葉はこの国にもけっこうあるでショ?」
李恵子 「たしかに。フジといっても“富士”も“不二”も“不治”もあるわね。富士テレビジョンとして発足したフジテレビも、今じゃ“不治テレビ”になっちゃたし」
ヤン 「オーダイバー合衆国とか、オ-ダイバー新大陸とか、新社屋の所在地のオーダイバーを冠につけたイベントだって、われわれ特派員仲間は“ダイジョブかいな~?”と苦笑しながら眺めているわけですヨ。“不治テレビ”に似つかわしく、“ダイバー! ダイバー!”と叫びながら凄い勢いで急降下(dive)しているわけですから、あの会社は(笑)」
李恵子 「……それで煙の話ですけど?」
ヤン 「そうそう、忘れるところデシタ(笑)。煙という意味のヘイズ(haze)は、元をたどると1000年くらい前の、大昔のイギリスで使われていた“どんよりと薄暗く曇った”という意味の“ハズ(hasu)”という古語が由来らしいです。だけどもうひとつ、中世フランスの“嫌がらせをする・いじめる”という意味の“ハゼール(hazer)”という言葉がイギリスに伝わって、現在はヘイズ(haze)という形で使われている言葉もあるんですワ」
李恵子 「言語学のややこしい講釈、ゴクローさんです(笑)」
ヤン 「長くなってスンマセン。……で、こっちの意味の“ヘイズ”なんですけど、“ヘイズする人”つまり“いじめる人”のことを今でも普通に“ヘイザー(hazer)”というんですヨ」
李恵子 「学校のいじめっ子……とかですか?」
ヤン 「いや。むしろ、寄宿制の学校の“新入生歓迎”儀式で新入生をいじめる上級生とか、新兵をいじめる先輩の下級兵士とか、さらに意味がひろがって、使いものにならない家畜をころす屠殺業者、廃屋や廃船を解体する業者なんかも、みんな“ヘイザー”って呼ばれています」
李恵子 「……で、それと竹中さんは関係あるんですか?」
ヤン 「中途半端に西洋人ぶって、“ヘイゾ~・タ~ケナ~カ”などと自己紹介しようものなら、ネイティブの英語つかいには、こんなふうに聞こえてしまうかもしれませんね。“いじめ野郎! キンタマとっちまえ!(Hazer! Take knacker!)”」


先輩による新入生や新兵イジメとか、「ホモ嫌い」による
同性愛者へのイジメや嫌がらせを、英語では「haze(ヘイズ)」
といい、そういうイジメ野郎を「hazer(ヘイザー)」という。
「knacker」には「金玉」のほかに「家畜屠殺屋」「廃屋解体屋」
「屠殺する」「ダメにする」とか「役立たずになった家畜・廃馬」
という意味もある。他人にむかって「Take knacker, hazer!」など
と言ってはいけない。

★          ★          ★

李恵子 「安倍総理はどうなんでしょうね? アベ・マリアっていう歌があるくらいだから、悪いイメージはないでしょ?」
ヤン 「ノゥ……。そんなことないデス。世界のコトバは英語だけじゃナ~イ」
李恵子 「ということはフランス語とか?」
ヤン 「ピンポ~ン! フランス人のまえで安倍総理のことを“あべっちさん”などとニックネームで呼ぶと、ヤバイです(笑)」
李恵子 「どういうこと?」
ヤン 「フランス語で“白痴化する”ことを“アベチル(Ab?tir)”というんですが、ここから生まれた言葉で“馬鹿”のことを“アベッチサン(Ab?tissant)”っていうんですヨ」

アベッチサン(ab?tissant)はフランス語で
「白痴」「バカ」という意味である。だが歴史上、
洋の東西を問わず「バカ(fool)」は、権力者を
おだてる「道化(fool)」としての特権を得てきた。
トランプカードの「ジョーカー(joker=おどけ者)」
もそうした道化師にほかならない。

李恵子 「安倍さんはフランスでは馬鹿の代表みたいになっちゃうのね……」
ヤン 「悲しがることはないデス。なぜなら、世知がらい世間常識などハナから無視して馬鹿なことを言ったり行なったりする本格的なバカは、昔から、それなりに一目置かれていたからです」
李恵子 「まさに安倍総理のことじゃないの」
ヤン 「イエス。そして馬鹿や狂人を、天の声の代弁者として崇拝する習慣というのは、昔から洋の東西を問わず、存在してきマシタ」
李恵子 「すばらしいわ!」
ヤン 「馬鹿、すなわち“アベッチサン”は、西洋では古来、王様や貴族が“宮廷道化師”として重用してきたのですよ。ちなみに英語の“フール(fool)”という言葉がありますが……」
李恵子 「馬鹿のことでしょ?」
ヤン 「“馬鹿”のほかに“道化師”という意味もあるのデス」
李恵子 「知らなかったわ。馬鹿も使いようなのね」


かつては「バカは天与の資質」として神聖視され、常識人が
けっして口に出来ない権力批判も「バカだから仕方ない」と
大目に見られていた。宮廷道化師は王や貴族を笑わせるだけ
でなく、常識人たる側近臣下たちが言えないような辛辣な
批判や、悲しい知らせなどを、権力者に伝える貴重な役目も
果たしてきた。

ヤン 「現在だってまったく変わってないのですが、権力者のまわりには、小賢(こざか)しい欲たかりの小人物たちが集まります。こいつらは世間体を気にして、小賢しく、せせこましく、常識的に振る舞うわけです。そういう木っ端(こっぱ)役人みたいのが、吹きだまりみたいに集まった組織はどうなるか?」
李恵子 「ソニーみたいになるんでしょ?」
ヤン 「イエス! あるいはお台場に移転後の宇治テレビみたいに、こざかしいばかりの烏合の衆の集まりになって、まさにオ~!ダイビング!……するわけです」
李恵子 「おお~ダイバ~ってことね?」
ヤン 「イエス。むかしの王室なども、そうした危険性を経験のなかで学んだのでしょうね。常識ぶる臆病な木っ端役人ばかりで王室が窒息しないようにするため、わざわざ世間知らずのバカを“道化師”として雇っていた、というわけ」
李恵子 「現代の日本では考えられないわ……」
ヤン 「いや、サンヤ先生。あなたみたいな議員には想像できないだろうが、国会制度そのものが、じつは国民的娯楽を提供する“愚者の殿堂”であり、馬鹿どもが騒ぎまわる“道化の劇場”なのですよ。少なくともわれわれ海外特派員は、そういう視線で国会を楽しませてもらってますから(笑)」
李恵子 「まあ…………(ため息)。で、バカ代表のアベッチさんは、どんな存在意義があるっていうの?」
ヤン 「古来から、バカが売りものの宮廷道化師は、常識的な臣下や側近ができないような言動を、担ってきたわけです」
李恵子 「馬鹿にそんなことができるの?」
ヤン 「イエス! まず太鼓持ちの仕事があります。日本語でいえば“幇間(ほうかん)”です。……ところでサンヤ先生、幇間ってどういう意味だと思います?」
李恵子 「モルラヨ~」
ヤン 「あの? それは何のおまじないですか?」
李恵子 「ただの郷里の方言ですよ。“知りません”って意味ですから」
ヤン 「はぁ、そうですか。……で、幇間ですが“幇”ってのは“脇から手を出して助ける”という意味です。犯罪者を支援することを“幇助(ほうじょ)”っていうでしょ? ……まあそういう意味です」
李恵子 「勉強になるわね」
ヤン 「……で、幇間というのは“間をたすける”わけで、酒席などで、間が空くと“間抜け”になっちゃうので、冗談をいったり芸をみせたりして“間を持たせる”わけです。この“間を持たせる人”のことを、そのまま直訳したような英語の言葉があるのですが、ご存じですか?」
李恵子 「モルラヨ~」
ヤン 「答えを言いますと、そのものズバリの“エンターテイナー”です。“エンター”は“間”、“テイナー”は“持たせる者”という意味です」
李恵子 「……で、それと安倍総理はどう関係あるの?」
ヤン 「宮廷道化師のたいせつな仕事は、まず馬鹿をしてみせてご主人の笑いをとる太鼓持ちってことです。そしてもう一つ、これも“馬鹿”しか許されない重大な任務なのですが……」
李恵子 「それは何?」
ヤン 「常識的な木っ端役人の臣下たちには、畏(おそ)れ多くて王様や権力者のまえでけっして口外できないような不埒(ふらち)なことを、権力の主にむかってズケズケと言う任務です」
李恵子 「王様に面とむかって悪口を言うってこと?」
ヤン 「ノゥ! 悪口というよりも批判ですね。それから国や王室の存亡にかかわる不吉なニュースを、王様に伝える仕事とか……」
李恵子 「アベッチサンの安倍総理が“現代の宮廷道化師”だなんて、そんな言い分は通用しないでしょ? ここは民主国家の日本ですよ? 絶対王政時代のフランスやイギリスじゃないんだから」
ヤン 「ノゥっ! よく考えてごらんなさい。われわれ外国人の特派員にはわかることなのですが、日本人には難しいかもね。文化を比較できるだけの広い視野も経験もないですから、日本には……」
李恵子 「そうまで言われたら無理矢理でも考えますワヨ! 腐ってもワタシ、ニポン人ですから!」
ヤン 「……アベッチサンは現代の宮廷道化師だと思いませんか?」
李恵子 「でもべつに王様……というか、天皇陛下を笑わせるような馬鹿な芸をするわけでもなし……。ああ!わかった! いまだに天皇ご一家を汚染のホットスポットに閉じ込めて、京都のご自宅に帰れないようにしているワ。そういう不敬なことは常識的な臣下なら誰ひとりできるはずがない! 天皇陛下にキツく当たっている、という意味では、アベッチサンは立派な宮廷道化師だわね」
ヤン 「たしかに。でも日本は絶対王政でしたっけ?」
李恵子 「天皇陛下は国家と、主権者たる国民の象徴じゃないの! このあたりのことは、あたしらの党の改憲案でじきにぶち壊す予定ですけどね。……まあとにかく、たとえ現在の憲法で“主権者は国民”と書かれていても、安倍総理はその国民にだって大笑いの芸を見せたり、おそろしい罵声を吐いて、じゅうぶんに宮廷道化師の役割を果たしているわよ!」
ヤン 「日本は立派な宮廷道化師を維持していて、まことにうらやましいデス。歴史的伝統を尊重する保守政党の醍醐味(だいごみ)ですね!」
李恵子 「お誉めいただいて光栄です。これからも立派な宮廷道化師を持ち続けるよう、自民党はがんばっていきます!」

(屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ただし《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=5088)から引用》と明記して下さい。
なお、ヤン・デンネン記者とサンヤ議員の会話は、本紙記者が銀座の酒場で
一人酒していたときに、たまたまそばの席にいた外人特派員どうしの自慢合戦
の、聞くとはなしに聞こえてきた話の内容にヒントを得たフィクションです。
登場人物も勿論虚構ですので、お迷いのないよう……)

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《我が暴走03》「集ストはワシの妄想じゃなかった」マツダ工場暴走犯面会記[中]

引寺が服役している岡山刑務所

2010年6月、広島市南区のマツダ本社工場に自動車で突入して暴走し、社員12人を死傷させた引寺利明(47)。「現場の工場で期間工として働いていた頃、他の社員の集スト(集団ストーカー行為)に遭い、マツダに恨みがあった」という特異な犯行動機を語り、裁判では妄想性障害と認定されたが、責任能力も認められて昨年秋、無期懲役判決が確定した。引寺は今、どんな日々を過ごしているのか。前回に引き続き、引寺が今年9月に岡山刑務所の面会室で筆者に語った本音の言葉をお伝えする。

すでにお伝えした通り、今も被害者や遺族に対する罪の意識がまったく無い引寺。「刑務所は“更生”する施設じゃなくて、(他の受刑者と)“交流”する施設」とまで言い放った。だが、その語り口にはどこか達観したような様子も感じられた。

◆「仮釈のことは今は考えん」

── 引寺さんは仮釈放が欲しいとは考えないんですか?
「ワシは考えんね。いま考えてもどうしようもないけえ。(仮釈放が)あるとしても、だいぶ先のことじゃろう。たいぎい(=面倒くさい)けえ、考えんわ」

── 無期懲役ですからね。
「無期の場合、ここ(=岡山刑務所)から出る人は1年に1人おるかどうかじゃね。今は無期じゃと30年以上入るけど、ほとんど小さい箱になって(と言いながら骨壷を胸の前に抱くような仕草をして)、出るんじゃろう。無期で入ってくる人と出る人を比べたら、入ってくるほうがだいぶ多いもんね。無期の人間は出れれば、ラッキーいうことじゃろうね」

引寺は罪の意識がまったく無い一方で、「シャバ」への未練もあまり感じていないようだった。それにしても、と筆者は思う。引寺が現在、自分のアパートに侵入する「集スト行為」を行っていたのはマツダの社員ではなく、実は自分の父や不動産会社の社長だったと主張するようになっているというのはすでにお伝えした通りだ。仮にその主張が事実ならば、引寺は「集スト行為」とは無関係のマツダの社員たちを死傷させたことになるのであるが……。

── 引寺さんのアパートに侵入していたのがお父さんや不動産屋の社長だったと思うなら、無関係なのに被害に遭ったマツダの人たちに悪いことをしたと思わないですか?
「いや、そりゃ思わん。親父や不動産会社の社長がワシのアパートに侵入しよったんなら、ワシが言いよったことが妄想じゃなかったことになるじゃろう。つまり、ワシがマツダでロッカーや車にイタズラされよったこともホンマじゃったと証明されることになるんじゃけえ」

つまり、こういうことらしい。引寺の裁判では事実上、引寺が主張する集団ストーカー被害はすべて「引寺の妄想」だったと結論されている。だが、自分の父親や不動産会社の社長が引寺のアパートに侵入していたのなら、少なくとも引寺の主張のうち、「自宅アパートに何者かが侵入していた」という部分は事実だったと証明される。ひいては、マツダの工場での勤務時にロッカーや車にいたずらされたと主張している件も妄想ではなく事実だったと証明される――それが引寺の考えなのだ。

◆本心で話してはいるのだが……

筆者が賛同しかねていると、引寺は筆者の心中を察したのか、こう水を向けてきた。
「ホンマの話、片岡さんはどう思いよん? やっぱり少なからず、(集団ストーカーに遭ったという話は)ワシの錯覚じゃと思いよん?」
「……少なからず、そう思っていますね」と筆者は正直に答えた。
すると、引寺は「そうか……」と少し残念そうにしながらも念押しするようにこう言った。
「でも、ワシが(マツダに)何の恨みもないのに、ただデカイことをやってやろうという思いだけで事件を起こしたんじゃないんはわかってくれたかね?」
今度は筆者も「そうですね。それはわかりました」と答えた。昨年の春頃から一年半以上、面会や手紙のやりとりを重ねてきて、引寺が常に本音で話していることだけはわかっていた。マツダの工場で働いていた頃に集団ストーカー被害に遭ったことが犯行動機だという引寺の言葉は、間違いなく本心だ。

だが、しかし――と筆者は思う。引寺は事件を起こして以来、自分の犯行を誇示するような言動もしばしば見せてきた。公判で不規則発言を繰り返したのは、その最たるものだろう。控訴審の判決公判では閉廷時、裁判長に食ってかかった挙げ句、「このワシがマツダに黒歴史を刻んでやった! よう覚えとけ!」と大声で叫びながら退廷していった。それまでに何度も面会してきた筆者には、あれが引寺のパフォーマンスだということはすぐわかった。引寺は決して激高し、我を忘れてあのような発言をする人間ではない。

また、引寺は犯行直後に知人男性に電話した際、「ワシは秋葉原を超えた」と、2008年に7人が死亡した秋葉原無差別殺傷事件を意識したような発言をし、犯行を誇示していたと伝えられている。引寺という男の思考回路は一体どうなっているのか――。[つづく]

【マツダ工場暴走殺傷事件】
2010年6月22日、広島市南区にある自動車メーカー・マツダの本社工場に自動車が突入して暴走し、社員12人が撥ねられ、うち1人が亡くなった。自首して逮捕された犯人の引寺利明(当時42)は同工場の元期間工。犯行動機について、「マツダで働いていた頃、他の社員たちにロッカーを荒らされ、自宅アパートに侵入される集スト(集団ストーカー行為)に遭い、マツダを恨んでいた」と語った。引寺は精神鑑定を経て起訴されたのち、昨年9月、最高裁に上告を棄却されて無期懲役判決が確定。責任能力を認められた一方で、妄想性障害に陥っていると認定されている。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年、広島市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、フリーのライターに。新旧様々な事件の知られざる事実や冤罪、捜査機関の不正を独自取材で発掘している。広島市在住。

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《大学異論12》大学ゴロ──学生確保の裏で跋扈する悪徳業者たち

現在、そして未来も大学の最大の課題は学生募集だ。6割以上の大学が既に入学定員を確保できていない状況は以前述べたが、受験生の減少と大学側の入学定員の増加という需要と供給の「乖離現象」は今後ますます進展してゆく。

大学の存続にかかわる「学生募集」。何か妙案はないものかと大学は「もがく」のだが、違う角度からそれを格好のビジネスチャンスとしてよだれを垂らしながら薄笑いを浮かべている連中がいる。リクルートをはじめとする「進学情報」を生業とする業界がそれだ。

◆20人の学生確保に広報支出が6,000万円!

各大学の学生募集を担当する部署には、実に多くの「進学情報」業者が営業活動に訪れるし、電話やメールによる勧誘も年から年中ひきもきらない。一部有名大学を除いて受験生確保は第一優先だから「進学情報」業者と全く付き合いのない大学はない。

受験生へ無料送付される「進学情報誌」への広告出稿、インターネット上での広告、進学説明会参加など業者が提案してくる広報形態は様々だ。この業界の営業マンは口八丁が身上で、多少の経験則がないと業者やメディアの選択を誤ることになる。戦略を持たない経営者や担当者がこれらの業者に引っかかると、時にとんでもない出費を食らうはめになる。たった20人の学生を確保するために1年で6,000万円の広報費を浪費したのは誰もが知る関西の有名私大だ。担当者の無能が原因だ。6,000万円使っても結局目標の20名は確保できなかったという笑えない結論が付いてくるのだが、一部私立大学の「どんぶり勘定」はなかなか豪快ではある。

弱小大学にとって広報活動を独自に行うのは人的にも財政的に厳しい。業者なしには全く広報活動が出来ない大学だってある。だから本来ならば大学が行うべき業務を業者がある程度「補完」してくれている側面は否定できない。が、「教育産業」という言葉自体に嫌悪感を持つ者としては連中のやり口の汚さがどうも目につく。

◆弱小大学には割高すぎる「合同説明会」

例えば「合同説明会」というイベントがある。フロアーの広い会議場などを業者が借り切り、そこへ各大学がブースを出し、受験生に大学の説明を行ったり、質問を受けるという、いわば「大学の見本市」だ。これが、全国いや海外も含めて様々な主催者により無数に行われている。

大学は「参加費」を支払い、広報担当職員や教員が出向く。「参加費」は規模や主催業者により異なるが5万円から50万円ほどが相場だ(有名大学は割安に、弱小大学は割高に価格を提示されることが多い)。そこには当然お客さんである受験生が多数いないと意味はないのだが、悪徳業者主催の「合同説明会」に乗ってしまうと、1日で訪問者が数十人しかいない、しかもどう見てもその内何割かは「サクラ」であるということが珍しくない。

20校ほどの大学が出展している「合同説明会」で数十人が訪れても、それが受験に結びつく割合はほぼゼロだ。悪徳業者は会場確保とパーテーション、机などの備品用意と見せかけばかりの受験生向け広告を用意するだけでまるもう儲け、閉会間際に「予想を下回る来場者で申し訳ございませんでした」と用意をしていたアナウンスをすれば任務完了というわけだ。

そんな「合同説明会」に参加を決めてしまう時点で、大学の程度が知れるというものだが。口上を変えながら大学から広報費を引っ張り出す、巧妙な悪徳業者にとっての「おいしい」時代が当分続くのだろう。

「合同説明会」の中には「日本学生支援機構」(実質的に国の機関)が主催する海外での説明会もある。また東京や大阪等大都市では一度に100校以上が参加する大規模説明会も行われ、来場者があふれり、活況を呈しているものある。この手の大規模説明会は受験生にとってはメリットがある。志望大学の担当者と直接相談をすることができるし、大学案内や願書などを無料で手に入れることができるからだ。

しかし、もとより志願者が少ない大学はここでも泡を食らうことになる。確かに会場は受験生で溢れている。有名大学のブースの前には相談を待つ受験生が列をなす。でも弱小大学のブースにはウィンドショッピング(ひやかし)しかやってこない、一日ブースで受験生を待ち続けるのは、動かない浮きを眺める釣りのようなものだ。

◆悪徳「留学生斡旋業者」は顔つきが違う!

よりたちが悪いのが海外からの留学生を斡旋しようと持ちかけてくる連中だ。以前は中国が最大供給源だったが、経済成長と両国関係の悪化によって、最近はベトナムやミャンマーがそのターゲットになっている。

東アジアを見渡せば、日本は勿論のこと、韓国も台湾もそして「一人っ子政策」で統計上は中国も少子化が進展している。留学生の出身国はかつてこの3か国で90%以上を占めたが、今や台湾や韓国も国内で日本同様の学生の奪い合い時代に突入している。

留学生斡旋を持ちかけてくる連中はどいつもこいつも胡散臭い。「NPO国際○○支援会」と名乗ったり「株式会社アジア人材○○」だったり、容姿からして教育業界の人間のそれとは雰囲気が違う。まあ実質的に「人身売買」に手を染めている人間なので当然と言えばそうなのだが。

関西のある弱小短大は学生募集に苦戦のあまり、悪徳留学生斡旋業者にひっかかってしまった。学生担当職員によると、業者は何者かの紹介で理事長に取り入った。中国の奥地まで「視察」の名目で理事長を連れてゆき、接待漬けにして骨抜きにしてしまい、学生募集の業務提携を結ぶ。翌年確かに数人の留学生を送ってきたのだが、学費の半額近くに相当する「紹介料」を支払うはめになる。いくら学生の頭数をそろえても学費が徴収できなければ、経営的には意味がない。それでも理事長に食い込んだ業者は広くもない事務室の中に自分専用の机の設置を要求する。

更に「学生数確保の重要な鍵を握っている人物だから」という理由で理事への就任を要求し始める。この業者は関西一円で同様のモデルで「ブローカー」として稼いでいるようだが、典型的な「大学ゴロ」と言えよう。

より規模が大きく、最初から確信犯であるのが「大学自体がゴロ」であるケースだ。高校野球で甲子園に系列高校がしば活躍する「TK大学」は労組委員長殺害の為にヤクザを雇い実行した前歴がある。この大学は少々の記事でも片っ端から名誉棄損で裁判を起こすことでも知られているので内実の恐ろしさの割に週刊誌などでも報じられることが少ない。

意外なところでは、センスのいい大学として知られる「AG大学」の現理事長は財界とのパイプが太く民主党政権時代には国会議員がおこぼれにあずかろうと日参していたほどの裏社会のビジネスに精通している人物だ。

これ以上書くと危険ラインを超えてしまうので、私が狙われてもいいと腹が据わったら実名で告発をすると予告しておこう。

(田所敏夫)

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