断りの連絡は岡田くんのメールアドレスと会社アドレス宛てに送った。
岡田くんにだけ送ってしまうと「頑張ります」「やります」と返事が来てまだやり取りが続く気がした。その日の深夜、メールに気付き慌てただろう岡田くんからLineにて『考え直して下さい』というような内容のものが10通ぐらいは送られてきていた。それに返事はしなかった。

翌日、WEBマガジンの作家全員にメールが来た。岡田くんの上司の山田という人物からだ。『弊社社員がご迷惑をお掛けしてすみません』という謝罪から入る文面ではあったが『こちらの事業に関しては、岡田が業務外に行っている個人的な事です。名刺交換など会社の事業と勘違いさせる行為があったことをお詫びします』と書いてあった。責任逃れにしても笑える。こっちはどれだけの時間、準備をしてきたと思っている。他のメンバーとも連絡を取ったところ、呆れていたようで「アホらしい」「別にもういいんじゃない? 他を探そう」「謝られてもしょうがない」という話になり、この件はたった一本のメールで幕を閉じた。

話の中で他のメンバーから豊穣出版に話をしてみたらどうかと言われた。社長とはあまり上手くいっていないという話もしたが「聞いてみるだけでいいし、ダメなら他を当たればいい」と言われた。豊穣出版か……向こうも商売だ。儲かると思えば話には乗るだろう。せっかく集まったメンバーである。一冊だけでも記念に出せば誘った私も責任がとれたということになるのかもしれない。当時はWEBマガジンに誘ったことを引け目に感じていた

そこで、榛野氏に相談のメールを送ってみる。すると、あっさりOKが出たが交換条件がひどい。印税シェアはもちろんのこと、サイトを用意するので全員がブログを毎日書けというものであった。更にブログの内容はある程度指定するという。他にも執筆の仕事は皆それぞれに持っている。お金も払われないのに毎日SEO対策のようなブログは出来ないということになり、その頃にはkindleの販売代行業者はたくさんも出てきていたので断ろうということになった。ここ数か月間で業者も乱立し出してやるという立場から出させてもらうという立場になったと思う。自分で出す、どこかに頼むなども含めて出す側が選べるという状況には変わってきていた。

断りのメールを送ると『できないとはどういうことですか? こっちは仕事でやっているのにそっちは遊びですか?』とメールが送られてきた。これに対しては腹立たしく『最初から相談だと言ったはずです。他で話をするので無かったことにして下さい』と送ると『やる気が無いのに声を掛けるな』などと罵りのメールが来た。もう、これは仕事の関係でもなんでもない。契約解除について触れたメールを送ると『多額のお金がかかりますけど払えるんですか?』とメールが返ってきた。

メールで言い争いをしても仕方が無いので電話を掛けると「今から打ち合わせなんで切りますよ」と言われた。切られる前に「多額のお金って何ですか?」と聞くと「経費ですよ」と言われる。
「経費は一冊3万円で見積もり出してましたよね?」
「なんのことですか?」
「以前、紹介した作家さんに経費は3万円って言ってましたよね? それから利益を引いた分しかかかって無いと思うんですけど、表紙だってプロ雇ってないですよね? 出版に手数料はかからないですし」
「はあ? 3万円?」
「紹介した人に自費出版のメール出したじゃないですか? 金払わないと読まないって言われましたよね?」
「勘違いですよ。それぐらいかかるのを無料で出しますよという連絡です」と、言い逃れが始まった。WEBマガジンにて責任逃れをされたばかりで余計にイライラとする。また、もう一人紹介した作家と表紙の件で揉めたと聞いていたので「毎回、私が紹介した人と揉めるのは辞めて欲しいですね。表紙の件とか」と嫌味を言うと「それは、ろくでもない表紙送って来たからだろ」とキレ始めた。揉めた作家さんは外部のデザイナーに表紙を頼んでいたのだが、それが気に入らなかったのだろう。ここからは言い争いが続く。特に腹立たしかったのはライター業の請求書を送ったのに受領の連絡も無く、いつ払うかも連絡が無いため問いただすと「前回は但野さんが金無さそうだから、早めに振り込んでやったんだよ。ウチは三か月後払いなんだ!」と言われたことだ。
最後は「飯食ってるんで切っていいですか?」と榛野氏が言うので「あれ? 打ち合わせは無くなったんですか?」と言うと「飯ぐらい食っていいでしょ!」と怒鳴って電話が切れた。とんでもない人と関わってしまったと改めて思った。

(但野仁・ただのじん)

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